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黒沢清

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くろさわ きよし
黒沢 清
生年月日 (1955-07-19) 1955年7月19日(68歳)
出生地 日本の旗 日本兵庫県神戸市
ジャンル 映画監督脚本家
主な作品

映画
CURE
回路
ドッペルゲンガー
アカルイミライ

トウキョウソナタ
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黒沢 清(くろさわ きよし、1955年7月19日 - )は、日本の映画監督脚本家東京藝術大学大学院映像研究科教授。兵庫県神戸市出身。六甲中学校・高等学校を経て、立教大学社会学部卒業

略歴・人物

立教大学在学中に兼任講師として映画論講座を受け持っていた蓮實重彦の薫陶を受ける[1]。立教大学在籍中に8ミリの『白い肌に狂う牙』を監督。また万田邦敏らと映画制作集団パロディアス・ユニティーを結成し、自主映画『School Days』や『しがらみ学園』を撮った[2]

1980年、『しがらみ学園』がぴあフィルムフェスティバルに入賞し注目される。 大学4年時に、雑誌『GORO』の対談で出会い知遇を得た長谷川和彦から『太陽を盗んだ男』に制作助手として、1981年には、相米慎二セーラー服と機関銃』に助監督として映画を学び、その流れからディレクターズカンパニー制作のピンク映画神田川淫乱戦争1983年で映画デビュー[3]。続く『女子大生恥ずかしゼミナール』は、配給元からにっかつロマンポルノとしては公開拒否の憂き目にあうも、後に一部追加撮影・再編集され『ドレミファ娘の血は騒ぐ』(1985年)として晴れて一般公開された。この作品の出演を通じ交流を持った伊丹十三の制作・出演でプロ三作目の『スウィートホーム』(1989年)を監督したが、演出方針やビデオ化報酬などで伊丹側と対立、訴訟沙汰にまでいたるほど悪化した。

1992年、オリジナル脚本『カリスマ』がサンダンス・インスティチュートのスカラシップを獲得し渡米。

1994年、『ヤクザタクシー 893TAXI』からVシネマに進出後は、低予算・早撮りの環境下で真価を発揮し、『勝手にしやがれ!!』や『復讐』『蛇の道』『蜘蛛の瞳』など哀川翔主演の連作を手がけた[4]

1997年役所広司主演の『CURE』を契機に世界的な名声を獲得し、各国で特集が組まれ、映画祭に招待された[5]

シネフィルとして[6]70年代ホラー映画、ハマー・フィルムフーパーカーペンターらを敬愛し、人を驚かせたり、こわがらせる表現や恐怖や死といったホラー映画的題材を好んで扱うと同時に、自著でも述べているようにアルドリッチフライシャーシーゲルペキンパーフラーらによる職人気質のウェルメイドな「アメリカ映画」の影響から、俳優の「芝居」に重きを置かない感傷的な心理描写を排した作風が生まれた。また蓮實のいう映画史的に正しいとされる映画を顕揚した。高橋洋とともに清水崇呪怨』の監修を行ったことから、『回路』のハリウッドリメイク版『PULSE』のトレイラーでは「Godfather of J-Horror」と称された。

その功績から2005年、北野武とともに東京芸術大学大学院教授に就任した。

方法論的には、とりわけフィルム撮影にこだわっておらず、デジタル技術も積極的に取り入れながら断続的に新作を発表している。

小説家としては自作のノヴェライズ小説『CURE』、『回路』(いずれも徳間書店刊)がある。

監督作品

映画

  • 白い肌に狂う牙(1977年)
  • SCHOOL DAYS(1978年)
  • しがらみ学園(1980年)
  • 神田川淫乱戦争 Kandagawa Pervert Wars(1983年)
  • ドレミファ娘の血は騒ぐ Bumpkin Soup (1985年)
  • スウィートホーム Sweet Home(1989年)
  • 奴らは今夜もやってきた(1989年、『危ない話 夢幻物語』第2話)
  • 地獄の警備員 The Guard from the Underground(1992年)
  • ヤクザタクシー 893TAXI(1994年) - オリジナルビデオ
  • 打鐘(ジャン) 男たちの激情(1994年) - オリジナルビデオ
  • 勝手にしやがれ!!強奪計画(1995年)
  • 勝手にしやがれ!!脱出計画(1995年)
  • 勝手にしやがれ!!黄金計画(1996年)
  • 勝手にしやがれ!!逆転計画(1996年)
  • 勝手にしやがれ!!成金計画(1996年)
  • 勝手にしやがれ!!英雄計画(1996年)
  • DOOR III(1996年)
  • 復讐 運命の訪問者(1997年)
  • 復讐 消えない傷痕(1997年)
  • CURE(1997年)
  • 蛇の道 Serpent's Path(1998年) - ビデオ題『修羅の極道 蛇の道』
  • 蜘蛛の瞳 Eyes of the Spider(1998年) - ビデオ題『修羅の狼 蜘蛛の瞳』
  • ニンゲン合格 License to Live(1999年)
  • 大いなる幻影 Barren Illusion(1999年)
  • カリスマ Charisma(1999年)
  • 回路 Pulse(2000年) - 第54回カンヌ国際映画祭 国際批評家連盟賞
  • 降霊 KOUREI/Seance(2001年) - 同題テレビ作品の劇場公開版
  • 2001年映画と旅(2001年) - 「第16回国民文化祭・ぐんま2001in たかさき」より製作依頼された作品
  • 刑事(デカ)まつり『霊刑事』(2003年)
  • アカルイミライ bright future(2003年) - 第56回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門正式出品
  • ドッペルゲンガー Doppelganger(2003年)
  • ココロオドル(2004年、雑誌『Invitation』特別付録DVD)
  • 楳図かずお恐怖劇場 蟲たちの家(2005年)
  • LOFT ロフト(2006年)
  • (2007年) - 第63回ヴェネツィア国際映画祭 特別招待作品
  • トウキョウソナタ(2008年) - 第61回カンヌ国際映画祭 ある視点部門 審査委員(JURY)賞

テレビ

  • もだえ苦しむ活字中毒者 地獄の味噌蔵(1990年、関西テレビ「DRAMADAS」)
  • よろこびの渦巻(1992年、関西テレビ「DRAMADAS」)
  • 胸さわぎの15才(1993年、関西テレビ)第11・12話
  • ワタナベ(1993年、関西テレビ)第1・2・11・12話
  • 花子さん(1994年、関西テレビ「学校の怪談」第3回)
  • 音楽室の少女(1994年、関西テレビ「学校の怪談」第4回)
  • あの子はだあれ?(1994年、関西テレビ「学校の怪談」第11回)
  • 廃校奇譚(1997年、関西テレビ「学校の怪談f」)
  • 木霊(1998年、関西テレビ「学校の怪談G」)
  • 降霊 ウシロヲミルナ(1999年、関西テレビ)
  • 花子さん(2001年、関西テレビ「学校の怪談 物の怪スペシャル」)
  • タイムスリップ(2002年、関西テレビ「愛と不思議と恐怖の物語 ウルチョラ・セブン」)
  • 風の又三郎(2003年、NHK-BShi「朗読紀行 にっぽんの名作」)
  • 贖罪(2012年、WOWOW連続ドラマW」)

ミュージック・ビデオ

関連書籍

  • 映像のカリスマ-黒沢清映画史(1992年、フィルムアート社)
  • キュア(1997年、徳間文庫)
  • ロスト・イン・アメリカ(2000年、共著:青山真治・安井豊・阿部和重塩田明彦、編:稲川方人・樋口泰人、デジタルハリウッド出版局)
  • 回路(2001年、徳間書店)
  • 映画はおそろしい(2001年、青土社
  • 黒沢清の恐怖の映画史(2003年、共著:篠崎誠、青土社)
  • 回路(2003年、徳間文庫)
  • ユリイカ「黒沢清 特集」(2003年7月号、青土社) - 万田邦敏との対談、俳優インタビューなど
  • 映画の授業-映画美学校の教室から(2004年、青土社)
  • 黒沢清の映画術(2006年、新潮社)
  • 映像のカリスマ-増補改訂版(2006年、エクスナレッジ)
  • 映画のこわい話-黒沢清対談集(2007年、青土社)
  • 恐怖の対談-映画のもっとこわい話(2008年、青土社)
  • 東京から 現代アメリカ映画談義(2010年、共著:蓮實重彦、青土社)
  • 黒沢清、21世紀の映画を語る(2010年、boid

出演作品

  • お葬式(1984年) - 助監督
  • 星くず兄弟の伝説(1985年)[7] - サロン魚の目の客
  • 誘惑者(1989年) - 図書館員
  • 夜のストレンジャー 恐怖(1991年) - タクシーの客
  • ミカドロイド(1991年)
  • パチンカー奈美(1992年)
  • したくて、したくて、たまらない、女。(1995年) - ジャーナリスト
  • 亡霊学級(1996年)
  • WiLd LIFe(1997年)
  • ピエタ(1997年) - 地下酒場の警官
  • 血を吸う宇宙(2001年) - 新聞配達
  • 曖昧な未来、黒沢清(2002年) - 本人
  • 3on3 スリー・オン・スリー(2003年)
  • ピンクリボン(2004年) - 本人
  • 輪廻(2006年) - 大学教授
  • 映画監督って何だ!(2006年)
  • 殺しのはらわた(2007年)
  • オカルト(2008年) - 本人

脚注

  1. ^ 同ゼミに当時東大の学生だった宮台真司が出入りしており、当時から親交があった
  2. ^ 立教ヌーヴェルヴァーグ参照
  3. ^ 佐藤隆信「黒沢清の映画術」新潮社、2006年、51、69頁、サンスター VO5 for MEN
  4. ^ この頃より廃墟シーンやダンボール等の小道具が散見される。また『復讐/消えない傷痕』から、それまでの古典的なジャンル主義的スタイルから映画の構造を変えた(『恐怖の対談』)
  5. ^ 黒沢は、自著のなかで『CURE』に関する誤解として、元来『蛇…』『蜘蛛…』は、『復讐』2作の連作として構想しており、「シリーズ4作の間に挟まれたような形」で「スタッフもほぼ一緒」「劇場用映画をやるという意識は全く持っていなかった」と述べている
  6. ^ 黒沢は、影響を受けている監督としてアンゲロプロスヒッチコック小津スピルバーグらの名前も頻繁に挙げている
  7. ^ 俳優として出演した本作の現場で一瀬隆重と出会う

外部リンク