野島伸司
野島 伸司(のじま しんじ、1963年3月4日[1] - )は、日本のテレビドラマ、映画の脚本家。血液型A型[1]。近年、詩・作詞、絵本、小説、漫画の分野にも進出している。
略歴
新潟県出身[1]。中央大学1年在学中に渡米し、ロサンゼルスに滞在[1]。帰国後中退し、飲食店、肉体労働、テレビ局フロアディレクターなどのアルバイトを経験[1]。22,3歳の頃、青森の製缶工場でまるでロボットのように黙々と作業していた時の反動でアイデンティティーを確立したいと強く思い、帰りがけにたまたま見た雑誌に載っていたシナリオ募集に応募してみようと決意し、ワープロで初めて執筆した[2]。
1987年、脚本を学ぶため、シナリオ作家協会主催のシナリオ講座9期研修科を受講[3][4]。講師の一人であり、当時第一線で活躍していた脚本家・伴一彦に師事し[3]、『ハートカクテル・ドラマスペシャル』(日本テレビ系)などのプロットを手掛ける。
1988年5月、『時には母のない子のように』で第2回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞[2]し、メジャーデビュー。『君が嘘をついた』(1988年、フジテレビ系)で連続テレビドラマの脚本家デビュー。ドラマは平均視聴率17.3%を記録し、業界で注目を集める[1]。その後、フジテレビの名物ドラマプロデューサー、大多亮と二人三脚で、トレンディドラマの脚本を手がける。
1993年、『高校教師』(TBS系)ではゴールデンタイム枠でありながら男性教師と女子高生の純愛、レイプや近親相姦というショッキングで重いテーマを取り上げ、賛否両論を呼んだ[5]。
1994年、『家なき子』(日本テレビ系)に企画・原案で参加し、「同情するなら金をくれ!」という台詞が流行語となった。
2016年4月開校予定の俳優養成スクール「ポーラスター東京アカデミー」の総合監修に名を連ねる[6]。
作風・評価・社会的影響
デビュー時より山田太一のような社会派テレビドラマを書くことを希望しており、駆け出しの頃は、自身の希望とは異なるコメディやラブストーリーなど、いわゆる「トレンディドラマ」を多数ヒットさせた上で、フジテレビプロデューサーの大多亮に「社会派ドラマをやりたい」と申し入れたが、「(フジテレビの)局風に合わない」と却下されている。その後、『岸辺のアルバム』など山田作品を数多く制作した東京放送(現・TBSテレビ)に売り込みをかけ、その後長年にわたってコンビを組むことになるドラマプロデューサー伊藤一尋にアプローチ。ふぞろいシリーズなどのヒット作を生んだ金10枠を希望。野島が書くならと、伊藤Pや編成部も快諾した[要出典]。
1992年の『愛という名のもとに』を皮切りに、暴力、いじめ、障害者、自殺問題など、現代社会の暗部を独自の視点で鋭く切り取った作品を多く手がけはじめ[2]、1993年の『高校教師』がターニングポイントになったと回想しており「もし、『高校教師』が成功してなかったら、それまでのラブコメを作っていた自分に戻ったかもしれない。良くも悪くもあの作品で一変した」と述懐している[7]。しかし、1998年の『聖者の行進』(TBS系)では、暴力描写の多さに視聴者からの抗議が殺到し、スポンサーの三共がTBS金曜ドラマ枠のスポンサーを降りるという事態も発生した。他の作品もほとんどが20%以上[2]を記録する一方で、作中の表現が日本PTA全国協議会のアンケートでたびたび問題として取り上げられ、「子供に見せたくない番組」ワーストランキングに入ることも少なくなかった[8]。しかし本人は「若ければ若いほど、自分を固定していない、完成していない、いろいろなものに刺激を受けやすい。そこに向けて作るのが、物作りの基本的な考え[9]」と若者こそターゲットにしたいという持論を当時から持ち続けており[2]、批判を受けたり視聴率に伸び悩んだとしてもソフトとしてクオリティーが高く、後に忘れられない“いいドラマ”を残したいという姿勢を崩していない[9]。
タイトルは既存の作品から借用することが少なくない。デビュー作の『時には母のない子のように』はカルメン・マキのヒット曲(1969年発売、寺山修司作詞)と同題である。また、『人間失格』(1994年、TBS系)は太宰治の『人間失格』と完全に一致していたため、放送開始前に太宰家の遺族から苦情申し入れがあり、結果、中黒を挿入し一文追加した『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』と改題された(『たとえばぼくが死んだら』は森田童子の曲名)。
野島作品ではテーマ曲も効果的に使われており、ドラマ評論家の成馬零一は、1993年の『高校教師』(TBS系)の主題歌である森田童子の「ぼくたちの失敗」について、「歌詞が強烈で、作品全体の印象を支配しているといっても過言ではない」と評している[5]。懐メロも多く登場し[5]、1995年の『未成年』(TBS系)ではカーペンターズ、2001年の『ストロベリー・オンザ・ショートケーキ』(TBS系)ではABBAを起用し、それぞれのリバイバル・ブームのきっかけとなっている[7]。これは昔から主役とバーターで主題歌を決められることに嫌悪感があった野島が、要求を拒否して自分が良いと思ったテーマソングを使い続けてきた結果であり、やがて芸能事務所側もバーターを諦めるようになったという[7]。
また、野島が手掛ける作品では『高校教師』など数多くの作品で千住明が劇伴を担当している。野島が残酷ないじめを表現すれば千住が音楽で哀れみ、野島が濃いシーンを出せば千住が音楽をギターのメロディ1本で薄くするなどバランスをとってきた結果、周りからは“野島が父で千住が母”と表現されるようになったという。千住は「互いにペアとしてもいい表現ができる相手だったんだと思います。」とインタビューで述べている。[10]
人物
速筆。第1話が放送される前に全編を書き終えてしまうこともある。1993年版の『高校教師』では全編を書き終えた後にクランクインしている[要出典]。
「企画」として作品に関わる際は“わかりやすくシンプルに”ということを心がけるが、「脚本」という立場になるとそれは全く考えず、今自分が思っていることをそのまま出すことを最も重要視する[1]。そうなると狭い世界にのめりこんでしまうと自覚しているため、一歩下がって俯瞰し、主観と客観の両方で作品を見つめる方が良いと感じる場合には、「脚本監修」という立場をとるようにしているという[9]。
中国や韓国では『101回目のプロポーズ』[11]や『ストロベリー・オンザ・ショートケーキ』[12]がリメイクされており、野島自身も韓国に赴き、脚本家らを対象に講演会を行った[13]。
父親の影響で幼い頃から高校生まで空手をやっており、自らを「筋金入りの体育会系」と形容する[1]。
家族構成などのプライベートは一切公表していない。
作品
※は千住明劇伴音楽担当作品
脚本
単発ドラマ
- 時には母のない子のように(1988年11月20日、フジテレビ)
- フローズンナイト〜凍てつく真夏の夜〜 「私だけのあなた」(1989年8月12日、フジテレビ)※4話からなるオムニバスの一本。
- 世にも奇妙な物語 「死ぬほど好き」(1990年7月20日、日活、フジテレビ)※3話からなるオムニバスの一本。
- バレンタインに何かが起きる 「義理チョコに御用心」(別タイトル「恐怖の義理チョコ」?)(1991年2月11日、TBS)※3話からなるオムニバスの一本。
連続ドラマ
- 君が嘘をついた(1988年、フジテレビ)
- 愛しあってるかい!(1989年、フジテレビ)
- すてきな片想い(1990年、フジテレビ)
- 101回目のプロポーズ(1991年、フジテレビ)
- 愛という名のもとに(1992年、フジテレビ)
- 高校教師(1993年、TBS)※
- ひとつ屋根の下(1993年、フジテレビ)
- この世の果て(1994年、フジテレビ)
- 人間・失格〜たとえばぼくが死んだら(1994年、TBS)※
- 未成年(1995年、TBS)※
- ひとつ屋根の下2(1997年、フジテレビ)
- 聖者の行進(1998年、TBS)※
- 世紀末の詩(1998年、日本テレビ)[2]※
- リップスティック(1999年、フジテレビ)
- 美しい人(1999年、TBS)※
- ストロベリー・オンザ・ショートケーキ(2001年、TBS)※
- ゴールデンボウル(2002年、日本テレビ)
- 高校教師(2003年、TBS)[14]※
- プライド(2004年、フジテレビ)
- あいくるしい(2005年、TBS)※
- 薔薇のない花屋(2008年、フジテレビ)
- ラブシャッフル(2009年、TBS)
- GOLD(2010年、フジテレビ)※
- 理想の息子(2012年、日本テレビ)
- シニカレ(2012年、NOTTV)
- 49(2013年、日本テレビ)[15]
- プラトニック(2014年、NHK BSプレミアム)[16]
- お兄ちゃん、ガチャ(2015年、日本テレビ)[17]
- OUR HOUSE(2016年、フジテレビ)[18]
映画
- 君は僕をスキになる(1989年)
- スキ!(1990年)
- 高校教師 もうひとつの繭の物語(1993年) ※
- ヒーローインタビュー(1994年)
- 家なき子(劇場版)(1994年)…企画を担当 ※
脚本監修
- 明日、ママがいない(2014年、日本テレビ)[19]
- アルジャーノンに花束を(2015年、TBS)[20]
企画
原案
舞台
詩集
絵本
- コオロギくんの恋(ワニブックス、2000年)
- コオロギJr.の愛(ワニブックス、2001年)
- 「コンちゃんのなまか」(フジテレビ、脚本のみ担当。2007年)…未販売
小説(ノベライズは除く)
- スワンレイク(幻冬舎、2002年)
- ウサニ(幻冬舎、2003年)
- スコットランドヤード・ゲーム(小学館、2006年)
- スヌスムムリクの恋人(小学館、2008年)
漫画
- NOBELU -演-(原作担当、作画:吉田譲、週刊少年サンデー 2013年16号 - 2014年50号、小学館)[22]
シナリオ集
- ラブシャッフル(全2巻、小学館文庫、2009年)
作詞
- SMAP「らいおんハート」(『フードファイト』主題歌、2000年)[23]
- alan「明日への讃歌」(2007年)
- スノープリンス合唱団「スノープリンス」(2009年)
- Hey! Say! JUMP「SUPER DELICATE」(『理想の息子』主題歌、2012年)[24]
- 山下智久「ERO -2012 version-」(2012年)[25]
- SMAP「エンジェルはーと」(2012年)[23]
- Sexy Zone「A MY GIRL FRIEND」(『49』主題歌、2013年)[26]
- チキンバスケッツ「私のオキテ」(『49』挿入歌、2014年)
- コトリンゴ「誰か私を」(『明日、ママがいない』主題歌、2014年)[27]
脚注
- ^ a b c d e f g h i 野島伸司 (9 July 2000). "日曜日のヒーロー 第222回 野島伸司さん こだわりが創る野島伸司の世界" (Interview). Interviewed by 中山知子. 2000年8月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月8日閲覧。
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: 不明な引数|program=
は無視されます。 (説明) - ^ a b c d e f “脚本家・野島伸司、新作を語る 「愛」探す旅の物語 日テレ系「世紀末の詩」”. 読売新聞. (1998年10月8日). オリジナルの2001年3月9日時点におけるアーカイブ。 2015年5月5日閲覧。
- ^ a b “野島伸司さん総合監修 俳優養成 「ポーラスター東京アカデミー」来春開校 (2/2ページ)”. zakzak. (2015年12月8日) 2015年12月8日閲覧。
- ^ “学校概要”. 協同組合日本シナリオ作家協会. シナリオ作家協会. 2015年12月14日閲覧。
- ^ a b c 成馬零一 (2015年3月29日). “山下智久『アルジャーノンに花束を』で再注目 野島伸司ドラマの“劇中歌”を読み解く”. Real Sound. 2015年5月5日閲覧。
- ^ “野島伸司さん総合監修 俳優養成 「ポーラスター東京アカデミー」来春開校”. 産経ニュース. (2015年12月8日) 2015年12月8日閲覧。
- ^ a b c “野島伸司「ネットの評判」気にしない 『高校教師』から印象に残る俳優まで語る”. クランクイン!! (2015年5月23日). 2015年12月8日閲覧。
- ^ 他の脚本家の作品では、『14才の母』や『ライフ』などがランクインしている。
- ^ a b c “野島伸司:希代の脚本家が語る「いいドラマ」とは?理想と数字のはざまで10年苦悩”. MANTANMWEB. (2015年5月3日) 2015年5月5日閲覧。
- ^ 千住明 (16 April 2015). "活動30周年の千住明が語る 主題歌に対する意識の変化とは" (Interview). Interviewed by 若松正子. 2015年5月5日閲覧。
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: 不明な引数|program=
は無視されます。 (説明) - ^ “「101回目のプロポーズ」脚本家・野島伸司、リメイク版公開へ向け熱いメッセージ!”. CINEMA TRIBUNE (2013年10月18日). 2015年5月5日閲覧。
- ^ “野島伸司脚本のドラマ「S.O.S.」リメイク”. KBSWorld (2014年11月4日). 2015年5月5日閲覧。
- ^ “野島伸司さん ソウルで韓国脚本家に講演”. WoWKorea (2013年5月6日). 2015年5月5日閲覧。
- ^ “野島伸司脚本「高校教師」がブロードバンドで復活”. ITmedia(元記事:RBB TODAY) (2002年8月5日). 2015年5月5日閲覧。
- ^ “Sexy Zone佐藤勝利、野島伸司脚本ドラマで初主演”. 音楽ナタリー (2013年9月2日). 2015年5月5日閲覧。
- ^ “中山美穂&堂本剛、脚本家・野島伸司が描く究極の愛『プラトニック』5月25日スタート!”. テレビドガッチ (2014年5月21日). 2015年5月5日閲覧。
- ^ “ジャニーズJr.岸優太&鈴木梨央が連ドラ初主演 脚本は野島伸司氏”. ORICON STYLE (2014年11月12日). 2015年5月5日閲覧。
- ^ “芦田愛菜&シャーロットW主演!最強布陣で3年ぶり「日9」ドラマ復活”. SANSPO.COM (株式会社 産経デジタル). (2016年2月9日) 2016年2月9日閲覧。
- ^ “「明日ママ」波紋 ドラマの表現どこまで 日テレ放送継続 一部スポンサーはCM見合わせ(1/4ページ)”. SankeiBiz. (2014年1月26日) 2015年5月5日閲覧。
- ^ 岸田智 (2015年4月30日). “山下智久の演技は妖精感がある「アルジャーノン」野島伸司が絶賛”. シネマトゥデイ. 2015年5月5日閲覧。
- ^ “溝端淳平、二股交際は「したことない」 野島伸司氏脚本の「ウサニ」を主演”. TVfanWeb (2012年5月17日). 2015年5月5日閲覧。
- ^ “野島伸司原作の子役ドラマ「NOBELU」サンデーで新連載”. コミックナタリー (2013年3月19日). 2015年5月5日閲覧。
- ^ a b “SMAP、90万人ツアー日程&新作収録曲決定 野島伸司が12年ぶり歌詞提供”. ORICON STYLE (2012年7月14日). 2015年5月5日閲覧。
- ^ “Hey! Say! JUMP「理想の息子」主題歌は野島伸司作詞”. 音楽ナタリー (2012年1月16日). 2015年5月5日閲覧。
- ^ “山下智久の「エロ」にヒャダイン、野島伸司、渋谷慶一郎ら”. 音楽ナタリー (2012年6月8日). 2015年5月5日閲覧。
- ^ “SexyZone新曲ドラマ主題を歌野島伸司が作詞”. ドワンゴジェイピーnews (2013年9月16日). 2015年5月5日閲覧。
- ^ “コトリンゴ アルバム「birdcore!」発売決定、ドラマ「明日、ママがいない」主題歌収録”. MUSICMAN-NET (2014年4月15日). 2015年5月5日閲覧。