打率
打率(だりつ)は、野球において打者を評価する指標の一つ。過去の打撃成績に基づき、安打を打つ確からしさを定量化したものである。打率はチームメイトの能力からの独立性が高く、選手個人の能力によって再現可能であると考えられ、一般的に最も注目度が高い。打率を公式記録とするためには、規定打席以上の打席を必要とする。
概要
打率は打者の打数あたりの安打数を表し、以下の式で求められる。
- 打率=安打÷打数
1859年にイギリス人ジャーナリスト、ヘンリー・チャドウィックによって作り出された。チャドウィックは打者の攻撃力を測る指標を作るにあたってクリケットを参考にしたために、クリケットには存在しない四球の扱いに関して「四球は完全に投手のミスである」とし、公式には算入しなかった。チャドウィックは当初は四球を実際に失策としてスコアに記録していたが、周囲の反対から後に見直している。しかし、あくまで四球は打者とは無関係であると譲らなかった。
日本では慣例的に歩合(割・分・厘・毛・糸)で表すことが多く、百分率(パーセント)は用いない。上記の式で算出された数値の小数第4位を四捨五入して第3位までの値を打率として用いる。整数部分の0は省略することが多い。打率ランキング作成時に小数第3位まで同値の打率が2つ以上ある場合は小数第4位以下を比較する。
打率の高い選手は「確実性の高い打者」「シュア(確実)なバッター」などと言われる。相手投手のレベルにもよるが、規定打席以上で3割以上の打率であれば、おおむね優れた成績とされる。規定打席に到達した打者の中で打率1位の打者は、首位打者と呼ばれる。
打率の応用法として、得点圏打率、相手投手別打率、過去一週間の打率といった条件別打率もよく用いられる。しかし、これらの条件別打率には、打数が少なくなるため選手の実力とかけ離れた値が出やすくなる、条件分けの方法が適切でないと通算の打率との違いを見出しにくい、といった問題がある。
得点圏打率
得点圏打率(とくてんけんだりつ)とは、野球において二塁または三塁に走者がいる場合の打率のこと。二塁または三塁に走者がいる場合、単打1本で得点できることが多いため、二塁および三塁は得点圏と呼ばれる。得点圏打率が高い打者は一般に勝負強いという評価をされ、このような選手がいるチームは、少ない安打で効率良く得点できるとされる。シーズン得点圏打率の日本記録は、1985年に落合博満が記録した.492。
打率に関する記録
日本プロ野球
通算記録
記録は2011年シーズン終了時点。NPB公式記録は通算4000打数以上の選手が対象。
順位 | 名前 | 打席 | 打率 | 順位 | 名前 | 打席 | 打率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | レロン・リー | 左 | .320 | 11 | 中西太 | 右 | .307 |
2 | 若松勉 | 左 | .31918 | 12 | 長嶋茂雄 | 右 | .30528 |
3 | 張本勲 | 左 | .31915 | 13 | 篠塚和典 | 左 | .3043 |
4 | ブーマー・ウェルズ | 右 | .3174 | 14 | 松井秀喜 | 左 | .3040 |
5 | 川上哲治 | 左 | .3134 | 15 | アレックス・カブレラ | 右 | .30395 |
6 | 小笠原道大 | 左 | .3132 | 16 | 松井稼頭央 | 両 | .30390 |
7 | 与那嶺要 | 左 | .3110 | 17 | 鈴木尚典 | 左 | .3034 |
8 | 落合博満 | 右 | .3108 | 18 | アレックス・ラミレス | 右 | .3031 |
9 | 和田一浩 | 右 | .309 | 19 | 大下弘 | 左 | .3030 |
10 | レオン・リー | 右 | .30820 | 20 | 谷沢健一 | 左 | .3024 |
- 参考:4000打数以上以外を対象とした場合の通算打率1位
- 2000打数以上4000打数未満:イチロー(.353)
- 5000打数以上7000打数未満:若松勉
- 7000打数以上:張本勲
シーズン記録
順位 | 名前 | 所属 | 打席 | 打率 | 達成年 |
---|---|---|---|---|---|
1 | ランディ・バース | 阪神タイガース | 左 | .389 | 1986年 |
2 | イチロー | オリックス・ブルーウェーブ | 左 | .387 | 2000年 |
3 | イチロー | オリックス・ブルーウェーブ | 左 | .385 | 1994年 |
4 | 張本勲 | 東映フライヤーズ | 左 | .3834 | 1970年 |
5 | 大下弘 | 東急フライヤーズ | 左 | .3831 | 1951年 |
6 | ウォーレン・クロマティ | 読売ジャイアンツ | 左 | .3781 | 1989年 |
7 | 内川聖一 | 横浜ベイスターズ | 右 | .3780 | 2008年 |
8 | 川上哲治 | 読売ジャイアンツ | 左 | .377 | 1951年 |
9 | 中根之 | 名古屋軍 | 左 | .376 | 1936年秋 |
10 | ジャック・ブルーム | 近鉄バファローズ | 左 | .374 | 1962年 |
- シーズン最低打率は山田潔の.107(1938年春)
アメリカメジャーリーグ
通算記録
記録は2011年シーズン終了時点。通算3000打数以上の選手が対象。
順位 | 名前 | 打席 | 打率 | 順位 | 名前 | 打席 | 打率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | タイ・カッブ | 左 | .3664 | 11 | デーブ・オル | 右 | .3420 |
2 | ロジャース・ホーンスビー | 右 | .3585 | 12 | ハリー・ヘイルマン | 右 | .3416 |
3 | ジョー・ジャクソン | 左 | .3558 | 13 | ピート・ブラウニング | 右 | .3415 |
4 | レフティ・オドール | 左 | .3493 | 14 | ウィリー・キーラー | 左 | .3413 |
5 | エド・デラハンティ | 右 | .3459 | 15 | ビル・テリー | 左 | .3412 |
6 | トリス・スピーカー | 左 | .3447 | 16 | ジョージ・シスラー | 左 | .3402 |
7 | ビリー・ハミルトン | 左 | .34442 | 17 | ルー・ゲーリック | 左 | .3401 |
8 | テッド・ウィリアムズ | 左 | .34440 | 18 | ジェシー・バーケット | 左 | .33824 |
9 | ダン・ブローザーズ | 左 | .34212 | 19 | トニー・グウィン | 左 | .33818 |
10 | ベーブ・ルース | 左 | .34206 | 20 | ナップ・ラジョイ | 右 | .3381 |
シーズン記録
- ※1900年以降が対象
順位 | 名前 | 所属 | 打席 | 打率 | 達成年 |
---|---|---|---|---|---|
1 | ナップ・ラジョイ | フィラデルフィア・アスレチックス | 右 | .426 | 1901年[1] |
2 | ロジャース・ホーンズビー | セントルイス・カージナルス | 右 | .424 | 1924年 |
3 | タイ・カッブ | デトロイト・タイガース | 左 | .420 | 1911年 |
4 | ジョージ・シスラー | セントルイス・ブラウンズ | 左 | .420 | 1922年 |
5 | タイ・カッブ | デトロイト・タイガース | 左 | .409 | 1912年 |
6 | ジョー・ジャクソン | クリーブランド・ナップス | 左 | .408 | 1911年 |
7 | ジョージ・シスラー | セントルイス・ブラウンズ | 左 | .407 | 1920年 |
8 | テッド・ウィリアムズ | ボストン・レッドソックス | 左 | .406 | 1941年 |
9 | ハリー・ヘイルマン | デトロイト・タイガース | 右 | .403 | 1923年 |
10 | ロジャース・ホーンスビー | セントルイス・カージナルス | 右 | .401 | 1922年 |
- シーズン最低打率はビル・バーゲンの.139(1909年)
脚注
- ^ この年のアメリカンリーグは、ファウルをストライクにカウントされず、現在適用されているいくつかの規則を適用していない。