慶應義塾ニューヨーク学院

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慶應義塾ニューヨーク学院(けいおうぎじゅくニューヨークがくいん、英語名:Keio Academy of New York)は、米国ニューヨーク州ウェストチェスター郡にある学校である。設置者・運営者は、日本の学校法人慶應義塾

設立は1990年平成2年)で、第9学年から第12学年までの男女共学の4年制高等学校となっている。慶應義塾の一貫教育校のひとつとして、入学者のなかには日本の慶應義塾各校からの内部進学者もいる。

概要

バブル経済下でニューヨーク周辺での在留邦人が増加した1990年平成2年)、ニューヨーク市北部近郊にあり、日本人駐在員やその家族の居住が多いことでも知られる、ウェストチェスター郡に開校した。開校当時には、来たるべき21世紀の国際社会においてリーダーシップを発揮できる人材の育成を目標とするとされ、バイリンガル、バイカルチュラルな教育を標榜している。

学校は米国ニューヨーク州教育委員会より正式な私立高等学校としての認可を受けているとともに、日本の文部科学大臣により高等学校相当の課程を有する在外教育施設としても指定されている。そのため、この学校の卒業後には日米両国の高等学校卒業学歴を取得できる。

ニューヨーク校の所在地、ウエストチェスター郡 パーチェスにあるペプシコ本社

学校のキャンパスは、約110,000m²の面積を有し、周囲には野生のリススカンク鹿などが生息する豊かな自然が残されている。

入学・進路

出願資格

2000年平成12年)以前は日本国外に在留する邦人の子女、海外留学者、または外国人に限って出願資格を認めていた。しかしながら止まらない志願者減少の傾向を受けて、現在では国籍、居住地に関係なく所定の学年を修了していれば、出願を認められるようになっている。

入学試験

入学試験は、日本語、英語、数学の筆記試験および面接によって選抜される一般入試と、書類、日本語と英語の小論文をもとに選抜されるAO入試の2種類がある。論文試験と面接に関しては、日本語と英語の2言語によって行なわれることになる。

進路

卒業生は原則として、学院長の推薦により全員が慶應義塾大学に入学することができる。進学を希望する学部の選択は自由であるが、学院在学中の成績、出席状況等を考慮の上で決定される。また、理工学部、医学部への進学を希望する場合には、予め第12学年時に理数系のコースを履修する必要がある。

卒業が6月のため、9月入学を実施している総合政策学部、環境情報学部、法学部への進学者は、9月に大学に入学することができる。それ以外の7学部への進学者は翌年4月の入学まで、学部研修生として、日吉キャンパスで特別に開講される授業を履修することができる。

多くの卒業生は慶應義塾大学に進学するが、推薦を辞退して米国内の大学に進学する者もいる。過去の進学先には、シカゴ美術研究所ジュリアード音楽院、ニューヨーク州立大学、ニューヨーク大学バークリー音楽大学ブラウン大学などがある。

学校生活

生徒・クラス編成

男女共学。第9学年は60人、第10学年から第12学年はそれぞれ120人、合計420人の生徒が在学する。クラスは、第9学年がK、E組の2クラス、第10学年から第12学年はK、E、I、O組の4クラスから編成される。

生徒の入学前の居住地は、米国をはじめ、カナダメキシコキューバヴェネズエラアルゼンチンブラジル英国フランスドイツイタリアオランダルクセンブルクオーストラリアニュージーランドパキスタン中国インドネシアマレーシアタイグァテマラフィリピン南アフリカ韓国日本など多岐にわたるが、国籍はほとんどが日本である。

学期

米国の学校同様、9月上旬に新学期が開始し、6月上旬に終了する2学期制である(前期: 9月〜翌1月、後期: 2月〜6月)。年末年始に約2週間の冬期休暇、4月中旬に10日間程度の春期休暇がある。

新入生を対象に、学院独特のカリキュラムや、寮生活に慣れるための期間として、入学前の8月に、約10日間の日程でプリエントリーと称するプログラムが組まれている。

カリキュラム

カリキュラムは日米両国の学習指導要綱に基づいており、授業で用いられる言語は、30%が日本語、70%が英語である。また、通常の教科とは別に、英語もしくは日本語が苦手な生徒を対象に、ESL (English as a Second Language) およびJSL (Japanese as a Second Language) と呼ばれる語学補習授業が設けられている。また、12年生で理系コースを取ると日本史だけが日本語という英語漬けの生活になる。

校則

校則はアメリカの学校に近く、日本の学校より若干緩い傾向があった。制服はあるが、水曜日と式典等のある日以外は基本的に私服で登校しても良い。その場合にも服装規則として、Tシャツタンクトップのみの着用、サンダルやジャージは禁止されている。体育の授業後に体育着であるPEショーツやPEパーカーをその後の授業でも着る学生が増えたため、新たに禁止になった。 2009年5月よりジーンズが着用可能になった。クロックスはかかとの留め具をつければ着用可能。

愛唱歌(校歌)

学院設立15周年を記念して、塾歌とは別にニューヨーク校独自の校歌を制作することとなり、シンガーソングライターの小田和正に依頼したところ、小田自身が作詞・作曲した私立横浜創学館高等学校(横浜市金沢区)の愛唱歌である「遥かな想い」を使用するように返答があり、塾生などが中心となり英訳し、ニューヨーク校の愛唱歌に選ばれた。

施設

キャンパスのほぼ中央部に教室、自然科学系の教室群、音楽室、美術室、コンピュータ室、視聴覚室、レクチャーホール、図書館、カウンセリング室、職員室、事務室等を擁する3階建ての校舎が建ち、その東側に体育館が隣接する。グラウンド全般は敷地の東側に位置する。北端に5棟の寮が、南端に2棟の寮が建っており、北側の寮には寮長の居が、南側の寮には保健室が併設されている。北側の寮と校舎の間に、2基の噴水が備わる広い池を望む形で松下ホールと呼ばれるカフェテリアがある。

課外活動

敷地内には、サッカーグラウンド、テニスコート、体育館が併設され、15を超える運動部があり、生徒の大半がいずれかに所属している。生徒会や寮委員会、文化祭実行委員会をはじめとした多数の委員会や、福澤諭吉研究会、ヴォランティア部、茶道部など10以上のクラブ活動も盛んである。主にサッカー部が強豪として知られており、ニューヨーク州のState Championに過去4度輝いている。特に近年の活躍はめざましく、2001年、2002年の連覇をはさみ2004年にも州大会優勝、2005年には惜敗したものの準優勝を成し遂げている。蹴球部は、嘗て全米8位となり、オールアメリカンのメンバーとなる選手も輩出しており、慶應義塾大学蹴球部へ進む者も多い。最近では野球部の活躍もニューヨーク州で注目されるようになった。2007年には慶應NY創立史上初となるニューヨーク州ステートチャンピオンシップに出場し、準優勝に輝いた。 祥風祭(文化祭)、体育祭、美術館博物館での課外授業、音楽授業の延長である秋春のコンサート、ブロードウェイでのミュージカル鑑賞、スキー合宿、ショッピングモールへの買い物ツアー、クリスマス・バレンタイン・卒業パーティー、ロックバンドコンサート、その他多数のイベントが、学院や寮、放送部、委員会などによって主催される。特に、パーティーや体育祭などは生徒を主体として作り上げられていく。

キャンパス内に350人が生活できる男女別の7棟の寮があり、生徒の大部分が親元を離れ寝食を共にしている。各部屋を2人で共有する。寮内には共用バスルーム、コインランドリー、ウェイトトレーニングルーム、ラウンジ、ソフトドリンクや軽食の自動販売機がある。各棟にはスーパーバイザーが1名ずつ置かれている。食事は松下ホールで摂るが、ピザや中華料理などの出前をとることもできる。

平日は原則としてキャンパス外への外出は禁止されているが、週末は学院が認める近郊の市街地に自由に出かけることができる。上級生は保護者の許可を得た上で、ニューヨークシティ(マンハッタン)にまで足を伸ばすことができる。

なお、自宅通学が可能で、入寮を希望しない1割程度の生徒は学院が手配するスクールバスにて通学する。

出身著名人

外部リンク