公認心理師

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公認心理師
基本情報
職域医療、保健

公認心理師(こうにんしんりし)とは、第186回通常国会において衆議院議員提出法律案第43号として提出された、心理職国家資格の名称である[1][2]第187回臨時国会において継続審議を行うため、衆議院での閉会中審査が実施されたが、同国会会期中における衆議院解散に伴って廃案となった[3][4][5]第189回通常国会で可決成立。なお、資格創設以降は、公認心理師の有資格者以外は「心理」という文字の使用禁止が規定されており、「公認心理」は誤記である[6]

かつての日本では、心理士心理カウンセラー(相談員)、心理セラピスト(療法士)などの心理職には国家資格が存在しない一方、民間の心理学関連資格は多数存在する。しかし欧米諸国は元より、中国・韓国にも心理職国家資格が既に整備されている現状、など、国際的観点からも制度の遅れがあることに鑑み、日本における心理職国家資格の創設必要性は度々取り沙汰されてきた[7]

この中で「公認心理師」は、現行の「臨床心理士」と同様、教育医療保健福祉司法矯正労働産業学術研究など非常に多岐にわたる活動領域を想定しており[6][8]、特定の分野に限定されない「汎用性」「領域横断性」を特長とする心理職国家資格を旨とするものである[6]。そのため、文部科学省厚生労働省による共管とされ、主務大臣文部科学大臣厚生労働大臣と規定されている[6]

また、公認心理師が行う心理行為としては、「心理に関する支援を要する者の心理状態の観察・分析」「心理に関する支援を要する者との心理相談による助言・指導」「心理に関する支援を要する者の関係者との心理相談による助言・指導」「メンタルヘルスの知識普及のための教育・情報提供」の4種が掲げられており[6]、この点についても、現行の臨床心理士の専門業務(「臨床心理査定」「臨床心理面接」「臨床心理学的地域援助」「臨床心理学調査・研究」)の規定と合致している[6][9]

歴史

  • 2005年(平成17年)
  • 2006年(平成18年)
    • 精神科医系団体(「精神科七者懇談会」=日本精神神経学会、日本精神科病院協会、日本精神神経科診療所協会など)から再度の反対声明が発表[10][11]
  • 2008年(平成20年)
  • 2009年(平成21年)
    • 臨床心理士推進側と医療心理師推進側との間を取り持つ形で日本心理学諸学会連合が協議の席につき、以降はこの三団体で協議を再開・継続(三団体会談[10][11]
  • 2010年(平成22年)
    • 三団体会談において、臨床心理士と医療心理師を1つの法案内に併記する「2資格1法案」から、統合的な心理職国家資格を新しく創設する「1資格1法案」へと方針転換[10][11]
  • 2011年(平成23年)
    • 三団体会談において、「1資格1法案」についての共同見解を取りまとめて心理職国家資格創設の「要望書」として発表し、各関係機関への発信とロビー活動を開始[10][11]
    • この要望書では、新しい心理職国家資格と医師との関係性について、「各分野共通で医師とは連携」「医療機関内のみ医師からの指示」と規定[10][11]
  • 2012年(平成24年)
  • 2013年(平成25年)
    • 三団体関係者を中心に、心理職国家資格創設後の試験・登録機関指定を目的として、「一般財団法人 日本心理研修センター」を設立[12][13]
    • 精神科医系団体(精神科七者懇談会)から「心理職の国家資格化に関する提言」として、「各分野共通で医師とは連携」「医療分野(※医療機関内ではない)のみ医師からの指示」を提案する見解が発表[10][11]
  • 2014年(平成26年)
  • 4月
    • 議員連盟衆議院法制局文部科学省厚生労働省らにより、「公認心理師法案要綱骨子(案)」の三団体に対する説明会が衆議院議員会館にて開催(説明者:山下貴司[10][11]
    • 自由民主党「心理職の国家資格化を推進する議員連盟」第4回総会において、「公認心理師法案要綱骨子(案)」が発表[10][11]
    • この骨子(案)では、「医療分野以外の全分野でも医師からの指示を受ける」と記載されており、三団体の「要望書(2011年版)」とも精神科医系団体の「心理職の国家資格化に関する提言(2013年版)」とも食い違いがあった[10][11]
    • そのため三団体から改めて、「各分野共通で医師とは連携」「医療機関内のみ医師からの指示」と記載を変更する要望書を、河村建夫、山下貴司、文部科学省、厚生労働省らに提出[10][11]
    • 加えて、養成課程に関する内容についても、現行の臨床心理士や欧米諸国と比較してできる限り遜色のないように、実務経験の必要期間を養成大学院の所要期間よりも長く規定することも要望[10][11]
  • 5月
    • 精神科医系団体(精神科七者懇談会)から「心理職の国家資格化に関する要望書」として、「医療分野以外の全分野でも医師からの指示を受ける」と記載された骨子(案)に賛成する見解が発表[10][11]
    • この見解の中での精神科七者懇談会の主張は、これまで同懇談会が発表していた「心理職の国家資格化に関する提言(2013年版)」における主張とは文脈が異なっており、骨子(案)では医師からの指示を受ける範囲を医療機関の外部にまで拡大しようとする記載になっていることについて、異存なしとして賛成を表明している[10][11]
  • 6月
    • 各党の文部科学・厚生労働部会等において、公認心理師法案の審査が実施[10][11]
    • 超党派の公認心理師法案の実務者協議が開催[10][11]
    • これらの審査や協議の中で、医師からの指示を受ける範囲を医療機関の外部にまで拡大しようとする記載になっていることについて、反対意見や修正要求が出るとともに、「議論を議事録に残すべき」との指摘[10][11]
    • 与党において、医療機関内や医療分野だけでなく、あらゆる分野にまで医師からの指示の影響が拡がるとする場合、学校内や企業内などにおける公認心理師の活動や対象者の利益に支障が生じることがないように、文部科学省・厚生労働省からの省令で担保することが協議[10][11]
    • 第186回通常国会において、衆議院議員提出法律案第43号として公認心理師法案が提出(提出者:河村建夫、鴨下一郎、山下貴司、古屋範子稲津久柏倉祐司井坂信彦青木愛吉川元[1]
    • 衆議院文部科学委員会において、公認心理師法案の趣旨説明が実施(委員長:小渕優子、説明者:山下貴司)[2]
  • 6月以降
  • 11月
  • 2015年(平成27年)
  • 9月
    • 9月9日、第189回国会において、「公認心理師法」が参院本会議で可決、成立 (2017年度施行の見込み)[14]

内容

第一八六回 衆第四三号 公認心理師法案[6]

  • 目次
    • 第一章 総則(第一条~第三条)
    • 第二章 試験(第四条~第二十七条)
    • 第三章 登録(第二十八条~第三十九条)
    • 第四章 義務等(第四十条~第四十五条)
    • 第五章 罰則(第四十六条~第五十条)
    • 附則

臨床心理士との対比

上述のように公認心理師は、現行の臨床心理士と同様の特性を帯びる一方で、いくつかの点で臨床心理士との規定の相違が認められる。ついては、下記に公認心理師、臨床心理士双方の主な規定をまとめ、その同異を示すとともに、メンタルケア先進国である米国臨床心理士[15][16]を比較対照群として併記する[6]

日本の旗 公認心理師 臨床心理士 アメリカ合衆国の旗 米国臨床心理士
資格区分 国家資格[6] 民間資格
※認定機関の日本臨床心理士資格認定協会は、
学校教育法第109条第3項
ならびに学校教育法施行令第40条に基づく
臨床心理専門職大学院認証評価機関[17]
州立資格[18]
資格取得のための
学歴制限
大学の学部で
心理学などの必要科目を修めて卒業した者[6]
臨床心理学修士号取得者、
または医師免許取得者[19]
臨床心理学系博士号取得者[18][20]
養成課程 養成大学院、
または養成学部+実務経験[6]
専門職大学院などの
臨床心理士指定大学院[19]
American Psychological Association:APA
アメリカ心理学会)認証大学院[18][20]
養成課程の
最短所要期間
4年間+α(実務経験の必要期間)[6] 7年間[19] 9年間[18][21]
医師との関係性 医療機関内や医療分野における活動だけでなく、
学校内や企業内なども含むあらゆる分野の活動でも
医師からの「指示」を受ける[6]
※「指導」ではなく、より強制力[22][23]のある「指示」を受ける[6]
心理職としての独立性があり
医師からは「指示」も「指導」も受けないが、
必要に応じて医師との「連携」や「協力」は行う[24][25]
心理職としての独立性があり
医師からは「指示」も「指導」も受けないが、
必要に応じて医師との「連携」や「協力」は行う[21][24][25]
薬剤の処方行為の有無 [6] [9] [21]
※州によって規定が異なり、
ニューメキシコ州(2002年可決)、
ルイジアナ州(2004年可決)、
イリノイ州(2014年6月可決)において認可[26]
免許更新の義務の有無 [6] [19]
※満5年ごとの更新が義務づけ
[18][21]
※州によって更新期間が異なる
平均的・標準的な収入 ※資格創設前のため未調査 年収300万円台[27]
法務省文部科学省などの所管機関では
平均時間給は約5000円前後の水準[28][29][30]だが、
非常勤の就業形態が合計60%以上で、
年収換算の分布は300万円台が最多[27]
※2007年調査、2009年報告
年収87,015ドル[31]
(調査年平均為替レート換算[32]:約814万円)
※2009年調査、2010年報告
主務官庁
所管省庁
文部科学省・厚生労働省共管[6] 文部科学省[17] (State) Board of Psychology[18][21]

現状と問題点

医師との関係性をめぐる問題

(連携等)
第四十二条 公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない
2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない

—第四章 義務等(公認心理師法案より)

上述のように公認心理師法案は、2014年秋の第187回臨時国会において継続審議を行うため、衆議院での閉会中審査が実施された[3]。審議においてはいくつかの論点がある中で、法案提出の際、各党の文部科学・厚生労働部会等での法案審査や、超党派の法案実務者協議の中で特に反対意見や修正要求が具体的に指摘されたのが、法案の第四十二条「連携等」における「医師との関係性」に関する記載についてである。この「医師との関係性」に関する記載については、各関係機関が主張を見解や声明としてリリースしているほか、SNS上においても活発な議論が行われているため、下記にそれらをめぐる現状と問題点を整理する[10][11][24][25][33]

保留
基本的立場 医師からの指示を受ける範囲を
医療機関の外部にまで拡大しようとする記載になっていることについて、
正当性を吟味する[10][11][24][25][33]
主な関係機関 第186回通常国会:衆議院文部科学委員会(委員長:小渕優子、説明者:山下貴司
第186回通常国会:公認心理師法案提出者(提出者:河村建夫鴨下一郎、山下貴司、古屋範子稲津久柏倉祐司井坂信彦青木愛吉川元
超党派の公認心理師法案実務者協議
各党の文部科学・厚生労働部会等での公認心理師法案審査
「心理職の国家資格化を推進する議員連盟(会長:河村建夫)」[10][11][24][25][33]




賛成(法案文の現状維持) 反対(法案文の記載変更)
基本的立場 医療分野以外の
全分野でも医師からの指示を受ける[10][11][24][25][33]
各分野共通で医師とは連携
医療機関内のみ医師からの指示[10][11][24][25][33]
主な関係機関 衆議院法制局
厚生労働省
精神科医系団体(精神科七者懇談会[10][11][24][25][33]
三団体
日本臨床心理士資格認定協会
日本臨床心理士養成大学院協議会
都道府県臨床心理士会[10][11][24][25][33]
主な論点 他職種(医療系)の
法的根拠との整合性論
  • 公認心理師の法案文における医師からの指示と、
    他職種の法文における医師からの指示とは意味合いが異なっており、
    「診療補助職」として指示を規定するものではないので、問題はない
  • 三団体が要望している
    「医療機関内のみ医師からの指示」という記載に関しては、
    医療機関などの場所ごとに指示の要不要を規定する「場の限定」は、
    日本の法制的に不可能なので、
    医療分野以外の全分野でも医師からの指示を受けなければならない
    [10][11][24][25][33]
  • 保健師助産師看護師理学療法士作業療法士言語聴覚士
    救急救命士などの法文で医師からの指示が規定されているのは、
    診療補助職」と位置付けられているためであるが、
    公認心理師は診療補助職ではないため、指示を規定しようとする正当性がない
  • 公認心理師と他職種の法文(法案文)において、
    指示」という言葉は同一であるにもかかわらず、意味だけは異なるというのは、
    法的根拠としての整合性がない
  • 傷病者精神障害者を基本的な対象者としている
    精神保健福祉士管理栄養士の法文であっても、
    強制力のある指示ではなく、
    治療方針を情報提供する形としての指導が規定されているので、
    公認心理師の法案文において指示を規定しようとするのは矛盾している
  • 社会福祉士も公認心理師と同様に汎用性があり、
    多岐にわたる活動領域(医療分野を含む)を持っているが、
    法文においては他職種(医師を含む)との連携は規定されているが、
    医師からの指導指示も一切規定されていないため、
    法制的に「場の限定」ができないのであれば、
    公認心理師も同様の特性を持つ社会福祉士のように、
    「各分野共通で他職種(医師を含む)とは連携」と規定するのが整合的である
    [10][11][24][25][33]
対象者(患者)の保護論
  • 医療機関を受診中などの心理状態が深刻な対象者(患者)に対して、
    公認心理師が主治医の治療方針に反する心理行為を行って
    心理状態を悪化させることがないように、
    医療分野以外の全分野でも医師からの指示を受けなければならない
    [10][11][24][25][33]
  • 対象者(患者)の保護を第一に考えるのであれば、
    高度な専門性と倫理観を教育・訓練するため、
    現行の臨床心理士米国臨床心理士と同等に
    養成課程を大学院修了レベルに統一設定することが必要であるが、
    精神科医系団体がこれまでの歴史において要望してきたのは、
    現行よりも低い学部卒業レベルの心理職国家資格であるため、
    対象者(患者)の保護論として一貫性がない
  • 学部卒業で心理職現任者となっている者については、
    一定期間は救済する形の経過措置を別途設ければ良いので、
    現行の臨床心理士や米国臨床心理士と同等に
    養成課程を大学院修了レベルに統一設定することは現実的に可能である
  • すなわち、入口のハードルを下げて中で縛りをかけるのではなく、
    入口のハードルを上げて中で裁量を持たせた方が、
    高度に専門的な人材を養成でき、なおかつ各現場に即した活動ができるため、
    対象者(患者)の保護に効果的である
    [10][11][24][25][33]
  • また、医師の指示は民間資格だけを持つ心理の専門家にはかからないこと
    から、実効性がない。患者がより能力、経験の不十分な心理の専門家にかかる
    可能性が高まることから、悪影響が懸念される
心理学・心理行為と
医学・医行為との同異論
  • 心理行為は医行為に含まれる、
    または、心理行為は医行為と区別できない業務が多いため、
    医療分野以外の全分野でも医師からの指示を受けなければならない
    ※精神科医系団体(精神科七者懇談会)の主張
    [10][11][24][25][33]
医師からの指示に対する
省令などでの制限担保論
  • 法文において、医療分野以外の
    全分野でも医師からの指示を受けると記載されていたとしても、
    実際の運用や各臨床現場での判断は省令なども基準にするため、
    省令などで医師からの指示の影響の制限を担保すれば、問題はない
    [10][11][24][25][33]
  • 法令には「優劣関係」の概念によって効力の有無が規定されており、
    優劣関係では、「法文(法律)政令省令」と位置付けられているため、
    下位の省令などによって上位の法文(法律)の制限を図るのは妥当性がない
  • 法文(法律)において強制力のある指示を規定する一方で、
    省令などによって指示の制限や例外などを担保すると、
    かえって各臨床現場が混乱をきたす恐れがあるため、現実的ではない
  • 法文(法律)では大枠として
    「各分野共通で他職種(医師を含む)とは連携」を規定し、
    運用上の留意事項がある事例(症例)に関してのみ、
    省令などにおいて特に取り上げて詳細を規定するのが現実的である
    [10][11][24][25][33]
医療分野の事情優先論
  • 医療分野においては、「診療報酬」という特殊なシステムがあり、
    その診療報酬システム上に国家資格として組み込まれることが
    医療分野での活動においては不可欠であるので、
    医療分野以外の全分野での医師からの指示を受け入れてでも
    心理職国家資格の創設を優先しなければならない
  • 国家資格として診療報酬上に組み込まれれば、
    対象者(患者)は心理行為による治療を「保険診療」として利用できるようになり、
    医療機関側にとっても保険診療の算定による採算性が生まれるため、
    医療分野の心理職の待遇改善や雇用促進につながることが期待でき、
    結果的に、対象者(患者)、医療機関、心理職の全者にメリットとなるので、
    医療分野以外の全分野での医師からの指示を受け入れてでも
    心理職国家資格の創設を優先しなければならない
  • 心理職国家資格創設によって、
    医療分野の診療報酬上の運用だけでなく、
    様々な分野において必置資格や配置基準などに規定される可能性があり、
    雇用の受け皿の拡大が期待できるので、
    医療分野以外の全分野での医師からの指示を受け入れてでも
    心理職国家資格の創設を優先しなければならない
    [10][11][24][25][33]
  • 現在の診療報酬上には「臨床心理技術者等」という規定があり、
    特定の精神(心理)療法心理検査の算定基準になっているが、
    多くの臨床現場で実際に臨床心理技術者等として活用されているのは
    現行の臨床心理士であるため、
    実質的には、既に診療報酬上の運用自体は行われている
  • 確かに心理職国家資格創設によって、
    現在の診療報酬上の「臨床心理技術者等」よりも
    算定基準の規定を拡大できる可能性はあるが、
    現実の手続きとしては、様々な利害関係が絡んだ政治的な交渉の場である
    中央社会保険医療協議会での審議を経て、
    心理職に有利な形での診療報酬改訂を勝ち取る必要があり、
    その結果として、対象者(患者)には保険診療の恩恵がもたらされ、
    医療機関側にとっては採算性が向上する、というステップを要するので、
    心理職国家資格創設という段階的な事柄と、
    待遇改善や雇用促進などの実利実益を直結させるのは早計である
  • 一方で、公認心理師の候補生の養成課程は
    現行の臨床心理士よりも低い学部卒業レベルを含むため、
    大学院修了レベルのみの給与体系よりも低賃金化する懸念がある上に、
    臨床心理士以外の心理職現任者への経過措置適用も並行して行われるため、
    新規的・継続的に供給され(続け)る心理職の人数は
    現行の臨床心理士のみの場合よりもさらに増大するのは確実であるのに対し、
    需要側である雇用の受け皿の拡大は確定的ではなく流動的なので、
    確率的には、医療分野の心理職の待遇改善や雇用促進よりも、
    むしろ全分野の心理職の雇用条件が悪化する恐れの方が高いにもかかわらず、
    その上で医療分野以外の全分野での医師からの指示まで受け入れるとすれば、
    公認心理師の創設においては、デメリットを上回るメリットの想定が困難である
  • 例えば現行の臨床心理士には、
    教育医療保健福祉司法矯正労働産業学術研究など
    非常に多岐にわたる活動領域がある中で、
    医療・保健分野に勤務している者は28.3%との調査報告があるが、
    約28%の一分野の特殊な事情を優先して、
    残りの70%以上にまで影響を及ぼすような条件を看過することは不自然であり、
    多岐にわたる心理職国家資格の活動を発展・深化させることとも
    医療分野以外で関わる対象者の利益に直結することとも確実視できないので、
    法案文の記載変更を要望するのには正当性がある
    [10][11][24][25][33]
心理職国家資格の
創設優先論
  • 心理職国家資格創設をめぐっては、
    心理学界内部や、医学界との間などに見解の相違があり、
    これまでの歴史において数々の紆余曲折を経て
    ようやく今回は法案提出にまでこぎ着けた経緯があるので、
    医療分野以外の全分野での医師からの指示を受け入れてでも
    心理職国家資格の創設を優先しなければならない
  • 2005年に頓挫した「臨床心理士及び医療心理師法案」から
    今回提出した公認心理師法案まで10年を費やしたことを踏まえると、
    もしも今回成立しなければ、良くて次の機会がまた10年後にやってくるか、
    悪ければ金輪際実現不可能になるかもしれないので、
    医療分野以外の全分野での医師からの指示を受け入れてでも
    心理職国家資格の創設を優先しなければならない
  • もしも現状の法案文にある、医療分野以外の
    全分野でも医師からの指示を受ける記載について頑なに反対し、
    「各分野共通で医師とは連携」、
    「医療機関内のみ医師からの指示」との記載変更を要望し続けると、
    公認心理師法案を成立させまいとする妨害行為と受け取られかねず、
    心理学界は心理職国家資格の創設を本当に望んでいるのかという
    疑念や不信感を議員や官僚に持たれる恐れがあるので、
    医療分野以外の全分野での医師からの指示を受け入れてでも
    心理職国家資格の創設を優先しなければならない
  • 法案の附則第四条には、
    法律施行5年経過後の再検討が規定されており、
    その時点で具体的な支障が生じていれば改めて要望を行えば良いので、
    現段階では、医療分野以外の全分野での医師からの指示を受け入れてでも
    心理職国家資格の創設を優先しなければならない
    [10][11][24][25][33]
  • 確かに心理職国家資格創設をめぐっては長らく難航したが、
    そのような中でも現行の臨床心理士は支援活動を蓄積させてきたことで、
    内閣府法務省外務省文部科学省厚生労働省
    国土交通省防衛省警察庁海上保安庁地方自治体
    およびそれらの所管機関をはじめとして
    資格要件化や公的な活用が進んでいる現実があり、
    それらを踏まえた創設必要性を議員官僚とも共有しているので、
    拙速な妥協は、心理職国家資格創設にとって建設的ではない
  • 「医療分野以外の全分野でも医師からの指示を受ける」という記載は、
    そもそもとして、三団体の「要望書(2011年版)」とも
    精神科医系団体の「心理職の国家資格化に関する提言(2013年版)」とも
    食い違いがあり、どの関係機関の要望にもないものが突然に、
    2014年に入ってから公認心理師法案要綱骨子(案)として出てきているので、
    段取りとして筋が通っておらず、受け入れられる理由がない
  • 法律施行5年経過後の再検討が規定されているのであれば、
    現段階で「各分野共通で医師とは連携」、
    「医療機関内のみ医師からの指示」と規定しておき、
    5年後の時点で具体的な支障が生じていれば
    医師からの指示の範囲も含めて再検討するという順番もあり得るので、
    現段階では医療分野以外の全分野での医師からの指示を受け入れてでも
    心理職国家資格の創設を優先しなければならないというのは、一方的である
    [10][11][24][25][33]
心理職国家資格の
必要性認識の有無
[10][11][24][25][33]

脚注

  1. ^ a b 衆議院 (2014年). “公認心理師法案 - 議案審議経過情報”. 2014年7月4日閲覧。
  2. ^ a b 衆議院 (2014年). “文部科学委員会 - 会議録議事情報 - 第24号”. 2014年7月4日閲覧。
  3. ^ a b c 衆議院 (2014年). “文部科学委員会 - 会議録議事情報 - 第25号”. 2014年7月4日閲覧。
  4. ^ a b 衆議院 (2014年). “国会関係資料 - 国会会期一覧”. 2014年11月21日閲覧。
  5. ^ a b 衆議院 (2014年). “立法情報 - 制定法律情報 - 第187回国会 制定法律の一覧”. 2014年11月21日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 衆議院 (2014年). “公認心理師法案 - 議案本文情報”. 2014年7月4日閲覧。
  7. ^ 全国保健・医療・福祉心理職能協会 (2005年). “国家資格化の必要性”. 2014年7月4日閲覧。
  8. ^ 日本臨床心理士資格認定協会 (2014年). “臨床心理士の職域”. 2014年7月4日閲覧。
  9. ^ a b 日本臨床心理士資格認定協会 (2014年). “臨床心理士の専門業務”. 2014年7月4日閲覧。
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関連項目

外部リンク