ラオスの鉄道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。101.128.198.136 (会話) による 2022年8月28日 (日) 10:48個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (ラオス国内に Laos-China Railway Co., Ltd. があるため。)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

ラオス
ラオス・中国鉄道の車両
運営
国営鉄道 ラオス鉄道公社
施設保有機構 ラオス鉄道公社
ラオス・中国鉄道
主要事業者 ラオス・中国鉄道
タイ国有鉄道
統計
距離
総延長 425.9 km
複線距離 0 km
電化距離 422.4 km
軌間
主な軌間 1,435 mm (4 ft 8+12 in)
ラオス・中国鉄道 1,435 mm (4 ft 8+12 in)
ラオス鉄道公社 1,000 mm (3 ft 3+38 in)
電化方式
交流電化 422.4km
非電化 3.5km
設備
トンネル数 76
橋梁数 155
駅数 21
テンプレートを表示

ラオスの鉄道(ラオスのてつどう)では、ラオスにおける鉄道について記す。

概要

2021年12月現在のラオスの鉄道は、タイ王国に接続するラオス鉄道公社(Lao Railway Authority)1路線と、中華人民共和国に接続するラオス・中国鉄道の計2路線である。

状況

ラオス鉄道公社

タイのノーンカーイ駅(Nong Khai)から、1994年に完成した鉄道道路併用橋であるタイ=ラオス友好橋で両国を隔てるメコン川を渡り、ターナレーン駅(Ta Na Laeng)を結ぶ非電化単線路線軌間:1,000 mm)である。2021年12月にラオス・中国鉄道が開通するまでラオス国内の唯一の路線であった。ラオス陸の孤島状態を解消し、タイとの鉄道と港のネットワークに接続させるため、タイのノーンカーイ駅を南に移設し、この新駅から分岐してターナレーンを結ぶ3.5 kmの鉄道が計画された[1]2009年3月5日にターナレーン駅で開通式が行われ、ラオス独立後初めての鉄道が開業した[2][3]

利用者数は2013年は32,000人、2014年は38,000人、うち80%が外国人と発表されている[4]

2013年9月からは第2フェーズとして#ヴィエンチャン市内への延伸、ターナレーン駅周辺への倉庫、コンテナヤード、接続路線、コンクリート道路をタイのNEDAによる5.9億バーツの支援で建設されており、完成は2015年7月を計画している[5]

2022年中にはカムサワート駅の開業が予定されている。

ラオス・中国鉄道

ラオスの首都ヴィエンチャンとボーテン(中国国境モーハン口岸)間を結ぶ鉄道である。ヴィエンチャンと中国・雲南省のシーサンパンナ(西双版納)間、421 kmを結び、軌間は標準軌で、76本のトンネルと154本の橋梁が建設された。旅客列車は最高速度160 km/h貨物列車は120 km/hで運転される計画である。ヴァンヴィエンルアンパバーンなど7つの主要駅を含む20駅がまず設置された。最終的には31駅となる予定である。 鉄道建設計画は当初、ラオスと中国の共同プロジェクトとして提案され、建設費は70億ドル、中国進出口銀行中国語版からのソフトローン(2%、30年間)と計画されていた[6][7]。2013年より、ラオス側による計画が進められ、2015年9月17日にラオスのソムサワート・レンサワット副首相が、資金面の問題が解決されたため2015年12月より着工予定と発表した[8]。2016年12月に着工し、2021年10月12日に昆明 - ヴィエンチャン間全線でレール敷設が完了し[9]、2021年12月3日に開業した[10]

歴史

フランス領インドシナ時代の1893年に、メコン川の激流地帯であるチャンパーサック県シーパンドンにて、船舶による輸送の代わりにデット島・コーン島鉄道英語版が敷設されたのが始まりである。デット島コーン島を結ぶ6.5 kmが、600mm軌間(のちに1000mm改軌)の鉄道で結ばれた[11]。本鉄道は第二次世界大戦後廃止され、その廃線後の遺構は残されている[12][13]。その後、ラオスには鉄道は存在しなかった。

1950年代、ラオスは、物資の輸送をより円滑にするためラオス・タイの国境であるメコン川を渡る橋(タイ=ラオス友好橋鉄道道路併用橋))の建設をタイに提案し、オーストラリアの援助で設計・建設された。1994年4月8日に橋は開通したが、橋の中央を走る鉄道(併用軌道)は未完成であった。1995年にラオス鉄道公社(Lao Railway Authority)が設立され、1997年にはタイのShaviriyaグループとの合弁事業の協定が結ばれた。この合弁事業は、本路線に関わる60年間の運営権の譲渡、資産開発および通信網の権利、18年間の運営利益に対する税制上の優遇を有していたが、1999年に破棄された[1]。1997年の経済危機が収束した2000年、タイから鉄道建設の着工が、ラオスの負担分のうちの1億9,700万バーツについて無償援助ということで提案された。建設工事は2008年以前に終了し、2009年2月20日に双方から伸びてきた線路の結合式典がタイ=ラオス友好橋で挙行された。3月5日にターナレーン駅で開催された開通式には、ラオス代表してブンニャン・ウォーラチット副大統領が、タイ代表してシリントーン王女が出席した[3]

中国とラオスとを結ぶ高速鉄道の建設が計画され、2015年11月13日、中国とラオスの両国は、両国を結ぶ鉄道の建設で正式に調印した[14]。2016年12月25日、ラオスのルアンパバーン郡で着工[15]、2021年10月12日に昆明 - ヴィエンチャン間全線でレール敷設が完了し[9]、2021年12月3日に開業した[10]

事業者

将来の計画

ヴィエンチャン市内への延伸

ターナレーンまでの路線をラオスの首都ヴィエンチャンカムサワート駅まで延伸する工事は2022年中に開業予定である。2012年、タイ政府はその鉄道延長のため、ラオス政府を支援する16億バーツの予算を承認した[16]。ターナレーン駅から7.5 kmほど延伸された。サイセッタ郡カムサワート(タートルアン湿地特定経済区付近)にカムサワート駅が建設されており[17]、2022年末までには開業予定である[18][19][20]

サワンナケート・ラオバオ鉄道計画

ラオスはタイ国境・サワンナケートとベトナム国境のラオバオ英語版Lao Bảo / 牢堡)間を結ぶ全長220kmの鉄道建設・運営について、マレーシア企業のGiant Consolidatedと契約調印した。路線は複線電化で、プロジェクトの総額は50億ドル(約4000億円)で、2017年の開業を目指していた[21]。 しかし2021年現在まだ建設は始まっていない。

ヴィエンチャン・ブンアン鉄道計画

2022年2月、ヴィエンチャンから、カムムアン県マハサイ郡英語版を経由し、ベトナムのハティン省キーアイン県ブンアンベトナム語版までの鉄道(全長555km、最高速度150km/h、標準軌)建設を、ベトナムのFLCグループベトナム語版が提案[22]した。3月にはラオスのペトロリアム・トレーディング・ラオ(PTL)と覚書を締結した[23][24]。2022年10月までに着工される見通しである[25]

隣接国との鉄道接続状況

脚注

  1. ^ a b 松本尋夫、藤田崇義 著、(社)海外鉄道技術協力協会 編『最新 世界の鉄道』ぎょうせい、東京都、2005年7月1日。ISBN 978-4324076262 
  2. ^ ラオス鉄道開通、日本が物流拠点構想も”. NNA.ASIA(アジアの経済ビジネス情報) (2009年3月6日). 2013年7月30日閲覧。
  3. ^ a b 赤木攻 (2009年4月9日). “国境を越える「王室プロジェクト」”. NNA.ASIA(アジアの経済ビジネス情報). 2013年7月30日閲覧。
  4. ^ “道乗客数”. パサソン社会経済紙. (2015年2月18日) 
  5. ^ “鉄道が5ヶ月後からスタート”. パサソン社会経済紙. (2015年2月11日) 
  6. ^ サンケイビズ (2013年5月31日). “高速鉄道の早期着工に意欲 ラオス-中国間で協議進む”. 2013年7月30日閲覧。
  7. ^ RailPlanet (2012年11月21日). “ラオス~中国間鉄道、来年着工か”. 2013年7月30日閲覧。[リンク切れ]
  8. ^ “中国 - ラオス鉄道は12月着工へ、「資金面の問題」解決”. newsclip.be. (2015年9月21日). http://www.newsclip.be/article/2015/09/21/26942.html 2015年9月27日閲覧。 
  9. ^ a b “中国ラオス鉄道全線でレール敷設が完了”. http://j.people.com.cn/n3/2021/1013/c94638-9906741.html 2021年10月16日閲覧。 
  10. ^ a b “「夢」か「わな」か、東南アジアに広がる“中華鉄道”の終着点は”. https://www.nishinippon.co.jp/item/n/778004.amp 2021年9月26日閲覧。 
  11. ^ コーン島の鉄道廃線跡めぐり”. 2013年7月30日閲覧。[出典無効]
  12. ^ ラオス政府観光局”. 2013年7月30日閲覧。
  13. ^ 日経 アジア 中国 オセアニア. “南ラオスの旅 メコン川の滝と四千の島” (pdf). 2013年7月30日閲覧。
  14. ^ 中国とラオスが鉄道建設で調印、「中国からシンガポールまで結ぶ鉄道の一部になる」=中国メディア”. 2021年12月11日閲覧。
  15. ^ Everything You Need to Know about the Laos-China Railway”. 2021年12月4日閲覧。
  16. ^ タイ国政府観光庁 (2012年7月24日). “2年以内にタイ~ラオス鉄道が拡張”. 2013年7月30日閲覧。
  17. ^ Shi Yinglun: “Laos, Thailand to expand railway into Lao capital” (英語). 新華社 (2019年7月2日). 2021年5月16日閲覧。
  18. ^ Railway Extension between Laos and Thailand to be Complete by June - The Laotian Times, April 8, 2022
  19. ^ Khamsavath Station in Vientiane Capital Ready to Operate Soon - The Laotian Times, Juy 25, 2022
  20. ^ Section II of Lao-Thai railway set to open at year-end - Vientiane Times, July 28, 2022
  21. ^ RailPlanet (2012年11月14日). “ラオス、タイ国境〜ベトナム国境間に鉄道建設へ”. 2013年7月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年7月30日閲覧。
  22. ^ FLCグループ、ラオス~ハティン省間の鉄道建設を提案 - VIETJO 2022/02/24
  23. ^ ビエンチャン・ブンアン鉄道を建設へ、協力覚書を締結 - JETRO 2022年04月04日
  24. ^ FLC AND PETROTRADE SIGN INVESTMENT AND CONSTRUCTION CONTRACT FOR RAILWAY PROJECT FLC Group 2022年3月23日
  25. ^ ビエンチャン~ブンアン港間の鉄道、11月に着工へ - VIETJO 2022/03/21

関連項目

外部リンク