マンガ肉
マンガ肉(マンガにく)[1][2][3]とは、主に漫画・アニメ・ゲーム[注 1]などフィクションの中に登場する食用の肉を指す。特にギャグ漫画においては簡便に調理済みの肉を象徴する一種のアイコンとして数多く登場する。ただし「マンガ肉」とはあくまでこれらを指す通称であり、正式な名称は不明であるが、そのような肉のサブカルチャーにおける認知度は高く、食品業界においてこれを模した物が商品化されることもある[4][5]。
概要
マンガ肉の起源として確たるものを挙げることは難しいが、日本においては少なくとも1970年代前半には存在しており、中でも『はじめ人間ギャートルズ』の登場人物たちが肉にかぶりつく様子は、インパクトの強く残したものとして有名である[6][7]。ただし、この作品に登場するマンガ肉は現在認識されているものとは若干形状が異なっている。作品中によく登場するものは輪切りにされたマンモスの肉であり、毛が生えたままの皮が付いていたりと、現代人の食欲をそそるものではない。
同作品以降、様々な漫画・ゲームを経て現在のような形に一般化され、原始時代を描く際や大食いキャラクターを描写する際の記号として用いられる。また、同作品以前にも、アメリカのアニメなどに骨付き肉の形で様々な類型が見られ[注 2]、いずれにせよその原点を特定することは困難ということが言える。
マンガ肉の特徴
- どの作品にも共通するのは、「一本の骨を覆う巨大な肉塊」であること。さらに「一枚肉」であること。
- 食感は柔らかいとは言えないようで、手で持って豪快にかぶりつくといった描写が多い。その場合、肉はよく伸びる。
- 大きさは様々だが、概ね骨の長さは40cm〜80cm程度、肉の部分は2/3を占めるという描写が多い。
- 直接火に炙って食べる、または燻製にして食べるといった描写が多い。味付けについてはその有無も含めて作品によって異なる。
マンガ肉の再現
現実に見た場合、どの動物にもマンガ肉のような太い骨の周囲に均一かつ円筒状に肉がついている部位は存在しない。そのため、実際に描写通りの肉を手に入れることはできない。そのためマンガ肉を再現するには、骨の周囲の肉をマンガ肉のような形に削るなど、何らかの加工を行う必要がある。[8]
しかし、これまで様々なバラエティ番組で、「憧れのあの肉」を再現して実際に食べてみるという企画が放送されている[1][9][10]。『ゲームセンターCX』では、『PC原人』(2008年1月16日放送)のアイテムの肉にちなんで「レストラン海賊」の“伝説のマンモスステーキ”(1,980円)という肉を紹介。スタッフが平塚市まで1時間半かけて本来テイクアウトできない肉を特別に持って帰って有野晋哉に提供した。
また、「マンガ肉」と称した料理を実際に提供するレストランや精肉店も存在する[5][11][12][13][14]。実際には骨つきハンバーグと言うべき料理であり、よく伸びるといった本来の描写とはかなり異なる。例えば東京・阿佐ヶ谷の肉店が「あの肉」「その肉」の商品名で「マンガ肉」を商品化している[5][7][3]。また、京都の元田中の居酒屋では、「マンガ肉」のほか、赤塚不二夫や川崎のぼるの漫画作品でよく見かけるような山盛りのごはん「マンガ盛り」なる商品も注文できるという[3]。そのほか、エスケー食品は、園山俊二原作の漫画『ギャートルズ』に登場する巨大な骨付き肉をイメージしたマンガ肉を再現し、「ギャートルズ肉」の商品名で楽天市場にてネット販売を始めた[5][15][16][17]。命名に際しては、正規にライセンス権を得ている[18]。エスケー食品では、ほかにも、『ギャートルズ』に登場する巨大な輪切り肉をモデルにした「マンモの輪切り肉」を販売している[19][20]。
マンガ肉に関するあれこれ
- 漫画表現としての「マンガ肉」は、これをネタとしたギャグとしても成立する。吉田戦車作の『伝染るんです。』では、皆が子供の頃から憧れを抱いていた「あの肉」が作中世界で「ほんとう」に登場、老若男女がそれにむせび泣きむさぼり食べる…というものとなっている[21]。それ以前は、お約束事である「マンガ肉」自体をギャグにする概念はなかったとNHK放送の『BSマンガ夜話』でも認定されている[22]。
- 漫画家の永野のりこは、「チビ太のおでん(『おそ松くん』)、松葉のラーメン(『まんが道』)、海賊王子の肉(『海賊王子』)」と、「三大美味しそう二次元レシピ」の中にマンガ肉を入れている。
- 作家の朝香式による短編小説に『マンガ肉と僕』があり、杉野希妃監督により映画化されている。
類似する食品・料理
- ケバブ(食べる時はともかく、ドネルケバブを焼いている時は、豪快な肉の塊である)
- スペアリブ、ラムチョップ(共に肋骨の骨付き肉。特にラムチョップは半身ながら近似)
- ハム(特にブタのもも肉を足の骨ごと加工した古くからの製品は大腿骨の周囲を厚く筋肉がとりまいておりマンガ肉に似ている)
- フライドチキン、ローストチキンなど(ニワトリの股肉は、大きさ的にはかなり違うが、骨がついた肉塊である)
- 骨付きソーセージ
- シュバイネハクセ(アイスバインの一種。豚の脚をローストしたもの)
脚注
注釈
- ^ 例えば、ゲーム『MOTHER2 ギーグの逆襲』の取扱説明書には、同様の形状の肉をパンに挟んだ「マンモスバーガー」なるアイテムのイラストがある。
- ^ 例えば、『トムとジェリー』におけるローストチキンの描写がそれである。
出典
- ^ a b 「抜き打ちテスト・まんが肉って本当にあるの!?」所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!, テレビ東京, 2006年2月17日放送
- ^ ヤマダ、2002年2月8日、2002年3月8日毎日新聞掲載分
- ^ a b c みやしたゆきこ「天高く私も肥ゆる秋の巻(第116回)」PC Online、2007年10月4日
- ^ 「スナック菓子「マンモスの肉!?」」フジサンケイ ビジネスアイ2009年8月15日閲覧
- ^ a b c d 「あの独特な形の「ギャートルズ肉」がエスケー食品からついに登場」GIGAZINE2009年8月15日閲覧
- ^ 「大追跡!ギャートルズに出てくる「マンモスの肉」はどんな味なのか?」日刊サイゾー2009年8月15日閲覧
- ^ a b 木南広明「マンガで見た“あの肉”が買えるらしい」、exciteニュース2009年8月15日閲覧
- ^ 空想キッチン! PP.66-68
- ^ 「アニメに出てくる料理を再現」深夜の星アニグルメ、2004年8月16日放送
- ^ 「空腹絶倒!ウンナンのマンガグルメ晩餐会」UN街2004年12月29日放送
- ^ 「薬印の新名物~あの肉~」出没!アド街ック天国2006年8月19日放送
- ^ 「ザックザック・お宝マンモス大発掘」世界まる見え!テレビ特捜部2006年5月22日
- ^ 「はなまるカフェ」はなまるマーケット2008年2月29日放送
- ^ 「圧巻!仰天料理の店特集」NNN Newsリアルタイム2008年9月3日放送
- ^ 「青鉛筆」朝日新聞、2009年2月10日
- ^ 「みんながハマってるブームグルメ」『TOKYO1週間 No.390』、2009年3月3日、講談社
- ^ 「ギャートルズの肉人気」神戸新聞、2009年3月24日
- ^ 「完売必至!“ギャートルズ肉”が2/9(肉の日)に再発売」ウォーカープラス
- ^ 「ギャートルズ肉から2年、ついに「マンモの輪切り肉」が12月に初回限定1000枚で新発売」 GIGAZINE2010年11月29日付、2012年6月12日閲覧.
- ^ タカギヒロノ 「-アニメから映画まで、あの名シーンを再現!- 食べてみたい“名作”料理13」 『週刊アスキー』2011年1月4日-11日号、アスキー・メディアワークス、2010年、p.150.
- ^ ヤマダ 2002年3月8日毎日新聞掲載分
- ^ 「夏目の目 第5弾『伝染るんです。』」BSマンガ夜話 1998年2月23日放送
参考文献
- ヤマダトモコ 著、夏目房之介 編『マンガの居場所』NTT出版、2003年3月。ISBN 4-7571-5039-3。
- 柳田理科雄、ケンタロウ『空想キッチン!』メディアファクトリー〈ナレッジエンタ読本〉、2008年1月。ISBN 9784840121354。