ナメル

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ナメル
種類 装甲兵員輸送車
改修計画にはIFVが存在する。
原開発国 イスラエル
運用史
配備期間 2008年-現代
配備先 イスラエル国防軍
関連戦争・紛争 ガザ紛争
開発史
開発者 イスラエル・ミリタリー・インダストリーズ
製造業者 イスラエル国防軍武器科(組み立て)
値段 300万ドル[1]
製造期間 2008年-現代
製造数 200両[2]
諸元
重量 60t[3]
要員数 3名(車長操縦士、RCWS操作手)、上限で12名までの歩兵

装甲 複合材料に類別される積層化セラミックス鋼板ニッケル合金を使用。爆発反応装甲を追加。傾斜したモジュラー装甲の設計。
主兵装 ブローニングM2重機関銃Mk19 自動擲弾銃、もしくはより小型の機銃をサムソン RCWSに装備。
副兵装 7.62mm FN MAGを1挺
60mm迫撃砲を1門、外部装備
12基の発煙弾発射機
エンジン 1,200hp ターボチャージャー付きディーゼル
出力重量比 20馬力/トン
搭載容量 歩兵9名[4]
懸架・駆動 コイルスプリングサスペンション
行動距離 500km
速度 最高60km/h
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ナメルは、メルカバ戦車の車体を基礎としたイスラエル装甲兵員輸送車である。ナメルの意味はヒョウであり、また、「Nagmash」(APC)および「Merkava」の綴りの略語である[5]。ナメルは、イスラエル国防軍武器科によって開発され、組み立てられている。2008年夏以降、本車は少数がイスラエル国防軍に就役した。

経緯

1990年代から2004年

ナメル試作型。メルカバ Mk 1を基礎としている。車体の側面がストレート形状となっている

センチュリオン戦車ナグマショットナグマホンナクパドン装甲兵員輸送車へ、また、プーマ戦闘工兵車に作り替えた経験に続き、多数のT-54およびT-55戦車がアチザリットに改修されて成功した。こうしたことは、メルカバ戦車を重防御の装甲兵員輸送車・歩兵戦闘車に作り替えるというアイディアを後押しした。この考えには大きな成功の見込みがあった。理由としては、250両という多数のメルカバ Mk 1が任務から徐々に退役させられることになっており、また、メルカバ Mk 2105mm主砲も、現代的なIMI 120mm主砲へとこれ以上アップグレードできないことが明確になっていたためである。

1990年代中、資金の不足を理由として開発は大きく前進しなかったものの、続く2004年ガザ紛争では、M113装甲兵員輸送車即席爆発装置RPGに対して脆弱であることが暴露され、イスラエル国防軍は開発を再開した[6]。この時点では、ナメルの国内生産がストライカー装甲車の導入よりも好まれていた[7]

2005年から現代

最終的にイスラエル国防軍武器科は、メルカバ Mk 1の車体を基礎として歩兵戦闘車試作車両を開発し、さらにまた、メルカバ Mk 4の車体をもとに歩兵戦闘車を少数開発した[8]。これらの車輌は当初「Nemmera(女豹の意)」と呼ばれたものの、後には「Namer」と改称された。

2005年2月15日、マーリフ誌の報告では、メルカバ Mk 1を元に作られ、自走するナメル試作車両が、審査と評価のためにGivati旅団によって実地に配備されたとした。この車輛は、ラファエル・オーバーヘッド・ウェポンステーションを装備しており、これは遠隔操作および車輌内部からの給弾が可能である。同一のユニットがユーロサトリ2005年軍事展示会において模擬試験を行い、輸出するにあたり有望な顧客たちが興味を示した。

2006年レバノン侵攻の際の戦闘から戦訓が学ばれ、ここでも広くナメルの計画が妥当であるとされた。そこで、2007年、最初に50両のナメルが2008年中に配備され、さらに100両以上が2個戦闘旅団に装備されるだろうことが報告された[9]。しかしながら、新規に作られたメルカバ Mk 4の車体がより望ましいとされたことから、この改修計画は放棄された。

メルカバ Mk 4を基礎とした現役のナメル。車体の側面形状に傾斜が付いている

2008年3月1日、メルカバ Mk 4の車体を基礎として完全に最初から開発され、実用できるナメルが公式にイスラエル国防軍により公開された[10]。報道によれば、2008年5月、アメリカ合衆国から部品を輸入して組み立て作業を促進したとしている[11]。2008年9月15日、ナメルはリション・レジオンの展示会において一般大衆に公開された。

2010年10月25日、アメリカの企業であるジェネラル・ダイナミクス・ランドシステムズが契約交渉のために選ばれた。内容はライマにあるジョイントシステムズ・マニュファクチャリングセンターにおいて、一定数の車体を生産し、完成させるというものである[12]

設計

生残性

ナメルは、生残性と急速な補修を考慮し、モジュラー装甲V字型底部装甲パック、さらにNBC防護を採用して設計されている。

ヤロン・リブナット准将の言及では、「"The weight saved by eliminating the turret was ‘reinvested’ in beefing up the armor... this has resulted, with Namer having better protected from belly charges".[13]砲塔の撤去によって重量を抑えたことで、装甲強化が再び加えられた……この結果、ナメルは底部からの攻撃に対してより良好な装甲防御を得ている。」アクティブ防護システムの装備も準備されている。

2009年6月、イスラエル国防軍は、ナメル用としてイスラエル・ミリタリー・インダストリーズ製のアイアンフィストAPSの取得を認可した[14]

兵装

ナメルは、ラファエル製のRWSであるサムソンRCWSに据え付けるブローニングM2重機関銃もしくはMk19 自動擲弾銃、そして、1挺の7.62mm FN MAGと1門の60mm迫撃砲武装している。また、発煙弾発射機も装備されている。

外部遠隔操作式の30mm機関砲[4]、およびスパイク対戦車誘導ミサイルの搭載も考慮されている[15]

搭載能力

ナメルは、難渋する地形での機動能力があり、メルカバ Mk 3にも搭載されるテレダイン・コンチネンタル製のAVDS-1790-9AR、1,200馬力V12空冷ディーゼルエンジンによって駆動する。ナメルは、搭乗員と完全武装した歩兵12名を運ぶ事ができる。さらに「ナメルビュランス」と呼ばれる救急車バージョンでは、担架1台か2台と医療設備を輸送する[16]

原型となったメルカバ Mk 4由来の後部入口は、狙撃ポート付きでより幅の広いドアランプへと再設計されている。二つのハッチが天井に装備され、これらはメルカバの車体天井よりも高く配置されている。ナメルはまた、メルカバ Mk 1が装備するデジタル戦場管制システムを共有している。

使用国

イスラエルの旗 イスラエル

第1"ゴラニ"歩兵旅団英語版は、ナメルを最初に取得した部隊である。イスラエル国防軍によれば、ナメルIFV歩兵戦闘工兵部隊に割り当てられ、将来あり得る計画では、情報収集と偵察のための特別なモデルが存在する[17]。2両のナメルがゴラニ旅団の兵力の一部としてガザ紛争に参加した[18]

輸出計画

アゼルバイジャンの旗 アゼルバイジャン

アゼルバイジャンとイスラエルは、ナメルについて交渉を行っている[19]

 コロンビア

イスラエルは、コロンビアにナメルの導入について申し出ている[20]

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国

アメリカで運用評価を受けたナメル
2012年アメリカ陸軍は現用戦闘車両のうち、開発に関わらない車輌の運用評価を行っていた。これは、地上戦闘車輌計画用としてIFVを新規購入するにあたり、必要条件に対する性能を見極めるものだった。妥当と認められた車輌のうちの一種はナメルだった[21]
2013年4月2日、議会予算局は報告書を提出した。ここでは地上戦闘車輌計画用として車輌を新規開発する代わりに、現用車輌の購入を提言していた。ナメルの導入費用は90億ドル以下と推測され、また、兵員9名を乗せて運ぶ仕様に適合していた[22]
アメリカ陸軍の言及によれば、2012年におけるナメルまた他の車輌の評価は、地上戦闘車輌の仕様のいくつかに適合したものの、現用の野戦車輌は大幅な再設計の必要無しに要求に適合しないと回答した[23]

関連項目

参考文献

画像外部リンク
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  1. ^ צה"ל הכניס לשימוש נגמ"ש חדש מתוצרת ישראלית” (Hebrew). Haaretz. 2009年5月閲覧。
  2. ^ "The Institute for National Security Studies", chapter Israel, 2012 May 8, 2012.
  3. ^ [1]
  4. ^ a b New Artillery Cannon for APC”. IDF official site. 2009年7月閲覧。
  5. ^ Scott C. Farquhar (2009). "Namer"+"armored+personnel+carrier"&hl=en&ei=t69YTbKzMJDpgAfZjLX7DA&sa=X&oi=book_result&ct=result&resnum=3 Back to basics: a study of the second Lebanon War and Operation CAST LEAD. Government Printing Office. p. 86. http://books.google.com/books?id=Yl-9rni983MC&pg=PA86&dq="Namer"+"armored+personnel+carrier"&hl=en&ei=t69YTbKzMJDpgAfZjLX7DA&sa=X&oi=book_result&ct=result&resnum=3 2011年2月14日閲覧。 
  6. ^ תוכנית "נמרה": טנק המרכבה 1 יוסב לנגמ"ש” (Hebrew). IL: Haaretz. 2009年5月閲覧。
  7. ^ Armored warfare: Israel Drops Stryker for Merkava APC”. Strategy page. 2009年6月閲覧。
  8. ^ Gelbart, Marsh (2004). Modern Israeli Tanks and Infantry Carriers 1985–2004. Bryan, Anthony ‘Tony’ illus. Oxford, UK: Osprey. p. 7. ISBN 1-84176-579-1 
  9. ^ Armor: The Ultimate IFV”. Strategy Page. 2009年5月閲覧。
  10. ^ עין הנמ"ר” (Hebrew). IDF. 2009年5月閲覧。
  11. ^ צה"ל מאיץ את ייצור ה"נמר" בסיוע ארה"ב” (Hebrew). Maariv. 2009年5月閲覧。
  12. ^ General Dynamics Selected for Merkava Armored Personnel Carriers for Israel”. PR Newswire. 2010年10月閲覧。
  13. ^ Enter the Namer Defense Update
  14. ^ IDF Approves Acquisition of Active protection Systems for Namer AIFVs”. Defense Update. 2009年6月閲覧。
  15. ^ Namer Heavy armored personnel carrier”. military-today.com. 2009年5月閲覧。
  16. ^ הגלגול הבא של הנמ"ר - אמבולנס משוריין” (Hebrew). Official IDF site. 2009年5月閲覧。
  17. ^ Armored Personnel Carrier (APC) - Namer”. Official IDF site. IDF. 2009年5月閲覧。
  18. ^ מה עשו שני נמ"רים בלב רצועת עזה?” (Hebrew). Official IDF site. IDF. 2009年5月閲覧。
  19. ^ PanARMENIAN.Net Israel rearms Azerbaijani army
  20. ^ Israel offers Merkava tanks and Namers to Colombia
  21. ^ http://www.army-technology.com/news/newsus-army-ndv-assessments
  22. ^ Report: GCV is worst choice to replace Bradley - DoDBuzz.com, April 3, 2013
  23. ^ Army, industry slam CBO’s scathing GCV report - DoDBuzz.com, April 4, 2013

外部リンク