アチザリット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
アチザリット装甲兵員輸送車
Achzarit.jpg
アチザリットMk.1
基礎データ
全長 6.2m
全幅 3.60m
全高 2m
重量 44t
乗員数 3名 + 兵員7名収容
装甲・武装
装甲 200mm
主武装 MAG 7.62mm機関銃×3
副武装 60mm迫撃砲
機動力
速度 64km/h (整地)
エンジン ディーゼル
850hp
懸架・駆動 トーションバー式
出力重量比 19hp/t
テンプレートを表示

アチザリットヘブライ語:אכזרית英語:Achzarit)は、イスラエル国防軍(IDF)の装甲兵員輸送車(APC)で、イスラエルでは歩兵突撃輸送車(Infantry Assault Carrier)と呼ばれている。アラブ諸国から鹵獲したソ連T-54/55戦車をベースに製作されている。

開発と概要[編集]

IDFは第四次中東戦争以降、歩兵戦車部隊に随行させるための輸送手段として、アメリカ製のM113・愛称「ゼルダ」を主に使用していたが、戦争の形態が市街での低強度紛争(LIC)に移行すると共に、対戦車ミサイルRPG-7地雷や14.5mm重機関銃弾などに対するM113のアルミニウム合金装甲の脆弱性が大きな問題となった。マガフ戦車ショット戦車用のERA(爆発反応装甲)・通称「ブレイザー」では重い上にAPCの薄い装甲には負荷が大きく、そこで軽量化のためのパンチ穴の空いたスペースド・アーマー通称「トーガ」を取り付けて一応の対処が行われた。

次いでより新型のERA・通称「クラシカル」による防御も検討されたがコストの関係で限定使用に終わった。更に入手したアメリカ軍M2ブラッドレー歩兵戦闘車の砲塔を取り去り、オーバーヘッド式の火器システムと増加装甲を追加する改造を加えた試作車輌を作ったり、また後には旧型のメルカバMk.1戦車をベースに改造する予定の歩兵戦闘車・仮称「ナンメル(ナメラ)」を試作した。しかし前者は重量増加に対するサスペンション強度が不足、後者はコストが高く、メルカバMk.3及び4の生産に予算を回すために中止となった。

これらの代替となる強固かつ安価なAPCが求められ、過去の戦闘でアラブ側から数百両を捕獲していたT-54/55戦車を自国用に改修したTiran-4/5を、さらに改造してAPCにする事となった。開発はNIMDA社によって1980年代初頭から始められ、1990年頃より運用されている。

構造[編集]

基本構造は、オリジナルのT-54/55戦車の車体を、スペースド・アーマーを兼ねた燃料タンクで取り囲んだ構造になっている。エンジンもより強力なM109自走砲の物をベースにした新型ディーゼルエンジン・8V-71 TTAまたは8V-92TA/DDCIIIに換装され、車体の左後部に収められている。その右側に兵員の昇降口が設けられ、ハッチは上下に開くクラム・シェル(貝殻)方式となっているが、前方の敵側からも兵員昇降中である事が露呈してしまうという欠点がある。

サスペンションも国産の強力な物に交換され、重量に対して不足気味のエンジン出力を補っている。車内には乗員保護のための耐NBC兵器用換気システムや自動消火システムが装備されている。

2000年代頃から、起動輪や履帯を、メルカバの物に換装したタイプも見られるようになった。

武装[編集]

アチザリット後部。右側が兵員昇降口、左がエンジン収納部。

武装はMAG 7.62mm機関銃を3挺装備しており、コストの関係で1挺だけOWS(Overhead Weapon Station)にマウントされ車内からの遠隔操作が可能である。また車内装填式の60mm迫撃砲も装備している。

この様にAPCとしてはやや重武装である事から歩兵戦闘車に分類される事もある。

また、OWSを外して通信機能を強化した戦闘指揮車タイプも存在する。本車やショット(一部はM48マガフ)から改造されたナグマショットナグマホンナクパドンプーマなど重防御の兵員輸送車・工作車輛の登場により、従来のM113ゼルダ系は予備役に移行しつつある。

関連項目[編集]

第二次世界大戦中にイギリス連邦加盟国が余剰化した戦車や自走砲を改造して製造した装甲兵員輸送車。
イスラエル国防軍がセンチュリオン戦車を改修して製造した装甲兵員輸送車。
ロシア連邦軍第一次チェチェン紛争の戦訓から、旧式化したT-55戦車を改造して製造した歩兵戦闘車。武装や乗降ハッチの配置などがアチザリットと異なる。

外部リンク[編集]