PVP装甲車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
PVP装甲車(小型防護車)
PVP装甲車(小型防護車)、2009年
基礎データ
全長 4.60 m、PVP HD 4.80 m
全幅 2.28 m、PVP HD 2.54 m
全高 2.17 m、PVP HD 2.26 m
重量 4.4トン
PVP HD 5.5トン
乗員数 2+2+1 passengers, maximum 2+3+2
装甲・武装
装甲
  • セラミック被覆された6から10 mmのアルミニウムおよび鋼製のプレート
  • ガラス厚120 mm
  • STANAG 4569レベル2の防護力
主武装 7.62 mmないし12.7 mm機関銃
備考 バリエーション:PVP(3ドア)、ガビアル(5ドア)、PVP HD(5ドア + ボディ延長)
機動力
速度 120 km/h(100 km/hに制限)
エンジン イヴェコターボディーゼル(ユーロ3対応)、直列4気筒(2.8L)
160 PS
懸架・駆動 4x4ないし4x2、ZF 4 HP 220 S自動変速機
行動距離 800 km
出力重量比 34 PS / トン
テンプレートを表示

PVP装甲車: Petit Véhicule Protégé、小型防護車)はフランスの装甲された連絡および警備用車両。戦争での任務を担えるように設計されており、哨戒、護衛、警備、調査、連絡、領域管理といった任務で兵員および物資の輸送を行い、指揮所として機能することができる。エアボーンおよびヘリボーン運用が可能で、フランス陸軍の戦場での連絡車両をプジョー・P4を置き換えた。

来歴[編集]

ユーゴスラビアでの以前の戦訓などから、連絡指令車両の小型の歩兵携行火器、IED狙撃手などに対する防護性能の著しい不足を浮き彫りにした。

このことから、2001年にプジョー・P4に代わるPVP計画の開始が決定され、2004年9月にオーヴェルランに発注された[note 1]。一般への最初の公開は2002年にパリで開かれた防衛・安全保障展示会のユーロサトリだった。

特徴[編集]

PVPの製造はフランス国内の2か所に分かれて行われた:2005年から2012年までの間、車体およびシャシーの製造はサン=ジェルマン=ラヴァルフランス語版ロワール県)で行われ[1]、組み立てはマロール=ザン=ユーロポアフランス語版エソンヌ県)で行われた。

PVPは車室に対してはSTANAG 4569レベル2の、エンジンに対してはレベル1を備えており、これはVBL装甲車(軽装甲車両)同等の防弾性能となっている。

PVPにはABSESC、エアコン、オートマチックトランスミッション、車室内から制御できるタイヤ空気圧調整機構を備えている。車両の窓の厚さは6.6 cmあり、装甲板は複数の素材(セラミック、金属)を組み合わせてある[2]

バリエーション[編集]

「兵卒」モデル("Rang")
足場と手すりを装備する、巡回と護衛任務向け
「指令」モデル("Command")
歩兵指揮車
PVP/HD(Heavy Duty
車体が延長されてドアが2枚追加されて5ドアに
PVP/XL
法執行任務向けの上級車両。このことからVBG(フランス憲兵隊の装甲車両)の一部として供給された
モデル 車両重量 車室容積 搭載量 乗員 装甲
PVP 5トン以上 4.5m3 800kg 2 + 3 + 2 STANAG 4569レベル2以上
PVP/HD 7トン 6.5m3 2t 2 + 3 + 2 STANAG 4569レベル3
PVP/XL 12トン以上 8-11m3 3t 3 + 3 + 4 STANAG 4569レベル3

運用者[編集]

 チリ[編集]

2009年に最初の輸出先として総額200万ユーロで発注された15両の車両および陸軍と警察で装備する100両のオプション。オプションはまだ有効[3]

フランスの旗 フランス[編集]

第2外人工兵連隊のPVP、2012年7月14日

2004年9月にフランス国防省が933両を発注した。2008年から2012年にかけて納入されるこの契約の総額は1億5,000万ユーロとなった。その後、政府の経済回復計画の一部として、2009年および2010年の年間納入数を200両から300両に引き上げた。

2011年9月8日に、新たに200両を2012年納入する発注が行われた[4]

総計1133両のうちの993両目のPVPは2012年6月上旬に納入することが求められた[5]。1000両目のPVPは2012年9月27日のオテル・デ・ザンヴァリッドでの式典の最中にフランス陸軍に納入された。2012年10月、追加の100両の発注がキャンセルされ、計画の総計は1333両となった[6]。しかしながら、2012年12月に50両がDGAから発注され、発注されたPVPの総数は1183両となった。

2012年12月31日までに963両のPVPがフランス軍で供用された。その同日時点で、PVPの稼働率は

軽微な、しかし頻繁に繰り返される機構部品(ペダル、ステアリングロッド、ジンバル、配管…)の設計上の不具合

と交換部品の不足から50%にとどまった。フランス陸軍参謀総長は2013年末までに稼働率を75%に引き上げることを目標に定めた[7]

目標は達成されず、1183両の稼働率は2014年の52%から、2015年には41%へと低下した。2016年の稼働状態整備の単価は2,144ユーロを要した[8]。2016年12月31日時点でPVPの稼働率は31%しかなく、陸軍の全車種のなかで最低を記録した[9]

2019年12月31日時点で、平均車齢が10年となる1151両のPVPの稼働率は54%であり、稼働状態整備単価は5054ユーロとなった[10]

陸軍[編集]

第18輜重連隊のPVP(2009年)

国家憲兵隊[編集]

国家警察[編集]

2019年に12両のPVP装甲車を受領(さらに4両の納品待ち)

  • BRI、ギャング対策部隊

 ルーマニア[編集]

ルーマニアは憲兵隊で使用するために、2012年下半期に15両のPVPを発注した3番目の輸出顧客である[11][12]

セネガルの旗 セネガル[編集]

国家憲兵隊で使用するために、2017年12月に13両のPVPを発注した[13]

トーゴの旗 トーゴ[編集]

2010年に同国から6両の発注がなされ、納品された[14]。これらの車両はフランスのPVPと似ているが、前席2座席と射手用の折りたたみ座席に加えて、後部に向かい合う4座席を収納できるように屋根が高くなっている[15]

商談[編集]

ドイツの旗 ドイツ[編集]

ラインメタル ランドシステムがドイツ連邦軍向けにパナール/オーヴェルランと共同開発したPVP派生車種の「Gavial」の試験を行った。5ドアを備えCH-53に搭載可能だった、最終的にはドイツ連邦軍には採用されなかった。

インドの旗 インド[編集]

2012年春、インドは正式な入札の前段階として、軽装甲車に関する2つのRFI(情報提供依頼書)を発行した。インド陸軍の要求は、合計で 2,800台の軽装甲車(2,000 + 800)の納入であり、様々なバージョン(保護連絡、パトロール、輸送、砲兵観測、兵器システムキャリア)が用意される予定である[16]。最終的にPVPは入札で落選した。

登場作品[編集]

映画[編集]

ミッション:インポッシブル/フォールアウト
敵の親玉を移送する車列の2台の護衛車両がRAIDのPVPだった。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ その後、同社はグループPSAから競合会社のパナール・ジェネラル・ディフェンスを買収した。 PVPは同名のパナール社で製造される。

出典[編集]

  1. ^ http://forcesoperations.com/arquus-cede-le-site-de-saint-germain-laval-au-groupe-jogam/
  2. ^ « Les premiers PVP sont arrivés », Opex360.com, 16 avril 2008.
  3. ^ Le PVP s’exporte au Chili” (2009年8月24日). 2022年7月2日閲覧。.
  4. ^ Barbara Leblanc (2011年9月8日). “L’armée française renouvelle ses véhicules”. 2011年9月25日閲覧。.
  5. ^ Jean-Dominique Merchet (2012年6月15日). “Point de situation sur les nouveaux matériels de l’armée française à l’occasion d’Eurosatory 2012”. 2012年6月30日閲覧。.
  6. ^ Jean-Dominique Merchet (2012年10月17日). “L'armée de terre doit avaler du "rab" de réductions budgétaires”. 2012年10月18日閲覧。.
  7. ^ François Cornut-Gentille (2013年11月5日). “Question N° : 32379”. 2013年11月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年11月10日閲覧。.
  8. ^ Cher MCO de l'armée de terre : vieillissement et usure du matériel, inflation du coût du maintien en condition opérationnelle” (2017年1月31日). 2017年2月6日閲覧。.
  9. ^ Laurent Lagneau, La disponibilité des Petits Véhicules Protégés (PVP) ne cesse de se dégrader, 13 avril 2017, opex360.com.
  10. ^ Question N° 25691 de M. François Cornut-Gentille (Les Républicains - Haute-Marne )” (2020年5月26日). 2020年5月28日閲覧。
  11. ^ Guillaume Belan (2012年9月6日). “roumanie-3eme-client-export-pvp/ La Roumanie, 3ème client export du PVP”. 2013年1月21日閲覧。.
  12. ^ https://www.forcesoperations.com/sherpa-light-transfert-industriel-le-plan-darquus-pour-convaincre-le-client-roumain/
  13. ^ Equipements : La gendarmerie sénégalaise acquiert 13 blindés PVP et neuf Bastion” (2017年12月7日). 2022年7月2日閲覧。.
  14. ^ Les FAT s’équipent dernière génération” (2010年3月16日). 2013年1月21日閲覧。.
  15. ^ http://olivier.carneau.free.fr/photoengins/events/expo_panhard/index.htm.
  16. ^ Panhard propose son PVP en Inde”. 2013年2月28日閲覧。.

外部リンク[編集]