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'''コマクサ'''(駒草、[[学名]]:''Dicentra peregrina'' (Rudolph) Makino)は、[[ケマンソウ科]][[コマクサ属]]の[[多年草]]の[[高山植物]]。[[ケシ科]]の一部に含めることもある。
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== 特徴 ==
'''コマクサ'''(駒草、[[学名]]''Dicentra peregrina'')は[[ケマンソウ科]]([[ケシ科]]の一部に含めることもある)の[[多年草]]。[[高山植物]]の一つ。日本では[[北海道]]から[[中部地方]]の[[高山帯]]の砂礫帯に分布している。
美しい[[花]]と、常に砂礫が動き、他の[[植物]]が生育できないような厳しい環境に生育する事から「'''高山植物の女王'''」と呼ばれている。和名はその花の形が[[ウマ|馬]]([[駒]])の顔に似ていることに由来する<ref name="yamakei-color">{{Cite book|和書 |author=林弥栄 |year=2009 |month=10 |title=日本の野草 |series=山溪カラー名鑑 |publisher=[[山と渓谷|山と溪谷社]] |isbn=9784635090421 |pages=456}}</ref>。学名のMakinoは、命名した日本の[[植物学|植物学者]]の[[牧野富太郎]]の名前である<ref name="asahina">{{Cite web|url=http://ci.nii.ac.jp/naid/110006664898 |author=[[朝比奈泰彦]] |title=駒草ノ成分(東京醫科大學藥學科生藥學教室報告) |publisher=[[CiNii]] |accessdate=2011-09-21}}</ref>。学名の小種名の「peregrina」は、「外来の」を意味する<ref name="kozan">{{Cite book|和書 |author=豊国秀夫 |year=1988 |month=9 |title=日本の高山植物 |series=山溪カラー名鑑 |publisher=山と溪谷社 |isbn=4-635-09019-1 |pages=428-429}}</ref>。別名が「カラフトコマクサ(樺太駒草)」<ref name="hand">{{Cite book|和書 |author=木原浩 |year=2002 |month=7 |title=高山に咲く花 |series=山溪ハンディ図鑑 |publisher=山と溪谷社 |isbn=4635070085 |pages=296-297}}</ref>。英名は存在しない。[[花言葉]]は、「高嶺の花」・「誇り」・「気高い心」・「貴重品」<ref>{{Cite web|url=http://www.kanko-omachi.gr.jp/omachi_blog/2011/06/post-205.html |title=山岳博物館前のコマクサ |publisher=[[大町市]]観光協会 |date=2011-06-18 |accessdate=2011-09-21}}</ref>。


高さ5 [[センチメートル|cm]]ほど。葉は[[葉#特殊な葉|根生葉]]で細かく裂け[[パセリ]]のように見え、白く粉を帯びる。花期は7-8月。花茎は10-15 cmで淡紅色の花を咲かせる。[[花冠|花弁]]は4個で外側と内側に2個ずつつく。外側の花弁は下部が大きくふくらんで、先が反り返り、内側の花弁はやや小さく、中央がくびれ、上端は合着している。[[萼|萼片]]は2個で早く落ちる。他の植物が生育できないような砂礫地に生えるため、地上部からは想像できないような50-100 cmほどの長い根を張る。[[タカネスミレ]]なども同様な場所に生育し混生することもあるが、単独の群落をつくることが多い<ref name="kozan" /><ref name="hana-tizu">{{Cite book|和書 |author= |year=2007 |month=05 |title=花の百名山地図帳 |publisher=山と溪谷社 |pages=19,22-23,55,156-157,161,168,177,252-253頁 |isbn=9784635922463 }}</ref>。双子葉類の植物だが子葉の発達が悪く、[[子葉]]は一個しか出ない。花が涸れると長さ約1.2 cmの細長い楕円形となり、光沢のある黒い[[種子]]ができる<ref name="kozan" />。[[染色体|染色体数]]が、2n=16の[[倍数性|2倍体]]である<ref name="hand" />。
==特徴==
美しい[[花]]と、常に砂礫が動き、他の[[植物]]が生育できないような厳しい[[環境]]に生育する事から「高山植物の女王」と呼ばれている。コマクサの名前の由来はその花の形が[[ウマ|馬]] ([[駒]]) の[[顔]]に似ていることが由来となっている。


[[File:ParnassiuseversmanniRussia.JPG|thumb|right|200px|北海道[[大雪山|大雪山系]]では、[[ウスバキチョウ]]の幼虫がコマクサを食草としている。]]
高さ5cmほど。葉は[[根生葉]]で細かく裂け、白く粉を帯びる。花期は7 - 8月。花茎は10 - 15cmで淡紅色の花を咲かせる。花弁は4個で外側と内側に2個ずつつく。外側の花弁は下部が大きくふくらんで、先が反り返り、内側の花弁はやや小さく、中央がくびれ、上端は合着している。萼片は2個で早く落ちる。他の植物が生育できないような砂礫地に生えるため、地上部からは想像できないような50~100cmほどの長い根を張る。双子葉類の植物だが子葉の発達が悪く、子葉は一個しか出ない。昔は、花の美しさよりも薬草としての価値が高く、古くから腹痛の妙薬として知られていた。御岳では登山記念として、コマクサを「オコマグサ」という名で、一株一銭で登山者に売られていたようで、そこからコマクサは「一銭草」とも云われている。
日本では北海道[[大雪山]]にのみ生育する[[天然記念物]]の[[ウスバキチョウ]]の幼虫は、日本ではコマクサを食草としていて、葉の他に茎や花も食べる。他の国では他の同科[[キケマン属]]の植物を食草としている<ref name="kozan" /><ref>{{Cite book|和書 |author=猪又敏男(編・解説) |coauthors=松本克臣(写真) |year=2006 |month=6 |title=蝶 |series=新装版山溪フィールドブックス |publisher=山と溪谷社 |isbn=4-635-06062-4 |pages=96}}</ref>。花の蜜を吸いにきた[[マルハナバチ]]などが[[受粉]]を行う<ref name="haru">{{Cite book|和書 |author=ピッキオ |year=2001 |month=06 |title=花のおもしろフィールド図鑑 春 |publisher=[[実業之日本社]] |isbn=4408394750 |pages=237}}</ref>。

== 分布 ==
[[千島列島]]・[[樺太]]・[[カムチャッカ半島]]・[[シベリア]]東部の東北アジアと日本の[[北海道]]から[[中部地方]]の[[森林限界|高山帯]]の風衝岩屑斜面などの砂礫帯に分布している<ref name="kozan" />。大きな岩礫の地にも分布するが、直径0.5-20 cmの礫地または砂礫地に群落をつくる<ref>{{Cite web|url=http://ci.nii.ac.jp/naid/110001882424 |title=コマクサの分布と生態 |author=館脇操 |publisher=CiNii |date=1951-06-30 |accessdate=2011-09-21}}</ref>。大雪山の赤岳と宮城県の蔵王連峰には、「駒草平」という地名がある<ref>{{Cite web|url=http://watchizu.gsi.go.jp/ |title=地図閲覧サービス(駒草平) |publisher=[[国土地理院]] |accessdate=2011-09-21}}</ref>。秋田県[[田沢湖町]](現[[仙北市]])の「町の花」であった。[[タイプ (分類学)|基準標本]]は、北太平洋のもの<ref name="kozan" />。日本にある最も古い標本は、1886年の[[東京大学|帝大]]標本目録にある信州駒ヶ岳産(1880年8月に採取されたもの)のものである<ref name="kisokoma">{{Cite book|和書 |author=林芳人 |year=2002 |month=08 |title=中央アルプス駒ヶ岳の高山植物 |publisher=ほおずき書籍 |isbn=4434022679 |pages=51,96-97頁}}</ref>。昔は、花の美しさよりも[[薬草]]としての価値が高く、古くから腹痛の妙薬として知られていた。[[御嶽山 (長野県)|御嶽山]]では登山記念として、コマクサを「オコマグサ」という名で、一株一銭で登山者に売られていたようで、そこからコマクサは「一銭草」とも云われている。「御百草」(おひゃくそう)の原料の一つとして、薬草が[[修験者]]に利用され多くが採り尽くされた<ref name="shindai">{{Cite web|url=http://jimuwww.shinshu-u.ac.jp/photo/archives/db/komakusa/tiba/index.html |author=千葉茂俊 |title=信州大学のシンボルの花・駒草にまつわる話 |publisher=[[信州大学]] |date=1996-02 |accessdate=2011-09-21}}</ref>。現在製造されている[[長野県製薬]]の御岳[[百草丸]]には、使用されていない<ref name="igaku">{{Cite web|url=http://jimuwww.shinshu-u.ac.jp/photo/archives/db/komakusa/tiba/594.html |title=随想 駒草に“花言葉”を 医学部教授千葉茂俊(信州大学学報594号) |author=千葉茂俊 |publisher=信州大学 |date=2003-10 |accessdate=2011-09-21}}</ref>。同様に1905年(明治38年)頃に、乗鞍岳や燕岳でも薬草採りにより採り尽くされた<ref name="shindai" />。
[[File:Dicentra peregrina 03.jpg|thumb|right|200px|他の植物が生育できないような風衝岩屑斜面の砂礫地に長く根を伸ばし単独の大群落をつくる。]]

[[田中澄江]]が『[[花の百名山]]』の著書で、白馬岳を代表する高山植物の一つとしてを紹介した<ref>{{Cite book|和書 |author=田中澄江 |year=1997 |month=6 |title=花の百名山 |publisher=[[文春文庫]] |isbn=4-635-09019-1 |pages=266-269}}</ref>。また『[[新・花の百名山]]』で、[[蓮華岳]]を代表する高山植物の一つとしてを紹介した<ref>{{Cite book|和書 |author=田中澄江 |year=1995 |month=06 |title=新・花の百名山 |publisher=文春文庫 |pages=239-240 |isbn=4167313049 }}</ref>。観光用のおみやげとして販売されている山の[[バッジ]]で、岩手山・草津白根山・[[硫黄岳 (八ヶ岳)|硫黄岳]]・七倉岳・燕岳・[[常念岳]]・乗鞍岳などのものにコマクサの花が刻まれている<ref name="hana-tizu" />。[[後立山連峰]]五竜岳山腹の[[五竜岳#白馬五竜高山植物園|白馬五竜高山植物園]]では、約2万株のコマクサが栽培されていて、7月中旬には「こまくさ祭り」が開催されている<ref>{{Cite web |url=http://www.hakubaescal.com/green/ap_garden/index.html |title=白馬五竜高山植物園 |publisher=株式会社五竜 |accessdate=2011-09-21}}</ref>。絶滅寸前だった[[本白根山]]では、地元の中学生や有志によって復元され大規模な群落となっている<ref>{{Cite web |url=http://www.tsumagoi-kankou.jp/kanko/manza/komakusa.html |title=コマクサ |publisher=群馬県嬬恋村観光協会 |accessdate=2011-09-21}}</ref>。[[御嶽山 (長野県)|御嶽山]]には群生地があり、麓の[[木曽町]]立開田中学校の生徒らが、毎年御嶽山の学校登山を行い調査保護活動を行っている<ref>{{Cite web|url=http://www.nhk.or.jp/shutoken/tabi/2010/0828.html |title=山の歌『祈りの峰いまも~御嶽山~』 |publisher=[[日本放送協会|NHK]]・[[小さな旅]] |date=2010-08-28 |accessdate=2011-09-21}}</ref>。八ヶ岳の硫黄岳山荘では毎年「高山植物保護、山行の安全祈願」の神事として、「駒草祭」が開催されている<ref>{{Cite web|url=http://www004.upp.so-net.ne.jp/iou/event-3/event-2011.html |title=硫黄岳山荘 2011年イベント予定 |publisher=硫黄岳山荘 |accessdate=2011-09-21}}</ref>。[[白山]]では本来分布していなかったコマクサの種が持ち込まれ一部が生育して、この[[外来種]]を除去するため「[[白山国立公園]]コマクサ対策事業」が実施されている<ref>{{Cite web |url=http://chubu.env.go.jp/data/about_3_1.pdf |format=PDF |title=中部地方環境事務所 業務概況 |publisher=環境省中部地方環境事務所 |pages=30 |date=2009-04 |accessdate=2011-09-21}}</ref>。

=== 日本のコマクサの群生地 ===
日本の主なコマクサの群生地は、以下の高山帯である<ref name="hand" /><ref name="shindai" /><ref>{{Cite web|url=http://ims.shinshu-u.ac.jp/files/newsletter/026.pdf |title=上高地物語―その14「コマクサの秘密」 |format=PDF |pages=6 |publisher=山岳科学総合研究所 |date=2011-03 |accessdate=2011-09-21}}</ref>。大雪山系、白馬岳、蓮華岳、燕岳などで大群落が見られる<ref name="hana-tizu" />。八ヶ岳では[[横岳 (八ヶ岳)|横岳]]と[[根石岳]]で大群落が見られる<ref>{{Cite book|和書 |year=2008 |month=05 |author=佐々木亨 |title=八ヶ岳 |series=ヤマケイ アルペンガイド6 |publisher=山と溪谷社 |pages=22,70,79頁 |isbn=9784635013543}}</ref>。[[甲斐駒ヶ岳]]では薬草のために乱採取され絶滅し<ref name="toyohira">{{Cite web|url=http://www.sapporo-park.or.jp/toyohira/wp-content/uploads/2011/06/tayori147.pdf |title=コマクサ(札幌市緑の森センターだより) |format=PDF |pages=1 |publisher=札幌市公園緑化協会 豊平公園緑のセンター |date=2011-06-01 |accessdate=2011-09-21}}</ref>、[[赤石山脈|南アルプス]]には分布していない。御嶽山がその西限で、中央アルプスが南限である。
* '''北海道''' - [[知床半島]]・[[雌阿寒岳]]・[[大雪山|大雪山系]]
* '''東北地方''' - [[岩手山]]・[[秋田駒ヶ岳]]・[[蔵王連峰]]
* '''[[飛騨山脈|北アルプス]]''' - [[白馬岳]]・[[蓮華岳]]・[[燕岳]]・[[乗鞍岳]]
* '''その他''' - [[燧ヶ岳]]・[[草津白根山]]・[[八ヶ岳]]・[[御嶽山 (長野県)|御嶽山]]

=== 木曽駒ヶ岳のコマクサ ===
[[File:Dicentra peregrina garden in Mount Kisokoma 2011-07-03.jpg|thumb|right|200px|[[長野県]][[木曽山脈|中央アルプス]]の[[木曽駒ヶ岳]]の宝剣山荘付近では、営林署によりコマクサの増殖が行われている。]]
[[木曽山脈|中央アルプス]]のコマクサは明治・大正期に薬草として採り尽くされほぼ絶滅したと考えられている<ref name="kisokoma" />。[[大正]]末頃の『信濃教育会誌』の[[木曽駒ヶ岳]]の植物調査結果にコマクサは記載されていない。1960年頃からコマクサの生育が確認されていて、2011年現在宝剣山荘や西駒山荘周辺などで生育しているものは、駒ヶ根営林署や個人が植えたものである<ref name="kisokoma" />。増殖したものの盗掘が確認されている<ref name="kisokoma" />。

=== 種の保全状況評価 ===
日本の各[[都道府県]]で、以下の[[レッドリスト]]の指定を受けている<ref name="jpnrdb">{{Cite web|url=http://jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=06030471826 |title=日本のレッドデータ検索システム(コマクサ) |publisher=エンビジョン環境保全事務局 |accessdate=2011-09-21}}</ref>。[[環境省]]としての、レッドリストの指定はない<ref name="biodic">{{Cite web|url=http://www.biodic.go.jp/rdb/rdb_f.html |title=植物絶滅危惧種情報検索(コマクサ) |publisher=生物多様性情報システム |accessdate=2011-09-21}}</ref>。
* [[絶滅寸前]](絶滅危惧IA類) - [[秋田県]]、[[福島県]]
* [[危急種]](絶滅危惧II類・VU) - [[山形県]]、[[新潟県]]
* [[準絶滅危惧]](NT) - [[北海道]]、[[岩手県]]

環境省により、[[上信越高原国立公園]]・[[中部山岳国立公園]]・[[八ヶ岳中信高原国定公園]]などで自然公園指定植物となっていて、一般の採集は禁止されている<ref>{{Cite web|url=http://www.env.go.jp/park/doc/data/natural/plant_4.pdf |title=国立・国定公園特別地域内指定植物(コマクサ) |format=PDF |pages=3 |publisher=環境省自然環境局 |accessdate=2011-09-21}}</ref>。

=== コマクサ園がある施設 ===
以下の[[植物園]]の施設などで、コマクサが栽培展示されている。
* [[ミニ尾瀬公園]]
* 東館山高山植物園([[志賀高原]])
* 白馬山麓植物園([[白馬村]])
* [[五竜岳#白馬五竜高山植物園|白馬五竜高山植物園]]
* [[国営アルプスあづみの公園]]
* [[大町山岳博物館]]
* コマクサ高山植物園([[ヘブンスそのはらSNOW WORLD]])
* 御岳ロープウェイ山麓駅お花畑([[御岳ロープウェイスキー場]])
* [[六甲高山植物園]]


== 毒性 ==
== 毒性 ==
{{medical}}
全株が有毒。ディセントリン、プロトピンなどを含み、中毒症状としては嘔吐・体温の低下・呼吸麻痺・心臓麻痺がみられる。
日本の[[薬学|薬学者]]の[[朝比奈泰彦]]が、コマクサの成分分析の研究報告を行っている<ref name="asahina" />。全株が有毒。微量の[[アルカロイド]]のディセントリンやプロトピンなどの[[モルヒネ]]用物質含み<ref name="igaku" />、中毒症状としては嘔吐・体温の低下・呼吸麻痺・心臓麻痺がみられる。

== 近縁種 ==
[[File:Dicentra peregrina White Komakusa in Tsubakurodake 2002-7-27.jpg|thumb|right|200px|稀に見られる白い花のシロバナコマクサ(''Dicentra peregrina'' f. ''alba'') 、[[燕岳]]の花崗岩の砂礫地にて(2002年・7月)]]
コマクサ属は約20種あるが、日本に自生している種はコマクサとシロバナコマクサのみである<ref name="toyohira" />。
* '''シロバナコマクサ'''(白花駒草、学名:''Dicentra peregrina'' f. ''alba'')- 白い花の[[亜種]]が稀に見られる。北海道の危急種に指定されている<ref>{{Cite web|url=http://jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=06030471827 |title=日本のレッドデータ検索システム(シロバナコマクサ) |publisher=エンビジョン環境保全事務局 |accessdate=2011-09-21}}</ref>。
* '''ハナケマンソウ'''(花華鬘草、学名:''Dicentra formosa'')- 別名がアメリカコマクサとセイヨウコマクサで、[[北アメリカ]]が原産地。  
* '''[[ケマンソウ]]'''(華鬘草、学名:''Dicentra spectabilis'')- 別名がタイツリソウ。ハート型の花を付ける。


== 紋章・校章 ==
==その他==
以下の学校で、[[紋章]]や[[校章]]とされている。
日本では北海道[[大雪山]]にのみ生育する[[天然記念物]]の[[ウスバキチョウ]]の幼虫は、コマクサを食草としている。
* [[信州大学]]の紋章<ref name="shindai" /> ([[長野県]]、「信州大学こまくさ寮」の名称の寮がある。)
* [[信州大学教育学部付属松本小学校]]の校章 (長野県)
* [[岡谷南高等学校]]の校章 (長野県)
* [[角館南高等学校]]の校章 ([[秋田県]])


== 関連画像 ==
[[長野県]]の[[信州大学]]の[[紋章]]にもなっている。
{| class="wikitable"
|-
|[[File:Dicentra peregrina Komakusa.jpg|x140px]]
|[[File:Dicentra peregrina fruit in Mount Ontake 2011-09-18.jpg|x140px]]
|[[File:Dicentra peregrina seed in Mount Ontake 2011-09-18.jpg|x140px]]
|[[File:Dicentra peregrina yellow leaf in Mount Ontake 2011-09-18.jpg|x140px]]
|-
| コマクサ<br /><small>2007年8月・[[乗鞍岳]]</small>
| 花と実<br /><small>2011年9月・[[御嶽山 (長野県)|御嶽山]]</small>
| 黒い光沢のある種子<br /><small>2011年9月・御嶽山</small>
| 花が散った後に黄葉した群落<br /><small>2011年9月・御嶽山</small>
|}


== 脚注 ==
[[長野県]]の[[岡谷南高等学校]]の[[校章]]にもなっている。
{{脚注ヘルプ}}
{{reflist}}


== 関連書籍 ==
[[長野県]]の[[信州大学教育学部付属松本小学校]]の[[校章]]にもなっている。
* {{Cite book|和書 |author=尾沢洋 |year=2006 |month=4 |title=こまくさの詩―本白根山駒草復元の記 |publisher=[[文芸社]] |isbn=4286012492 |pages=}}


== 関連項目 ==
[[秋田県]]の[[角館南高等学校]]の[[校章]]にもなっている。
{{wikispecies|Dicentra peregrina}}
{{commons&cat|Dicentra peregrina|Dicentra peregrina}}
* [[高山植物]]
* [[花の百名山]] ([[白馬岳]])
* [[新・花の百名山]] ([[蓮華岳]])
* [[ウスバキチョウ]] (食草)


==外部リンク==
== 外部リンク ==
[http://www.alpine-plants-jp.com/art/komakusa_1.htm フラボン:八ヶ岳のコマクサ]
* [http://www.alpine-plants-jp.com/art/komakusa_1.htm フラボン:八ヶ岳のコマクサ]


==日本の高山に咲くコマクサ==
<gallery>
ファイル:Dicentra peregrina Komakusa.jpg|<small>[[富士見岳]]のコマクサ(2007.8.13)</small>
ファイル:Dicentra peregrina White Komakusa in Tsubakurodake 2002-7-27.jpg|<small>[[燕岳]]([[飛騨山脈]])のコマクサ</small>
</gallery>
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[[Category:ケマンソウ科]]
[[Category:ケマンソウ科]]

2011年9月21日 (水) 13:05時点における版

コマクサ
コマクサ(御嶽山継子岳・2005/8/7)
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ケシ目 Ranunculales
: ケマンソウ科 Fumariaceae
: コマクサ属 Dicentra
: コマクサ D. peregrina
学名
Dicentra peregrina (Rudolph) Makino
和名
コマクサ(駒草)

コマクサ(駒草、学名Dicentra peregrina (Rudolph) Makino)は、ケマンソウ科コマクサ属多年草高山植物ケシ科の一部に含めることもある。

特徴

美しいと、常に砂礫が動き、他の植物が生育できないような厳しい環境に生育する事から「高山植物の女王」と呼ばれている。和名はその花の形が)の顔に似ていることに由来する[1]。学名のMakinoは、命名した日本の植物学者牧野富太郎の名前である[2]。学名の小種名の「peregrina」は、「外来の」を意味する[3]。別名が「カラフトコマクサ(樺太駒草)」[4]。英名は存在しない。花言葉は、「高嶺の花」・「誇り」・「気高い心」・「貴重品」[5]

高さ5 cmほど。葉は根生葉で細かく裂けパセリのように見え、白く粉を帯びる。花期は7-8月。花茎は10-15 cmで淡紅色の花を咲かせる。花弁は4個で外側と内側に2個ずつつく。外側の花弁は下部が大きくふくらんで、先が反り返り、内側の花弁はやや小さく、中央がくびれ、上端は合着している。萼片は2個で早く落ちる。他の植物が生育できないような砂礫地に生えるため、地上部からは想像できないような50-100 cmほどの長い根を張る。タカネスミレなども同様な場所に生育し混生することもあるが、単独の群落をつくることが多い[3][6]。双子葉類の植物だが子葉の発達が悪く、子葉は一個しか出ない。花が涸れると長さ約1.2 cmの細長い楕円形となり、光沢のある黒い種子ができる[3]染色体数が、2n=16の2倍体である[4]

北海道大雪山系では、ウスバキチョウの幼虫がコマクサを食草としている。

日本では北海道大雪山にのみ生育する天然記念物ウスバキチョウの幼虫は、日本ではコマクサを食草としていて、葉の他に茎や花も食べる。他の国では他の同科キケマン属の植物を食草としている[3][7]。花の蜜を吸いにきたマルハナバチなどが受粉を行う[8]

分布

千島列島樺太カムチャッカ半島シベリア東部の東北アジアと日本の北海道から中部地方高山帯の風衝岩屑斜面などの砂礫帯に分布している[3]。大きな岩礫の地にも分布するが、直径0.5-20 cmの礫地または砂礫地に群落をつくる[9]。大雪山の赤岳と宮城県の蔵王連峰には、「駒草平」という地名がある[10]。秋田県田沢湖町(現仙北市)の「町の花」であった。基準標本は、北太平洋のもの[3]。日本にある最も古い標本は、1886年の帝大標本目録にある信州駒ヶ岳産(1880年8月に採取されたもの)のものである[11]。昔は、花の美しさよりも薬草としての価値が高く、古くから腹痛の妙薬として知られていた。御嶽山では登山記念として、コマクサを「オコマグサ」という名で、一株一銭で登山者に売られていたようで、そこからコマクサは「一銭草」とも云われている。「御百草」(おひゃくそう)の原料の一つとして、薬草が修験者に利用され多くが採り尽くされた[12]。現在製造されている長野県製薬の御岳百草丸には、使用されていない[13]。同様に1905年(明治38年)頃に、乗鞍岳や燕岳でも薬草採りにより採り尽くされた[12]

他の植物が生育できないような風衝岩屑斜面の砂礫地に長く根を伸ばし単独の大群落をつくる。

田中澄江が『花の百名山』の著書で、白馬岳を代表する高山植物の一つとしてを紹介した[14]。また『新・花の百名山』で、蓮華岳を代表する高山植物の一つとしてを紹介した[15]。観光用のおみやげとして販売されている山のバッジで、岩手山・草津白根山・硫黄岳・七倉岳・燕岳・常念岳・乗鞍岳などのものにコマクサの花が刻まれている[6]後立山連峰五竜岳山腹の白馬五竜高山植物園では、約2万株のコマクサが栽培されていて、7月中旬には「こまくさ祭り」が開催されている[16]。絶滅寸前だった本白根山では、地元の中学生や有志によって復元され大規模な群落となっている[17]御嶽山には群生地があり、麓の木曽町立開田中学校の生徒らが、毎年御嶽山の学校登山を行い調査保護活動を行っている[18]。八ヶ岳の硫黄岳山荘では毎年「高山植物保護、山行の安全祈願」の神事として、「駒草祭」が開催されている[19]白山では本来分布していなかったコマクサの種が持ち込まれ一部が生育して、この外来種を除去するため「白山国立公園コマクサ対策事業」が実施されている[20]

日本のコマクサの群生地

日本の主なコマクサの群生地は、以下の高山帯である[4][12][21]。大雪山系、白馬岳、蓮華岳、燕岳などで大群落が見られる[6]。八ヶ岳では横岳根石岳で大群落が見られる[22]甲斐駒ヶ岳では薬草のために乱採取され絶滅し[23]南アルプスには分布していない。御嶽山がその西限で、中央アルプスが南限である。

木曽駒ヶ岳のコマクサ

長野県中央アルプス木曽駒ヶ岳の宝剣山荘付近では、営林署によりコマクサの増殖が行われている。

中央アルプスのコマクサは明治・大正期に薬草として採り尽くされほぼ絶滅したと考えられている[11]大正末頃の『信濃教育会誌』の木曽駒ヶ岳の植物調査結果にコマクサは記載されていない。1960年頃からコマクサの生育が確認されていて、2011年現在宝剣山荘や西駒山荘周辺などで生育しているものは、駒ヶ根営林署や個人が植えたものである[11]。増殖したものの盗掘が確認されている[11]

種の保全状況評価

日本の各都道府県で、以下のレッドリストの指定を受けている[24]環境省としての、レッドリストの指定はない[25]

環境省により、上信越高原国立公園中部山岳国立公園八ヶ岳中信高原国定公園などで自然公園指定植物となっていて、一般の採集は禁止されている[26]

コマクサ園がある施設

以下の植物園の施設などで、コマクサが栽培展示されている。

毒性

日本の薬学者朝比奈泰彦が、コマクサの成分分析の研究報告を行っている[2]。全株が有毒。微量のアルカロイドのディセントリンやプロトピンなどのモルヒネ用物質含み[13]、中毒症状としては嘔吐・体温の低下・呼吸麻痺・心臓麻痺がみられる。

近縁種

稀に見られる白い花のシロバナコマクサ(Dicentra peregrina f. alba) 、燕岳の花崗岩の砂礫地にて(2002年・7月)

コマクサ属は約20種あるが、日本に自生している種はコマクサとシロバナコマクサのみである[23]

  • シロバナコマクサ(白花駒草、学名:Dicentra peregrina f. alba)- 白い花の亜種が稀に見られる。北海道の危急種に指定されている[27]
  • ハナケマンソウ(花華鬘草、学名:Dicentra formosa)- 別名がアメリカコマクサとセイヨウコマクサで、北アメリカが原産地。  
  • ケマンソウ(華鬘草、学名:Dicentra spectabilis)- 別名がタイツリソウ。ハート型の花を付ける。

紋章・校章

以下の学校で、紋章校章とされている。

関連画像

コマクサ
2007年8月・乗鞍岳
花と実
2011年9月・御嶽山
黒い光沢のある種子
2011年9月・御嶽山
花が散った後に黄葉した群落
2011年9月・御嶽山

脚注

  1. ^ 林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月、456頁。ISBN 9784635090421 
  2. ^ a b 朝比奈泰彦. “駒草ノ成分(東京醫科大學藥學科生藥學教室報告)”. CiNii. 2011年9月21日閲覧。
  3. ^ a b c d e f 豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1988年9月、428-429頁。ISBN 4-635-09019-1 
  4. ^ a b c 木原浩『高山に咲く花』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2002年7月、296-297頁。ISBN 4635070085 
  5. ^ 山岳博物館前のコマクサ”. 大町市観光協会 (2011年6月18日). 2011年9月21日閲覧。
  6. ^ a b c 『花の百名山地図帳』山と溪谷社、2007年5月、19,22-23,55,156-157,161,168,177,252-253頁頁。ISBN 9784635922463 
  7. ^ 猪又敏男(編・解説)、松本克臣(写真)『蝶』山と溪谷社〈新装版山溪フィールドブックス〉、2006年6月、96頁。ISBN 4-635-06062-4 
  8. ^ ピッキオ『花のおもしろフィールド図鑑 春』実業之日本社、2001年6月、237頁。ISBN 4408394750 
  9. ^ 館脇操 (1951年6月30日). “コマクサの分布と生態”. CiNii. 2011年9月21日閲覧。
  10. ^ 地図閲覧サービス(駒草平)”. 国土地理院. 2011年9月21日閲覧。
  11. ^ a b c d 林芳人『中央アルプス駒ヶ岳の高山植物』ほおずき書籍、2002年8月、51,96-97頁頁。ISBN 4434022679 
  12. ^ a b c d 千葉茂俊 (1996年2月). “信州大学のシンボルの花・駒草にまつわる話”. 信州大学. 2011年9月21日閲覧。
  13. ^ a b 千葉茂俊 (2003年10月). “随想 駒草に“花言葉”を 医学部教授千葉茂俊(信州大学学報594号)”. 信州大学. 2011年9月21日閲覧。
  14. ^ 田中澄江『花の百名山』文春文庫、1997年6月、266-269頁。ISBN 4-635-09019-1 
  15. ^ 田中澄江『新・花の百名山』文春文庫、1995年6月、239-240頁。ISBN 4167313049 
  16. ^ 白馬五竜高山植物園”. 株式会社五竜. 2011年9月21日閲覧。
  17. ^ コマクサ”. 群馬県嬬恋村観光協会. 2011年9月21日閲覧。
  18. ^ 山の歌『祈りの峰いまも~御嶽山~』 ”. NHK小さな旅 (2010年8月28日). 2011年9月21日閲覧。
  19. ^ 硫黄岳山荘 2011年イベント予定 ”. 硫黄岳山荘. 2011年9月21日閲覧。
  20. ^ 中部地方環境事務所 業務概況” (PDF). 環境省中部地方環境事務所. pp. 30 (2009年4月). 2011年9月21日閲覧。
  21. ^ 上高地物語―その14「コマクサの秘密」” (PDF). 山岳科学総合研究所. pp. 6 (2011年3月). 2011年9月21日閲覧。
  22. ^ 佐々木亨『八ヶ岳』山と溪谷社〈ヤマケイ アルペンガイド6〉、2008年5月、22,70,79頁頁。ISBN 9784635013543 
  23. ^ a b コマクサ(札幌市緑の森センターだより)” (PDF). 札幌市公園緑化協会 豊平公園緑のセンター. pp. 1 (2011-06-01). 2011年9月21日閲覧。
  24. ^ 日本のレッドデータ検索システム(コマクサ)”. エンビジョン環境保全事務局. 2011年9月21日閲覧。
  25. ^ 植物絶滅危惧種情報検索(コマクサ)”. 生物多様性情報システム. 2011年9月21日閲覧。
  26. ^ 国立・国定公園特別地域内指定植物(コマクサ)” (PDF). 環境省自然環境局. pp. 3. 2011年9月21日閲覧。
  27. ^ 日本のレッドデータ検索システム(シロバナコマクサ)”. エンビジョン環境保全事務局. 2011年9月21日閲覧。

関連書籍

関連項目

外部リンク