パーキンソン症候群

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パーキンソン症候群
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パーキンソン症候群 (Parkinson's syndrome) とはパーキンソン病およびパーキンソン病症状を呈する疾患の総称である。パーキンソニズム (parkinsonism) ともよばれるが、パーキンソニズムは疾患群を意味するほかに下記の症状そのものをも意味する。

定義[編集]

パーキンソン症候群とは安静時振戦、無動(瞬目減少、仮面様顔貌、運動量の減少、運動の緩慢さ)、筋強剛、姿勢保持反射の主要四徴候のうち2つ以上が認められる場合をいう。文献によっては四肢体幹の屈曲位、すくみ現象を含めた六徴のうち安静時振戦、無動のほかもうひとつがあった場合を指す場合もある。筋強剛を中核症状と考えることが多い。

症状[編集]

安静時振戦(tremor)

安静時振戦は毎秒5~6サイクルの比較的遅い振戦である。両手を前方挙上して姿勢をとったり随意運動を行うと振戦は減弱または消失する。

固縮(rigidity)

固縮とは筋を受動的に進展した時に検者がうける抵抗である。固縮は頸部、体幹にも生じることがある。

動作緩慢(bradykinesia)

動作緩慢は随意運動の開始に時間がかかり、開始された動作もゆっくりしか行えない減少である。随意運動全てにわたって現れ、手足の日常動作、歩行がゆっくりしか行えなくなる。座っている時も辺りを見渡したり、足を組んだりといった動作が少なくなりじっと座っているようになる。無動ともいう。動作緩慢、無動に起因する症状は様々である。瞬きが少なくなり目の自然な動きも少なくなって、じっと1ヶ所見つめている症状はreptile stareといい外眼筋に現れた無動である。表情が少なくなり能面のような顔貌になる。これは仮面様顔貌というが顔面筋に現れた無動である。声が小さくなるのは構音筋の動作緩慢である。流涎(drooling)は咀嚼筋や嚥下筋に現れた無動である。字を書いているうちにだんだん小さくなるのは小書症(micrographia)は書字にあらわれた動作緩慢である。身体診察で動作緩慢を評価するときは指タップと回内回外運動がわかりやすい。片側ずつできるだけ大きく、速くするように命じるとわかりやすくなる。大きさが小さく、速度も遅ければ動作緩慢ありと評価する。

歩行障害

歩行に時間がかかり、すり足となり、歩幅も小さくなる。これは歩行に現れた動作緩慢である。歩き始めるとだんだん歩幅が小さくなり、前傾姿勢が強くなり、何かにつかまってやっと立ち止まる現象はfestinationあるいはpropulsionという。動作緩慢に姿勢保持反射障害が加わったものである。パーキンソン病患者の場合、合併症がない限りYahrⅢ度までの患者ならば継脚歩行が可能である。10歩以上継脚歩行ができることがほとんどである。他に前傾姿勢や腕のふりの低下などが知られている。

姿勢保持反射障害(loss of righing reflex)

わずかな外力が加わった場合姿勢を立て直すことの障害である。後方突進現象が最も早期に出現することが多い。

すくみ足(freezing of gait)

すくみ足は歩行開始時、曲がり角、部屋などへの入り口、狭い場所、方向転換時におきる。一歩を出そうとすると足がプルプルと細かくふるえ前に出ない。上体のみ前屈がだんだん強くなり前方に点灯してしまう。あるいは小走りに前方に歩き出すも自分では止まれず、ものにつかまってやっと立ち止まるか、つかまるものがなければ転んでしまう。

姿勢異常

姿勢が前かがみになる、これを前傾姿勢(stooped posture)という。前傾姿勢かどうかは胸椎上部が前屈しているかで評価する。その他の姿勢異常には腰折れ(camptocormia)やピサ症候群(pisa syndrome)や首下がり(Ante-collis)が知られている。頚椎での前屈は首下がりで腰椎での前屈が腰折れである。これらの現象は体幹筋に現れたジストニアの一種という考えが有力である。それは仰臥位になるとこれらの症状は軽快し、座位や起立位で悪化するからである。一部の症例では体幹筋の筋炎が原因という考え方もある。体幹筋の筋生検で筋炎様の変化が認められステロイドで改善したという報告もある。

2つの異なる動作の遂行障害(Distubance of simultaneous acts)

右手で三角形を書き、左手でマンシェットを何回も押すという作業をしようとすると、個々の動作が可能だが、同時に二つの動作ができず、片方の作業を中断してしまう現象である。

分類[編集]

本態性パーキンソン症候群、二次性パーキンソン症候群、症候性パーキンソン症候群に分類される。[1]

本態性パーキンソン症候群[編集]

パーキンソン病のほか若年発症パーキンソニズム、遺伝性パーキンソニズムが含まれる。パーキンソン病 (PD)、パーキンソン病-認知症 (PDD)、レビー小体型認知症 (DLB)をまとめてレビー小体病と呼ぶこともある。

パーキンソン病

発症年齢は55歳から70歳が多い。初発症状は約50%の患者で振戦で始まる。振戦は一側の上肢で始まることが多いが、下肢で始まる症例もある。一側の上肢で始まった場合は、同側の下肢、反対側の上肢、反対側の下肢へ広がる場合が多いが、必ずしも全肢に広がるわけではない。振戦が下肢に始まった場合は同側の上肢、反対側の下肢、反対側の上肢に進行する。振戦はパーキンソン病患者の経過中70~80%にみられる。約30%の症例では下肢の歩行障害で発症する。一側にはじまり反対側に進行する。すり足になることが多い。残り20%は手の動作緩慢に関連した症状で発症する。パーキンソン病の振戦は安静時振戦である。しかし稀に姿勢をとると瞬時振戦は消失するが平均10秒程度の潜時で振戦が再現し次第に強くなることがあr。これをre-emergent tremorという。パーキンソン病の固縮は左右差があり、初発の側に強い。上肢は歯車様固縮のことが多く、下肢は鉛管様固縮のことが多い。歯車現象は振戦のリズムで生じるという考え方もある。固縮は頸部、体幹に出現する。頸部固縮も歯車現象があることが多い。四肢の固縮に比べて体幹や頸部の固縮は治療反応が乏しい。またパーキンソン病では非運動症状が伴うことが多い。特に便秘、嗅覚低下、入眠障害、中途覚醒、レム睡眠行動異常、夜間の頻尿などが多い。

遺伝性パーキンソン病[編集]

遺伝性パーキンソン病は単一遺伝子の変異で起きるパーキンソン病であり2012年現在で18の遺伝性病型が報告されており、原因遺伝子は10個発見されている。遺伝形式は常染色体優性遺伝と常染色体劣性遺伝が知られている。これら遺伝性パーキンソン病に共通するのは中脳の黒質に障害があること、L-DOPAが有効な点である。中には知的機能障害、核上性眼球運動障害、錐体路徴候などを伴う症例もある。

PARK1/4

PARK1/4-linked PDはαシヌクレイン遺伝子の変異で起こる常染色体性優性遺伝のパーキンソン病である。αシヌクレイン遺伝子は4番染色体の長腕にあり117kbの長さで6個のエクソンからなるαシヌクレインをコードする。αシヌクレインは分子量14460であり140個のアミノ酸からなる蛋白質で二次構造を持たない蛋白質で、核と細胞質に発言している。シナプス伝達に何らかの役割を果たしていると考えられているが詳細は不明である。2012年現在PARK1/4-linked PDの原因として3種類の点変異と3重重複、2重重複が報告されている。重複症例はαシヌクレインの発現量が高く、それ自体がパーキンソン病の引き金になる。点変異はαシヌクレインが凝集しやすくなるため発症すると考えられている。

DYT3

DYT3はフィリピンのPany Islandの住民にみられる伴性劣性のジストニア・パーキンソニズムである。発症年齢は20から50歳で99%は男性である。臨床徴候は20代から30代に始まるジストニアで最初は一肢にはじまり、全身に及ぶ。最初始まる部位は下肢か頭頸部が多い。病理学的には尾状核と被殻が著明に萎縮している。

二次性パーキンソン症候群[編集]

二次性パーキンソン症候群とはパーキンソン病以外の神経変性疾患でパーキンソン症状も伴うものをいう。

多系統萎縮症

パーキンソン症状、小脳失調、自律神経障害などを症状とする孤発性の疾患。元来線条体黒質変性症 (SND) 、オリーブ橋小脳萎縮症 (OPCA) およびシャイ・ドレーガー症候群 (SDS) の3つの疾患が一つの疾患として認められるようになった。現在では、パーキンソニズムを主な症状とするMSA-Pと小脳症状を主とするMSA-Cに分類するようになった。

進行性核上性麻痺

進行性核上性麻痺(しんこうせいかくじょうせいまひ、PSP (progressive supranuclear palsy))は、視床下核、黒質など脳内の特定部位の神経細胞が減少することにより、眼球運動障害(特に垂直方向)、歩行異常や姿勢異常(頭部や上半身の後屈)、認知症や嚥下困難などを起こす疾患。このような古典的症状を呈する型 (リチャードソン症候群ともよばれる) 以外に、様々な亜型が存在することがわかってきた。日本では特定疾患に指定されている。パーキンソン病との鑑別が難しいことがある。

大脳皮質基底核変性症

大脳皮質基底核変性症(だいのうひしつきていかくへんせいしょう、CBD)は、パーキンソン症状や、腕や手が思い通りに動かない観念運動失行などを主な症状とする疾患。日本では特定疾患に指定されている。

ピック病
淡蒼球ルイ体萎縮症

淡蒼球・ルイ体、黒質の単純萎縮を呈する極めて稀な疾患である。

FTDP-17(MAPT)(17番染色体に連鎖する前頭側頭型認知症パーキンソニズム)

FTDP-17(MAPT)とは17番染色体長腕(17q21-22)に存在するタウ遺伝子(MAPT)の変異で起きる認知症とパーキンソン症候群を主徴とする優性遺伝の疾患である。progranulin遺伝子も17番染色体にあり、progranulin遺伝子変異による前頭側頭型認知層はFTDP(PRGN)と区別される。発症年齢は20~65歳、臨床症状は前頭葉型の認知症(性格変化、反社会的行動、自制力の欠如、性的行動異常、遂行機能障害、記銘力低下など)、振戦、固縮、無動、突進現象、歩行障害などからなるパーキンソン症候群が主体である。

FTDP-17(PRGN)(17番染色体に連鎖する前頭側頭型認知症パーキンソニズム)

FTDP-17(PRGN)とは17番染色体のprogranulin遺伝子変異によって起きる認知症とパーキンソン症候群を主徴とする優性遺伝の疾患である。progranulin遺伝子はタウ遺伝子と1.7Mb離れているだけで同じ17番染色体長腕に位置する。症状はFTDP-17(MAPT)に比べると個人差が多い。

FTLD-U(ユビキチン封入体を伴う前頭側頭型認知症)
アルツハイマー型認知症
ハンチントン病

ハンチントン病は舞踏運動と認知症を主徴とする優性遺伝の疾患である。若年発症者の一部は動作緩慢・固縮がたをとる。不随意運動はあっても軽度であり、固縮、動作緩慢、歩行障害などのパーキンソン症候群を呈する。固縮型でも頭部MRIでは尾状核の萎縮は著明であり、線条体にはT2高シグナル領域が出現する。黒質は正常である。舞踏運動の治療薬としてはモノアミン小胞トランスポータータイプ2の選択的阻害薬であるテトラベナジン(商品名:コレアジン)が知られている。

PKAN(pantothenate-kinase-associated neurodegeneration)

PKANは1922年HallervordenとSpatzが初めて報告した疾患である。発症年齢は10歳から30歳程度である。臨床症状は多彩でジストニア、コレア、アテトーシスが前景にたつが、さらに動作緩慢、固縮、歩行障害、すくみ足などパーキンソン症候群を示す。症例によっては網膜色素変性、視神経萎縮、小脳失調、痙攣、筋萎縮、認知症などを示す。病理所見では鉄が淡蒼球と黒質に貯まるのが特徴である。常染色体劣性遺伝でありPANK2の変異が原因である。PANK2はアセチルCoAの生合成の酵素の遺伝子である。この遺伝子異常の結果脳に鉄が沈着するNBIA(neuronal brain iron storage disease)となる頭部MRIでは淡蒼球にT2低シグナル化とその中に等シグナルの領域が出現して虎の顔のように見える特徴がある。鉄の沈着を不ゼグためキレート剤であるdeferiprone(サラセミア治療でも用いることがある)を用いるという治験がアメリカで行われた。

Neuroferritinopathy

Neuroferritinopathyは常染色体優性遺伝の疾患で19番染色体長腕にあるferritin light chainの遺伝子、FTL1の変異でおこる疾患である。脳にフェリチンが沈着し神経細胞死が起きる。発症年齢は13歳から63歳である。臨床症状はジストニア、コレア、パーキンソン症候群、小脳失調が知られている。特に顔面領域、口唇、舌におきるジストニア著明である。進行すると皮質下認知症も出現する。神経病理では被殻、線条体のかなりの部分は組織が崩壊し、空洞化がみられる。この空洞化は淡蒼球にまでおよぶ。組織が残存している部分には免疫染色でフェリチンと鉄の沈着が認められる。検査所見では血清フェリチンレベルが低下し、脳MRIでは淡蒼球、黒質、赤核、小脳歯状核にT2低シグナルが現れ、被殻、尾状核にはT2高シグナルが現れる。T1WIではT2WIで低シグナルになった領域が高シグナルになる。T2低シグナルは鉄の沈着を反映し、T2高シグナルは組織の変性を反映する。ドパミントランスポーターのSPECTは正常である。

セルロプラスミン欠損症

セルロプラスミン欠損症は常染色体劣性遺伝の疾患であり、日本の宮島らによってはじめて報告された。セルロプラスミンの運搬蛋白であるがferrixudase作用があり、鉄をトランスフェリンに渡す時に二価鉄を酸化鉄に酸化させる作用がある。日本におけるセルロプラスミン欠損症の頻度は血族結婚を伴わない場合は200万人に1人、保因者は頻度は人口10万人につき70人と報告されている。発症年齢は30歳から50歳、臨床症状は糖尿病、網膜色素変性、ジストニア、パーキンソン症候群、小脳失調、認知症である。神経病理では鉄が肝臓、膵臓、網膜、小脳に沈着する。そのため神経系では神経細胞死が線条体、視床、小脳歯状核に生じる。検査所見では血清セルロプラスミンが検出されない(この所見は診断根拠になり得る)。また血清フェリチンは高く、血清鉄は低く、鉄欠乏性貧血が存在する。脳MRIではT2低シグナル領域が線条体、淡蒼球、視床、黒質、赤核、歯状核に現れる。大脳皮質や小脳皮質にもT2低シグナル領域がみられる。治療は鉄キレートであるデフェロキサミンを早期から使用することで臨床症状の軽減が報告されている。

ウィルソン病

ウィルソン病は常染色体劣性遺伝の疾患であり銅輸送蛋白の一種であるATP7Bの変異で起きる。ATP7Bの欠損で銅が肝臓から胆汁に排出されず銅が各組織に沈着して障害を起こす。なお、ATP7Aの遺伝子変異はMenkes病を起こし銅欠乏を示す。発症年齢は6歳から20歳が多いがもっと高齢での発症も少なくない。ウィルソン病の頻度は人口10万人あたり1~4人である。神経症状は構音障害、ジストニア、コレア、パーキンソン症候群、精神症状、認知症が知られている。上肢を肘を曲げて挙上した時に鳥が羽撃くように肘から前腕を大きく震わせる振戦が特徴である。角膜にはカイザー・フライシャー角膜輪が出現し、肝臓には肝硬変の所見が出現する。錐体外路系の症状とカイザー・フライシャー角膜輪に注目すれば診断は困難ではない。検査所見では血清セルロプラスミンは低値を示す。血清銅は低下しているが尿中への銅排出は増加している。24時間に100μg以上の排出があれば診断可能である。頭部MRIではT2高シグナル領域が線条体と視床に出現する。またT1WIでは被殻、淡蒼球が高シグナル領域になる。遺伝子診断が可能ならばATP7B変異が検出できる。治療は銅を多量に含む食事を制限することである。きのこ、ナッツ、チョコレート、乾燥果物、レバー、貝に多い。薬物療法としては銅キレートであるDペニシラミン(商品名:メタルカプターゼ)や塩酸トリエンチン(商品名:メタライト)が用いられる。約20%の患者でDペニシラミンの副作用でSLE様症状や筋無力症様症状がおこるため注意が必要である。キレート剤の副作用の問題から経口酢酸亜鉛(商品名:ノベルジン)もよく用いられる。肝不全では肝移植が考慮される。

脆弱X関連振戦/失調症候群(FAXTAS)

FAXTASはX染色体にある脆弱X遺伝子(FMR1)の5‘側にある非翻訳領域のCGG繰り返し配列の部分伸長による神経変性疾患である。症状の強さは伸長の強さに並行する。伸長したmRNAはtoxic gain of functionを示し、これが発症機序と考えられる。脆弱X症候群の完全変異では脆弱X症候群の蛋白質が作られず精神薄弱を呈する。発症年齢は成人男子で60歳代が多い。女性の保因者に症状が出現することはあるが軽度である。認知症、精神症状、企図振戦、体幹失調、パーキンソン症候群、末梢神経障害を示す。頭部MRIでは白質にT2延長病変、大脳皮質の萎縮、中小脳脚のT2延長病変が特徴である。FAXTASは通常企図振戦が主症状であり安静時振戦、固縮、後方突進などは稀である。

ゴーシェ病

ゴーシェ病の原因であるGBA遺伝子の変異があると孤発性パーキンソン病になりやすいとされているがその原因は未だ不明である。

症候性パーキンソン症候群[編集]

症候性パーキンソン症候群とは変性・代謝異常以外の疾患で病変がたまたま黒質線条体を障害したためにパーキンソン症候群が出現する病態である。

脳血管障害性パーキンソン症候群

ラクナ梗塞後、特に多発性ラクナ梗塞に発症することが多い。ラクナ梗塞は大脳基底核に好発するためと考えられる。ビンスワンガー型白質脳症でパーキンソニズムを呈することもある。

正常圧水頭症
薬物性パーキンソン症候群

多くの薬剤の副作用として起こる。服用後数日から数週間で発症することが多い。またパーキンソン病と異なり左右対称性に症状が発現する傾向がある。女性・高齢者で起こりやすく、同じ薬剤なら服用量が多いほど起きやすい。ジスキネジアアカシジアといった不随意運動を伴いやすい。厚生労働省の重篤副作用疾患別対応マニュアルなどで確認できる。以下の薬剤で起こる。

中毒性パーキンソン症候群

一酸化炭素マンガン水銀MPTP(1-メチル4-フェニル1,2,3,6-テトラヒドロピリジン)などの中毒によってパーキンソン症状が引き起こされることがある。

  • マンガン中毒

マンガン中毒によるパーキンソン症候群は固縮、動作緩慢、歩行障害、突進現象などの点ではパーキンソン病に似ているが振戦は稀で症状の非対称性も顕著ではない。マンガン中毒はマンガン鉱山で働いていた人や皮なめし業に従事していた人に起こりえる。頭部MRIでは淡蒼球にT1WIで高信号域を示すのが特徴である。治療は暴露中止である。L-DOPAの反応はよくない。

  • 一酸化炭素中毒

一酸化炭素中毒は炭鉱爆発、ガス中毒、練炭などの不完全燃焼、自動車の排気ガスの吸入などで起こる。急性中毒症状はめまい、吐き気、意識障害などである。急性中毒症状から回復して2週間から1ヶ月半の後に再び脳症を起こすことがある。これをDelaued encephalopathyという。症状は意識槽外、失外套症候群、認知症、ジストニアなど不随意運動、パーキンソン症候群、総脳失調である。運動症状はパーキンソン症候群が多いがパーキンソン症候群のみを示す例は少ない。CTでは淡蒼球に両側性に空胞化があり壊死を反映する。臨床経過は改善するものもあるが、急性期から回復した後神経症状を呈し、それが進行するものもある。

  • 二硫化炭素中毒

二硫化炭素は無色の液体で、硫黄、リン、樹脂、ゴムを溶かすのに使用され、ビスコースレーヨンや殺虫剤の製造でも使用される。揮発性が高く、皮膚からも吸収される。換気のよい職場で使用しないと中毒に至る。症状は小脳失調、パーキンソン症候群、末梢神経障害が主であるが脳障害を起こして認知機能低下を起こすこともある。頭部MRIでは広範な白質、大脳基底核、脳幹にT2延長病変が認められる。

  • MPTP

MPTPは実験的パーキンソン症候群の作成によく用いられる物質である。自家製麻薬の副産物としてできるため麻薬施用者のなかからパーキンソン症候群を示すものが出現した。急性発症であり、固縮、動作緩慢、姿勢反射障害、歩行障害を示すが振戦は少ない。Wearing offも出現することがある。パーキンソン病治療薬で劇的に改善する。

脳炎後パーキンソン症候群

1918年ごろに世界的に流行した嗜眠性脳炎(エコノモ脳炎)感染後のパーキンソニズムが有名である。映画「レナードの朝」で扱われている。その他の脳炎(日本脳炎など)や脳炎以外の感染症(クロイツフェルト・ヤコブ病神経梅毒など)にも合併する。

クロイツフェルト・ヤコブ病
傍腫瘍性パーキンソン症候群

傍腫瘍性神経症候群では辺縁系脳炎や脳幹脳炎の形をとることが多く、記憶障害、認知症、脳神経障害、錐体路障害、小脳障害などを示すことが多くパーキンソン症候群を示すのは稀である。

腫瘍性パーキンソン症候群

前頭葉を両側にひろく侵す脳腫瘍の場合はパーキンソン症候群を示すことがある。

外傷後パーキンソン症候群

ボクサーのように何回も頭に閉鎖性外傷を受けるものはパーキンソン症候群を示すことがある。

心因性パーキンソン症候群

脚注[編集]

  1. ^ 今井壽正「パーキンソン症状の鑑別はどう進めるか」、『内科』第107巻第5号、2011年、 801-807頁。

参考文献[編集]

関連[編集]