レビー小体型認知症

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レビー小体型認知症(レビーしょうたいがたにんちしょう、: Dementia with Lewy Bodies; DLB)は、変性性認知症のひとつである。以前は、瀰漫性レビー小体病と呼ばれていた。日本ではアルツハイマー型認知症脳血管性認知症と並び三大認知症と呼ばれている。認知障害だけでなく、パーキンソン病のような運動障害も併発するのが特徴である。

症状[編集]

レビー小体型認知症の症状として、進行性の認知機能低下をみとめる。これは認知症を来す疾患全般に認められる。
本症に特徴的な症状として、注意や覚醒レベルの顕著な変動、具体的で詳細な内容の(リアルな)幻視(幻覚)、パーキンソニズム(手足の安静時の震え、歩行障害、筋固縮など)をみとめるが、これらがすべて出現するわけではない。
本症に出現する幻視は、非常にリアルであるとされ、患者本人は具体的に「そこに~(人物名)がいる」などと訴える。また、視覚的に物事を捉えることが難しくなり、アルツハイマー型認知症と違い、図形描写が早期に障害されることが多い。これらの症状は、後頭葉の障害によって出現するものと考えられる。この障害は、脳血流シンチグラフィにて血流の低下として捉えられる。
本症は、パーキンソン病の類縁疾患であり、パーキンソン病同様にドパミン神経細胞の変性を認め、パーキンソニズムと呼ばれるパーキンソン病様の運動障害を認めることが多い。そのため、本症では転倒による外傷が多く、また、病状の進行によりアルツハイマー型認知症に比べ10倍も寝たきりになるのが早いともいわれている[1]。ドパミン神経細胞の変成を反映して、123I‑MIBG 心筋シンチグラフィにて集積の低下を認める。
病状の進行に伴い、認知機能とパーキンソニズムの進行を認め、最終的には寝たきりになる。
本症は、初期の段階でアルツハイマー型認知症との鑑別が難しく、間違って診断されることがある。
薬物に過敏に反応し(薬物過敏性)、特に、抗精神病薬の投与によって悪性症候群をきたしやすい。しかし、妄想、暴言、介護拒否、徘徊などの認知症に伴う周辺症状が出現しやすく、これに対して抗精神病薬が処方されることがある。
ドネペジルに代表される、アルツハイマー型認知症の治療薬であるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、本症に対しても有効で、アルツハイマー型認知症よりも本症でより効果を認めることもある。

歴史[編集]

レビー小体型認知症は1976年に日本の精神科医小阪憲司が症例を報告し[2]、世界的に知られるようになった。レビー小体とはドイツの神経学者フレデリック・レビー英語版によってパーキンソン病変の脳幹で発見され名付けられた封入体であり、大脳皮質にこれが多く認められることから、小阪によって瀰漫性レビー小体病(びまんせいレビーしょうたいびょう、: diffuse Lewy body disease; DLBD)と名付けられた。その後1995年イギリスにて行われた国際ワークショップにて現在の名称になった。

疫学[編集]

頻度は報告によって様々であるが、有病率は0~5%、認知症に占める割合は 0~30.5%と報告されている [3]

診断[編集]

Lewy小体型認知症(DLB)の臨床診断基準改訂版(第3回DLB国際ワークショップ)[4]による診断基準は、おおむね以下の通りである。

  • 進行性の認知機能低下をみとめる(記憶障害は病初期には必ずしも起こらない)。
  • 注意や覚醒レベルの顕著な変動、幻視、パーキンソン病様の症状(手のふるえ、歩行障害など)を認めやすい。
  • 画像診断では、脳血流シンチグラフィやMIBG心筋シンチグラフィが有用である。
  • 脳血流シンチグラフィにおいて、後頭葉の血流低下を認める。
  • MIBG心筋シンチグラフィにおいて、後期像にて心臓への集積低下を認める。
  • 神経心理検査において、他の項目に比べ、図形描写が困難である。

治療[編集]

認知症に対する治療とパーキンソン症状に対する治療がある。

認知症
コリンエステラーゼ阻害薬が効果を示すとされている。
ドネペジルはパーキンソン症状を増悪させずに認知症に対する効果を示すと考えられている。
リバスチグミン中核症状だけでなく周辺症状(BPSD)の悪化を有意に抑制したとの報告がある[5]
漢方薬である抑肝散は臨床治験で効果を示すことが示されつつある[6]
パーキンソン症状
レボドパドーパミン受容体作動薬が用いられる。

脚注[編集]

  1. ^ 認知症大講義 第6週コウノ博士の認知症大講義より
  2. ^ Kosaka K, Oyanagi S, Matsushita M, and Hori A. (1976). “Presenile dementia with Alzheimer-, Pick- and Lewy-body changes”. Acta Neuropathol 36: 221-233. PMID 188300. 
  3. ^ レビー小体型認知症は日本でも患者数が多いか? 精神神経学雑誌 (2009) 111巻 1号 pp. 37-42
  4. ^ 認知症疾患治療ガイドライン2010
  5. ^ McKeith I, Del Ser T, Spano P, Emre M, Wesnes K, Anand R, Cicin-Sain A, Ferrara R, Spiegel R. Efficacy of rivastigmine in dementia with Lewy bodies: a randomised, double-blind, placebo-controlled international study. Lancet. 2000 Dec 16;356(9247):2031-6.
  6. ^ 日医雑誌 139(6): 1280-2, 2010

関連項目[編集]

外部リンク[編集]