「能登弁」の版間の差分

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== 海士町方言 ==
== 海士町方言 ==
[[海士町 (輪島市)|輪島市海士町]]は、[[永禄]]年間から[[慶安]]年間にかけて[[筑前国]]鐘ヶ崎(現在の[[福岡県]][[宗像市]][[鐘崎 (宗像市)|鐘崎]])から移住した漁民によって開かれ、近隣の先住住民と漁場争いなどで長年対立していた過去から、輪島市街地とほとんど一体化している今も、独自の風習や自治組織が維持されている<ref>祖田亮次「[https://ci.nii.ac.jp/naid/130000995092 輪島市海士町の漁民集団:その特質と持続性の背景]」『人文地理』第48巻第2号、168-181頁、1996年。</ref>。方言に関しても能登の他地域とは違いが大きく([[言語島]])、その特徴のなかには北陸方言では一般的でなく[[九州方言]]との関連が指摘されるものも複数ある(※を付けたもの)<ref name="新田2017">新田哲夫「[https://doi.org/10.24517/00050865 輪島市海士町のことばと海士町町民のルーツ]」金沢大学学術情報リポジトリ、2017年1月27日発行</ref>。
[[海士町 (輪島市)|輪島市海士町]]は、[[永禄]]年間から[[慶安]]年間にかけて[[筑前国]]鐘ヶ崎(現在の[[福岡県]][[宗像市]][[鐘崎 (宗像市)|鐘崎]])から移住した漁民によって開かれ、近隣の先住住民と漁場争いなどで長年対立していた過去から、輪島市街地とほとんど一体化している今も、独自の風習や自治組織が維持されている<ref>{{Cite journal|和書|author=祖田亮次 |date=1996 |url=https://doi.org/10.4200/jjhg1948.48.168 |title=輪島市海士町の漁民集団 |journal=人文地理 |ISSN=00187216 |publisher=人文地理学会 |volume=48 |issue=2 |pages=168-181 |doi=10.4200/jjhg1948.48.168 |naid=130000995092 |id={{CRID|1390001205140568832}}}}</ref>。方言に関しても能登の他地域とは違いが大きく([[言語島]])、その特徴のなかには北陸方言では一般的でなく[[九州方言]]との関連が指摘されるものも複数ある(※を付けたもの)<ref name="新田2017">{{cite journal|和書|author=新田哲夫 |date=2017-01 |url=https://doi.org/10.24517/00050865 |title=輪島市海士町のことばと海士町町民のルーツ |journal=言語文化の越境、接触による変容と普遍性に関する比較研究 |pages=131-138 |publisher=金沢大学人間社会域人文学類 |doi=10.24517/00050865}}</ref>。
* 語中のガ行音は石川県全域で鼻音になるが([[鼻濁音]])、海士町では非鼻音で発音する<ref name="新田2016">新田哲夫「[https://doi.org/10.24517/00051874 石川県輪島市海士町方言の調査研究]」金沢大学学術情報リポジトリ、2016年6月10日発行</ref>。
* 語中のガ行音は石川県全域で鼻音になるが([[鼻濁音]])、海士町では非鼻音で発音する<ref name="新田2016">{{Cite journal|和書|author=代表研究者 新田哲夫 |date=2016 |url=https://doi.org/10.24517/00051874 |title=石川県輪島市海士町方言の調査研究 |publisher=金沢大学人間社会研究域歴史言語文化系 |volume=研究課題/領域番号:25370514 |doi=10.24517/00051874 |hdl=2297/00051874 |journal=科学研究費助成事業}}</ref>。
* 連母音のアイとアエが頻繁にエーに融合する<ref name="新田2016"/>。(例)浅い→あせー、在郷→ぜーご(田舎)、さざえ→さぜー
* 連母音のアイとアエが頻繁にエーに融合する<ref name="新田2016"/>。(例)浅い→あせー、在郷→ぜーご(田舎)、さざえ→さぜー
* 助詞「は」「い」「を」が前の語と融合する<ref name="新田2016"/>。(例)あれは→ありゃー、あれい→ありー、あれを→ありょー
* 助詞「は」「い」「を」が前の語と融合する<ref name="新田2016"/>。(例)あれは→ありゃー、あれい→ありー、あれを→ありょー

2023年4月24日 (月) 03:09時点における版

道の駅すず塩田村にて。

能登弁(のとべん)は、石川県の北部の旧能登国で話されている日本語の方言である。北陸方言の一種。

アクセント

能登主流のアクセント(京阪式、内輪東京式との比較)(●は高音、○は低音)
  京阪式(京都) 能登主流 内輪東京式(一般的なもの)
二拍名詞 1類 顔・風・鳥 ●●(●) ○●(●) ○●(●)
2類 音・石・紙 ●○(○) ○●(○) ○●(○)
3類 犬・月・花
4類 糸・稲・空 ○●/○○(●) ○○(○) ●○(○)
5類 雨・声・春 ○●(○) ○●/○○(●)

能登主流のアクセント京阪式アクセント東京式アクセントの中間形というべきものであり、2拍名詞の1類は「か」「かぜが」のように発音され、2・3類は「い」「いが」となり、4類は「うみ」「うみが」で低く平板、5類は単独では「あ」だが、助詞が付くと「あめ」になる[1]。したがって、「低高高」と「低低高」と「低低低」は区別される。ただし、2拍目の母音の広狭によって発音の違いがある。

その他、能登島には内輪東京式アクセントが分布しており、能登半島北西部(輪島市大沢など)には無アクセント曖昧アクセントが複雑に分布している。

音声

音声ではイとエの区別がなく、一部にシとス、チとツ、ジとズの区別がない(ズーズー弁)など、東北方言に似た特徴(裏日本式音韻体系)がみられる。

文法

概ね加賀弁と共通するが、富山弁(特に呉西)との共通点もある[要出典]。理由の「…さかいに」を用いるなど京言葉の影響を強く受けている。

〜まっし(軽い命令)【例】食べまっし(食べなよ)

〜ちゃ(〜よ)【例】そうやちゃ(そうだよ。)

【例文】晴れとるさかい、外で遊ぶまっし。(晴れてるから、外で遊びなよ。)

海士町方言

輪島市海士町は、永禄年間から慶安年間にかけて筑前国鐘ヶ崎(現在の福岡県宗像市鐘崎)から移住した漁民によって開かれ、近隣の先住住民と漁場争いなどで長年対立していた過去から、輪島市街地とほとんど一体化している今も、独自の風習や自治組織が維持されている[2]。方言に関しても能登の他地域とは違いが大きく(言語島)、その特徴のなかには北陸方言では一般的でなく九州方言との関連が指摘されるものも複数ある(※を付けたもの)[3]

  • 語中のガ行音は石川県全域で鼻音になるが(鼻濁音)、海士町では非鼻音で発音する[4]
  • 連母音のアイとアエが頻繁にエーに融合する[4]。(例)浅い→あせー、在郷→ぜーご(田舎)、さざえ→さぜー
  • 助詞「は」「い」「を」が前の語と融合する[4]。(例)あれは→ありゃー、あれい→ありー、あれを→ありょー
  • ※方向を表す助詞に「い」を使う[3]。(例)東の方い行く、東京い着く、ここいある
  • ※進行を表す助動詞に「よる」と「とる」を使う(他の能登では「とる」のみを使う)[4][3]。(例)戸を開けよる(戸を開けている)
  • ※可能を表す助動詞に「きる」を使う[3]。(例)書ききる(書くことができる)、書ききらん(書くことができない)
  • ※つららを「もーご」と言うが、福岡県と大分県に「もーがんこ」「もーが」という類似した語形が存在する[3]。そのほかに海士町以外の北陸では使われず九州(をはじめとする西日本各地)と共通する語彙として、くるぶく(うつむく)、ねずむ(つめる)、ほめく(火照る)、なおす(片づける)、ふとい(大きい)、すくれる(水中で寒くなる)、ほがす(穴をあける)、くろずみ(打ち身のあざ)がある[3]

能登弁が使われている作品

まれ

脚注

  1. ^ 山口(2003)『日本語東京アクセントの成立』(港の人)「能登のアクセント」
  2. ^ 祖田亮次「輪島市海士町の漁民集団」『人文地理』第48巻第2号、人文地理学会、1996年、168-181頁、doi:10.4200/jjhg1948.48.168ISSN 00187216NAID 130000995092CRID 1390001205140568832 
  3. ^ a b c d e f 新田哲夫「輪島市海士町のことばと海士町町民のルーツ」『言語文化の越境、接触による変容と普遍性に関する比較研究』、金沢大学人間社会学域人文学類、2017年1月、131-138頁、doi:10.24517/00050865 
  4. ^ a b c d 代表研究者 新田哲夫「石川県輪島市海士町方言の調査研究」『科学研究費助成事業』研究課題/領域番号:25370514、金沢大学人間社会研究域歴史言語文化学系、2016年、doi:10.24517/00051874hdl:2297/00051874 

関連項目

外部リンク