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「ホッキョクグマ」の版間の差分

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{{Redirectlist|白熊'''」、「'''シロクマ'''」、「'''しろくま|森林生の白いクマ|シロアメリカグマ|[[鹿児島県]]の名物の[[かき氷]]|白くま|熊の毛とされた飾り毛|ヤク#日本での利用|[[スピッツ (バンド)|スピッツ]]の楽曲|シロクマ/ビギナー}}
{{生物分類表
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|画像キャプション = '''ホッキョクグマ''' ''Ursus maritimus''
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[http://www.cites.org/ CITES homepage]
* [http://www.cites.org/eng/app/appendices.shtml Appendices I, II and III]
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[http://www.iucnredlist.org/ The IUCN Red List of Threatened Species]
* Schliebe, S., Wiig, Ø., Derocher, A. & Lunn, N. 2008. [http://www.iucnredlist.org/apps/redlist/details/22823/0 ''Ursus maritimus'']. In: IUCN 2011. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2011.1.
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[[Image:Polarbearonice.jpg|thumb|right|ホッキョクグマは北極の生活のために体を進化させた。保温性の高い毛皮、分厚い脂肪、短い足は、寒冷な気候への適応である。]]
[[Image:Polarbearonice.jpg|thumb|right|ホッキョクグマは北極の生活のために体を進化させた。保温性の高い毛皮、分厚い脂肪、短い足は、寒冷な気候への適応である。]]
[[File:Play fight of polar bears edit 1.ogv|thumb|じゃれあう二頭のホッキョクグマ]]
[[File:Play fight of polar bears edit 1.ogv|thumb|じゃれあう二頭のホッキョクグマ]]
[[体長]]オス:200-250cm メス:180-200cm [[体重]]オス:400-600kg(最大800kg)メス:200-350kg(妊娠時500kg)<ref>[http://www.wwf.or.jp/activities/wildlife/cat1014/cat1050/ ホッキョクグマの保護活動] WWF 2012年9月6日閲覧</ref>。生息地によっても大きさに違いがあり、ロシアのチュクチ海に生息する個体群が最も大型化する傾向がある。近年は[[地球温暖化]]の影響で小型化が進んでおり、1984年から2009年までの25年間で、オスの平均体重が45kg、メスの平均体重が31kgも減少した<ref>https://www.theguardian.com/environment/2016/apr/05/polar-bears-losing-weight-arctic-sea-ice-melts-climate-change-canadian-study</ref>。
[[体長]]オス:200-250cm メス:180-200cm [[体重]]オス:400-600kg(最大800kg)メス:200-350kg(妊娠時500kg)<ref>{{Cite web |url=https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3565.html |title=ホッキョクグマについて |WWFジャパン |publisher=WWF |accessdate=2019-01-20}}</ref>。生息地によっても大きさに違いがあり、ロシアのチュクチ海に生息する個体群が最も大型化する傾向がある。近年は[[地球温暖化]]の影響で小型化が進んでおり、1984年から2009年までの25年間で、オスの平均体重が45kg、メスの平均体重が31kgも減少した<ref>{{Cite news |url=https://www.theguardian.com/environment/2016/apr/05/polar-bears-losing-weight-arctic-sea-ice-melts-climate-change-canadian-study |title=Polar bears losing weight as Arctic sea ice melts, Canadian study finds|newspaper=The Guardian |date=2016-04-05 |accessdate=2019-01-20 |author=Ashifa Kassam}}</ref>。


他種のクマと比較すると頭部は小さいが、長い頸部を持つ<ref name="fn2"/>。[[ヒグマ]]と比べると、肩の盛り上がりや爪が小さい<ref>[http://www.skullsunlimited.com/record_variant.php?id=3962 Polar Bear Claw Ursus maritimus] SKULLS UNLIMITED 2012年9月7日閲覧</ref>。吻端と足裏の肉球を除いた全身が体毛で被われている<ref name="fn1"/>。夏季は汚れや油脂の酸化などにより毛衣が黄がかる個体もいる<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。
他種のクマと比較すると頭部は小さいが、長い頸部を持つ<ref name="fn2"/>。[[ヒグマ]]と比べると、肩の盛り上がりや爪が小さい<ref>{{Cite web |url=http://www.skullsunlimited.com/record_variant.php?id=3962 |title=Polar Bear Claw (Ursus maritimus) |publisher=SKULLS UNLIMITED INTERNATIONAL, INC. |accessdate=2019-01-20|archiveurl=http://web.archive.org/web/20171021145201/http://www.skullsunlimited.com:80/record_variant.php?id=3962 |archivedate=2017-10-21}}</ref>{{出典無効|date=2019-01-20 |title=通販サイトらしきページに並べられた商品の説明文に付けられた爪の長さを比較しているにすぎないと思われる。肩に関しては記述すらない。}}。吻端と足裏の肉球を除いた全身が体毛で被われている<ref name="fn1"/>。夏季は汚れや油脂の酸化などにより毛衣が黄がかる個体もいる<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。


耳介は短く、寒冷地に適応している<ref name="fn1"/>。
耳介は短く、寒冷地に適応している<ref name="fn1"/>。
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== 気候変動の影響 ==
== 気候変動の影響 ==
現在、ホッキョクグマとヒグマの祖先のその後の環境について次のように推測されている<ref>気象庁 {{cite web |url=http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/20th/box3.htm |title=アーカイブされたコピー |accessdate=2010年3月6日 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20100225090245/http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/20th/box3.htm |archivedate=2010年2月25日 |deadurldate=2017年9月 }}</ref>。間氷期の始まる前の時期は寒く、15万年前は現在よりも9-10度気温が低く、間氷期が始まると温度が上昇し、間氷期の中で最も暖かかった約12万年前には、極地の気温は現在より3-5度高かった。その後温度は上下を繰り返しながら全体的に下がっていった。約1万年前に終わった氷期では8-10度低かったと推定されている。その後、温度は上昇し現在に至る。結果として約15万年前からホッキョクグマの祖先は温度の急激な変化を何度も乗り越えてきたことが判明している。このため、ホッキョクグマが地球温暖化に対してどこまで適応できるのか、関心が高まっている<ref name="example"/>。しかし近年の研究では、北極圏における海氷の減少に伴い、比較的南方に棲む群から生息数の減少が観測されており、このまま[[地球温暖化]]が進行すると北極圏全体の個体が危機に晒されるだろうと警告されている<ref name="SD20110208">[http://www.sciencedaily.com/releases/2011/02/110208112647.htm Polar Bear Births Could Plummet With Climate Change(解説記事)]、[https://doi.org/10.1038/ncomms1183 Predicting climate change impacts on polar bear litter size. Nature Communications, 2011; 2: 186 DOI: 10.1038/ncomms1183 (原論文)]</ref>。また南下したとしてもヒグマ等との競争に弱いと見られ、絶滅の危険性が指摘されている<ref name="SD201011">[http://www.sciencedaily.com/releases/2010/11/101124085607.htm Polar Bears Unlikely to Survive in Warmer World, Biologists Say(解説記事)]、[http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0013870 Biomechanical Consequences of Rapid Evolution in the Polar Bear Lineage. PLoS ONE, 2010; 5 (11): e13870 DOI: 10.1371/journal.pone.0013870 (原論文)]</ref>。
現在、ホッキョクグマとヒグマの祖先のその後の環境について次のように推測されている<ref>{{cite web |url=http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/20th/box3.htm |title=20世紀の日本の気候 |accessdate=2010年3月6日 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20100225090245/http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/20th/box3.htm |archivedate=2010年2月25日 |deadurldate=2017年9月 |publisher=気象庁}}</ref>。間氷期の始まる前の時期は寒く、15万年前は現在よりも9-10度気温が低く、間氷期が始まると温度が上昇し、間氷期の中で最も暖かかった約12万年前には、極地の気温は現在より3-5度高かった。その後温度は上下を繰り返しながら全体的に下がっていった。約1万年前に終わった氷期では8-10度低かったと推定されている。その後、温度は上昇し現在に至る。結果として約15万年前からホッキョクグマの祖先は温度の急激な変化を何度も乗り越えてきたことが判明している。このため、ホッキョクグマが地球温暖化に対してどこまで適応できるのか、関心が高まっている<ref name="example"/>。しかし近年の研究では、北極圏における海氷の減少に伴い、比較的南方に棲む群から生息数の減少が観測されており、このまま[[地球温暖化]]が進行すると北極圏全体の個体が危機に晒されるだろうと警告されている<ref name="SD20110208">{{Cite web |url=https://www.sciencedaily.com/releases/2011/02/110208112647.htm |title=Polar bear births could plummet with climate change -- ScienceDaily |publisher=Science Daily |accessdate=2019-01-20}}</ref><ref>{{Cite journal |url=https://www.nature.com/articles/ncomms1183 |title=Predicting climate change impacts on polar bear litter size |journal=Nature Communications |date=2011-02-08 |volume=2 |publisher= Springer Nature Publishing AG |accessdate=2019-01-20 |author1=Molnár, Péter K. |author2=Derocher, Andrew E. |author3=Klanjscek, Tin |author4=Lewis, Mark A.|doi=10.1038/ncomms1183}}</ref>。また南下したとしてもヒグマ等との競争に弱いと見られ、絶滅の危険性が指摘されている<ref name="SD201011">{{Cite web |url=https://www.sciencedaily.com/releases/2010/11/101124085607.htm |title=Polar bears unlikely to survive in warmer world, biologists say -- ScienceDaily |publisher= |accessdate=2019-01-20}}</ref><ref>{{cite journal |url=https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0013870 |title=Biomechanical Consequences of Rapid Evolution in the Polar Bear Lineage |journal=PLoS ONE 5(11) |date=2010-11-05 |doi=10.1371/journal.pone.0013870 |author1=Graham J. Slater |author2=Borja Figueirido |author3=Leeann Louis |author=4Paul Yang |author=5Blaire Van Valkenburgh}}</ref>。


== 生態 ==
== 生態 ==
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流氷水域、海岸などに生息する<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。冬季には流氷の南下に伴い南へ、夏季には北へ移動する<ref name="fn1"/>。1日あたり70kmを移動することもあり、年あたり1,120kmの距離を移動した例もある<ref name="fn1"/>。地域によっては直射日光、天候、外敵から逃れるための風通しの良い巣穴を作る<ref name="fn2"/>。流氷の間を数時間にわたって泳いだり、時速6.5kmの速度で約65kmの距離を泳ぐことができる<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。
流氷水域、海岸などに生息する<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。冬季には流氷の南下に伴い南へ、夏季には北へ移動する<ref name="fn1"/>。1日あたり70kmを移動することもあり、年あたり1,120kmの距離を移動した例もある<ref name="fn1"/>。地域によっては直射日光、天候、外敵から逃れるための風通しの良い巣穴を作る<ref name="fn2"/>。流氷の間を数時間にわたって泳いだり、時速6.5kmの速度で約65kmの距離を泳ぐことができる<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。


[[雑食]]獣であるクマの中で最も肉食性が強い種であり、ヒグマに比べ歯がより特殊変化している。アザラシ(主に[[ワモンアザラシ]]、次いで[[アゴヒゲアザラシ]]。時に[[ズキンアザラシ]]や[[タテゴトアザラシ]]も捕食する)を主食とするほか<ref name="ngg2">ナショナルジオグラフィック日本公式サイト「ホッキョクグマ」解説より</ref><ref group="注釈">アザラシだけでなく、より大型の[[セイウチ]]の群れに襲い掛かる映像も確認されている。ただし成功率は低い。</ref>、[[魚類]]、鳥類やその卵、[[イッカク]]や[[シロイルカ]]などの哺乳類、クジラ等の動物の死骸に加え、氷の溶ける季節には植物(コンブ、スゲ、イチゴ等)も食べる<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。アザラシを捕食する際は、優れた嗅覚で匂いを察知し、氷を掘って巣穴にいる個体を襲う、氷上にある呼吸用の穴や流氷の縁で待ち伏せる、氷上にいる個体に忍び寄るなどの方法を取る<ref name="fn1"/>。狩りは母熊からの学習が大切であり、仔の生涯に影響を与える<ref>[http://www.saint-thomas.net/uk-program-28-face-to-face-with-the-polar-bear.html (cache) Programs : Face to face with the Polar Bear]制作 Saint-Thomas 公式ウェブ(同じ兄弟であっても学習により差が出る例)</ref><ref>[http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=Bptu9BMgTzg Polar Bear Battlefield: 2003/12/25放送] BBCWorldwideTV (YOUTUBE)</ref>。
[[雑食]]獣であるクマの中で最も肉食性が強い種であり、ヒグマに比べ歯がより特殊変化している。アザラシ(主に[[ワモンアザラシ]]、次いで[[アゴヒゲアザラシ]]。時に[[ズキンアザラシ]]や[[タテゴトアザラシ]]も捕食する)を主食とするほか<ref name="ngg2">ナショナルジオグラフィック日本公式サイト「ホッキョクグマ」解説より{{Full citation needed |date=2019-01-20 |title=URL、閲覧日時など不明。}}</ref><ref group="注釈">アザラシだけでなく、より大型の[[セイウチ]]の群れに襲い掛かる映像も確認されている。ただし成功率は低い。</ref>、[[魚類]]、鳥類やその卵、[[イッカク]]や[[シロイルカ]]などの哺乳類、クジラ等の動物の死骸に加え、氷の溶ける季節には植物(コンブ、スゲ、イチゴ等)も食べる<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。アザラシを捕食する際は、優れた嗅覚で匂いを察知し、氷を掘って巣穴にいる個体を襲う、氷上にある呼吸用の穴や流氷の縁で待ち伏せる、氷上にいる個体に忍び寄るなどの方法を取る<ref name="fn1"/>。狩りは母熊からの学習が大切であり、仔の生涯に影響を与える<ref>[http://www.saint-thomas.net/uk-program-28-face-to-face-with-the-polar-bear.html (cache) Programs : Face to face with the Polar Bear]制作 Saint-Thomas 公式ウェブ(同じ兄弟であっても学習により差が出る例)</ref><ref>[http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=Bptu9BMgTzg Polar Bear Battlefield: 2003/12/25放送] BBCWorldwideTV (YOUTUBE)</ref>。


繁殖形態は胎生。3-6月に[[交尾]]を行う<ref name="fn2"/>。受精卵の着床が遅延する期間も含めて妊娠期間は195-265日<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。11-翌1月に1-4頭の幼獣を産む<ref name="fn2"/>。幼獣は生後28か月は母親と一緒に行動する<ref name="fn1"/>。生後5-6年で性成熟する<ref name="fn2"/>。生後21年で繁殖を行ったメスもいる<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。寿命は25-30年<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。
繁殖形態は胎生。3-6月に[[交尾]]を行う<ref name="fn2"/>。受精卵の着床が遅延する期間も含めて妊娠期間は195-265日<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。11-翌1月に1-4頭の幼獣を産む<ref name="fn2"/>。幼獣は生後28か月は母親と一緒に行動する<ref name="fn1"/>。生後5-6年で性成熟する<ref name="fn2"/>。生後21年で繁殖を行ったメスもいる<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。寿命は25-30年<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。
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飼育下での自然繁殖が難しいとされるホッキョクグマの自然繁殖に2000年以降、日本国内で成功しているのは[[札幌市円山動物園]]と[[秋田県立男鹿水族館]]と[[大阪市天王寺動物園]]のみ。
飼育下での自然繁殖が難しいとされるホッキョクグマの自然繁殖に2000年以降、日本国内で成功しているのは[[札幌市円山動物園]]と[[秋田県立男鹿水族館]]と[[大阪市天王寺動物園]]のみ。


[[1993年]](平成5年)に[[恩賜上野動物園]]において死亡した個体「雪男」は34年9ヶ月であった<ref>{{cite news |title=国内最高齢34歳のホッキョクグマ、天国へ…京都市動物園 |newspaper=読売新聞 |date=2009-05-22 |url=http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090522-OYT1T00977.htm}}{{リンク切れ|date=2011年2月}}</ref>。[[愛媛県立とべ動物園]]では母親に育児放棄された雌の「[[ピース (ホッキョクグマ)|ピース]]」によって国内での'''人工飼育'''の個体の生存記録が更新され、公式WEBサイト上で映像資料が公開されている(2011年[[6月]]現在満11歳、誕生日は[[12月2日]])<ref>[http://www.tobezoo.com/shiiku/peace/index.htm とべ動物園 ピースの飼育日記]</ref>。「ピース」は{{要出典範囲|人工飼育された影響からか|date=2011年11月}}、けいれんやひきつけを起こしていた。{{要検証範囲|現在は手術を受け解消している|date=2011年11月}}。ほかにも、[[ドイツ]]で同様に[[2006年]](平成18年)末に母親に育児放棄され人工飼育されていた「[[クヌート (ホッキョクグマ)|クヌート]]」がいた。<ref group="注釈">2011年3月19日に死亡。死因は不明。</ref>
[[1993年]](平成5年)に[[恩賜上野動物園]]において死亡した個体「雪男」は34年9ヶ月であった<ref>{{cite news |title=国内最高齢34歳のホッキョクグマ、天国へ…京都市動物園 |newspaper=読売新聞 |date=2009-05-22 |url=http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090522-OYT1T00977.htm}}{{リンク切れ|date=2011年2月}}</ref>。[[愛媛県立とべ動物園]]では母親に育児放棄された雌の「[[ピース (ホッキョクグマ)|ピース]]」によって国内での'''人工飼育'''の個体の生存記録が更新され、公式WEBサイト上で映像資料が公開されている(2011年[[6月]]現在満11歳、誕生日は[[12月2日]])<ref>[http://www.tobezoo.com/shiiku/peace/index.htm とべ動物園 ピースの飼育日記]</ref>。「ピース」は痙攣やひきつけを起こしていた。{{要検証範囲|現在は手術を受け解消している|date=2011年11月}}。ほかにも、[[ドイツ]]で同様に[[2006年]](平成18年)末に母親に育児放棄され人工飼育されていた「[[クヌート (ホッキョクグマ)|クヌート]]」がいた。<ref group="注釈">2011年3月19日に死亡。死因は不明。</ref>


飼育下では主に馬肉や魚類など<ref>「TOKYO発 上野動物園 - 自然なシロクマ舎 80年」 東京新聞 2007年12月14日朝刊、中日新聞東京本社。</ref>を与えるほか、栄養バランスを考慮し、果物や野菜などの植物性の餌も使用される<ref>{{Cite web|url=http://www.ezooko.jp/04_doubutu/01_syoukai/01_syoukai/hokkyokukuma.html|title=ホッキョクグマ|accessdate=2008-02-02|publisher=熊本市動植物園|archiveurl=https://web.archive.org/web/20100221070719/http://www.ezooko.jp/04_doubutu/01_syoukai/01_syoukai/hokkyokukuma.html|archivedate=2010年2月21日|deadurldate=2017年9月}}</ref>。たとえば、[[日本平動物園]]で飼育されていたホッキョクグマのピンキー(雌。[[2007年]]死亡)の好物は[[サツマイモ]]だった<ref>[http://www.nhdzoo.jp/thismonth_animal_0508.php]{{リンク切れ|date=2016年7月}}</ref>。恩賜上野動物園では、時折[[サケ]]も与えられる。旭山動物園の場合、1日に与える馬肉は9kg、[[イカナゴ|オオナゴ]]が2.5kgである<ref>{{Cite web|url=http://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/koho/zoo/61-62.htm|title=旭山動物園からの手紙 61・62|accessdate=2008-02-02|publisher=旭川市|archiveurl=https://web.archive.org/web/20101212093155/http://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/koho/zoo/61-62.htm|archivedate=2010年12月12日|deadurldate=2017年9月}}</ref>。
飼育下では主に馬肉や魚類など<ref>「TOKYO発 上野動物園 - 自然なシロクマ舎 80年」 東京新聞 2007年12月14日朝刊、中日新聞東京本社。</ref>を与えるほか、栄養バランスを考慮し、果物や野菜などの植物性の餌も使用される<ref>{{Cite web|url=http://www.ezooko.jp/04_doubutu/01_syoukai/01_syoukai/hokkyokukuma.html|title=ホッキョクグマ|accessdate=2008-02-02|publisher=熊本市動植物園|archiveurl=https://web.archive.org/web/20100221070719/http://www.ezooko.jp/04_doubutu/01_syoukai/01_syoukai/hokkyokukuma.html|archivedate=2010年2月21日|deadurldate=2017年9月}}</ref>。たとえば、[[日本平動物園]]で飼育されていたホッキョクグマのピンキー(雌。[[2007年]]死亡)の好物は[[サツマイモ]]だった<ref>[http://www.nhdzoo.jp/thismonth_animal_0508.php]{{リンク切れ|date=2016年7月}}</ref>。恩賜上野動物園では、時折[[サケ]]も与えられる。旭山動物園の場合、1日に与える馬肉は9kg、[[イカナゴ|オオナゴ]]が2.5kgである<ref>{{Cite web|url=http://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/koho/zoo/61-62.htm|title=旭山動物園からの手紙 61・62|accessdate=2008-02-02|publisher=旭川市|archiveurl=https://web.archive.org/web/20101212093155/http://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/koho/zoo/61-62.htm|archivedate=2010年12月12日|deadurldate=2017年9月}}</ref>。

2019年1月20日 (日) 08:14時点における版

ホッキョクグマ
ホッキョクグマ
ホッキョクグマ Ursus maritimus
保全状況評価[1][2]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネコ目 Carnivora
: クマ科 Ursidae
亜科 : クマ亜科 Ursinae
: クマ属 Ursus
: ホッキョクグマ U. maritimus
学名
Ursus maritimus Phipps, 1774
シノニム

Thalactos maritimus

和名
ホッキョクグマ
英名
Polar bear

ホッキョクグマ(北極熊、Ursus maritimus)は、クマ科クマ属に分類される食肉類

分布

北アメリカ大陸北部、ユーラシア大陸北部、北極圏[3][4]

形態

巧みに泳ぐ様子
ホッキョクグマは北極の生活のために体を進化させた。保温性の高い毛皮、分厚い脂肪、短い足は、寒冷な気候への適応である。
じゃれあう二頭のホッキョクグマ

体長オス:200-250cm メス:180-200cm 体重オス:400-600kg(最大800kg)メス:200-350kg(妊娠時500kg)[5]。生息地によっても大きさに違いがあり、ロシアのチュクチ海に生息する個体群が最も大型化する傾向がある。近年は地球温暖化の影響で小型化が進んでおり、1984年から2009年までの25年間で、オスの平均体重が45kg、メスの平均体重が31kgも減少した[6]

他種のクマと比較すると頭部は小さいが、長い頸部を持つ[4]ヒグマと比べると、肩の盛り上がりや爪が小さい[7][出典無効]。吻端と足裏の肉球を除いた全身が体毛で被われている[3]。夏季は汚れや油脂の酸化などにより毛衣が黄がかる個体もいる[3][4]

耳介は短く、寒冷地に適応している[3]

出産直後の幼獣は体重0.6kg[4]

体勢は寒冷地に適応している。前述の長い首や流線型で小さな頭は遊泳への適応結果とされ、何時間も氷海を泳ぐ事ができる。また流氷に乗って長距離移動することもある。[8]クマの中では高い視力を持つ[9]

全身が白い体毛に覆われているように見えるため、シロクマ白熊)とも呼ばれる。多くの哺乳類の体毛がたとえ白色であっても光を透過しないのに対し、ホッキョクグマの体毛は光を透過し、内部が空洞になった特殊な構造のために、散乱光によって白く輝いて見える。ホッキョクグマの透明の体毛は陽光の通過を妨げず奥にある皮膚にまで届き熱をもたらす[注釈 1]。もたらされた熱はぶ厚い脂肪層と体毛に保護され、容易に失われることはない。それに加え体毛内の空洞も蓄熱の役割を果たすという巧みな保温機構を成立させている。体温が殆ど外に逃げないため、体から輻射される赤外線の量が非常に少ない。この特性から、赤外線カメラによる空中撮影の際は雪の反射光に遮られる為、ほぼその姿を捉えられないことが知られている。なお、動物園などに飼育されている個体の場合、体毛の空洞に汚れが入り込むことで黄色っぽく変色したり、ときには空洞内にが発生し緑みがかかった色になってしまうことがある。この状態を俗に「ミドリグマ」ともいう。

分類

ホッキョクグマは分岐分類学的にヒグマに極めて近い位置にある。ホッキョクグマとヒグマは、氷期だった約15万2,000年前に共通の祖先から枝分かれした[10]。そのため互いに交配し、生殖能力のある子孫を残せることが判明しており、野生下でも稀にこのような個体の存在が確認されている。このためヒグマとホッキョクグマの生殖的隔離は不完全となっている。昨今では温暖化の影響もあり、北上してきたヒグマと陸地に上がってきたホッキョクグマの生息域が重なり「ハイブリッド」と呼ばれるヒグマとホッキョクグマの交配種が確認されている。ハイブリッドは体毛はホッキョクグマのように白いが、盛り上がった肩と土を掘るための湾曲した長い爪などヒグマの特徴を強く受け継いでいる。

2004年平成16年)、アイスランドの地質学者が、ノルウェー・スバールバル諸島の地層からホッキョクグマのあご骨と犬歯を発見。ペンシルベニア州立大学などの欧米の研究チームは化石に残された遺伝子と、米アラスカ州に生息するホッキョクグマ2頭とヒグマ4頭の遺伝子を比較解析した。その結果、氷期だった約15万2000年前にヒグマとホッキョクグマの共通の祖先から枝分かれし、最後の間氷期が始まる直前の約13万4,000年前には現在のホッキョクグマに近い形で存在していたことが判明している。

気候変動の影響

現在、ホッキョクグマとヒグマの祖先のその後の環境について次のように推測されている[11]。間氷期の始まる前の時期は寒く、15万年前は現在よりも9-10度気温が低く、間氷期が始まると温度が上昇し、間氷期の中で最も暖かかった約12万年前には、極地の気温は現在より3-5度高かった。その後温度は上下を繰り返しながら全体的に下がっていった。約1万年前に終わった氷期では8-10度低かったと推定されている。その後、温度は上昇し現在に至る。結果として約15万年前からホッキョクグマの祖先は温度の急激な変化を何度も乗り越えてきたことが判明している。このため、ホッキョクグマが地球温暖化に対してどこまで適応できるのか、関心が高まっている[10]。しかし近年の研究では、北極圏における海氷の減少に伴い、比較的南方に棲む群から生息数の減少が観測されており、このまま地球温暖化が進行すると北極圏全体の個体が危機に晒されるだろうと警告されている[12][13]。また南下したとしてもヒグマ等との競争に弱いと見られ、絶滅の危険性が指摘されている[14][15]

生態

ホッキョクグマは、熊の中では長い鼻、首を持つ。これは氷の隙間を覗き、アザラシを捕らえるための進化である。
クジラの死骸に近寄るホッキョクグマ
ホッキョクグマの子供

流氷水域、海岸などに生息する[3][4]。冬季には流氷の南下に伴い南へ、夏季には北へ移動する[3]。1日あたり70kmを移動することもあり、年あたり1,120kmの距離を移動した例もある[3]。地域によっては直射日光、天候、外敵から逃れるための風通しの良い巣穴を作る[4]。流氷の間を数時間にわたって泳いだり、時速6.5kmの速度で約65kmの距離を泳ぐことができる[3][4]

雑食獣であるクマの中で最も肉食性が強い種であり、ヒグマに比べ歯がより特殊変化している。アザラシ(主にワモンアザラシ、次いでアゴヒゲアザラシ。時にズキンアザラシタテゴトアザラシも捕食する)を主食とするほか[16][注釈 2]魚類、鳥類やその卵、イッカクシロイルカなどの哺乳類、クジラ等の動物の死骸に加え、氷の溶ける季節には植物(コンブ、スゲ、イチゴ等)も食べる[3][4]。アザラシを捕食する際は、優れた嗅覚で匂いを察知し、氷を掘って巣穴にいる個体を襲う、氷上にある呼吸用の穴や流氷の縁で待ち伏せる、氷上にいる個体に忍び寄るなどの方法を取る[3]。狩りは母熊からの学習が大切であり、仔の生涯に影響を与える[17][18]

繁殖形態は胎生。3-6月に交尾を行う[4]。受精卵の着床が遅延する期間も含めて妊娠期間は195-265日[3][4]。11-翌1月に1-4頭の幼獣を産む[4]。幼獣は生後28か月は母親と一緒に行動する[3]。生後5-6年で性成熟する[4]。生後21年で繁殖を行ったメスもいる[3][4]。寿命は25-30年[3][4]

500kgの雄の個体の体重を維持するには1日に12,000-14,000カロリーを必要とし、これには1週間でアザラシ1頭の捕食を必要とする。このため食糧事情により個体差が大きく分かれ、飢え死にする個体も多い。食糧事情が乏しいときは、同種の子を狙うことも多い。これはオスばかりでなく子の母親でも同様である[9]

交尾相手のメスをめぐり、オス同士が争うこともある。ただし、この争いは相手の殺害が目的ではなく、威嚇を重視したものでレスリングに近い[9]。なお、仔の2頭に1頭は生後1年以内に死亡することが多く、この中にはホッキョクグマのオスの成獣に捕食される個体も多い。このため子グマをつれたメスはオスを大変に恐れ、警戒する。

生息地帯において銃を持った人間以外脅威となるものは殆ど存在しないが、ごく稀に水中活動中にシャチ(サカマタ)に襲われる例が確認されている。近年は海氷が激減したことにより、必然的に泳がなければいけない距離が長くなり、以前よりシャチに襲われる危険性が高まっている。ホッキョクグマに限らず、大型の海生動物の減少には、シャチによる捕食が拍車をかけているという指摘もある。

道具を使うホッキョクグマ

南紀白浜アドベンチャーワールドで飼育されているホッキョクグマのゴーゴ(オス、11歳)は、動物園がゴーゴ用の遊び道具として置いてある棒やプラスチック製の筒を使って、ぶら下げてある餌の肉を落して食べる。ゴーゴは2009年(平成21年)9月頃からこのような行動をするようになった。カナダ環境省野生動物研究所のイアン・スターリングは「長年シロクマの観察を続けているが野生でも道具を使っているような例は見たことがない。非常に興味深い事例」と語り、また、北海道大学坪田敏男は「クマは知能が高いとされているが、道具を使ってエサを取るというのは初めて聞いた」と語る[19]

人間との関係

北極の気候にも耐えるホッキョクグマの毛皮は、人間にとっても有用である。
ホッキョクグマへの注意を促す看板(スヴァールバル諸島
ホッキョクグマは、動物園の人気者である(アメリカニューヨーク州
チュクチセイウチに描いた1940年代の絵。ホッキョクグマがセイウチを捕らえる場面。

飼育

日本では1973年旭山動物園で初めて飼育下繁殖に成功した[4]。 飼育下での自然繁殖が難しいとされるホッキョクグマの自然繁殖に2000年以降、日本国内で成功しているのは札幌市円山動物園秋田県立男鹿水族館大阪市天王寺動物園のみ。

1993年(平成5年)に恩賜上野動物園において死亡した個体「雪男」は34年9ヶ月であった[20]愛媛県立とべ動物園では母親に育児放棄された雌の「ピース」によって国内での人工飼育の個体の生存記録が更新され、公式WEBサイト上で映像資料が公開されている(2011年6月現在満11歳、誕生日は12月2日[21]。「ピース」は痙攣やひきつけを起こしていた。現在は手術を受け解消している[要検証]。ほかにも、ドイツで同様に2006年(平成18年)末に母親に育児放棄され人工飼育されていた「クヌート」がいた。[注釈 3]

飼育下では主に馬肉や魚類など[22]を与えるほか、栄養バランスを考慮し、果物や野菜などの植物性の餌も使用される[23]。たとえば、日本平動物園で飼育されていたホッキョクグマのピンキー(雌。2007年死亡)の好物はサツマイモだった[24]。恩賜上野動物園では、時折サケも与えられる。旭山動物園の場合、1日に与える馬肉は9kg、オオナゴが2.5kgである[25]

保護

ホッキョクグマ生息国(カナダアメリカ合衆国ノルウェーロシアデンマーク)により、1973年に「ホッキョクグマの保護に関する国際協定」が締結されており、定期的に会議が開かれている[26]

保護した仔を野生に戻す試みに、他の野生の子連れ母熊を里親にするというものがある。通常、母熊は仔をかぎ分け、よその仔を相手にしないが、保護した仔にヴィックスヴェポラッブを塗り、体臭をカモフラージュして近づけるという方法が、カナダで行われる[27]

アラスカの先住民族イヌピアトが捕鯨を行うときは、ホッキョクグマの餌が不足する時期でもあるため、解体したクジラの一部を浜辺に残しホッキョクグマの食糧とする[28]

食用

ホッキョクグマのは人間の食用となる。イヌイット達は、ホッキョクグマを伝統的に食用としてきたほか、ヨーロッパの探検隊は、持ってきた食料が無くなった時などに、ホッキョクグマを捕食していた。

また、北極の気候にも耐えるホッキョクグマの毛皮は、非常に有用な防寒具であり、古来より人気があった。ホッキョクグマが保護されることにより、近年、毛皮の価格は高騰している[29]

ホッキョクグマは肝臓に高濃度のビタミンAを含有しており、これを人間が口にすると死亡することもある。そのため、北極圏に住むイヌイット達の間では、ホッキョクグマの肝臓は食べてはならないと伝えられている。また、彼らは、ソリ用のイヌにも食べさせない。ホッキョクグマの肉には繊毛虫などの寄生虫がたかっている場合が多く、米軍のサバイバルマニュアル等において、危険な食物として扱われている。サロモン・アウグスト・アンドレーは、ホッキョクグマの肉を生で食べたことにより、旋毛虫症に感染して死亡したとする説もある。

獣害

近年では温暖化の影響もあり生息地が脅かされ、備蓄食料や生ゴミを求め、人間の居住区域まで侵入することが増加し懸念されている。[30][注釈 4]。ちなみに南極でも北極と同じように生息できることが、ワシントン条約締結前の実験によって判明している。国によっては野生のホッキョクグマにえさを与えるのは禁止されていることがある[31]

和名と俗称

和名はホッキョクグマであるが、俗にシロクマと呼ばれることも多い。日本初のホッキョクグマは、1902年明治35年)の恩賜上野動物園。この時、上野動物園では、新潟県で捕獲されたアルビノの白いツキノワグマを飼育しており、それを「シロクマ」と呼んでいた。そのため、北極の白いクマのほうには「ホッキョクグマ」という和名を付けたことが名の由来である[32]

なお、日本にかつて2頭流れ着いた記録があるが、国後島に白いヒグマの個体群が生息する事が近年判明しており(ヒグマ#分布参照)、その記録に関しては、上野で飼育されたようなアルビノの個体、或いは国後島の白いヒグマであった可能性も指摘されている。

2008年(平成20年)には、2003年(平成15年)生まれで新庄剛志にあやかって「ツヨシ」と名づけられた、雄と思われていたホッキョクグマが、実際は雌であったことがDNA型鑑定により判明して話題を呼んだ[33]

その他

心理学に「白熊効果」という言葉が有る。「白熊の事を考えないで下さい」と言われる事で逆に白熊の事が頭から離れなくなる、という現象を指す[34]

画像

資料

  • United States Army 2007 Army Survival Manual: Fm 21-76 WWW.Bnpublishing.com

脚注

注釈

  1. ^ なお皮膚は黒い。これは吸温効果を高めるための構造である。
  2. ^ アザラシだけでなく、より大型のセイウチの群れに襲い掛かる映像も確認されている。ただし成功率は低い。
  3. ^ 2011年3月19日に死亡。死因は不明。
  4. ^ 生ゴミだけでなく、車のタイヤといったゴム製品をも食べる映像も撮られている。

出典

  1. ^ Appendices”. CITES. Convention on International Trade in England. 2019年1月20日閲覧。
  2. ^ Ursus maritimus (Polar Bear)”. International Union for Conservation of Nature and Natural Resources. 2012年6月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年1月20日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n 今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編 『動物大百科1 食肉類』、平凡社1986年、104-105頁。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 今泉吉典監修 『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』、東京動物園協会、1991年、73-74、197頁。
  5. ^ ホッキョクグマについて |WWFジャパン”. WWF. 2019年1月20日閲覧。
  6. ^ Ashifa Kassam (2016年4月5日). “Polar bears losing weight as Arctic sea ice melts, Canadian study finds”. The Guardian. https://www.theguardian.com/environment/2016/apr/05/polar-bears-losing-weight-arctic-sea-ice-melts-climate-change-canadian-study 2019年1月20日閲覧。 
  7. ^ Polar Bear Claw (Ursus maritimus)”. SKULLS UNLIMITED INTERNATIONAL, INC.. 2017年10月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年1月20日閲覧。
  8. ^ 『図説 哺乳動物百科〈2〉北アメリカ・南アメリカ』朝倉書店、2007年 ISBN: 4254177321 38頁
  9. ^ a b c ナショナルジオグラフィック「最強の捕食者たち ホッキョクグマ編」解説より。[要出典]
  10. ^ a b “ホッキョクグマ:15万年前に祖先 地球環境の激変に適応”. 毎日新聞. (2010年3月4日). オリジナルの2010年3月7日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100307174015/http://mainichi.jp/select/science/news/20100304k0000m040137000c.html 2011年4月8日閲覧。 
  11. ^ 20世紀の日本の気候”. 気象庁. 2010年2月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年3月6日閲覧。
  12. ^ Polar bear births could plummet with climate change -- ScienceDaily”. Science Daily. 2019年1月20日閲覧。
  13. ^ Molnár, Péter K.; Derocher, Andrew E.; Klanjscek, Tin; Lewis, Mark A. (2011-02-08). “Predicting climate change impacts on polar bear litter size”. Nature Communications (Springer Nature Publishing AG) 2. doi:10.1038/ncomms1183. https://www.nature.com/articles/ncomms1183 2019年1月20日閲覧。. 
  14. ^ Polar bears unlikely to survive in warmer world, biologists say -- ScienceDaily”. 2019年1月20日閲覧。
  15. ^ Graham J. Slater; Borja Figueirido; Leeann Louis (2010-11-05). “Biomechanical Consequences of Rapid Evolution in the Polar Bear Lineage”. PLoS ONE 5(11). doi:10.1371/journal.pone.0013870. https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0013870. 
  16. ^ ナショナルジオグラフィック日本公式サイト「ホッキョクグマ」解説より[要文献特定詳細情報]
  17. ^ (cache) Programs : Face to face with the Polar Bear制作 Saint-Thomas 公式ウェブ(同じ兄弟であっても学習により差が出る例)
  18. ^ Polar Bear Battlefield: 2003/12/25放送 BBCWorldwideTV (YOUTUBE)
  19. ^ “サルより賢い?シロクマ・ゴーゴ…道具使います”. 読売新聞. (2010年4月15日). http://www.yomiuri.co.jp/feature/20090128-945694/news/20100415-OYT1T00680.htm 2010年4月29日閲覧。 [リンク切れ]
  20. ^ “国内最高齢34歳のホッキョクグマ、天国へ…京都市動物園”. 読売新聞. (2009年5月22日). http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090522-OYT1T00977.htm [リンク切れ]
  21. ^ とべ動物園 ピースの飼育日記
  22. ^ 「TOKYO発 上野動物園 - 自然なシロクマ舎 80年」 東京新聞 2007年12月14日朝刊、中日新聞東京本社。
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  24. ^ [1][リンク切れ]
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  26. ^ “カナダ環境大臣、ホッキョクグマ保護のための国際会議に参加”. 一般財団法人環境情報センター. (2013年12月2日). http://www.eic.or.jp/news/?act=view&oversea=1&serial=31533 2014年5月11日閲覧。 
  27. ^ (cache) 特集:白い大地のホッキョクグマ2004年2月号 ナショナルジオグラフィックWEB
  28. ^ クジラに群がる、北極グマの生態に変化2012年10月1日 ナショナルジオグラフィックWEB
  29. ^ “モスクワで開催のホッキョクグマ・フォーラムでIFAWが国際商取引の中止を訴える”. International Fund for Animal Welfare. (2013年12月3日). http://www.ifaw.org/japan/news/%E3%83%A2%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AF%E3%81%A7%E9%96%8B%E5%82%AC%E3%81%AE%E3%83%9B%E3%83%83%E3%82%AD%E3%83%A7%E3%82%AF%E3%82%B0%E3%83%9E%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%A0%E3%81%A7ifaw%E3%81%8C%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%95%86%E5%8F%96%E5%BC%95%E3%81%AE%E4%B8%AD%E6%AD%A2%E3%82%92%E8%A8%B4%E3%81%88%E3%82%8B 2014年5月11日閲覧。 
  30. ^ 正しく知る地球温暖化―誤った地球温暖化論に惑わされないために』(赤祖父俊一/著)133-134P
  31. ^ 餓死寸前のホッキョクグマ、胸張り裂ける動画海氷が消えてしまうと、ホッキョクグマのエサ探しはますます困難にナショナルジオグラフィック日本語版公式サイト
  32. ^ 東京都 報道発表資料 2008年11月掲載 恩賜上野動物園 イベント情報 企画展「クマ 飼育史・冬眠・研究」開催!
  33. ^ ズーラシアのホッキョクグマ ツヨシ(メス)に春よ来い. TOHOKU360 (2017年5月10日). 2018年12月15日閲覧。
  34. ^ kyouikusinnrigaku_tokuron 「白熊効果」 Wegner D.(ハーバード大学)

参考文献

関連項目

外部リンク