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'''ケミカルピーリング'''(chemical peeling)とは、薬剤を使用して[[創傷]]の治癒に従って皮膚再生を促す{{sfn|ガイドライン3版|2008}}。美容や、治療を目的とする。酸性の薬剤を[[皮膚]]の表面に塗布し、[[新陳代謝]]の悪くなった[[角質層]]の結合を緩めることで自然に剥がす治療法である。 |
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'''ケミカルピーリング'''(chemical peeling)とは、[[アルファヒドロキシ酸]](AHA)や[[サリチル酸]]などの薬剤を[[皮膚]]の表面に塗布し、[[新陳代謝]]の悪くなった[[角質層]]を剥がす治療法である。角質を溶かすのではなく、角質間の結合を弱める作用がある。そのため、施術後は自然に角質が剥がれていく。 |
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==薬剤の種類== |
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使用する薬剤によって、角質層を剥がすだけであったり、肌の新陳代謝を活性化させたりと効果に違いがある。 |
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[[皮膚科学|皮膚科]]などで行う専門的なケミカルピーリングは、[[水素イオン指数|pH]]の調整や使用する酸の濃度などを厳密に調整して行われる。酸を5 - 10分ほど皮膚に浸透させる。処置後に酸の刺激により肌に赤みが出ることがある。 |
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ケミカルピーリングは角質層のバリア効果を減少させるため、ほかの薬剤の浸透を促進する<ref name="pmid30038512"/>。施術後に[[ビタミンC誘導体]]を用いることによって皮膚の再生を促進させることもある。 |
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===レチノイン酸=== |
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== 関連項目 == |
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[[レチノイン酸]]は医師による施術は不要である{{sfn|ガイドライン3版|2008}}。2001年に{{仮リンク|黒皮症|en|melasma}}の治療選択肢として発表されたが、その他光老化などに対してもランダム化比較試験による厳格な効果の調査が必要であると2017年に言及されている<ref name="pmid29186249">{{cite journal|author=Sumita JM, Leonardi GR, Bagatin E|title=Tretinoin peel: a critical view|journal=An Bras Dermatol|issue=3|pages=363–366|date=2017|pmid=29186249|pmc=5514577|doi=10.1590/abd1806-4841.201755325|url=https://doi.org/10.1590/abd1806-4841.201755325}}</ref>。 |
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===サリチル酸=== |
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*サリチル酸マクロゴール - 最も浅い[[角質]]のみに作用する{{sfn|ガイドライン3版|2008}}。 |
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*サリチル酸エタノール - [[脂腺]]から吸収され[[薬物中毒|中毒]]を起こす危険性がある{{sfn|ガイドライン3版|2008}}。使用のための証拠はないため推奨されない{{sfn|ガイドライン3版|2008}}<ref name="naid130007040253"/>。 |
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===グリコール酸=== |
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[[グリコール酸]]はよく使用されている{{sfn|ガイドライン3版|2008}}。30%以上の濃度では浮腫やびらんの危険性が増える{{sfn|ガイドライン3版|2008}}。生理食塩水などのアルカリ性溶液で解離作用を中和して止める必要がある<ref name="pmid30038512"/>。 |
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===その他=== |
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==歴史== |
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日本では、ケミカルピーリングによる被害例があったため、2000年には業として実施していれば医業に相当すると厚生省が明言し、2001年より[[日本皮膚科学会]]がガイドラインを作成してきた{{sfn|ガイドライン3版|2008}}。ガイドラインの作成によって皮膚科でケミケルピーリングが実施されることが増えた<ref name="naid130004831577">{{Cite journal |和書|author1=渡辺幸恵 |author2=森田明理 |date=2006 |title=ざ瘡に対するグリコール酸ピーリング199例の治療経験 |journal=西日本皮膚科 |volume=68 |issue=5 |pages=548-552 |naid=130004831577 |doi=10.2336/nishinihonhifu.68.548 |url=https://doi.org/10.2336/nishinihonhifu.68.548}}</ref>。2006年に[[根拠に基づく医療]]に忠実としてガイドラインを改訂、2008年には第3版となった{{sfn|ガイドライン3版|2008}}。 |
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==用途== |
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[[痤瘡]](ざ瘡)、色素沈着、[[光老化]]、[[アンチエイジング]]、しみ、くすみの改善を目的とする{{sfn|ガイドライン3版|2008}}。 |
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2008年の日本皮膚科学会ガイドラインで、良質な証拠はないが選択肢のひとつとされているのは、ざ瘡の皮疹、小斑の日光黒子、小じわに対する、グリコール酸とサリチル酸マクロゴールである{{sfn|ガイドライン3版|2008}}。ざ瘡の陥凹性瘢痕、大斑の日光黒子、肝斑、[[雀卵斑]]、炎症後の色素沈着において、またサリチル酸エタノールの使用は証拠がないため推奨できない{{sfn|ガイドライン3版|2008}}。『尋常性痤瘡治療ガイドライン2017』でも、グリコール酸とサリチル酸マクロゴールでは選択肢だが、サリチル酸エタノールは推奨されていない<ref name="naid130007040253">{{Cite journal |和書|author1=林伸和 |author2=古川福実 |author3=古村南夫 ほか |date=2017 |title=尋常性痤瘡治療ガイドライン2017 |journal=日本皮膚科学会雑誌 |volume=127 |issue=6 |pages=1261-1302 |naid=130007040253 |doi=10.14924/dermatol.127.1261 |url=https://doi.org/10.14924/dermatol.127.1261}}</ref>。 |
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施術後は遮光が必要となり、[[レチノイド]]の使用も注意が必要となる{{sfn|ガイドライン3版|2008}}。 |
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==出典== |
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==参考文献== |
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*{{Cite journal |和書|author1=古川福実 |author2=船坂陽子 |author3=師井洋一ほか |date=2008 |title=日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン 改訂第3版 |journal=日本皮膚科学会雑誌 |volume=118 |issue=3 |pages=347-356 |naid=130004708588 |doi=10.14924/dermatol.118.347 |url=https://doi.org/10.14924/dermatol.118.347| ref={{sfnRef|ガイドライン3版|2008}} }} |
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2018年11月29日 (木) 04:08時点における版
ケミカルピーリング(chemical peeling)とは、薬剤を使用して創傷の治癒に従って皮膚再生を促す[1]。美容や、治療を目的とする。酸性の薬剤を皮膚の表面に塗布し、新陳代謝の悪くなった角質層の結合を緩めることで自然に剥がす治療法である。
薬剤の種類
皮膚科などで行う専門的なケミカルピーリングは、pHの調整や使用する酸の濃度などを厳密に調整して行われる。酸を5 - 10分ほど皮膚に浸透させる。処置後に酸の刺激により肌に赤みが出ることがある。
ケミカルピーリングは角質層のバリア効果を減少させるため、ほかの薬剤の浸透を促進する[2]。施術後にビタミンC誘導体を用いることによって皮膚の再生を促進させることもある。
レチノイン酸
レチノイン酸は医師による施術は不要である[1]。2001年に黒皮症の治療選択肢として発表されたが、その他光老化などに対してもランダム化比較試験による厳格な効果の調査が必要であると2017年に言及されている[3]。
アルファヒドロキシ酸
アルファヒドロキシ酸(AHA)[1]。
サリチル酸
サリチル酸には、樹木の柳由来で、抗炎症性もあり、30%までの濃度では中和剤は不要である[2]。
さらに2種の形態をとる。
酢酸
トリクロロ酢酸は、タンパク質と結合する[1]。そこで作用も失うため、全身副作用はないが局所での瘢痕のおそれがある[1]。タンパク質の変性、コラーゲンの破壊などを起こし、濃度に応じて深い層に達する[2]。
グリコール酸
グリコール酸はよく使用されている[1]。30%以上の濃度では浮腫やびらんの危険性が増える[1]。生理食塩水などのアルカリ性溶液で解離作用を中和して止める必要がある[2]。
その他
乳酸は単独か、アルファヒドロキシ酸と併用される[2]。副作用が少ない[2]。
歴史
日本では、ケミカルピーリングによる被害例があったため、2000年には業として実施していれば医業に相当すると厚生省が明言し、2001年より日本皮膚科学会がガイドラインを作成してきた[1]。ガイドラインの作成によって皮膚科でケミケルピーリングが実施されることが増えた[5]。2006年に根拠に基づく医療に忠実としてガイドラインを改訂、2008年には第3版となった[1]。
用途
痤瘡(ざ瘡)、色素沈着、光老化、アンチエイジング、しみ、くすみの改善を目的とする[1]。
2008年の日本皮膚科学会ガイドラインで、良質な証拠はないが選択肢のひとつとされているのは、ざ瘡の皮疹、小斑の日光黒子、小じわに対する、グリコール酸とサリチル酸マクロゴールである[1]。ざ瘡の陥凹性瘢痕、大斑の日光黒子、肝斑、雀卵斑、炎症後の色素沈着において、またサリチル酸エタノールの使用は証拠がないため推奨できない[1]。『尋常性痤瘡治療ガイドライン2017』でも、グリコール酸とサリチル酸マクロゴールでは選択肢だが、サリチル酸エタノールは推奨されていない[4]。
施術後は遮光が必要となり、レチノイドの使用も注意が必要となる[1]。
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p ガイドライン3版 2008.
- ^ a b c d e f Castillo DE, Keri JE (2018). “Chemical peels in the treatment of acne: patient selection and perspectives”. Clin Cosmet Investig Dermatol: 365–372. doi:10.2147/CCID.S137788. PMC 6053170. PMID 30038512 .
- ^ Sumita JM, Leonardi GR, Bagatin E (2017). “Tretinoin peel: a critical view”. An Bras Dermatol (3): 363–366. doi:10.1590/abd1806-4841.201755325. PMC 5514577. PMID 29186249 .
- ^ a b 林伸和、古川福実、古村南夫 ほか「尋常性痤瘡治療ガイドライン2017」『日本皮膚科学会雑誌』第127巻第6号、2017年、1261-1302頁、doi:10.14924/dermatol.127.1261、NAID 130007040253。
- ^ 渡辺幸恵、森田明理「ざ瘡に対するグリコール酸ピーリング199例の治療経験」『西日本皮膚科』第68巻第5号、2006年、548-552頁、doi:10.2336/nishinihonhifu.68.548、NAID 130004831577。
参考文献
- 古川福実、船坂陽子、師井洋一ほか「日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン 改訂第3版」『日本皮膚科学会雑誌』第118巻第3号、2008年、347-356頁、doi:10.14924/dermatol.118.347、NAID 130004708588。