「K9 155mm自走榴弾砲」の版間の差分
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[[大韓民国|韓国]]ヒュンダイ WIA社と[[国防科学研究所 (大韓民国)|ADD]]が開発したCN98 52[[口径]]155mm[[榴弾砲]]を装備し(最大[[仰俯角|仰角]]70度)、[[射撃管制装置]]により[[陣地]]進入から60秒(停止状態から30秒)で[[射撃]]を開始できる。弾丸装填は機力補助、装薬装填は手動で行われる。 |
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[[砲撃]]開始以後最初の3分間の最大連続射撃速度は毎分6発、それ以降の長時間連続射撃速度は毎分2発とされている。しかし[[延坪島]]での実戦射撃では、射撃開始からの5分間で射撃できた弾数はわずか4発だった(カタログ上は毎分6発×3分+毎分2発×2分で計22発の発射が可能)。これは、[[朝鮮人民軍|北朝鮮軍]]の射撃がK9の射撃訓練が終わった時点で開始されたので、当時K9には、装填された[[弾薬]]がなかったからであるとする報道がみられた<ref name="hankook1126" />。 |
2021年10月12日 (火) 22:26時点における版
性能諸元 | |
---|---|
全長 | 12m |
車体長 | 6.114m |
全幅 | 3.4m |
全高 | 3.5m |
重量 | 47t |
速度 | 67km/h |
行動距離 | 360km |
主砲 | ヒュンダイ WIA CN98 52口径155mm榴弾砲×1 |
副武装 | 12.7mm重機関銃M2×1 |
エンジン |
MTU 881Ka-500 ディーゼル 1,000hp |
乗員 | 5名 |
K9 155mm自走榴弾砲(K9 155ミリじそうりゅうだんほう)は、韓国が開発した自走砲。愛称はThunder/サンダー「雷鳴」。
開発
北朝鮮は、10,000門以上の火砲(170-240mmクラス)をDMZ沿いに配置、特にM1989 170mm自走砲「コクサン」(谷山砲)は、射程60kmに達する。これに対抗し、韓国陸軍と在韓米軍はM109 155mm自走榴弾砲などを装備してきたが、1980年代から新型自走砲を開発した(M109A6 パラディンなどによる更新には、新規開発よりもコストを要する)。
- 1989年7月 - ADD(Agency for Defense Development:国防科学研究所)と三星テックウィン社が共同開発。
- 1995年1月 - 試作車両完成。
- 1996年6月 - 射撃テスト。
- 1998年12月 - 国防部量産契約。
- 1999年 - 本格的量産。当時1両約37億ウォン。計477両生産予定。
- 2004年 - トルコへライセンス輸出開始。
- 2007年3月21日 - 18両追加生産決定。
- 2009年3月6日 - オーストラリアのケビン・ラッド首相は、「K-9自走砲の性能を高く評価する。購入を積極的に検討したい」と述べた[1]。
- 2009年6月25日 - オーストラリアの新型自走榴弾砲調達計画にPzH2000を提示していたドイツのKMW社が撤退を表明[2]、計画に残っているのはK9を提示している韓国の三星テックウィン社のみとなる。その後、調達計画自体が中止された。
- 2010年11月23日 - 北朝鮮軍が、黄海上の北方限界線(NLL)に近い仁川広域市・延坪島とその近海に向け、2回にわたり計170発余りの砲撃を加え、うち80発余りが延坪島に、90発余りが付近の海上に着弾した(延坪島砲撃事件)。韓国軍は、海兵隊延坪部隊の「K9」6両で敵の砲撃陣地2か所に計80発応射し、K9は初の実戦を経験した。この際、最初は6両中3両が故障で作動せず(3両のうち2両は、北朝鮮軍の砲撃を受けたことが故障の原因で、残りの1台は訓練中に不発弾が発生していた[3])3両で反撃、その約30分後に1両の応急修理を終え、後は4両で応射したという[4]。
- 2013年11月13日 - 国防技術品質院が過去3年間の納入部品を検査した結果、197件におよぶ成績証明書の偽造が確認された[5](産経新聞2013/11/13記事引用:偽造した社のうち34社はK9自走砲のほか、今年実戦配備された初の国産軍用ヘリコプター「KAI KUH-1 スリオン」にもおよぶ成績証明書の偽造に関わったとされている)。
概要
攻撃力
韓国ヒュンダイ WIA社とADDが開発したCN98 52口径155mm榴弾砲を装備し(最大仰角70度)、射撃管制装置により陣地進入から60秒(停止状態から30秒)で射撃を開始できる。弾丸装填は機力補助、装薬装填は手動で行われる。
砲撃開始以後最初の3分間の最大連続射撃速度は毎分6発、それ以降の長時間連続射撃速度は毎分2発とされている。しかし延坪島での実戦射撃では、射撃開始からの5分間で射撃できた弾数はわずか4発だった(カタログ上は毎分6発×3分+毎分2発×2分で計22発の発射が可能)。これは、北朝鮮軍の射撃がK9の射撃訓練が終わった時点で開始されたので、当時K9には、装填された弾薬がなかったからであるとする報道がみられた[3]。
バースト射撃(15秒に3発発射)した砲弾を同時に着弾させるToT(Time on Target)機能も射撃管制装置により可能となっている。
防御力
155mm砲弾の弾片に耐え、重要部は14.5mm徹甲弾の直撃を防御できる装甲を装備した結果、K55(韓国軍装備のM109)と比べて重量は倍近くになった(K55 約25t→K9 約47t)。それにより車体後面から砲撃の衝撃を受け止めるために地面に打ち込む駐鋤は除かれた。
与圧式NBC防護装置、内部温度上昇警告システムと自動消火装置に応答式の内部診断システムを備える。
機動力
エンジンは、独MTU社製のMT881KA-500 ディーゼルを韓国STX社(双竜重工業)がライセンス生産。
トランスミッションは、米ゼネラルモーターズ社製のATDX1100-5A3を統一重工がライセンス生産、前進4段後進2段。
サスペンションは、AS-90自走砲にも搭載されている英HDS(Horstman Defence Systems)社製の高性能サスペンション・サブシステムをライセンス生産。
比較
M109A6 | AS-90 | PzH.2000 | 99式 | K9A1 | 05式 | 2S35 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
画像 | |||||||
全長 | 9.1 m | 9.07 m | 11.67 m | 11.3 m | 12 m | 11.6 m | 11.9 m |
全幅 | 3.1 m | 3.5 m | 3.58 m | 3.2 m | 3.4 m | 3.38 m | 3.58 m |
全高 | 3.2 m | 2.49 m | 3.46 m | 3.1 m | 3.5 m | 3.55 m | 2.98 m |
重量 | 29 t | 45 t | 55.3 t | 40 t | 47 t | 35 t | 48 - 55 t |
主砲 | 39口径155mm砲 | 39口径155mm砲 ※改修型は52口径[8] |
52口径155mm砲 | 52口径155mm砲 ※輸出仕様は54口径 |
152mm砲 | ||
副武装 | 12.7mm重機関銃×1 | 7.62mm機関銃×1 | 7.62mm機関銃×1 | 12.7mm重機関銃×1 | 12.7mm重機関銃×1 | 12.7mm重機関銃RWS×1 | |
最大射程 | 24 km(M107弾) 30 km(RAP弾) 40 km(M982誘導弾) |
初期型 24.7 km(M107弾)[8] 30 km(RAP弾)[8] 改修型 30 km(M107弾)[8] 40 km以上(RAP弾)[8] |
36 km (DM121弾) 47 km (M1711弾) 67 km (M2005 V-LAP弾) |
30 km(M107弾) 40 km(BB弾) |
18 km(M107弾) 30 km(RAP弾) 36 km(K310弾) 40 km(K307弾) 53 km(XM1113) 54 km(K315弾) |
20 km (レーザー誘導) 39 km (ERFB-BB) 50 km (ERFB-BB-RA) 100 km (WS-35) |
不明 |
射撃速度 | 4発/分 | 6発/分 | 8発/分 | 6発/分以上 | 6 - 8発/分 | 10発/分 (PLZ-05) 8発/分 (PLZ-52) |
不明 |
最大出力 | 405 hp | 660 hp | 1,000 hp | 600 hp | 1,000 hp | 800 - 1,000 hp | 1,000 hp |
最高速度 | 64 km/h | 53 km/h | 60 km/h | 49.6 km/h | 67 km/h | 56 km/h(PLZ-05) 65 km/h(PLZ-52) |
67 km/h |
乗員数 | 4名 | 5名 | 4名 | 5名 | 4名 | 3名 |
派生型
- K10 탄약보급장갑차弾薬運搬車
- K9の車体から開発された専用弾薬補給車両、車内に104発の弾薬を搭載し、ベルトコンベアを使い1分あたり12発の弾薬をK9の車内に自動補給する。
- T-155 Fırtına(Storm)旋風
- トルコは元々PzH2000自走榴弾砲の導入を希望していたが、クルド人問題に対するドイツ政府の圧力で実現しなかった。そのため、トルコは「SP2000」と呼ばれる155mm自走榴弾砲を開発したが、トルコ陸軍の要求に達せずにK9のトルコ型であるT-155を導入することになった。英語版のデータでは56tと、原型のK9(47t)より10t近く重くなっている。また、価格面でのメリットも大きかったと思われる。
- AHSクラブ(Crab)蟹
- 砲塔は試作車の時点でAS-90 ブレイブハートのライセンス生産品が決定していたが、2014年にポーランド国防省がハンファテックウィンとの間でK9の車体120両を購入することが決まった。最初の24両はハンファ側で生産した車体を使用し、残りの96両は2018年から2024年にかけてポーランド国内でライセンス生産される[9][10]。
-
K10弾薬運搬車
-
T-155 Firtina
-
K9 バジラ
採用国
- フィンランドは、ソ連製の2S1グヴォズジーカ 122mm自走榴弾砲の後継として2011年から韓国と会談し[11]、2016年7月より政府間交渉を開始した[12]。同年後半にはフィンランド国防軍が寒波試験評価を実施し、11月に購入のための了解覚書(MOU)を締結した[11][13]。
- 2017年2月6日、韓国政府筋は韓国陸軍で使用していた中古48両を完全にオーバーホール後、再組立てする廠整備方式でフィンランドに輸出する交渉が最終段階に達していた」とし「来月初めに制式な契約をする予定」と明らかにした。新品ではなく中古のとなったのは耐久性に対する信頼と価格の面で有利であるためで政府関係者は「ふつうK-9の新品1台当たりの価格は45億~50億ウォン」だとし、「中古を導入すれば、1台当たり10億ウォンほど価格を下げることができる」と語った。フィンランドに輸出する48両の価格は2億ドル(約2,270億ウォン)で、後方支援(部品供給)と技術料などの名目で約2億ドル建ての契約も結ぶ予定で、合計は4億ドル(約4,540億ウォン)に達する[13]。3月2日、韓国防衛事業庁と大韓貿易投資振興公社は、フィンランド政府と48両の輸出契約を4,500万ユーロ(約190億円)で締結、2025年までに引き渡しを完了すると発表した[14]。
- K9をベースにインドの民間企業ラーセン・アンド・トゥブロ(L&T)と共同開発するK9 バジラ(Vajra)を100両購入予定。オプションとして50両の購入も計画されている。インドはサムスンとのジョイントベンチャーの一環として、インド西部プネー近くのL&T Talegaon工場でK9を製造する予定。L&Tの関係者によると、インド向けのK9は防衛調達手続(DPP)の「Buy Global」カテゴリーで調達されており、インド固有のシステムが約50%含まれているという。これには、車体と砲塔構造の製作と、火器管制や通信システムなどの14のサブシステムの開発が含まれる。インド国防省は2016年7月にL&Tとの間でK9 100両の供給に関する価格交渉を完了した。契約は約7億5,000万ドル相当とみられている[15]。
- インド政府は3月29日に6億4,600万ドル(約698億円)に達するK9導入計画を承認、輸出が確定した。報道によると初期に引き渡される10両は韓国で生産され、残りの90両はインド内のL&T工場でハンファテックウィンの技術指導のもと生産される予定。輸出される現地向けモデルはインドの気候や地形に合わせて改良されるという。L&T側によると、ハンファテックウィンと同社の合弁比率は50対50であるため、ハンファテックウィンの輸出額は3億2,000万ドル程度になるとみられる[16]。一方でK10弾薬供給車は入札には含まれていないと業界関係者は述べている[17]。
- ノルウェーは、1960年代に導入したM109A3GNMを置き換えるためにK9(ノルウェー名Vidar)を選択した。24両が契約され、さらに24両以上のオプションがある。契約額は、6両のK10弾薬運搬車を含めて2億1,520万アメリカドル。引き渡しは2019年に始まる予定[18]。2019年9月、1台目のK9とK10が納入された。24両のK9と6両のK10を3億8300万ドルで購入する[19]。
- エストニアは、2017年2月6日に韓国との間で調印交渉を開始する覚書に署名した。エストニアのマルガス・ツァクナ国防相は、新兵器が陸軍の砲撃能力と機動力を大幅に高めると語った。同計画では2021年までに配備される予定で、少なくとも12両を購入する予定だという。エストニアが購入を決めた背景には、クリミア併合など東欧におけるロシアの戦闘行動を考慮したバルト三国の懸念の高まりがあるとされる。調達に関してはフィンランドが共同購入を提案し、エストニア政府もこれを快諾したことから共同で実施される見込み[11][20][21]。2020年8月20日、納入済みの12門に続いて、6門の追加輸出契約の締結が確認された[22]。
検討
- 2020年9月3日、オーストラリア陸軍自走砲獲得事業の候補機種に単独で選定とオーストラリア政府から発表がされた[23]。K9自走砲30両とK10弾薬運搬装甲車15両が納品予定。
ほかにはスペイン、マレーシア、サウジアラビア、チリ、エジプトなどと交渉したが、成立していない。このほか、ポーランド、デンマークも調達に関心を示している[11]。
登場作品
映画
脚注
- ^ 豪と5月からFTA交渉開始…安保協力も拡大へ(1)
- ^ Germans Drop Australian Self-Propelled Gun Program
- ^ a b 자주포 절반만 작동… 포탄장전도 4발씩만… "안쏜게 아니라 못쐈다"(韓國日報2010年11月26日)
- ^ 北朝鮮砲撃:K9の半分が故障、残りも性能発揮できず(朝鮮日報 2010年11月26日)
- ^ “韓国原発、「欠陥・事故」続出の恐ろしき実態…偽造部品納入は当たり前、放射能漏れ数値は18倍増に修正”. 産経新聞社. (2014年11月12日) 2014年11月25日閲覧。
- ^ 2011年に製造されたものには射撃統制システムにIntel486、それ以前のものにはIntel386CPUが使われているものもあるという
- ^ 韓国軍のK-9自走砲は時代遅れ?10年前のCPU搭載=韓国(サーチナ 2011/09/21(水) 10:11)
- ^ a b c d e “AS90 Braveheart 155mm Self-Propelled Howitzer” (英語). 2019年10月18日閲覧。
- ^ Samsung Techwin signed a deal to deliver 120 K9 Thunder self-propelled howitzers to Poland. armyrecognition.com, December 17, 2014.
- ^ “Polish Armed Forces have received self-propelled howitzers KRAB” (英語). Huta Stalowa Wola S.A.. スタロヴァ・ヴォラ製鉄所. 2020年9月5日閲覧。
- ^ a b c d Estonia partners with Finland for K9 howitzer buy
- ^ Förnyandet av Arméns artillerimateriel framskrider
- ^ a b 進撃の「K-9自走砲」...北欧2カ国に同時輸出
- ^ 韓経:韓国、「世界最強」K-9自走砲をフィンランド輸出へ 中央日報日本語版
- ^ India completes price negotiations for 100 modified K-9 self-propelled howitzers
- ^ 韓国開発の自走砲K9 インドへの100台輸出確定
- ^ India's acquisition of 100 K9 SPHs approved
- ^ [1]
- ^ 中時電子報. “挪威接收首輛韓製K9自走砲 總數24輛 - 軍事” (中国語). 中時電子報. 2020年3月1日閲覧。
- ^ Estonia joins Finland in howitzer procurement
- ^ Estonia begins K9 artillery negotiations with South Korea | IHS Jane's 360
- ^ “[단독 코로나도 뚫은 한화디펜스..에스토니아에 K9 추가 수출”]. (2020年8月20日)
- ^ “オーストラリア陸軍、韓国製K9自走砲を輸入…世界で1700台運用中”. (2020年9月3日)
参考文献
月刊グランドパワーNo.152 DEFENCE ASIA 2006 韓国の兵器展示展2007,1/1ガリレオ出版
関連項目
外部リンク
- 日本周辺国の軍事兵器 - K9 155mm自走榴弾砲「雷鳴」 - 日本周辺国の軍事兵器、大部分此方を参考に編集、画像YouTube動画も有り
- <大韓民国の国防力>もうひとつの名品K-9・155ミリ自走砲 - 谷山砲との比較
- :::: SamsungTechwin :::: - 三星テックウィン社のサイト(2007年9月27日時点のアーカイブ)
- Global Security on K-9 Howitzer - 英文のサイト、砲弾の画像有り
- K-9 and K-10 - YouTube - 供弾シーンが解り易い動画
- ^ 砲塔システムのみ。こちらはK9では無くAS-90との競合で不採用となった。