「宇部伊佐専用道路」の版間の差分
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後述のように、かつてこれらの輸送には[[日本国有鉄道]](現在の[[西日本旅客鉄道|JR西日本]])[[美祢線]]の[[貨物列車]]を利用していたが、昭和中期から後期にかけての国鉄の度重なる貨物運賃値上げや、[[労働組合]]運動激化による[[スト権スト]]頻発により、拠点間輸送の効率化と安定化の必要に迫られた結果として、道路建設された経緯がある。 |
後述のように、かつてこれらの輸送には[[日本国有鉄道]](現在の[[西日本旅客鉄道|JR西日本]])[[美祢線]]の[[貨物列車]]を利用していたが、昭和中期から後期にかけての国鉄の度重なる貨物運賃値上げや、[[労働組合]]運動激化による[[スト権スト]]頻発により、拠点間輸送の効率化と安定化の必要に迫られた結果として、道路建設された経緯がある。 |
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完全に隔離された[[私有地]]のため、[[公道]]に適用される道路交通法などの制限は受けないが、専用道路内を運転するには、私有地の所有者である宇部興産の許可が必要である。作業者は社内審査と講習を受けて、運転資格を取得する事が義務付けられており、制限速度70 [[キロメートル毎時|km/h]]を始めとする社内ルールが細部まで厳格に設定されている<ref>{{Cite web|url= |
完全に隔離された[[私有地]]のため、[[公道]]に適用される道路交通法などの制限は受けないが、専用道路内を運転するには、私有地の所有者である宇部興産の許可が必要である。作業者は社内審査と講習を受けて、運転資格を取得する事が義務付けられており、制限速度70 [[キロメートル毎時|km/h]]を始めとする社内ルールが細部まで厳格に設定されている<ref>{{Cite web|url=https://www.ube-ind.co.jp/ube/jp/ir/personal/ube_road.html?id=side_menu_about-43|title=宇部興産専用道路|author=宇部興産 |accessdate=2016-02-24}}</ref>。 |
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経路の途中では[[中国自動車道]]と並行して走り、[[国道2号]]の下をくぐり抜けて、[[山陽新幹線]]の上を跨いだりしながら[[宇部港]]の宇部セメント工場まで続いている{{sfn|浅井建爾|2015|p=30}}。宇部港では、橋長1,020 mの[[#興産大橋|興産大橋]]で海を渡る{{sfn|浅井建爾|2015|p=30}}。宇部市大字小串で一般道路と平面交差しており、一般道の交通遮断と誤進入防止のために、[[鉄道]]の[[踏切警報機]]が設けられている。この[[踏切]]は、過去に『[[ダウトをさがせ!#ダウトをさがせR|ダウトをさがせR]]』([[TBSテレビ|TBS]]系)や『[[ナニコレ珍百景]]』([[テレビ朝日]]系)などのテレビ番組で紹介されたこともある。 |
2020年8月17日 (月) 22:27時点における版
私道 | |
---|---|
宇部興産 宇部・美祢高速道路 | |
宇部興産専用道路 | |
路線延長 | 31.94km |
開通年 | 1972年(部分供用) |
起点 | 山口県宇部市 |
終点 | 山口県美祢市 |
接続する 主な道路 (記法) |
記事参照 |
■テンプレート(■ノート ■使い方) ■PJ道路 |
宇部興産専用道路(うべこうさんせんようどうろ)は、山口県宇部市から同県美祢市に至る宇部興産の専用道路。正式名称は、宇部興産 宇部・美祢高速道路(うべこうさん うべ・みねこうそくどうろ)[1][2]。全長31.94 kmに及ぶ、日本一長い私道である[2]。
1967年(昭和42年)着工、1972年(昭和47年)から部分供用され、1975年(昭和50年)に興産大橋を除く区間が全通。1982年(昭和57年)の興産大橋開通により現在のルートが完成した。のちに、一般道路の宇部湾岸道路に転用するため、宇部市内の一部区間(東須恵IC付近)が両側4車線から同2車線に削減されている。
概要
美祢市伊佐町伊佐の宇部興産伊佐セメント工場から宇部市大字小串の宇部興産宇部セメント工場までを結び、伊佐石灰石鉱山で採掘した石灰石と、伊佐セメント工場でつくったセメントの半製品クリンカーを、専用トレーラーで運搬している[2]。宇部興産が所有する敷地(工場構内)にある道路(私道)という位置づけのため、道路交通法や道路運送法、道路運送車両法など法令の適用は受けない[2]。
後述のように、かつてこれらの輸送には日本国有鉄道(現在のJR西日本)美祢線の貨物列車を利用していたが、昭和中期から後期にかけての国鉄の度重なる貨物運賃値上げや、労働組合運動激化によるスト権スト頻発により、拠点間輸送の効率化と安定化の必要に迫られた結果として、道路建設された経緯がある。
完全に隔離された私有地のため、公道に適用される道路交通法などの制限は受けないが、専用道路内を運転するには、私有地の所有者である宇部興産の許可が必要である。作業者は社内審査と講習を受けて、運転資格を取得する事が義務付けられており、制限速度70 km/hを始めとする社内ルールが細部まで厳格に設定されている[3]。
経路の途中では中国自動車道と並行して走り、国道2号の下をくぐり抜けて、山陽新幹線の上を跨いだりしながら宇部港の宇部セメント工場まで続いている[2]。宇部港では、橋長1,020 mの興産大橋で海を渡る[2]。宇部市大字小串で一般道路と平面交差しており、一般道の交通遮断と誤進入防止のために、鉄道の踏切警報機が設けられている。この踏切は、過去に『ダウトをさがせR』(TBS系)や『ナニコレ珍百景』(テレビ朝日系)などのテレビ番組で紹介されたこともある。
使用車両
現在は、1台のトラック(トラクター)が40トン積みトレーラーを2両連結して牽引するダブルストレーラーにて運行している[4][注釈 1][注釈 2]。約8年サイクルで車両を更新している。一般の交通規則は適用されないため、一般道路を走行できる車両に装着が義務付けられているナンバープレートは付けていない[2]。
- 使用車両一覧
興産大橋
興産大橋 | |
---|---|
基本情報 | |
国 | 日本 |
所在地 | 山口県宇部市 |
交差物件 | 宇部港(厚東川) |
建設 | 宇部興産宇部鉄工所・富士車輌JV |
座標 | 北緯33度56分31.7秒 東経131度12分48.8秒 / 北緯33.942139度 東経131.213556度 |
構造諸元 | |
形式 | 鋼トラス橋 |
全長 | 1,020m |
高さ | 36m |
地図 | |
関連項目 | |
橋の一覧 - 各国の橋 - 橋の形式 |
興産大橋(こうさんおおはし)は、宇部市大字小串と同市大字西沖の山の間の宇部港内(厚東川河口)を跨ぐ橋として、1982年(昭和57年)3月に開通。設計・施工・建材製造の全てを宇部興産とその子会社・関連会社が行なっている。
これは、当時の宇部興産本体及び関連会社の富士車輌が、鋼構造物工事の建設業許可を持ち、鋼橋の製作を手がけていたこと[注釈 3]、子会社に建設コンサルタント(宇部興産コンサルタント)が存在したため、可能となったことである。
運河の航路を確保するために、36mの高さが必要であった上、橋の起終点が平地であったため、6%の急勾配となっている。
当時、上部工工事の宇部興産宇部鉄工所・富士車輌共同企業体の代表責任者を務めた元宇部興産専務の藤野清の回顧[6]によれば、宇部港沖の海苔漁場に影響を与えずに建設する必要があったため、基礎杭の鋼管重量6,400t、上部構造の重量10,000tという巨大な橋梁を一括架橋するという手法が採用された。
橋梁は4つの部分に分けて工場で製作し、本州四国連絡橋の架橋用に建造された世界最大級(3,000トン)のフローティングクレーン船「武蔵」で吊り上げて宇部港まで運搬。橋台に設置する作業は長岡技術科学大学教授の笹戸松二の監修の下で行われた。これら一連の工事は、21ヶ月間で無事故のうちに完工したという。
興産大橋は、1982年(昭和57年)に日本鋼構造協会の業績賞を受賞、翌1983年(昭和58年)には民間企業発注の橋としては初めて土木学会田中賞を受賞している。
起終点等
- 陸上距離:31.94km
- 起点:宇部市大字小串1978-2 宇部興産宇部セメント工場
- 終点:美祢市伊佐町伊佐4768 宇部興産伊佐セメント工場
通過する自治体
交差・接続している道路
下記はすべて立体交差。ただし、※印の箇所にはランプとゲート(通常は閉鎖)があり、一般道と接続している。
- 山口県道354号妻崎開作小野田線(宇部市東須恵)※
- 国道190号(宇部市東須恵)※
- 山口県道29号宇部船木線(宇部市大字際波)
- 山陽自動車道宇部下関線(山陽小野田市大字有帆)
- 国道2号〔国道9号〕(宇部市大字船木)
- 山口県道30号小野田美東線(宇部市大字船木)※
- 山口県道224号西万倉山陽線(宇部市大字西万倉)
- 山口県道355号奥万倉厚狭線(宇部市大字西万倉)
- 中国自動車道(美祢市伊佐町堀越)
- 山口県道232号奥万倉山陽線(美祢市伊佐町堀越)
- 山口県道37号宇部美祢線(美祢市伊佐町堀越)
- 国道435号(美祢市伊佐町伊佐)※
専用道路開通前の輸送状況
専用道路開通前までは、伊佐工場 - 美祢駅間に自ら建設した貨物専用線を介して、美祢駅(美祢線) - 宇部港駅(宇部線)間で宇部興産の石炭・石灰石輸送が実施されていた。最盛期には宇部港駅と美祢駅の貨物取扱量が年間約770万t(1978年度)に上り、当時の日本一であったが、専用道路の供用とともに輸送量は減少し1998年、同区間の鉄道による石灰石輸送は終了した[注釈 4]。
この輸送ルートにあたる宇部駅 - 厚狭駅(山陽本線)間には、この区間での平面交差を避ける目的で単線の別線が設けられていたが、後に別線部分は廃線となっている。
輸送目的以外での使用
宇部・美祢・山陽小野田産業観光推進協議会が実施する「産業観光バスツアー」では、当道路をテーマとしたガイドツアーが随時実施されている。
1994年(平成6年)に開催された広島アジア競技大会では、この道路を使用して自転車のロードレース競技が行われた。道路脇にある「宇部興産専用道路」の看板はこのとき設置されたものである。
フィクション作品での使用
映画『釣りバカ日誌12 史上最大の有給休暇』では主人公たちが興産大橋を走行する場面がみられた。
内田康夫の推理小説『汚れちまった道』(浅見光彦シリーズ)では、主人公・浅見光彦が宇部から美祢までの短絡ルートとして、山口県警から特別許可を得て興産道路を利用する描写があった。
脚注
注釈
- ^ 日本の道路交通法で、公道におけるフルトレーラーの全長は18mまでと規定されているが、私道である宇部興産専用道路には適用されないため、18m以上の複数連結トレーラが通行している。
- ^ ダブルストレーラーは、日本では宇部興産専用道路でのみ見られる形態である。かつてはトリプルストレーラーの運行も行われていた。
- ^ 宇部興産本体の鋼構造物をはじめとする機械・エンジニアリング部門は、後に事業分割により子会社の宇部興産機械に承継されている。富士車輌は2001年民事再生手続開始申立により宇部興産傘下を離脱し、再建過程で鋼橋事業からも撤退した。
- ^ 同時に中国電力三隅発電所との間で炭酸カルシウム・フライアッシュの双方向輸送を開始している。
出典
- ^ 2007年版CSRレポート (PDF) p. 55
- ^ a b c d e f g 浅井建爾 2015, p. 30.
- ^ 宇部興産. “宇部興産専用道路”. 2016年2月24日閲覧。
- ^ 宇部興産. “地域コミュミケーション誌「翼」 No.4”. 2016年2月24日閲覧。
- ^ SCANIAに託された、宇部興産ダブルストレーラーの未来
- ^ 日経BP『新規事業に挑め 日の丸企業戦士』- ポスコの発展の原点
参考文献
- 浅井建爾『日本の道路がわかる辞典』(初版)日本実業出版社、2015年10月10日。ISBN 978-4-534-05318-3。
関連項目
- ロードトレイン - オーストラリアで用いられている、コンテナを積載したトレーラーを大型トラックに複数連結して大量の貨物を輸送する長大なトラック。
- セミトレーラー - トラクタ(トレーラーヘッド)のカプラに連結し、主に貨物を載せて走行する荷台車で、日本では最も一般的なトレーラーであり、あらゆる用途(牽引自動車#用途・積荷による分類参照)に使われる。
外部リンク
- 宇部興産専用道路 - 宇部興産
- 【公式】宇部興産専用道路(宇部興産公式YouTube) - YouTube
- 宇部・美祢高速道路(産業技術史資料データベース) - 国立科学博物館 産業技術史資料情報センター
- 宇部興産セメントサービス ※宇部興産専用道路のゲート管理、パトロールを担当している。
- 宇部・美祢・山陽小野田産業観光推進協議会 ※当道路をテーマとしたガイドツアーを随時実施している。
- 宇部興産道路 - tunnel web ※私設サイト。宇部興産道路に関して詳しい。
- 疾走!宇部興産専用道路〜日本最長の“私道”を往く〜 - 検証:近未来交通地図 ※私設サイト。2007年11月に実施された産業観光モニターツアー参加記(専用道を観光バスで走破)。