名取川

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名取川
名取川:2007年1月2日撮影
名取川河口
水系 一級水系 名取川
種別 一級河川
延長 55 km
平均流量 16.3 m³/s
(余方観測所:2000年
流域面積 939 km²
水源 神室岳(仙台市)
水源の標高 1,356 m
河口・合流先 仙台湾(仙台市、名取市)
流域 日本の旗 日本 宮城県
地図青.名取川、薄青.鳴瀬川
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中流(秋保温泉にて、2021年10月)
名取二号橋から(仙台市から名取市を見る、2008年2月)
河口(名取市閖上、2005年3月)
閖上の堤にある松並木「あんどん松」
画像外部リンク
名取川水系流域界[1]

名取川(なとりがわ)は、宮城県仙台市および名取市を流れ、太平洋に注ぐ一級河川。名取川水系の本流である。

歌枕として知られ、埋れ木仙台亜炭)と共に詠われてきた。

流路と地形[編集]

宮城県仙台市太白区西部の奥羽山脈神室岳(かむろだけ、標高1,356m)に源を発し概ね東へ流れ、太白区山田付近で仙台平野に出る。仙台市若林区日辺で広瀬川を合わせ、仙台市若林区と名取市の境界から仙台湾に注ぐ。

流域の大部分を占める仙台市南部と名取市のほか、支流碁石川の柴田郡川崎町、坪沼川の柴田郡村田町北東部の菅生、川内沢川の岩沼市北端が名取川水系の流域である。

上流域は渓谷で、二口温泉がある。秋保大滝を経てからは川にそって馬場、長袋、境野、湯元と細長い盆地が数珠繋ぎに連なる。そのうちの湯元地区にある秋保温泉は、仙台市中心部から近く人気のある温泉地である。この中流部の東側は仙台市の郊外として宅地化が進んでいる。

仙台平野を流れる下流部では、両岸に堤防が作られている。川からみた内側、居住地からみた堤防の向こう側(堤外地)では、ところどころ畑が作られているが、台風により数年に一度の頻度で大きな被害を受ける[2]。下流部では、海から約5.5キロメートル遡ったところにある広瀬川合流点を境にして、異なる様相がある。合流点より川上での勾配は、平均約0.002で、河床は礫である[3]。両岸の平地では宅地化が進んでいる。合流点より川下の勾配は平均約0.0003で、河床は海水面より低く、砂でできている[4]。堤防の両岸には水田が広がる。

河口付近では貞山運河と連絡し、その下流で井戸浦に通じる。もとは南の閖上漁港と広浦にも通じていたが、今では漁港が海に出口を設けたため遮断された。河口の閖上(ゆりあげ)漁港は、中世以来の歴史を持つ港町である。

語源[編集]

大まかに2つの説があるが、どちらもアイヌ語が由来とされている[5]

  • アイヌ語の「ナイトリベツ」(渓谷)に由来する。
  • 昔、下流部に入江があったため、アイヌ語の「ニットリトン」(静かな海)に由来する。

歴史[編集]

平安時代から陸奥歌枕の一つとして知られた。名取川を見たことがない人が「名を取る」という言葉を様々な状況にかけた歌が多いが、実景を詠んだものもある。

江戸時代には鮎(アユ)や鱒(マス)をとる漁業が盛んであった。『奥州名所図絵』は、滝を登ろうとして落ちてきた鱒をとる、という変わった漁法を紹介している[6]。鮎は(やな)で大量に漁獲された[7]

2011年の東北地方太平洋沖地震では、巨大津波が逆流し周辺で大きな被害が発生した[8]NHKのヘリコプターが撮影した空撮映像が世界的に報道され衝撃を与えた[9]

生物[編集]

上・中流部に生息する魚には、ウグイハヤヤマメアユマスサケウナギカジカコイがある[10]

水質[編集]

2011年平成23年)度調査でのBOD75%値は、上流の深野橋で 0.6 mg/Lと下流の名取橋で1.8 mg/Lの間におさまった[11]2018年(平成30年)度には、調査した12地点のBODが深野橋から最下流の閖上大橋まで0.5から0.9mg/Lになった[12]

流域の自治体[編集]

支流[編集]

橋梁[編集]

上流→下流の順。mg/Lで表すのは、その地点での水質基準の一つであるBODで、数値が多いほど汚れている[13]

並行する交通[編集]

道路[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 水の風土記 > 水の文化 事・場ネットワーク > 宮城県仙台市ミツカン
  2. ^ 横山他「宮城県名取川堤外地における農地利用の実態と浸水リスク」。
  3. ^ 谷川他「https://doi.org/10.2208/prohe.47.607 名取川に見られる河床形状特性とその変遷]」、608頁。
  4. ^ 谷川他「名取川に見られる河床形状特性とその変遷」、608 - 609頁。
  5. ^ 日本の川 - 東北 - 名取川 - 国土交通省水管理・国土保全局”. www.mlit.go.jp. 2019年9月5日閲覧。
  6. ^ 『秋保町史』、15頁。
  7. ^ 『秋保町史』本編16頁。
  8. ^ 襲いかかる巨大津波「怖い、死にたくない」MSN産経ニュース 2011年3月12日 00時10分 Archived 2011年3月14日, at the Wayback Machine.
  9. ^ 「ごめんなさい 救助のヘリじゃなくてごめんなさい」|NHK”. 2023年3月10日閲覧。
  10. ^ 『秋保町史』本編23頁。
  11. ^ 仙台市環境局環境部環境企画課『仙台市の環境』杜の都環境プラン(仙台市環境基本計画)平成23年度実績報告書、2012年4月、31頁。各地点の環境基準を満たしてはいる。
  12. ^ 仙台市環境局環境部環境企画課『仙台市の環境』杜の都環境プラン(仙台市環境基本計画)平成30年度実績報告書、2019年11月、28頁。
  13. ^ 仙台市環境局環境部環境企画課『仙台市の環境』杜の都環境プラン(仙台市環境基本計画)平成23年度実績報告書、2012年4月、31頁。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]