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== あらすじ ==
== あらすじ ==
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2023年4月19日 (水) 10:53時点における版

これ描いて死ね
ジャンル 少年漫画学園漫画
漫画
作者 とよ田みのる
出版社 小学館
掲載誌 ゲッサン
レーベル ゲッサン少年サンデーコミックス
発表号 2021年12月号 -
巻数 既刊3巻(2023年4月時点)
漫画:ロストワールド
作者 とよ田みのる
出版社 小学館
掲載誌 週刊ビッグコミックスピリッツ
ゲッサン
発表号 2020年第51号(スピリッツ)
2022年9月号(ゲッサン) -
その他 単行本『これ描いて死ね』内に収録
テンプレート - ノート
プロジェクト 漫画
ポータル 漫画

これ描いて死ね』(これえがいてしね[1])は、とよ田みのるによる日本漫画。少年漫画雑誌『ゲッサン』(小学館)にて、2021年令和3年)12月号から連載中[2]。都会から離れた離島で暮らす女子高校生が、長期休業中であった憧れの漫画家との出逢いをきっかけとして、仲間やライバルたちと漫画制作に挑む物語である[3]。2023年(令和5年)3月に、書店員ら漫画好きの有志が投票で選ぶ「マンガ大賞2023」で大賞を受賞し、話題となった[3][4]。本記事では、前日譚『ロストワールド』(旧題『デビュー』)についても記述する。

あらすじ

東京から120キロメートル南方の離島、伊豆王島。高校1年生の少女の安海相は、漫画をこよなく愛している。ある日、心酔する漫画家「☆野0」が、日本最大の同人誌即売会であるコミティアで、10年ぶりに新作を頒布すると知り、生まれて初めて東京本土へ、そしてコミティアへ向かう。相は多くの同人作家を目にし、「漫画は読むだけではなく自分でも描ける」と知る。そして憧れの☆野0が、学校での教員の手島零と同一人物だと知り、漫画を教わることを懇願する。やがて相たちは漫画研究会を結成し、手島に漫画の手ほどきを受けつつ、漫画を愛する仲間やライバルたちと共に、漫画制作へ挑んでゆく。

ロストワールド

手島零は漫画家志望の大学生。雑誌「スピリッツ」に漫画を投稿するも、なかなか採用に至らない。ファンタジーバトルSFと、漫画の作風は迷走を続ける。漫画を捨てて就職するか、死ぬかと迷った末、「どうせ死ぬなら最後に1本」と、現在の自分の怨念すべてを込めて、決死の信念で描いた渾身の作品は、ついに小学館新人コミック大賞で佳作を受賞し、手島は漫画家としての第一歩を歩み始める。

登場人物

漫画研究会

伊豆王島の高等学校、王島南高校で新たに設立された漫画研究会。「相」と「心」の字を合せて「想」、それに幸の姓を合せて「赤福 想(あかふく そう)」のペンネームでの合作漫画が、主な活動である[5][6]。以下「漫研」と略して記述する。

安海 相(やすみ あい)
主人公[7][8]。連載開始時点で高校1年の少女。一見すると社交的だが、実は人との関わりが苦手であり、漫画を支えにして育った[9]。漫画をこよなく愛し、特に☆野0(手島)の大ファンで、彼女のデビュー作『ロボ太とポコ太』を自身のバイブルとしている[10]。漫研ではネームを担当。自身でも「ヤスミン」のペンネームでオリジナル漫画を描く。作画の技量は発展途上で「良いところを捜す方が難しい」といわれるほどだが、自由奔放で、独特の魅力を持つ。
手島 零(てしま れい)
漫研の顧問で、国語の教員。かつて東京で「☆野 0(ほしの れい)」のペンネームで、プロの漫画家として活動していた。デビュー作『ロボ太とポコ太』は、打ち切りながら、一部マニアにカルト的な人気を持つ。現在は漫画への情熱を失ったとして、故郷の伊豆王島で教職についている。一同を「漫画はすべて嘘、学業優先、漫研の活動はあくまで趣味の範囲」と厳しく指導するものの、徐々に相たちの情熱に影響されてゆく。『ロストワールド』では、手島の新人漫画家時代が描かれる。
赤福 幸(あかふく さち)
相の同級生で、漫研設立前からの友人。手島が漫画家だと知り、暑い夏場を冷房つきの部室で快適に過ごすために、手島に「地方公務員なのに副業をしている」と脅し紛いで、漫研設立を申し出る[11]。漫研では漫画制作に直接は関わらず、相たちの漫画を読んで的確に批評することで、作品の質の向上に貢献する[12]、いわば編集者としての存在である[13]。実家は土産物店。熱い漫画が好きで、藤田和日郎のファン[14]
藤森 心(ふじもり こころ)
相の同級生。百年続く老舗旅館の娘[15]。厳格な母の影響で引っ込み思案な性格だが、漫画が大好きなことから、勇気を出して漫研への入会を申し出、美術部と兼部で活動する[10]。周囲の流行についていけずに友人がおらず、漫研一同を初めての友人として大切にしている。漫研では美術部ならではの画力で作画を担当し、相の自由な感性の原作を理性的に再構築する[12]諸星大二郎のファン[6]
石龍 光(せきりゅう ひかる)
東京本土からの転校生。コミティアでも大人気の同人漫画家で、ペンネームは「ストーンドラゴン」。『ロボ太とポコ太』の愛読者でもあり、作者の手島が顧問と知って、漫研の一員となる。母へびちかの影響で、人間関係への興味が希薄で、友人もおらず、漫画を通じて漫研一同との親交を深めてゆく。コミティアやSNSでの漫画発表では、相たちとは別に単独で活動する。漫画に熱中しすぎて留年しており、相たちと同学年だが、年齢は一つ上。

その他

ポコ太(ポコた)
漫画『ロボ太とポコ太』の作中に登場するタヌキ型のロボット[16]。相のもとにイマジナリーフレンドとして現れ、助言を与える[16]
寺村 七(てらむら なな)
相が常連である漫画専門貸本屋「寺村貸本店」の店主。手島とは真逆の性格ながら友人同士。店の一室を漫研の部室として提供している。『ロストワールド』では、東京で手島と共にへびちかのアシスタントをつとめたことで手島と知り合い、後に手島のアシスタントをつとめる。
へびちか
人気漫画家。彼女の作品『スイートへびいちご』は、シリーズ累計数百万部発行の大人気作品で、漫画家志望時代の手島がバイブルとしていた。感覚派の天才と呼ばれ、直感で原稿を大幅に手直しするなどして、アシスタントたちを振り回している。光の母。『ロストワールド』にも登場する。

作風とテーマ

高校の漫画研究会を舞台に、創作の楽しさや苦しさや喜び[7][17]、漫画の表現の奥深さ[17]、主人公らの成長を描く青春劇である[7][18]。『まんが道』(藤子不二雄著)のように漫画家を題材とした漫画は、漫画界の一大ジャンルだが、本作は、漫画家を目指すよりも手前の人物たちの衝動を描く作品である[9]

とよ田は「フォーカスを当てるのは漫画そのもの。漫画家漫画というか、漫画の漫画[9]」「漫画家が主役というよりも、漫画が主役というつもり[19]」と語っており、漫画家の笠井スイも「マンガ家マンガというより『マンガマンガ』」と語っている[19]。優しい絵柄の中で、自分を追い詰めるために過激な言葉を使っているのも、作品の特徴である[18]

『これ描いて死ね』という特徴的なタイトルについて、作者のとよ田みのるは、漫画の連載前に叱咤激励、鼓舞する言葉の一つと語っている。

いつも連載前には、自分を鼓舞したり、叱咤激励するつもりで『頑張れよ』などいろいろな言葉を紙に書くんです。それでだんだん調子に乗ってきて、『これ描いて死ね』と書いたりする。この言葉は、いつも自分自身に言っている言葉です。これを思って描いていますし、一番大切にしている言葉だからタイトルにしようと思いました。 — とよ田みのる、MANTAN 2023より引用。

作中で主人公が拙い漫画を描く場面があるが、拙さの表現のために、とよ田の実娘(2023年3月時点で小学3年生[8])の絵を真似て、とよ田が左手で描いている[3]。一方で、絵が上手という設定の人物が描く絵は、とよ田が「天才的に絵がうまい」という実妻の漫画家のトミイマサコが担当している[7]。作中の登場人物が描いたという設定の漫画作品は、とよ田の同人作品として実際に発行されている[20]

『ロストワールド』は、漫研顧問の教員の新人漫画家時代を描く前日譚である[7]。『週刊ビッグコミックスピリッツ』に『デビュー』の題で読み切り作品として掲載された後、『これ描いて死ね』単行本第1巻に『ロストワールド』と改題されて掲載された[21]ウェブコミック配信サイトサンデーうぇぶり」では「第0話」として掲載[22])。以降は『ゲッサン』連載の『これ描いて死ね』の第9話が「ロストワールド2」[23]、第14話が「ロストワールド3」と言った具合に[24]、『これ描いて死ね』内のエピソードとして掲載されており、主人公たちが自分の手で作品を生み出す喜びと、過去の新人漫画家が自分の限界を知る無力感、創作にまつわる両極を往復して、物語が描かれている[9]。この『ロストワールド』での新人漫画家の姿について、とよ田は大部分が自身の実話といい、「体験談にフィクションを交えて描いている[9]」「『あの時、死にそうだったな』という気持ちを乗せている[7]」と語っている。

制作背景

とよ田の前作『金剛寺さんは面倒臭い』は、ラブコメディにも関わらず序盤でハッピーエンドを提示し、変則的なコマ割り、大団円の後に蛇足と言った具合に、王道の真逆を行く作品だったため、本作はフォーマットの決まった王道のエンターテインメントを狙って製作された[9]。また『金剛寺さんは面倒臭い』と本作との比較については、とよ田は「前作で全部出し切った、『我』を出しきった気がしたため、次は人のための漫画を描こうと思って、優しい漫画にした」とも語っている[7][19]。ただ、人のためだけに描いていると、中身が空虚になってしまうために、その中央には自身の大切なもの、好きなものを配置して制作されている[7]

作中で漫研一同が登山する三原山

漫研を題材としたことについては、とよ田は「何か部活ものを、というのが最初の発想で、自分が好きなものを考えたら漫画だった」と語っている[9]。舞台となる離島「伊豆王島」は、とよ田の出身地である伊豆大島をモデルとしている[9]。連載前に、とよ田が雑誌「ゲッサン」の編集長に出身地を聞かれ、伊豆大島と答えたところ、出身地である島を舞台とすることを編集者より提案され、「島から船に乗って本土を行くのが、冒険みたいで良い」と考えたことで、舞台装置として島を用いることとなった[3]

本作の構想時に、『週刊ビッグコミックスピリッツ』の馴染みの編集者から読み切りの依頼があり、主人公を導く人物の前日譚を発案したところ『スピリッツ』側に快諾され、同誌に掲載された作品が『ロストワールド』である[25]。作品名『ロストワールド』は、『これ描いて死ね』の第1話の副題が「来るべき世界」であり、未来に進む若い子供たち、挫折の経験のある人物の対比を、手塚治虫の初期SF3部作とされる漫画『来るべき世界』と『ロストワールド』にかけたものである[26]。『スピリッツ』掲載時には対比する作品が無かったために、単体でも通用する作品名『デビュー』で掲載された後、単行本第1巻収録時に、第1話『来るべき世界』の対比として『ロストワールド』へ改題された[26]

社会的評価

漫画編集者であるササキバラ・ゴウは、主人公の漫画好きをまっすぐに表現しきっていることが印象的として、素朴でシンプルな気持ちを読者に強く訴える作者の力量を評価すると共に、「一昔前であれば漫画家になれない者は漫画を諦めることが当然であり、現在は漫画をただ自由に描けば良い時代になったという時代の変化を実感した」として、「単に『漫画を描く漫画』として、すがすがしい読後感を与えてくれる」と評価している[27]。フリーライターの古林恭も同様に、漫画を描く厳しさや大変さよりも、漫画を読んで描くことが好きで楽しい気持ちがストレートに描かれている様を評価している[4]

産経新聞文化部の放送・漫画担当記者である本間英士は本作について、初めて作品を完成させたときの喜び、揃いのTシャツを作ってコミティアへ初めて参加するときの期待感、自分たちの作品がコミティアで初めて売れたときの感動など、初めての体験を通じて感じた嬉しさの現実感、新たな世界への扉を開ける姿を評価している[13]。また本間は、こうした明るい作風の一方で、「漫研顧問の教員がかつて漫画家業として疲弊した過去を持つにもかかわらず、未だ内面には漫画への情熱を秘めており、それを主人公に刺激される様子によって、作品に深みが加わっている」と分析している[13]。画風について本間は「良い意味で脱力感のある独特の作画」として評価している[13]

編集者・ライターの島田一志は、漫画を人生の支えとして育った主人公と、漫画に否定的な態度をとる教員との対比、さらにその教員こそが主人公の愛した漫画の作者であり、しかもその教員が、序盤では自身の漫画が現実に主人公を救っていたと自覚していなかったことを指して、捻りのきいた演出の巧妙さを評価している[28]。また登場人物の1人が、気難しい母親を説得するために、自分の想いを漫画に描いて見せるエピソードを指し、彼女にとっては漫画こそが真実に他ならないとして、先の主人公と合わせ、本作を「漫画は嘘ではない」をテーマとする、極めて骨太な作品との見解を示している[28]。他に、「漫画家への夢にひたむきに進む主人公たちと顧問教員が、作品を生み出す喜びや苦しみを分かち合って、互いに成長する姿に心を打たれる」との意見も寄せられている[18]

受賞

2022年(令和4年)12月、フリースタイルによる漫画ランキング『THE BEST MANGA 2023 このマンガを読め!』で、第10位に選ばれた[29]。同2022年12月、現役漫画家や漫画ファンから「漫画を描きたくなる漫画」「創作に携わるすべての人におすすめしたい」などと注目が集まったことで、宝島社による「このマンガがすごい! 2023」で、オトコ編で第6位を獲得した[8][30]

2023年(令和5年)3月には、マンガ大賞実行委員会によって主催される「マンガ大賞2023」の大賞に選ばれた[7]。投票者たちからは「創作活動に興味がある方なら必ず刺さる」などといった声があった[31]。この授賞式でも、先述のササキバラ・ゴウや古林恭と同様に、主人公たちが純粋な気持ちでまっすぐ創作に挑む、眩しい姿が印象深いとの意見があり、とよ田は「島の子のために純朴さに現実味が増し、島を舞台にしたのが大きい」と分析している[19]

マンガ大賞受賞がテレビの各情報番組などで取り上げられた際に、『スッキリ』(日本テレビ)では、お笑いコンビのティモンディの前田裕太は「漫画大好き芸人」として、「自分の好きなことを突き詰めていくことの良さ、尊さを感じる作品」と語り、かつて野球選手の道を諦めた自身の立場から、「夢を諦めてしまった人、現実を知って心が疲れてきてる人にこそ読んでほしい。僕にとっては救いの本」と語った[32]。同番組においてアナウンサーの下川美奈は「青春物語でありながら漫画の裏話もわかり、先生にとてもシンパシーを感じる」と語った[18]。『ひるおび』(TBSテレビ)では、落語家の立川志らくが、主人公たちが合作で漫画を作り上げる様を指して、「勝利よりも友情を重んじるため、若い読者が共感しやすい作品」と分析した[33]

書誌情報

  • とよ田みのる 『これ描いて死ね』 小学館ゲッサン少年サンデーコミックス〉、既刊3巻(2023年4月時点)
    1. 2022年5月17日発行(2022年5月12日発売[34]ISBN 978-4-09-851143-3
    2. 2022年10月17日発行(2022年10月12日発売[34]ISBN 978-4-09-851326-0
    3. 2023年4月17日発行(2023年4月12日発売[34]ISBN 978-4-09-852021-3

脚注

  1. ^ これ描いて死ね 1 (ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル)”. 国立国会図書館. 2023年4月19日閲覧。
  2. ^ とよ田みのるがゲッサンに帰還、マンガ愛を込めて描く成長譚「これ描いて死ね」」『コミックナタリー』ナターシャ、2021年11月12日。2023年4月19日閲覧。
  3. ^ a b c d とよ田みのるさんの「これ描いて死ね」がマンガ大賞…授賞式で「なぜ僕がという気持ち」」『読売新聞読売新聞社、2023年3月27日、読売新聞オンライン。2023年4月17日閲覧。
  4. ^ a b 古林恭 (2023年4月15日). “「好きなこと」への強い気持ちに脳が揺らされる! マンガ好き少女が進む先は? マンガ大賞2023受賞作『これ描いて死ね』”. ダ・ヴィンチWeb. KADOKAWA. 2023年4月17日閲覧。
  5. ^ とよ田 2022b, pp. 90-91
  6. ^ a b とよ田 2023, pp. 2-3
  7. ^ a b c d e f g h i これ描いて死ね : マンガ大賞2023大賞 鋭いタイトルに込めた思い とよ田みのる「いつも自分自身に言っている言葉」」『MANTANWEB』MANTAN、2023年3月27日。2023年4月17日閲覧。
  8. ^ a b c マンガ大賞2023は『これ描いて死ね』に決定 高校の漫画研究会が舞台の創作青春劇」『オリコンニュースオリコン、2023年3月27日。2023年4月17日閲覧。
  9. ^ a b c d e f g h 谷岡聖史「土曜訪問 新作「これ描いて死ね」1巻刊行 とよ田みのるさん(漫画家)創作の夢と呪い交え」『中日新聞中日新聞社、2022年7月30日、夕刊、5面。2023年4月17日閲覧。
  10. ^ a b とよ田 2022a, pp. 2–3
  11. ^ とよ田 2022a, pp. 64–65
  12. ^ a b とよ田 2022a, p. 160
  13. ^ a b c d 本間英士「【漫画漫遊】『これ描いて死ね』とよ田みのる著 離島女子の「まんが道」」『産経新聞産業経済新聞社、2023年4月9日、東京朝刊、11面。2023年4月17日閲覧。
  14. ^ とよ田 2022a, pp. 128-129
  15. ^ とよ田 2022a, p. 89
  16. ^ a b 島田一志 (2023年4月11日). “漫画は「嘘」ではない──マンガ大賞2023大賞『これ描いて死ね』が伝える「本当のこと」”. リアルサウンド. blueprint. p. 1. 2023年4月17日閲覧。
  17. ^ a b マンガ大賞に「これ描いて死ね」とよ田みのるさん」『共同通信共同通信社、2023年3月27日。2023年4月17日閲覧。
  18. ^ a b c d スッキリ 2023/03/28(火)08:00 の放送内容”. TVでた蔵. ワイヤーアクション. p. 1 (2023年3月28日). 2023年4月17日閲覧。
  19. ^ a b c d マンガ大賞受賞とよ田みのる、「これ描いて死ね」は自分自身にいつも言っている言葉」『コミックナタリー』、2023年3月27日。2023年4月17日閲覧。
  20. ^ poo1007の2022年5月12日のツイート2023年4月17日閲覧。
  21. ^ とよ田 2022a, p. 169
  22. ^ とよ田みのる (2023年4月11日). “これ描いて死ね”. サンデーうぇぶり. 小学館. 2023年4月17日閲覧。
  23. ^ とよ田 2022b, p. 4
  24. ^ とよ田 2023, p. 4
  25. ^ とよ田 2022a, pp. 166–167
  26. ^ a b poo1007の2022年5月17日のツイート2023年4月17日閲覧。
  27. ^ ササキバラ・ゴウコミック『これ描いて死ね』とよ田みのる著」『朝日新聞朝日新聞社、2022年6月4日、東京朝刊、20面。2023年4月17日閲覧。
  28. ^ a b 島田一志 (2023年4月11日). “作者のリアルなメッセージの力”. リアルサウンド. p. 2. 2023年4月17日閲覧。
  29. ^ 「このマンガを読め!」今年の1位はいしいひさいちのストーリーマンガ「ROCA」」『コミックナタリー』、2022年12月20日。2023年4月19日閲覧。
  30. ^ 『このマンガがすごい! 2023』今年のランキングTOP10を大公開!!【公式発表】”. このマンガがすごい!WEB. 宝島社 (2022年12月22日). 2023年4月19日閲覧。
  31. ^ ZIP! 2023/03/28(火)05:50 の放送内容”. TVでた蔵. p. 2 (2023年3月28日). 2023年4月17日閲覧。
  32. ^ ピノコ「マンガ大賞「これ描いて死ね」の魅力 ティモンディ前田「僕にとっては救いの本」」『J-CAST テレビウォッチ』ジェイ・キャスト、2023年3月28日。2023年4月17日閲覧。
  33. ^ ひるおび! 2023/04/07(金)10:25 の放送内容”. TVでた蔵. p. 1 (2023年4月7日). 2023年4月17日閲覧。
  34. ^ a b c これ描いて死ね”. 小学館 (2023年4月). 2023年4月17日閲覧。