岡口基一

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岡口 基一(おかぐち きいち、1966年(昭和41年)2月28日[要出典] - )は、日本裁判官[1][2]大分県豊後高田市[要出典]出身[2]

略歴[編集]

SNSの投稿に対する批判と東京高裁の対応・分限裁判[編集]

2014年から2016年までの投稿[編集]

岡口はTwitter上に、縄で縛られた上半身裸の男性の画像や「これからも、エロエロツイートとか頑張るね」などの投稿を行い、裁判所から幾度も指導を受けていたもののこれに従わなかったため、戸倉三郎東京高裁長官から口頭で厳重注意を受けていたと2016年6月27日に報道された[5][6][7]。問題とされた投稿は、2014年4月から2016年3月までの3件[6]

2017年12月の投稿[編集]

2017年12月15日、岡口は、2015年に東京都で起こった殺人事件[注釈 1]について、その判決文へのリンクを付しつつ、「首を絞められて苦しむ女性の姿に性的興奮を覚える性癖を持った男 そんな男に無惨にも殺されてしまった17歳の女性」などとTwitterに投稿した[9][8]。被害者の遺族は翌日に岡口に抗議し、岡口のTwitter投稿は消されたが、説明や謝罪はなかった[10]。被害者の両親は東京高裁に対して、岡口のその投稿は被害者の尊厳への配慮が全くないなどとして抗議し、岡口の処分を求める要望書を同月26日に提出した[9][8]。被害者の母親は取材に対して「本人がどのような思いでツイッターに投稿したのかはわかりませんが、私たち遺族にとっては、事件を軽視しているような文章で、ばかにされたように感じました。裁判官である前に、1人の人間として、大切な人を奪われ悲しんでいる遺族の気持ちを理解できないのだろうかという気持ちでいっぱいです」と述べた[7][11][10]

東京スポーツは、法廷で明らかになっていた同殺害事件の態様や、遺族が被告人に極刑を求めていた事実を、裁判官の岡口であれば知る機会があったはずだとして、岡口の投稿は「軽率で不適切極まりない」・「遺族感情を逆なでした」と批判した[12]

東京高裁は、岡口が事件に関するTwitter投稿で遺族の心情を害し、裁判所に対する信頼を損ねたとして、2018年3月に文書による厳重注意処分とした[13]

2018年5月の投稿[編集]

厳重注意から2か月後の2018年5月、岡口は、拾われた犬の所有権が、元の飼い主と拾った人のどちらにあるかが争われた裁判を取り上げたインターネット記事のURLとあわせて「公園に放置された犬を保護したら、元の飼い主が名乗り出て『返して下さい』 え?あなた?この犬を捨てたんでしょ?3か月も放置しながら…… 裁判の結果は……」とTwitterに投稿した[14][15]。勝訴した元の飼い主が高裁に抗議した[14]。岡口によれば、犬の飼い主が裁判の記事の拡散を望まなかったがゆえに、岡口のツイートの削除を東京高裁に求めたことが、この件の発端であるという[2][注釈 2]

東京高裁事務局長の吉崎佳弥が東京高等裁判所分限事件調査委員会に提出した報告書によれば、このTwitter投稿について、林道晴東京高裁長官と吉崎事務局長と岡口との間で次のようなやりとりがあった[16][17]。長官は、岡口が前回の厳重注意の際に投稿内容を慎重に選んでいくと述べていたにもかかわらずわずか2ヶ月で同様に裁判関係者を傷つける投稿を行っていることから、同じことを繰り返さないためにはツイートをやめるしかないのではないかと考え、岡口に「これだけのことをして、裁判所や当事者に迷惑を掛けたら、ツイートを止めるのではないか」と質問したところ、岡口は止める気はない旨を答えた[16]。長官は、岡口がツイートを続けるならば、それを前提にして分限裁判を検討せざるを得ないと述べたところ、岡口は黙ったまま回答しなかった[16]。事務局長は岡口に「これまでと違う局面に入ることを予告されているのは認識できているか、ツイートを止めれば、それはそれで一つの姿勢を示すことになるというアドバイスを(長官から)もらったのは認識できているか、そのアドバイスを断ったという認識はあるか」などと尋ねたところ、岡口はいずれにも「はい」と返答した[16]。「仮に裁判官を辞めることになってもツイートは止めないということか」という長官の質問に岡口は「はい」と回答した[16]

岡口は、このやりとりについて、後述の分限裁判において提出した陳述書の中で、岡口が私生活上行っているTwitterをやめるようにと1時間にわたって脅迫を伴って迫るという高裁長官と事務局長の行為は、表現の自由の侵害として憲法違反であり、また民事上の不法行為に相当するうえ刑法強要罪構成要件に該当しかねず、パワハラでもあったと述べている[18][注釈 3]

分限裁判[編集]

2018年7月24日、東京高裁は、岡口がTwitterへの投稿によって裁判の当事者の感情を傷つけたとして、裁判官分限法に基づき、最高裁に岡口の懲戒を申し立てた[21][14][15]。この懲戒の申立理由は、犬に関する裁判についてのインターネット記事を要約して2018年5月にTwitterに投稿した件のみである[22]

週刊現代」2018年9月8日号は「問題になっているのは犬のツイートではなく岡口さんが行ってきた統治機構への批判にあるのです。与党野党が一体になって裁判官弾劾裁判所にかけようとしたが裁判所が責任をもって岡口裁判官にツイッターをやめさせるから弾劾裁判はやめてくれと与党と密約した。」「裁判官訴追委員会が半年近くかけて準備していた尋問招致が否決された」と報じた[23]

2018年9月11日、最高裁大法廷裁判長大谷直人長官)は、岡口を懲戒にするかどうかを決める分限裁判審問を開いた[14][24]。審問は非公開とされた[14]。岡口と6人の弁護団は審問手続きの後に司法記者クラブで会見を開き、「犬の元の飼い主が、どのような理由で傷ついたのか書かれていない。このままでは認否や反論ができないので、高裁に明らかにしてほしいとお願いした」「裁判官を名乗らずに記事を紹介しただけなのに、なぜ今ここにいるのか、私自身がよく分からない。名誉を毀損(きそん)したとか、一般人でもこういうことを書かれたら傷つくという書き込みをしたというなら、私も理解できる。しかも『傷ついた』というのは非常に主観的な言葉だ。ある人が傷ついたからダメだと後から言われるようでは、怖くて表現行為は何もできない」などと述べた[25]

著作[編集]

著書[編集]

  • 岡口基一 『要件事実入門』 創耕舎、2014年ISBN 9784990651541
  • 岡口基一 『要件事実入門』初級者編、創耕舎、2015年ISBN 9784990651572
    • 岡口基一 『要件事実入門』初級者編、創耕舎、2018年、第2版。ISBN 978-4908621062
  • 岡口基一 『民事訴訟マニュアル:書式のポイントと実務』上、ぎょうせい、2015年、第2版。ISBN 4324095493
  • 岡口基一 『民事訴訟マニュアル:書式のポイントと実務』下、ぎょうせい、2015年、第2版。ISBN 4324095507
  • 岡口基一 『要件事実マニュアル 第1巻 総論・民法1』 ぎょうせい、2016年、第5版。ISBN 9784324101667
  • 岡口基一 『要件事実マニュアル 第2巻 民法2』 ぎょうせい、2016年、第5版。ISBN 9784324101674
  • 岡口基一 『要件事実問題集』 商事法務、2016年、第4版。ISBN 9784785724290
  • 岡口基一 『要件事実マニュアル 第3巻 商事・保険・手形・執行・破産・知的財産』 ぎょうせい、2017年、第5版。ISBN 9784324101681
  • 岡口基一 『要件事実マニュアル 第4巻 過払金・消費者保護・行政・労働』 ぎょうせい、2017年、第5版。ISBN 9784324101698
  • 岡口基一 『要件事実マニュアル 第5巻 家事事件・人事訴訟』 ぎょうせい、2017年、第5版。ISBN 9784324101704
  • 岡口基一 『裁判官! 当職そこが知りたかったのです。』 学陽書房、2017年ISBN 978-4313511651
  • 岡口基一 『要件事実入門 紛争類型別編』 創耕舎、2018年ISBN 978-4908621079

論文[編集]

記事[編集]

  • “IT化 法の大衆化、パソコンで 岡口基一(素顔の法廷)”. 朝日新聞 (西部地方版・福岡). (2003年12月6日) 

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 岡口が審理を担当していない事件[8]
  2. ^ 犬の飼い主は、裁判の記事の拡散を望んでいなかったが、東京高裁が飼い主の申立の内容をマスコミに発表したので、裁判の記事は飼い主の意向に反して社会に広く知られることになってしまったと、後に岡口は指摘している[2]
  3. ^ 弁護士有志はこの件に関し東京高裁長官を公務員職権乱用罪脅迫罪最高検察庁などに告発した[19][20]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 裁判官検索”. 新日本法規出版株式会社. 2018年9月2日閲覧。
  2. ^ a b c d 岡口基一 (2018年9月5日). “絶望的に進む司法統制  特別寄稿「ツイッター分限裁判」”. 全国新聞ネット. 2018年9月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月9日閲覧。
  3. ^ 岡口 基一|Facebook”. 岡口基一. 2018年10月8日閲覧。
  4. ^ 岡口基一 『裁判官! 当職そこが知りたかったのです。』 学陽書房、2017年[要ページ番号]
  5. ^ 日本テレビ (2016年6月27日). “縛られた男性の画像投稿 裁判官に厳重注意”. 日テレNEWS24. オリジナル2016年6月27日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160627135239/http://www.news24.jp/articles/2016/06/27/07333798.html 2016年7月1日閲覧。 
  6. ^ a b “裁判官が半裸画像投稿=ツイッターに、厳重注意-東京高裁”. 時事ドットコム (時事通信社). (2016年6月27日). オリジナル2016年6月27日時点によるアーカイブ。. https://archive.is/20160627094314/http://www.jiji.com/jc/article?k=2016062700625&g=soc 
  7. ^ a b 裁判官が女子高校生殺害事件をツイート 遺族が抗議”. NHK (2017年12月26日). 2017年12月30日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。
  8. ^ a b c 高裁裁判官ツイートに遺族抗議|ロイター”. 2018年1月21日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。
  9. ^ a b 裁判官ツイートに抗議=女子高生殺害の遺族 (時事通信) - Yahoo!ニュース”. 2017年12月16日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。
  10. ^ a b “裁判官ツイッター:不愉快な思い 遺族、処分求める - 毎日新聞”. 毎日新聞. (2017年12月26日). オリジナル2017年12月26日時点によるアーカイブ。. https://archive.is/HYczx 2018年10月4日閲覧。 
  11. ^ “東京新聞:裁判官が「不適切ツイッター」 女子高生殺害事件 遺族、東京高裁へ抗議:社会(TOKYO Web)”. 毎日新聞. (2017年12月26日). オリジナル2018年7月24日時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20180724183603/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201712/CK2017122702000125.html 2018年10月4日閲覧。 
  12. ^ ““ブリーフ裁判官”また問題ツイート 軽率投稿で遺族感情を逆なで”. 東京スポーツ. (2017年12月28日). オリジナル2018年1月21日時点によるアーカイブ。. https://archive.is/TpgYd 2018年10月4日閲覧。 
  13. ^ “岡口裁判官を厳重注意処分 個人ツイッターに不適切投稿”. 朝日新聞. (2018年3月19日). オリジナル2018年3月19日時点によるアーカイブ。. https://archive.is/LROlW 2018年10月4日閲覧。 
  14. ^ a b c d e 岡口判事「表現行為できぬ」分限裁判後、異例の会見”. 産経新聞. 2018年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月19日閲覧。
  15. ^ a b 裁判官のツイッター、どこまでOK? 最高裁が判断へ”. 朝日新聞. 2018年9月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月19日閲覧。
  16. ^ a b c d e 申立人から疎明資料として「報告書」が提出されました - 分限裁判の記録 岡口基一”. 岡口基一 (2018年8月28日). 2018年9月19日閲覧。
  17. ^ 最高裁に提出する主張書面の追加内容です - 分限裁判の記録 岡口基一”. 岡口基一. 2018年10月10日閲覧。
  18. ^ 陳述書(東京高等裁判所分限事件調査委員会) - 分限裁判の記録 岡口基一”. 岡口基一 (2018年8月16日). 2018年9月23日閲覧。
  19. ^ 美和勇夫 「弁護士日記 東京高裁長官を職権濫用罪で告発しました! (PDF) 」 美和勇夫法律事務所。
  20. ^ 東京高裁長官が職権乱用罪で告発された件 - 岡口基一の公式ブログです”. 岡口基一. 2018年10月8日閲覧。
  21. ^ ツイッターで不適切投稿 岡口裁判官の懲戒を申し立て”. 朝日新聞. 2018年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年7月24日閲覧。
  22. ^ ツイッターで懲戒が許されるのか? 岡口裁判官の分限裁判で報道されなかった論点とは。(伊藤和子) - 個人 - Yahoo!ニュース”. 伊藤和子. 2018年9月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月19日閲覧。
  23. ^ 週刊現代 (講談社) 2018年9月8日号. (2018年). [要ページ番号]
  24. ^ 裁判官のツイッター是非は? 最高裁で初めて分限裁判”. 朝日新聞. 2018年9月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月16日閲覧。
  25. ^ 「長官はものすごい剣幕で…びびっちゃう」岡口判事会見”. 朝日新聞社. 2018年9月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月19日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]