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リバタリアン党 (アメリカ合衆国)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国政党
リバタリアン党
Libertarian Party
全国委員長 アンジェラ・マカドル英語版
成立年月日 1971年12月11日
本部所在地 バージニア州の旗 バージニア州アレクサンドリア
合衆国下院議席数
0 / 435   (0%)
(2020年11月3日)
合衆国上院議席数
0 / 100   (0%)
(2020年11月3日)
党員・党友数
499,492人(有権者登録届出数)[1]
(2016年11月)
政治的思想・立場 リバタリアニズム[2][3]
レッセフェール[4][5]
小さな政府[4]
文化自由主義[4]
財政保守主義[4][5]
内政不干渉の原則[6]
派閥:
リバタリアン社会主義[5]
左派リバタリアニズム[5]
機関紙 Libertarian Party News[2]
シンボル 自由の女神
公式カラー 金色
国際組織 国際リバタリアン党連盟
公式サイト Libertarian Party
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リバタリアン党(リバタリアンとう、英語: Libertarian Party)は、リバタリアニズム右派)を奉じるアメリカ合衆国政党である[2]

1971年ノーラン・チャートで有名なデイヴィッド・ノーランによって結成。初期には無政府資本主義の創始者として有名なマレー・ロスバードらも参加した。自由主義者党自由党などとも訳される。中国語では「自由意志党」の名称で届出をしている[注釈 1]

理念

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自己決定権を尊重する気風の強いアメリカにおいて、自己決定権擁護の最右翼を自認する。ただし政府の完全な廃止を首尾一貫して追求する純正リバタリアン(Libertarian Purists)だけではなく、部分的に方向性を共有するに過ぎない最小国家主義者や古典的自由主義者、保守主義者なども在籍している。ただし、2008年大統領選の指名候補争いにも立候補した無政府資本主義者のメアリー・ルワート英語版は「原理を支持する人々の明らかな勝利にもかかわらず、数十年の間に、党は徐々にその理念から離れている」と警告した。

無政府資本主義の創始者として有名なマレー・ロスバード1980年代後半までリバタリアン党で活動しており、1984年大統領選挙のリバタリアン党指名候補で無政府資本主義者のデヴィッド・バーグランド英語版は「インディアナポリスでの2002年党大会において、私はその党の初期からの物語について詳しく話すために古参党員の一人として参加し、新参者たちに若干の組織の歴史を伝えた。プレゼンテーションの間に、私はもはや我々の側に居ないある人に感謝を捧げることにした。私はその場に居た若いリバタリアンに、リバタリアン党とリバタリアン運動へのマレー・ロスバードの貢献の深く永続的な影響を広げることが出来たことを嬉しく思う。彼は後世に伝えられるだろう」と述べている。

党の中心的な理念としてロック的所有権理論を採用する。これは、すべての個人に自身の身体を所有する権利があること、すべての個人は他人よりも先行して自身の身体を使用できることを確認した上で、「労働を混ぜ合わせる」ことにより、自然の状態から取り除いた物質的な資源を自身の財産として所有できるとする理論である[7]。そして、いかなる個人もその他の個人の身体や正当に所有された物質的な財産に暴力を開始してはならないとする不可侵原則を置く[8]

政策

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1972年の綱領では政府による徴税は窃盗であり財産所有権の侵害であるとして一切認めていない[9]2016年の綱領では全ての徴税を否定する文言はないが、収入税とIRSの廃止を謳っている[10]軍隊への徴兵も認めない[11]税金で賄われる補助金や助成金の類も一切認めない[12]。あらゆる武器弾薬の製造、販売、所有の規制も認めない[13]犯罪と呼ぶことが出来るのはその他の人の権利所有権を侵害する行動だけであるとして、麻薬の生産、販売、所持、使用、最低年齢規制を含む一切のアルコールタバコの摂取や販売、賭博ポルノグラフィ同性愛児童性愛近親相姦、猥褻な行為、淫らな言動、差別的言動、下品な行為、一夫多妻乱交自殺などの規制は一切認めない[14]

恣意的で主観的な線引きにより人間の自由意志と自己所有の権利を否定すること、そして本人の意思に反して保護を強制することは自己所有権の侵害であり、容認し得ない奴隷制であるとして、児童買春児童ポルノやその他の児童労働の規制などの一切の子供の権利制限を認めない[15][16]。子供を特別扱いする法律や少年裁判所を認めず、子供にも彼らの行動の結果に対する完全な責任を認める[17]

税金で賄われた公立学校公立大学は認めない。物質的財産の所有権を超えたプライバシー権人格権知的財産権などの権利は認めない。中央銀行は認めない。政府による道路、警察司法、軍隊の独占も一切認めない。公的年金制度は認めない。国民皆保険などの社会保障制度も一切認めない。免許制度などによる業務の独占も一切認めない。最低賃金やその他の労働条件の規制も認めない。積極的差別是正措置は認めない。強姦罪などの女性を特別扱いする法律は廃止し、単に身体暴行罪を適用すべきとする。

アメリカで左右対立の争点となる妊娠中絶について、2016年の綱領ではプロ・チョイス(中絶の是非は本人に委ねる立場)に近い立場が示されている[10]が、胎児を権利主体たる人間とみなしプロ・ライフ(胎児の生命を守る立場)を掲げる勢力もある[18]

政治家

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創設者のノーラン自身が支持していた1964年大統領選共和党指名候補バリー・ゴールドウォーターが祖とみなされることもあり、ともに小さな政府を志向する共和党と支持層が重複するとされる。ロン・ポールボブ・バー英語版ゲーリー・ジョンソンなど、政治家が両党間を行き来することもしばしばある。

一方で、テロとの戦いや麻薬取り締まりなどについて共和党の主流と政策が相反し、民主党左派マイク・グラベルがリバタリアン党の大統領候補者指名党大会で一定の代議員票を得るようなこともある。

現在の党委員長は、アンジェラ・マカドル英語版

党勢

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アメリカでは二大政党が政治家のポストをほぼ占めているが、それに続く規模の政党の一つである。

選挙

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大統領選挙一般投票得票数

大統領選挙一般投票での最大得票率は2016年大統領選での3.28%、最大得票数も2016年大統領選の489万票である。従来の大統領選では、1980年2012年を除き、得票率は概ね0.5%以下に留まっている。選挙人を獲得したことはない。全50州とDCで大統領選に参入できたのは1980年1992年1996年2016年2020年である。2000年アリゾナ州英語版選挙詳細で全国指名候補のハリー・ブラウン英語版と異なるリバタリアン党候補のL・ニール・スミス英語版が出馬し、総計では全50州とDCで参入している。

連邦議会選挙や州知事選挙での当選例もないが、州議会選挙や自治体議会選挙では僅かながら当選者がいる。

また、共和党からの移籍者により、連邦議会代議院(下院)に1議席を有している。ミシガン州第3区英語版選出のジャスティン・アマッシュ英語版は、2019年7月4日に共和党からの離党を表明し、無所属となった[19]。アマッシュは2020年4月28日、リバタリアン党に入党した[20]。しかし、アマッシュは2020年アメリカ合衆国下院選挙への不出馬を表明した[21]。リバタリアン党は後継候補を立てず、戦わずして議席を失うことになった(共和党のピーター・マイヤー英語版が当選)。

1972年大統領選

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結党間もない1972年大統領選には、大統領候補ジョン・ホスパーズ英語版副大統領候補セオドーラ・N・ネイサン英語版のコンビで出馬した。

全米での得票は3,674票に留まったものの、共和党から選出された選挙人の1人が選挙人団投票で造反し、リバタリアン党に票を投じた。これはリバタリアン党唯一の得票でもある同時に、女性が得た初の選挙人団投票でもあった。

2016年大統領選

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2016年大統領選に際しては、2012年大統領選挙に続き元ニューメキシコ州知事ゲーリー・E・ジョンソンが大統領候補に指名され、元マサチューセッツ州知事ウィリアム・ウェルドが副大統領候補に指名された。両者ともかつては共和党に所属しており、特にウェルドは指名を得る直前まで共和党員だった。

2016年11月8日の一般投票では二大政党候補のドナルド・トランプヒラリー・クリントンから引き離され3位となった。リバタリアン党の選挙人獲得はなかったものの投票数では489万票(得票率3.28%)を得て、歴代リバタリアン党候補が獲得した票数および得票率の中で最多票となった。また選挙人投票では、トランプの獲得した選挙人から、リバタリアン党に復帰していたロン・ポールに大統領選挙票が1票投じられた。

2020年大統領選

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2020年大統領選では、ジョー・ジョーゲンセンを大統領候補に、スパイク・コーエンを副大統領候補に指名。

投票の結果、180万票以上を獲得、得票率約1.2%の結果となった。これに対して、共和党支持層の一部がリバタリアン党へ流れたため票割れが起こり、結果的に民主党の勝利につながったと指摘するメディアがある。また、共和党、民主党双方の支持者から、票割れの原因として非難される原因となった。

脚注

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注釈

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  1. ^ File:RITDHballotSM.png 2010年ニューヨーク州知事選挙投票用紙

出典

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  1. ^ Ballot Access News
  2. ^ a b c The Editors of Encyclopaedia Britannica. “Libertarian Party | History, Beliefs, & Facts” (英語). Britannica.com. ブリタニカ百科事典. Encyclopædia Britannica, Inc.. 2020年10月5日閲覧。
  3. ^ Rothbard, Murray Newton (1978) (英語). For a New Liberty: The Libertarian Manifesto. Collier Books. p. 1. https://archive.org/details/fornewlibertyl00roth/page/1/mode/2up 2020年10月5日閲覧. "Even more remarkably, the Libertarian party achieved this growth while consistently adhering to a new ideological creed—"libertarianism"—thus bringing to the American political scene for the first time in a century a party interested in principle rather than in merely gaining jobs and money at the public trough." 
  4. ^ a b c d Ideological Third Parties and Splinter Parties” (英語). boundless.com. 2015年1月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月5日閲覧。 “The Libertarian Party supports laissez-faire policies, small government, and is characterized by being socially liberal and fiscally conservative.”
  5. ^ a b c d Duane Paul Murphy (2018年9月12日). “Libertarian Socialists Organize Online Within the Libertarian Party” (英語). collegemedianetwork.com. 2020年2月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月5日閲覧。
  6. ^ "Libertarian Party opposes further intervention in Iraq" (Press release) (英語). リバタリアン党. 18 June 2014. 2020年10月5日閲覧The Libertarian Party supports a foreign policy of free trade and non-intervention.
  7. ^ e.g.,2000 National Platform of the Libertarian Party:All rights are inextricably linked with property rights. Such rights as the freedom from involuntary servitude as well as the freedom of speech and the freedom of press are based on self-ownership. Our bodies are our property every bit as much as is justly acquired land or material objects.
  8. ^ e.g.,2000 National Platform of the Libertarian Party:No conflict exists between civil order and individual rights. Both concepts are based on the same fundamental principle: that no individual, group, or government may initiate force against any other individual, group, or government.
  9. ^ e.g.,1972 National Platform of the Libertarian Party:Since we believe that every man is entitled to keep the fruits of his labor, we are opposed to all government activity which consists of the forcible collection money or goods from citizens in violation of their individual rights. Specifically, we support the eventual repeal of all taxation.
  10. ^ a b 2016年綱領(英語)
  11. ^ e.g.1976 National Platform of the Libertarian Party:We oppose the draft (Selective Service), believing that the use of force to require individuals to serve in the armed forces or anywhere else is a violation of their rights.
  12. ^ e.g.,1972 National Platform of the Libertarian Party:In order to achieve a free economy in which government victimizes no one for the benefit of anyone else, we oppose all government subsidies to business, labor, education, agriculture, science, the arts, or any other special interests. Those who have entered into these activities with promises of government subsidy will be forewarned by being given a cutoff date beyond which all government aid to their enterprise will be terminated. Relief or exemption from involuntary taxation shall not be considered a subsidy.
  13. ^ e.g.,1990 National Platform of the Libertarian Party:Maintaining our belief in the inviolability of the right to keep and bear arms, we oppose all laws at any level of government restricting or requiring the ownership, manufacture, transfer, or sale of firearms or ammunition. We oppose all laws requiring registration of firearms or ammunition. We also oppose any government efforts to ban or restrict the use of tear gas, "mace," or other self-protection devices. We further oppose all attempts to ban weapons or ammunition on the grounds that they are risky or unsafe.
  14. ^ e.g.,1981 National Platform of the Libertarian Party:Because only actions which infringe the rights of others can properly be termed crimes,we favor the repeal of all federal,state,and local laws creating "crimes" without victims.In particular,we advocate:a.The repeal of all laws prohibiting the production,sale,possession,or use of drugs,and of all medical prescription requirements for purchase of vitamins,drugs and similar substances;b.The repeal of all laws regarding consensual sexual relations,including prostitution and solicitation,and the cessation of state oppression and harassment of homosexual men and women,that they,at last,be accorded their full rights as individuals;c.The repeal of all laws regulating or prohibiting the possession,use,sale,production,or distribution of sexually explicit material,independent of "socially redeeing value" or compliance with "community standards";d.The repeal of all laws regulating or prohibiting gambling,and;e.The repeal of all laws interfering with the right to commit suicide as infringements of the ultimate right of an individual to his or her own life....
  15. ^ e.g.,1986 National Platform of the Libertarian Party:Children are human beings and, as such, have all the rights of human beings. We oppose all laws that empower government officials to seize children and make them "wards of the state" or, by means of child labor laws and compulsory education, to infringe on their freedom to work or learn as they choose. We oppose all legally created or sanctioned discrimination against (or in favor of) children, just as we oppose government discrimination directed at any other artificially defined sub-category of human beings. Specifically we oppose ordinances that outlaw adults-only apartment housing. We also support the repeal of all laws establishing any category of crimes applicable to children for which adults would not be similarly vulnerable, such as curfew, smoking, and alcoholic beverage laws, and other status offenses. Similarly, we favor the repeal of "stubborn child" laws and laws establishing the category of "persons in need of supervision". We call for an end to the practice in many states of jailing children not accused of any crime.
  16. ^ Ruwart,Mary J. Short Answers to the Tough Questions, SunStar Press, 1998, p. 43:Children who willingly participate in sexual acts have the right to make that decision as well, even if it’s distasteful to us personally. Some children will make poor choices, just as some adults do in smoking and drinking to excess; this is part of life.When we outlaw child pornography, the prices paid for child performers rise, increasing the incentives for parents to use children against their will.
  17. ^ e.g.,1986 National Platform of the Libertarian Party:We seek the repeal of all "children's codes" of statutes which abridge due process protections for young people. We further favor the abolition of the juvenile court system, so that juveniles will be held fully responsible for their crimes.
  18. ^ Libertarians for Life Homepage
  19. ^ Armour, Stephanie (2019年7月5日). “共和党下院議員が離党、トランプ氏批判で異色の存在”. The Wall Street Journal . https://jp.wsj.com/articles/SB10342606529745884375904585405780099780248 2020年10月3日閲覧。 
  20. ^ Welch, Matt (2020年4月29日). “Justin Amash Becomes the First Libertarian Member of Congress” (英語). reason. 2020年10月3日閲覧。
  21. ^ Amash, Justin (2020年7月17日). “I love representing our community in Congress. I always will. This is my choice, but I’m still going to miss it. Thank you for your trust.” (英語). Twitter. 2020年10月3日閲覧。

外部リンク

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