チャレンジャー海淵

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チャレンジャー海淵の位置
太平洋プレート(右側)がフィリピン海プレート(左側)の下にもぐり込む様子
ロシアの調査船ヴィチャージ

チャレンジャー海淵(チャレンジャーかいえん、Challenger Deep)は、北西太平洋マリアナ諸島の東、北緯11度21分、東経142度12分に位置する、マリアナ海溝の最深部である。地球にある海洋海底最深部でもある。

概要[編集]

チャレンジャー海淵の深さについてはいくつかの計測結果があるが、最新の計測では水面下10,911mとされ、地球上で最も深い海底凹地(海淵)である。これは仮に海面を基準にして世界最高峰エベレストをひっくり返しても、その山頂が海底につかないほどの深さで、地球の中心からは6,366.4km地点にある。

調査の歴史と生物[編集]

マリアナ海溝の測深は、イギリスのチャレンジャー号探検航海 (1872 – 1876) の海洋調査によって初めて行われた。1875年、この時の測鉛線による測深記録は、8,184mであった。当時の最深を記録したこの地点は、現在のチャレンジャー海淵であった[1]1899年、調査船 USS Nero は、9,636mを記録した[2]

日本によるマリアナ海溝の調査は、20世紀に入って行われた。1925年日本測量艦「満州」が重りのついたケーブルをおろして測定する方法(鋼索測深)でマリアナ海溝の水深を測定したところ、9,814mを記録。この海域が世界で最も深い部分であることを世界に知らしめた。

その後、マリアナ海溝の本格的な深度調査を行ったのはイギリス海軍の測量艦「チャレンジャー8世号英語版」である。1951年に「チャレンジャー」が測定に成功した最深部分は、その艦名にちなんで「チャレンジャー海淵」と呼ばれることになった。この時、「チャレンジャー」は反響した音波を測定する方法(音響測深)で北緯11度19分、東経142度15分において10,900mを計測した。しかし、この方法は手動計測であったため誤差があり、現在ではより厳密な10,863mという値に修正されている。

1957年ソ連海軍艦艇「ヴィチャージロシア語版」(Vityaz)が深度11,034mの計測に成功したと発表し、「ヴィチャージ(ビチアス)海淵」と名づけた。この記録は長らくマリアナ海溝の深度の公式記録とされていたが、その後、何度調査を行ってもこれほどの深度は測定されなかった。現在ではこの記録の正確性に疑問が持たれており、公式記録としては認められていない。

1962年には調査船「スペンサー・ベアード号」が10,915mの測定に成功している。しかしマリアナ海溝の最深部については米ソの測定値をめぐって議論が続いたため、1984年に日本の測量船「拓洋」が最新式のナローマルチビーム測深機を用いて測定を行い、10,924m(厳密には10,920m±10m)という値を得た。現在のところ、多くの深度測定値の中で確実に裏づけがとられたものは1995年5月に日本の無人探査機かいこう」が記録した10,911mが最大(最深)であり、それ以上の値はまだ確実とは言いがたい。2008年6月3日に「かいこう」の後継機として製造されたABISMOがチャレンジャー海淵で最大潜航深度10,258mに到達した[3]。2009年5月アメリカのウッズホール海洋研究所の無人探査機「ネーレウス」が10,902mに到達した。

バチスカーフ・トリエステ号

1960年1月23日オーギュスト・ピカールが開発しアメリカ海軍が運航する潜水艇(バチスカーフ)「トリエステ号」にドン・ウォルシュ英語版大尉とオーギュストの息子ジャック・ピカールが搭乗してマリアナ海溝深部を目指した。バチスカーフは鋼鉄の重りとガソリンの浮力装置を用いて深度を調整できるよう設計されていた。二人は人類の到達した最深記録を達成した。世界記録であることは間違いないが、その正確な深度については諸説あり、確証が得られていない。二人は海溝の底に到達したといい、その時バチスカーフ内部の水深計が示していたのは37,800 ft (11,521 m)(後に35,800 ft (10,912 m)と修正)だったと主張している[4]。さらに二人は海溝の底でヒラメエビなどの生物が生息しているのを発見して驚いたという。

2012年に、映画監督のジェームズ・キャメロンが潜水艇「ディープシーチャレンジャー」で同じチャレンジャー海淵最深部に潜った。

2017年8月27日、日本のNHKは、海洋研究開発機構(JAMSTEC)のチャレンジャー海淵調査時の映像をテレビ番組「DEEP OCEAN超深海/地球最深(フルデプス)への挑戦」で放映した。チャレンジャー海淵の底ではナマコ類やヨコエビ類は記録されたものの、魚類は写っていなかった[5]

脚注[編集]

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関連項目[編集]

座標: 北緯11度22.4分 東経142度35.5分 / 北緯11.3733度 東経142.5917度 / 11.3733; 142.5917