端脚類

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端脚目(ヨコエビ目)
Amphipodredkils.jpg
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 甲殻亜門 Crustacea
: 軟甲綱 Malacostraca
亜綱 : 真軟甲亜綱 Eumalacostraca
上目 : フクロエビ上目 Peracarida
: 端脚目 Amphipoda
和名
端脚類
端脚目
ヨコエビ目
英名
Scud
亜目

端脚類(たんきゃくるい、Amphipoda)は甲殻類の一つ。軟甲綱フクロエビ上目(嚢蝦上目)に属する。ヨコエビタルマワシワレカラなどが含まれる。

概要[編集]

1万種類以上が知られる大きなグループで、熱帯から極地まで世界中に分布する。陸と淡水でも見ることが多いが、その多様性は大部分が海で見られる。

体長は数mmから数10cmまで、種類によって差があるが、概して小型の動物である。体は左右や上下に扁平な、やや細長いものが多いが、非常にひょろ長い体を持つ例もある。

食性は種類によって異なり、プランクトンや生物の死骸、デトリタスなどを食べるが、他の生物に寄生するものも多い。一方、敵は刺胞動物魚類鳥類など多岐にわたる。

食物連鎖の下位ながらも、生物の死骸や糞を食べる分解者として、また他の動物の餌として重要な位置を占める。人間にとって直接の利用価値はほとんどないが、自然界で果たす役割は大きい。

名称[編集]

  • 胸節に7対ある歩脚の形状が、前向きのものと後ろ向きのものを共に具えていることから、Amphipod(端脚類)と名付けられた。
  • ヨコエビ類は古くは「ヨコノミ」と呼ばれることが多かったようである[1]。江戸時代の文献には「水蚤」「トビムシ」との記述もみられる[2]
  • 佐渡ではワレカラ類のことを「アリカラ」「アジカラ」と呼び、ときにヨコエビ類と区別しないという[3]
  • 主にヨコエビ類を「スムス(死虫)」と呼ぶ地方がある[4]。フトヒゲソコエビ上科と考えられる。「シオムシ」と同一視されることもあるが、これは等脚類の一種である。
  • ダイバーの間で「タルマワシ」と呼称されているのは、ホテイヨコエビ科の一種であることが多い。例えばバリ島でみられるものはParacyproidea dixoniと考えられる。

形態的特徴[編集]

淡水や浅海域に産するものは体長が数mm程度で、1㎝を超えるものは大型とされる。深海溝に生息するものは体長2-3 cm程度までの大きさが多いが、体長28 cmのものも発見されている[5]

頭部は胸部の第一節ないし第二節まで癒合するが、背甲は発達しないので、ほとんど体全部の体節が背面から見える。

複眼は柄が無くて体に対して小さく、深海や地下水にすむ種類では退化している。頭部には2対の触角があり、胸部の脚は2対の顎脚と5対の歩脚からなる。それらの胸脚は外肢を欠き、単純な歩脚の形を取る。腹部は三節からなる後体部と三節の尾部に分かれる。

オスの顎脚はセミ幼虫の前脚のように太い。

生態など[編集]

生息環境[編集]

クラゲノミ亜目およびワレカラ類は例外なく海洋に生息する。ヨコエビ類は海洋に限らず河川湖沼,地下水系,陸上にも進出している。

被食[編集]

  • 浅海の底生種は、魚類鳥類によく捕食される。
  • 深海の底生種はコククジラに捕食される。
  • 中層を浮遊もしくは遊泳している種も魚類などの餌となっている。ウミノミ類では捕食者の眼を欺く仕組みが発達している。

寄生[編集]

行動[編集]

繁殖[編集]

  • 端脚類は普通雌雄異体で、体外受精を行う。
  • 産み落とされたはメスの覆卵葉(ふくらんよう)の中で保護される。孵化直後の仔もこの中で保護され、その後しばらくは何らかの形で親の保護を受ける種が多い。
  • 幼生期はなく、例外なく成体と同じ体制をもって孵化し、産まれた直後から概ね成体と同じニッチを共有する。
  • 底生のヨコエビにおいて、交尾前ガード行動やハレム形成など、メスを独占するオスの戦略が発達している。

摂餌[編集]

  • 底生のヨコエビでは、デトリタス(有機懸濁物)食と植食が多くみられる。
  • 浮遊性種や遊泳性種は、捕食者が多い。
  • 腐肉食者は底生ないし近底遊泳性を示す。

寄生[編集]

  • クラゲノミ亜目には、刺胞動物尾索動物などのゼラチン質プランクトンに寄生する種が知られている。サルパ類の内部を摂食し、確保した空間を保育に使用するオオタルマワシが著名である。
  • クジラジラミ類は鯨類への体表寄生に特化しており、身体は平たく、各肢の先端部分は強く湾曲し鉤爪状になっている。
  • ヨコエビには、HyacheliaPodocerus umigameなど、ウミガメの体表に付着する習性をもつものが知られる。

生理的特性[編集]

呼吸[編集]

  • 各胸節の下側にがある。通常、付属肢の根元に1対ずつをもつ(底節鰓という)。マミズヨコエビ下目などの一部の種において、胸節の中央部に1つずつを生じることがある。

分泌物[編集]

  • ヨコエビにおいて、主になどの生活の場を形成するために、アンフィポッド・シルクと呼ばれる分泌物を出すことが知られている。

体内時計[編集]

  • 浅海に棲む種などでは、主に潮汐とリンクした出現消長が観測されている。
  • 日の当たらない洞窟内の水中に生息するStygobromus allegheniensisを用いた実験において、太陽光に依存しない体内時計の存在が確認されている[8]

光に関わる特性[編集]

  • ハマトビムシ科において生物発光の報告がある[9]
  • クラゲノミ亜目には、身体を透明化して捕食者から逃れる戦略をもつものがいる。体表に微小な突起構造を発達させて屈折率の違いを認識させにくくするもの [10] や、体表に共生したバクテリアの作用で反射を抑制するものも知られる[11]

人との関わり[編集]

文化[編集]

  • ワレカラは平安時代から日本人に認知されており、古くは古今和歌集に「海人のかる 藻にすむ虫のわれからと 音をこそ泣かめ 世をば恨みじ」(藤原直子)という歌が収録されている。
  • ヨコエビクラゲノミはしばしば切手を飾る題材となっている。

産業への影響[編集]

  • 漁業分野においては、肉食性のヨコエビが網にかかった魚類を食べるといった事例が報告されている。
  • ヒゲナガヨコエビ科は、養殖されている緑藻の若芽を食害したとの報告もある。

分類[編集]

ヨコエビ亜目 Gammaridea
100近い科が知られ、端脚類の中でもっとも多様化したグループといえる。海域はもちろん淡水域や湿った陸上、地下水などあらゆる環境に適応している。主に底生の自由生活種だが、寄生・共生するものもある[12]
クラゲノミ亜目 Hyperiidea
クラゲノミタルマワシなどが分類される。クラゲホヤなどに付着し、寄生生活をするものがある。
ワレカラ亜目 Corophiidea
ほぼ海産で、岩場の海藻流れ藻につかまって生活する。体は細長く、5cm以上になるものもいる。藻類に擬態しており、見かけは昆虫のナナフシに似ている。
インゴルフィエラ亜目 Ingolfiellidea
細長い体型をしている。海水、汽水に生息するが、地下水にもすんでいる。

上記は伝統的な分類体系であるが、近年、分類の見直しによりヨコエビ亜目の一部とワレカラ亜目をあわせたSenticaudata亜目が設立された[13]

出典[編集]

  1. ^ 藤田經信 「節甲類 ARTHROSTRACA」『日本水産動物學』 裳華房1913年
  2. ^ 千蟲譜国立国会図書館デジタルコレクション三巻27頁 水蚤
  3. ^ 伊藤, 正一「アリカラ食わぬ坊さんなし」、『佐渡郷土文化』第62巻、1990年、 42-44頁。
  4. ^ [1]2017年4月1日閲覧
  5. ^ ナショナルジオグラフィックス『南太平洋深海で発見、超巨大な端脚類』2016年6月13日閲覧
  6. ^ James K. Lowry; Allan A. Myers (2013). “A Phylogeny and Classification of the Senticaudata subord.nov.(Crustacea: Amphipoda)”. Zootaxa 3610: 1–80. 
  7. ^ G.S. Karaman (1976). “Contribution to the knowledge of the Amphipoda 80. Revision of the genus Pachyschesis Bazik. 1945 from Baikal Lake (Fam. Gammaridae)”. Poljoprivreda i Šumartvo 22 (4): 29-43. 
  8. ^ L. Espinasa; E. Collins; A. Finocchiaro; J. Kopp; J. Robinson; J. Rutkowski (2016). “Incipient regressive evolution of the circadian rhythms of a cave amphipod”. Subterranean Biology 20: 1-13. 
  9. ^ E.L. Bousfield; W.L. Klawe (1963). “Orchestoidea gracilis, a new beach hopper (Amphipoda: Talitridae) from lower California, Mexico, with remarks on its luminescence”. Bulletin of the Southern Calufornia Academy of Sciences 62: 1–8. 
  10. ^ ナショナル・ジオグラフィック日本版 「透明マント」で身を隠す海の生き物を発見 何もない海の中で身を隠す唯一の方法は、水のふりをすること 2017年4月2日閲覧
  11. ^ Midwater Ocean Creatures Use Nanotech Camouflage Optical coatings on crustaceans appear to be living bacteria デューク大学ホームページ 2017年4月2日閲覧
  12. ^ 大塚攻・駒井智幸 「3. 甲殻亜門」 『節足動物の多様性と系統』 石川良輔 編、岩槻邦男馬渡峻輔 監修、裳華房、2008年、172–268頁
  13. ^ James K. Lowry; Allan A. Myers (2013). “A Phylogeny and Classification of the Senticaudata subord.nov.(Crustacea: Amphipoda)”. Zootaxa 3610: 1–80.