キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦

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キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦
ジャンル ファンタジー
小説
著者 細音啓
イラスト 猫鍋蒼
出版社 KADOKAWA
レーベル 富士見ファンタジア文庫
刊行期間 2017年5月20日 -
巻数 既刊9巻(2020年4月現在)
漫画
原作・原案など 細音啓(原作)
猫鍋蒼(キャラクター原案)
作画 okama
出版社 白泉社
掲載誌 ヤングアニマル
レーベル ヤングアニマルコミックス
発表号 2018年No.10 -
発表期間 2018年5月11日 -
巻数 既刊3巻(2019年12月現在)
その他 隔号連載
アニメ
原作 細音啓
監督 大沼心、湊未來
シリーズ構成 下山健人
キャラクターデザイン 佐藤香織
アニメーション制作 SILVER LINK.
放送局
放送期間 -
テンプレート - ノート
プロジェクト ライトノベル漫画アニメ
ポータル 文学漫画アニメ

キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』(キミとぼくのさいごのせんじょう、あるいはせかいがはじまるせいせん)は、細音啓による日本ライトノベル。イラストは猫鍋蒼。富士見ファンタジア文庫KADOKAWA)より、2017年5月から刊行されている。略称は「キミ戦」。

2018年4月5日に、YouTubeのKADOKAWAAnimeチャンネルにて、オーディオドラマが公開された[1]

あらすじ

高度な科学力を有する帝国に所属する、史上最年少で帝国の最高戦力である使徒聖に選ばれたイスカ。「魔女の国」と畏怖されるネビュリス皇庁の第2王女であり、「氷禍の魔女」と称され皇庁最強と謳われるアリスリーゼ。戦場で出会った二人は激戦の中、互いを互いの宿敵と認めあう。

二人が中立都市で再会すると、イスカはアリスの美しさと高潔さに心を奪われ、アリスはイスカの強さと生き方に惹かれ始める。そうして何度も偶然の出会いを重ねるうちに、お互いが世界平和を望み合っていることを知る。しかし、帝国と皇庁、敵対する国に所属する二人が共に歩むことは許されず、互いを打倒しそれぞれが目指す世界平和への礎とすることを選択する。

登場人物

声の項はオーディオドラマ版の声優

主要人物

イスカ[Iska]
声 - 小林裕介
本作の主人公。帝国に所属する少年兵。黒と白の一対の双剣である『星剣』という特殊な剣を使い、「黒鋼の後継」と呼ばれる。黒の星剣はあらゆる星霊術を遮断し、白の星剣が黒が遮断しただけの星霊術を一度だけ再現するという権能を持ち、イスカ以外には機能せず量産もできない唯一の真打《オリジナル》。それを見たアリスからは始祖を縛る鎖と酷似しているという印象を受けている。
史上最年少で帝国軍の最高戦力「使徒聖」に上り詰めたが、ある星霊使いの脱走を手引きしたことで称号を剥奪される。アリスとは互いに好敵手と認め合うが、食事から絵画など好みが見事に通じる以外にもなし崩し的に共闘することとなる事態に多く見舞われる。
中立都市で何度も鉢合わせ、なし崩し的な共闘を重ねる内に好敵手という意識が薄れかけている。というより完全に異性としての恋愛感情を抱いているが、両国の和平と師から託された黒鋼の後継としての使命を優先しているために無自覚である。
さらには称号剥奪の切っ掛けとなった脱走させた魔女が彼女の妹であるシスベルだったことから彼女からも好意と期待を寄せられ姉と同じく第907部隊ごと部下としてスカウトされるが、己の志のために当然拒否するも成り行きでまたも彼女を救い、その好意を意図せず深めさせてしまう結果となった上にミスミスの星紋の件を取引材料に部隊ごと一時的な護衛を務めることとなってしまう。
また妹たちに執着されていることから長姉のイリーティアからも興味を持たれるなど図らずも敵国王家の王女たち全員の関心を買っている。
一見すると温厚なようでいて根は非常に頑固で我が強くしつこい。帝国と皇庁の和平を純血種の魔女を捕虜にすることで強引にでも結ぶという強い目的意識を持っておりその為ならどんな星霊使いにも果敢に向かっていくことから「戦闘嫌いの戦闘狂」という皮肉な異名を持つ。その理想と志故にアリスやシスベルの誘いをにべもなく断っている。その一方で上記のように弱い星霊使いまで投獄するやり方を見過ごせず破れかぶれで脱走の手引きをするなど若干短絡的かつ詰めの甘さが目立ち大局を見ているとは言い難く、ジンからも指摘されている。
師であるクロスウェルから徹底して対星霊使い特化の訓練を受けておりジンをして「相手が星霊使いなら負けることはない」と断言し得る程の星霊使いを圧倒する神業の如き剣技を発揮するが、剣自体の才に恵まれていたわけではなくただただ百錬自得という凡事徹底の末に至った結果。
その一方で星霊使い特化であるが故に対人訓練は受けておらず、白兵戦それこそ使徒聖同士の乱闘を行えば恐らく中位に留まるのが精々で決して最上位には及ばないと自己評価しており、同じく剣を使う使徒聖一席のヨハイム相手では競っても精々一太刀、二太刀目で後れをとって、三の太刀で押し負けるだろうと確信している。
アリスリーゼ・ルゥ・ネビュリス9世[Aliceliese Lou Nebulis Ⅸ]
声 - 雨宮天
本作のヒロイン。ネビュリス皇庁の第2王女。通称アリス。強力な氷の星霊を宿す星霊使いで、帝国からは「氷禍の魔女」と呼ばれ恐れられ、その場を数秒足らずで氷河期さながらの氷漬けにし広範囲に及ぶ氷の剣を無数に射出する『氷禍・千枚の棘吹雪』と星剣すら防ぎ止める絶対防御『氷花』を持つ。
戦場で出会ったイスカとは互いに好敵手と認め合い、戦場で決着をつけることを望んでいる。しかし、中立都市で度々鉢合わせる内に無自覚ながらイスカに恋愛感情を抱くようになり、ある種の独占欲さえ抱いてシスベルとイリーティアがイスカに接近していると本気で二人を攻撃しようとする以外にも戦場でのライバル関係を持ちだして自分の物と公言するなど、自制心が弱くなって燐を苦労させている。
帝国の画家が描いた絵が好きなのだが、母を始め皇庁の者達からは問題視されており、何かと皇庁の絵が優れていると誇張する自身の好みを認めない周囲に憤りを抱く他にもいつの間にか遠くなっていた姉妹との関係にも苦悩を抱えている他、ゾア家やヒュドラ家を始めとした血族同士の骨肉の争いにも辟易しており、そんな中でイスカとの戦いというより邂逅そのものが生きがいになっており心中で彼がいなくなったら自分は生きがいを失くすと言い切っている上、イスカをシスベルに取られそうになった時には帝国との戦いも女王聖別儀礼さえも全てがどうでもいいと独白してさえいる。
皇庁襲撃において母とイリーティアがヨハイムに斬られた場面に遭遇し帝国への怒りが爆発。間が悪く遭遇したイスカと本気の殺し合いを繰り広げるが、結局彼を倒すことができず、イスカについたユミリーシャの「共鳴」の星霊による伝言で誤解を解きイスカに謝罪。その後、まったく無自覚に彼に告白した。
ミスミス・クラス[Mismis Klass]
イスカが所属する防衛機構Ⅲ師・第907部隊の隊長。子供と間違えられるほど小柄で童顔だが、れっきとした22歳の女性。
スタイルは抜群なのだが、その体格のせいで逆に問題視されることもある。
兵士としてはお世辞にも優秀とは言えず隊長の昇級試験にもギリギリの成績でパスした。だが部下の感情の機微には非常に敏感でイスカがアリスと邂逅したことで調子を崩したことにも誰よりも早く察している。また普段は弱気ながら芯は強く一度覚悟を決めればジンすら眼を瞠る行動力を示す。
星脈噴出泉を巡る任務中で、皇庁のスパイだったシャノロッテに拘束された上、その当の星脈噴出泉に仮面卿によって落下させられた結果、魔女になってしまうが、イスカ達はそれを隠そうと奔走している。また、イスカを異性として意識している節も見られており、シスベルがイスカにアプローチを掛けた際には音々と共に妨害しようとしていた。
ジン・シュラルガン[Jhin Syulargun]
イスカと同じ小隊の狙撃手。かつてイスカと同じ師匠のもとで修行した過去を持つ。実家は銃工房。毒舌で皮肉屋。
神業的な狙撃技術を持ち、星霊使いの装甲の繋ぎ目を過たず撃ち抜き「何なら目をつむって撃っても問題ない」と豪語するほどのスナイパー。
頭の回転が非常に速く、907部隊ではイリーティアの陰謀を真っ先に見破った。またイスカがアリスと出会ったことで生じた変化にも気づいている節があり、燐の独断で皇庁に連れて行かれた挙句にシスベルとゾア家の一悶着に巻き込まれている彼に「らしくないんじゃないのか」と詰問している。
普段は冷静沈着だが、根は仲間想いでありミスミスが星霊に憑かれる切っ掛けとなった仮面卿に対しては、初対面で激情を顕わにしている。
音々・アルカストーネ[Nene Alkastone]
イスカと同じ小隊の通信技手。可愛い見た目に反して武器開発に長けており、一流の機工士として帝都に名を馳せている。イスカを兄のように慕っている。
帝都の制圧兵器開発部局から実験途上の対星霊兵器、衛星『テトラビブロスの星』を預かり受けており、指先に嵌めた機械仕掛けの指輪で操作し星霊の動きを乱す波長を破裂後に展開する対星霊擲弾を射出できる。
同時にイスカを異性として意識している様子もあり、シスベルのアプローチには警戒を見せている。
燐・ヴィスポーズ[Rin Vispose]
アリスの側近兼メイド。王家に仕える王宮守護星の出身。土の星霊を宿し、星霊使いとしての技量もさることながら暗殺術を初め武芸全般に長けている。服の下には様々な暗器が仕込まれている。
ゴーレムを生成し使役する他、粘着質の強い泥土を瞬時に生成するなどイスカからも一流の星霊使いと評されている。
主であるアリスを戦争を終わらせ世界を統一する女王になると心酔しており、自分はその右腕として支えることが夢。
それ故、イスカの人柄を認めながらも、一介の兵士であるイスカにアリスが拘ることをあまり良しとしてはおらず独断でその仲を裂こうと画策したこともあるが、イスカが絡むと暴走するアリスを宥めるのに四苦八苦して、最後はイスカに苦労を押しつけることもある。

天帝国

俗称は「帝国」。高度な科学力と軍事力を有する世界最大の大国。星霊を宿した星霊使いを迫害し、敵対しており、100年間戦争を続けている。

天帝ユンメルンゲン
天帝国の首長にして象徴。表向きは九代目とされているが、その実、表舞台に出ていた天帝は全員が影武者でユンメルンゲンは百年前より一度として代わっていない。
その正体は銀色の狐の身体と人の貌という姿で明らかな人外であるばかりか帝国の頂点でありながら、禁忌であるはずの星霊の力を帯びている。声音を自在に変えられるらしくしわがれた老人の声の時もあれば、影武者の前ではボーイソプラノの若々しい声音となり砕けた口調で喋る。自らを「メルン」と呼んでいる。
かなり面倒臭がりな性格で八大使徒の勝手を困ったものだといいながら面倒臭いからと放置するなど大雑把だが、獰猛なまでの威厳もまた備えている。
政務などは八大使徒に任せている一方で星剣の担い手であるイスカを気に掛け、サリンジャーに帝国の機密書類を渡すなど作中一謎の多い存在。
実は始祖ネビュリスと同じく自力で『人と星霊の統合』に至った存在。
常に退屈に飽いてるらしく、一人で帝国の外に出歩いた挙句サリンジャーと接触した時には、あの璃洒をも慌てさせている。
八大使徒
帝国議会の最高権力者たちの総称。天帝から政務を実質任された存在でその正体も分かっておらず人前にも姿を現さない謎の集団。普段は帝都の地下五千メートルに存在する議事堂「見えざる意思」に引き籠っている。
イスカを反逆罪で投獄した一年後に釈放し純血種の捕獲を命じながら、彼の和平交渉という路線は端から眼中になく皇庁との全面戦争と魔女と魔人の殲滅に舵を切ろうとしており女王の捕獲作戦を画策している。
クロスウェルが皇庁よりも警戒していた存在。

使徒聖

帝国の君主である「天帝」の直属護衛であり、帝国の最高戦力。作中では11人おり、かつてイスカも選ばれていた。

ヨハイム
使徒聖の現第一席。『瞬(またたき)』の騎士の二つ名を持つ帝国最強の使徒聖。細身の長剣を提げ甲冑とコートが一体化した専用の戦闘衣を着こんだ紅の髪の大剣使い。
寡黙な性格で女王の護衛を務める星霊使いを一切の物音なく倒し、ミラベアの風の結界を突破するほどに速さと力強さが、とてつもなく高い次元で均衡した機動力を体得した絶技を誇る剣士。
本来は天帝の傍に常に控えていなければならない立場だが、八大使徒の依頼で女王捕獲作戦のメンバーに選ばれ彼自身も「女王は自分が狩る」と積極的な意欲を見せている。
また、女王の傍に現在アリスがいないことやミラベアの星霊術のカラクリを帝国領にいながら知るなど、皇庁そのものに深い情報網を持っている節がある。
女王の間にてミラベアと対峙し、皇庁を全ての星霊使いの楽園とする彼女に対してそれは欺瞞の夢であると切って捨て世界は生まれ変わると宣言する。
その正体は皇庁出身の星霊使いでありながら帝国に寝返った裏切り者。イリーティアと同じく皇庁を変えるために国を裏切った。ミラベアに対しては「自分はあなたを知っていたが、あなたは自分を唯の敵としか見なかった」と哀れみと共に吐き捨てている。その特性を生かしてミラベアの「星霊使いを除いた敵を倒せ」という指令を与えられた星霊術を回避し懐へと入り込み、女王を庇ったイリーティアを斬り伏せ連れ去った。
使徒聖の第三席。『降りそそぐ嵐』の二つ名を持つ野性味ある女兵士。機構Ⅴ師――無主地と呼ばれる未開拓領域に配属される帝国兵の中で頭角を現し、昇級した。非常に大雑把でざっくばらんな性格の女性。ネームレスとは一方的にからかって袖にされる関係。
小柄ながら二の腕は鋼のように引き締まり、自分よりも大柄で体重百キロ近い帝国兵を軽々と放り投げられる膂力、超人的な五感と動体視力を持ち、不可視のネームレスの気配を感知した挙句に、上空から放たれたキッシングの棘を視認できるほど。更には、後述の重量兵器を常に担ぎながら歩き、跳び、走れるなど強靭な耐久力を誇る。その肉体は帝国の機密仕様らしい。
上記の天性の才能もさることながら、豊富な戦闘経験による状況判断も卓越しているなど正しく歴戦の戦士と呼ぶに相応しい実力を有し、本人もそれを自負している。
常に背に担いでいる艦載兵器―――電子制御型36連機関砲「暴嵐荒廃の王(ルインドキング・ハリケーン)」は毎秒1000発の弾丸を発射し、その威力は炎、雷、氷、水、土といった障壁をも突破しあらゆる星霊使いを殲滅するというコンセプトで開発されている。普段は光学迷彩機能で不可視にしている。更には上述の1000発の弾丸とは別に真の弾丸が存在するらしいが、詳細は現時点では不明。
帝国が星霊使いを迫害したという言い分をそういう彼らこそが自分たちただのヒトを見下しているとネームレス同様敵愾心を抱いている。
それ故、星霊使いをただ生まれ持った星霊の強さだけで大した努力もせず楽な思いをしてきたと曲解している面もあり、交戦したキッシングに対してはその感情が浮き彫りとなっているなど、上記の大らかな性格に反して基本的にはネームレス同様に思想的にはレイシストである。
上昇志向はかなり強く璃洒にどうやったら天帝は自分を第一席にしてくれるのかと冗談交じりに聞いている。
皇庁襲撃ではキッシングと交戦する。持ち前の身体能力と反射神経でキッシングの棘を防ぎ、「暴嵐荒廃の王」による一斉射撃で手傷を負わせるも仕留めきれず、真の弾丸で迎え討とうとするもグロウリィの化身獣に水を刺され不発に終わる。その後、キッシング自体が撤退したため、自らも合流したネームレス同様退いた。
マグナカッサ
使徒聖の第四席。機構司令部局長。女王捕獲作戦のメンバーに選ばれる。
璃洒・イン・エンパイア[Risya In Empire]
使徒聖の第五席。天帝の参謀。あらゆる分野で才能を発揮する万能の天才。ミスミスと士官学校の同期で仲が良く、いろいろと可愛がっている。
普段こそ気さくなお姉さんという風情だが、底知れぬ腹黒さと冷徹さも持っており、無理無謀な命令を笑顔と正論でゴリ押す上、第907部隊を平然と囮に使うなど、ジンからはまるで信用されていないどころか警戒さえされている。帝国と皇庁の二重国籍を持ち監獄のガラス壁を手も触れずに破壊するなど良くも悪くも謎が多い女性。
使徒聖に恥じない高い戦闘力を持ち、3巻で人為的に超人を製造するというコンセプトで作られたネームレスを模した光学化スーツを身に着け、皇庁の十三州『アルカトルズ』でサリンジャーを逃がした後に時間稼ぎのためアリスと交戦したことからもそれが窺え。その後、帰還した彼女に当のネームレスは「そもそもお前にそんな玩具は必要ない」と評されていることからも底知れない実力を未だ隠している節が見受けられる。
八大使徒から何らかの実験を依頼されている模様だが、詳細は不明。
参謀だけあってユンメルゲンからはかなり重用されており、彼に対して下記の女王捕獲作戦に腑に落ちないことがあると物申している。
女王捕獲作戦のメンバーにも選ばれ仮面卿と対峙する。その際、帝国領の星脈噴出泉から確保した『紡』の星霊の力を保有していることが明らかとなった他、「四回目の二十二歳」であると謎めいた発言をしている。
尚、星霊の力を保有しているのは人体に星霊を付着させる実験の結果らしい。
ネームレス[Nameless]
使徒聖の第八席。『神の見えざる手』の二つ名を持つ、頭部から足先までを帝都の制圧兵器研究機関が作り出した光学迷彩衣装に身を包んだ男。帝国の刺客部隊である機構第Ⅵ師から昇級した。格闘技術(サイレントキリング)の達人でアリスの鋼を上回る強度の氷を容易く破壊するほどの尋常ならざる膂力と銃弾並みに加速した氷の投槍をつかみ取り、グロウリィの化身獣を振り切るほどの機動力を有するなど、獣すら超える動体視力と身体能力の持ち主。
左腕は義手で対星霊擲弾となっている。
徹頭徹尾任務の遂行のみを優先し捕虜に取られたミスミスを始めとした同胞の命すら意に介さないなど冷徹なまでに合理と効率を尊ぶ人物である一方、星霊使いを徹底して「魔女」「魔人」「バケモノ」と過剰に蔑みアリス達純血種を「王族気取り」と見下す上、皇庁の三血族が王位争いをする様を、自分たち使徒聖や八大使徒などの蹴落とし合いを棚に上げて「しょせんはバケモノはバケモノ」と嘲るなど帝国の今の思想を具現化したようなレイシスト。
それ故、使徒聖でありながら魔女を脱獄させたイスカを裏切り者と蔑み信用してはいない。
女王捕獲作戦のメンバーにも選ばれ、ゾア家当主グロウリィと対峙する。グロウリィの化身獣により左腕と右腕を再起不能にさせられるも、上記の義手に仕込んだ対星霊擲弾で化身獣の動きを阻害した一瞬の隙をついて撤退した。
スタチュール
使徒聖の第九席。『天獄』の二つ名を持つ巨漢の使徒聖。
帝国が捕獲した魔人や魔女を繋ぎとめている地下の獄の門番。
身長二メートルを超える上背に、隆々と膨れ上がった筋肉の鎧に覆われた男。過剰なる熱量変換故に摂取物から得られる熱量の変換効率が、常人の十倍以上であるが故に常人と同じ食事をとると栄養のとりすぎで肉体が無尽蔵に膨れ上がる上に鍛錬も常人が鍛えるのと同じようにすれば鍛えすぎで肉体が自壊するために必要としない、あらゆる薬物(ドーピング)を凌駕する筋肉成長作用を持つ。
その肉体と極寒の天獄故か外の暑さに辟易している。
サー・カロッソス・ニュートン
使徒聖の第十席。『オーメン』の二つ名を持つ帝都第三セクターに存在する兵器開発部局の研究室長。
如何にもな研究者と言う風情の白衣を纏った壮年の男性。兵器開発部局において、もっとも不健康な研究員として知られている。最上位戦闘員たる使徒聖の中で例外的な非戦闘員であり、どういう経緯で使徒聖へと昇格したか不明。
4巻にて皇庁側から売られたシスベルを狩るため、スタチュールから天獄に実験用に搭載された兵器『殲滅物体(オブジエクト)』を借り受け、彼女のいる独立国家『アルサミラ』に投入した。
後に皇庁侵入と女王捕獲作戦にも身を投ずる。
ガルガンリィ
使徒聖の第十一席。イスカの後任に当たる機工士で『不在(ノーヒア)』の二つ名を持つ。女王捕獲作戦のメンバーの一人に選出される。

一般兵

ミカエラ
璃洒の友人で司令部の統括医療チームに従事している女性。専門は医療法(メディカル・リーガル)で、医療従事(コ・メディカル)チームの指導を主任務としている。堅物な性格で使徒聖ながらちゃらんぽらんな性格の璃洒にも容赦なく不備を糾弾する。過剰任務を強いられていた907部隊に60日間の休暇を命じた。
璃洒にある薬を処方しているらしいが、詳細は不明で璃洒自身にも口止めされているほど重要な薬らしい。

ネビュリス皇庁

「星」が持つ未解析エネルギーである星霊を宿す星霊使いたちが建国した国。自分たちを迫害してきた帝国を憎悪し、帝国の打倒を掲げており、100年間戦争を続けている。

ネビュリス皇庁を建国した始祖の魔女ネビュリスの直系の星霊使いは「純血種」と呼ばれ、強力な星霊を宿しており、帝国から警戒されている。初代女王の三人の娘たちの末裔に当たる現女王のルゥ家と過激派のゾア家と中庸のヒュドラ家の三血族から成る。

ルゥ家

ミラベア・ルゥ・ネビュリス8世
ネビュリス皇庁の現女王であり、アリスの実の母。彼女自身もアリスに及ばずとも一流の星霊使いで「風」の亜種である『大気』の星霊を宿す。風を操るのではなく、より大規模な空気そのものを操作するなど事実上「風」の星霊の上位互換に相当する星霊で普段はその強大に過ぎる力を厚地の上着部分で抑えている。
ゾア家程ではないが、彼女も帝国を自分たちを不当に迫害した蛮人と決めて掛かり、彼らとの戦いと打倒という思想に偏っているため和平は頭にはない。アリスが帝国の画家のフォットブックを集めることも苦々しく思っている(漫画版では燐に全て焼き払うよう命じている)。次期女王にはアリスをと堅く決めているが故の配慮でもある。
皇庁を星霊使い全ての楽園と称するも実の娘であり生まれながらの敗者と自称するイリーティアと襲撃してきたヨハイムからは否定されている。
若い頃は強力な大気の星霊も然ることながら暗殺術や格闘術にも優れる過去最強の女王候補と目される星霊使いであり、『静寂の風』のミラの二つ名で恐れられた。当時の彼女は無表情かつ無感情に敵を屠り、グロウリィからは「戦闘機械(オートマタ)」と評されていた。実はかつて大罪人のサリンジャーを一蹴してしまう実力の持ち主であった。彼とはアリスとイスカのようなライバル関係だったが、ヒュドラの策略で女王を彼が襲ったと勘違いし関係は破綻。今現在はそれを過ちであったと自嘲している。
皇庁襲撃で使徒聖一席のヨハイムと交戦するも星霊術に命じた「星霊使いを除け」という指令が仇となり星霊使いであったヨハイムの接近を許し切り捨てられるところを娘のイリーティアに庇われ、負傷とその光景に失神して敗北した。
戦後は襲撃の責任を問われるなど政治的に窮地へと立たされる。
イリーティア・ルゥ・ネビュリス9世[Elletear Lou Nebulis Ⅸ]
ネビュリス皇庁の第1王女。アリスを凌ぐ抜群のスタイルを誇る美女で、二人の妹が拘るイスカの存在に強い興味を示している。しかし、その内面は今ある皇庁を根本から壊したいという憎悪に満ちており、かつて帝国にも渡った人脈を活かして皇庁侵攻を手引きする。
「声」の星霊を宿しており、過去に聞いた者の声を再現できる。しかし声真似のようなものであるため、戦闘には元よりシスベルのような証拠能力としても使い道がなく、家臣たちも本人も役に立たぬ星霊と評しているが、これによって女王の間の爆発の瞬間に仮面卿の声を真似ることで疑惑をゾア家に向かわせるなど、権謀において大きな効果を発揮する。また、星霊が弱い分、知略と謀略に長け、星霊の弱さから歯牙にもかけていなかったグロウリィすら唸らせるほどの老獪さを20代で持つに至り、イスカからは八大使徒を想起させ、皇庁の者からは「強い星霊以外の全てを持つ」と評された。
しかし宿した星霊があまりにも弱いことで、第1王女でありながらも女王即位候補から外され、さらには皇庁の中で母や妹たちと常に比べられたため、肥大化したコンプレックスの原因となった。家族に対する愛情は確かに在り、実際シスベルを害すことを仄めかしたヴィソワーズには静かな怒気を顕わにしたが、それでも自分だけが家族の中で仲間外れという自嘲と疎外感はどうしても拭えず、「星霊使いの楽園」という皇庁の謳い文句も自分のような敗者が存在すると否定し、文字通り自らの全てを賭けて皇庁そのものの破壊を目指すこととなる。
その目的のため自ら望んで帝国の被検体となり、神星変異『被検体E』としての力を手に入れる。これによりヨハイムの刃すら物ともしない再生力とゾア家当主グロウリィすらも拘束するほどの強大な力を身に付けるが、身体が水分摂取を拒絶するなど人の身から外れつつあり、近い将来呼吸すら必要なくなるだろうと自ら述懐している。また『星』との適合率が異様に高く、既に施術した帝国すらもその後の変化に予測がつかず、八大使徒からは存在を危険視されている。
帝国による皇庁襲撃前には、ルゥ家の失墜を企むヒュドラ家と手を組み、かつ帝国の内通者としてアリスやシスベルを皇庁から遠ざけるなど、皇庁襲撃の前準備を行い成功させる。実際の襲撃時にはヨハイムと交戦する母の元へと赴き、母を庇う体で刃に掛けられた後にヨハイムによって連れ去られることで、内通者の疑いから自らを外す。その後、神星変異『被検体E』としてゾア家当主グロウリィへ不意打ちを行い拘束。帝国へ新たな研究材料として提供しつつ、自らも帝国へと向かった。
シスベル・ルゥ・ネビュリス9世[Sisbell Lou Nebulis Ⅸ]
ネビュリス皇庁の第3王女。過去に起こった事象を映像で再生する「灯の星霊」を宿している。
実はイスカが脱獄の手引きをした魔女本人。皇庁内のある存在を知ってからは最悪の事態を回避するための味方を欲し、偶然再会したイスカに協力を要請するが、断られ悲嘆に暮れるも直後に仮面卿の襲撃や帝国の殲滅物体に捕獲されかけたところを結果的にせよまたも救われ、以来イスカには恋情に近い強い拘りを見せる。
王女としての心構えは出来ているが、「女王の品格など二の次」という考えており、双方の全面戦争を阻止するためならば多少の色仕掛けをも厭わない。一方で恩人であるイスカには好意を寄せており、姉達と、特にアリスとは度々張り合っている。
宿した星霊故に実の姉たちすら含めた人間不信に陥っており「自分が信じられるのは母だけ」と断言するほど頑なだが、自らを二度に渡って助けたイスカだけは例外となっている。
シュヴァルツ
執事姿の初老男性。シスベル付きの執務官。護衛を兼ねている燐とは違い彼の星霊は戦闘に不向きで主に隠密に優れている。シスベルが信頼できる数少ない直属の部下。
シスベルの王宮帰還を実現するため、一人中央州へと戻り女王への謁見を望むが、その寸前で捉えられ消息を絶つ。
梓(キササゲ)
ワーヴィック
男女の星霊使いで燐と同じく王宮守護星出身の護衛。帝国軍の最新光学迷彩を上回る隠密能力の星霊保持者で常に待機しているらしい。
ユミリーシャ
アシェ
ノエル
システア
ナミ
ルゥ家の別荘で働く使用人の少女たち。全員が星霊使いではあるが、攻撃的な星霊ではない。ただしユミリーシャの特定の対象に伝言を託す「共鳴」の星霊を筆頭に緊急時に即した星霊を全員が宿している。
なし崩し的に別荘に招かれたイスカたちをイリーティアの命だからと歓待するも、当然内心は険悪この上なく隙を見せた瞬間に懐からナイフを取り出して襲い掛かって来そうだとイスカたちに思わせた。
しかし、シスベルが攫われた際のイスカたちの誠実な態度と言葉に一端は信用すると決めルゥ家の隠れ家(セーフハウス)へと第907部隊を招いた。

ゾア家

仮面卿オン[On]
フルネームはオン・ゾア・ネビュリス。仮面をつけた黒服の男で皇庁の過激派にしてタカ派の代表的存在ネビュリスの純血種ゾア家の一人で空間を渡る「扉」の星霊を宿した魔人。如何にも紳士的な物腰と口調の持ち主だが慇懃無礼でその内には苛烈なまでの帝国への敵意と怨念が満ち満ちており現女王の体制を緩すぎると公言して憚らず帝国との全面戦争こそが星霊使いの悲願だと断言するなど皇庁の憎悪を具現化したような男。
策謀と奸計に富み上記の星霊の特性から奇襲と不意打ちを得意としているなどあらゆる意味で一筋縄では行かない人物。
ただ上記の恩讐が強すぎるが故にシスベルが帝国兵であるイスカを招き入れようとしたことを政敵であることを考慮したとしても一切の弁明も聞かず裏切りと断定したり、敵を始末する際にも過剰な恨み節が端々に顕れていたりと非合理的な判断や言動による失敗も目立ちジンからは「頭の回転は悪くないが空回るタイプ」と批評されている。
聡明で合理的かつ明晰な分析力を持ちながらも最終的には非合理な恩讐を優先するなど根は非常に激情的な人物であり、それは皇庁襲撃後に国が疲弊している中、すぐさま報復を主張したことからも窺い知れる。
イリーティアの奸計により女王の間爆破の嫌疑を掛けられ一時的に拘束されるも、それすらもゾア家が一気に上り詰める好機と捉える。
皇庁襲撃にて璃洒と対峙しお互いに腹を探り合いながら刃を交わす。
争乱の終結後、当主グロウリィが捕虜になったことから、ここぞとばかりに女王の不明を責めたてながらも当主不在では分が悪いと踏み一旦は引き下がる。その後の会議で報復として帝国全土へ総攻撃をかけるべきだと出張し、挙句に新たな指導者として始祖の復活を提案する。女王からは覚醒の方法が確立されていない上、中立都市での暴虐を理由に却下されるも水面下で目覚めさせようと画策している。
キッシング・ゾア・ネビュリス9世[Kissing Zoa Nebulis Ⅸ]
眼帯をつけた黒髪の少女で年齢は十三か十四。ゾア家の秘蔵っ子で仮面卿をしてアリスをも超える逸材と評される星霊使い。「棘」の星霊を宿し産み出された無数の棘は刺したものを全て分解し消去するばかりか分解したものを再結合させることが可能。それを鞭のように連結させて広範囲縦横無尽に攻撃する。ただ星霊使いとしての技量と練度はアリスには未だ及ばず、大技を使う際に標的の指定といった細かなコントロールが利かない。
基本的に無口で口調もたどたどしい。仮面卿の命令を忠実にこなしている。
仮面卿からかなり殺人的な訓練を施された結果、分解したミサイルを再結合して爆発させつつ、その威力を分解して自らに爆発のダメージが及ばぬようにするなど自爆同然の絶技をこなす。
皇庁襲撃にて冥と交戦状態に入る。その際には毎秒四十発で飛来する超高速の弾丸すべてを同数の細い棘で狙撃するなどイスカとの交戦時とは比較にならぬほど星霊使いとしての練度が上がっている。だが実戦経験の少なさから冥の「暴嵐荒廃の王」の一斉射撃により手傷を負い、イスカとの交戦時には感じられなかった自分たち星霊使いへの憎悪を学び、本気で彼らを殲滅しようとするもオンからの指示で止む無く撤退した。
グロウリィ
ゾア家当主にして特殊な逆襲型の『罪』の星霊保持者。車椅子の老人。帝国軍の負傷によって両足が動かない身ながら未だに眼光に宿る怨念は衰えていない。
その一方で現女王の手腕に不満はないといい、ルゥ家と対立する傍ら、ヒュドラ家の陰謀にも感付くなど基本的に聡明である。
ヒュドラ家に嵌められる形で帝国の襲撃を受けるも戦場に立つことが叶わなくなった身に、怨敵の方から自らの元へやって来たことに歓喜に等しい昂揚を抱きネームレスと対峙する。
保有する『罪』の星霊は、先制・再犯・兵器・無勢・破壊・虚偽・裏切りという七つの大罪を敵が術者であるグロウリィに対して行うことで発動し星霊エネルギーの化身『化身獣《アバター》』が出現する。その本質は呪いそのものとすら言え、触れるものを浸食する。その力でネームレスの左腕と右拳を蝕んで無力化した。上記の罪を敵が犯せば犯すほどに増殖し巨大化する。その形はケルベロス、獅子、巨人など様々。おまけに相手の物理干渉を一切受け付けないばかりか逆にこちらからは物理に干渉できるという反則級の凶悪さを誇る。
圧倒的な力でネームレスを退けた後、シスベルを連れたヴィソワーズを抑えるも、神星変異「被検体E」としての姿と力を発現させたイリーティアに不意打ちもあって敗れる。結果、拘束され帝国へと新たな被検体として引き渡される。
シャノロッテ・グレゴリー
温和な女性で間延びした口調で喋る。帝国の機構Ⅴ師第一〇四部隊の隊長でミスミスの同期で友人だが、その正体はゾア家の派閥に属する皇庁のスパイで星脈噴出泉(ボルテックス)に近付いた帝国部隊を捕虜にしていた犯人。「雷」の星霊保持者で術の発動が極めて早い上に帝国兵としても習熟した技能を持つ。
本性は極めてサディスティックで正体を顕わにした途端、友人で会ったミスミスを雷の星霊術で甚振り拘束した挙句に溜め込んでいた恨み辛みを発散するなど典型的な過激派ゾアの信望者。
ヒュドラの研究所『雪と太陽《スノウ・ザ・サン)』での戦闘を衆目の中で偵察する中でミスミスと図らずも再会。捉えようとするも衆目に紛れられ取り逃がした。

ヒュドラ家

タリスマン
ネビュリスの純血種ヒュドラ家の当主。『波濤』と『暴虐』(本人としては後者は本意ではないらしい)の二つ名を持つ魔人。格調高いスーツに身を包んだ際立つ体格の壮年の男性。表向きは女王やルゥ家に恭順し中立的な立場を取っているが、ゾア家を追い込む形でルゥ家を追い込む面従腹背であり良くも悪くも老獪な人物。敵と対峙した際にもそれは際立っており、のらりくらりとした会話を続けながら確実に敵を葬る攻撃を繰り出すなどイスカをして詐欺師と評される。
イリーティアと共謀し敵である帝国を皇庁に招き寄せルゥ家とゾア家を排除せんと企むなど仮面卿に比べると柔軟な判断力もある。その真意は星の中核(コア)に至るには帝国の力が不可欠であるかららしいが、詳細は不明。
「波」の星霊保持者で不可視の力学エネルギーを波動として放出する。さらに彼の場合はそのエネルギーを物理的な加速度に転換することで拳にかすめただけで肋骨と内臓がバラバラになるほどの破壊力を付与する。また体技のレベルも相当なもので、それを波動の後押しで加速させることでイスカが視認できないほどの速度を誇り、彼が機動力で振り払えないなど対星霊使い特化の天敵とも言える技量の持ち主。
ミゼルヒビィ・ヒュドラ・ネビュリス9世[Mizerhyby Hydra Nebulis Ⅸ]
タリスマンの姪でヒュドラ家の次期女王候補の王女。『光輝』という特殊な星霊を宿している。本来は、タリスマンと同じ金髪であったが、星霊の発現と同時に髪色が青く染まった経緯を持つ。
皇庁の姫君に相応しく優雅でタリスマン同様仕草まで計算尽された淑女にして、仮面卿の提案した始祖復活によるデメリットを的確に見抜いて指摘するなど聡明であり、タリスマンをして今すぐ女王になってもおかしくない器量と絶賛されている。
反面、激昂すると星霊光を放出して髪がメドゥーサのように逆立ち、口調も乱暴になるなど沸点は叔父のタリスマンに比べるとかなり低い。
『光輝』の星霊は他人の星霊に力を与える代わりに己の軍勢として操る力を持つ。これを己自身に使い戦闘を星霊に委ねることで強大な肉体能力を得る。
この力により純血種数十人に相当する戦力を作り上げ『歩く星脈噴出泉《ボルテックス》』と呼ばれる。
ヒュドラの研究所『雪と太陽(スノウ・ザ・サン)』でシスベルを探しに来たイスカたちを迎え撃ち、『光輝』の星霊で強化した「暁の軍勢」で圧倒するも、ヒュドラの研究記録の断片を納めたイアリング「グレゴリオ秘文」をイスカに奪われる失態を演じ、上記のように激昂して『光輝』の星霊を己に使い暁の軍勢も動員して取り戻そうとするも取り逃し、入れ違いで「グレゴリオ秘文」の原典を求めてきたサリンジャーと交戦する。
ヴィソワーズ・アレク・ヒュドラ
異端審問官の少女。ネビュリスの直系から遠い血筋である彼女をヒュドラ家が養子に迎えた。
ヒュドラ家が遣わしたシスベルへの刺客で、帝国の実験体。通常時でも剣で切っても手応えが無いなど人の身から外れた再生能力を持つが、さらに悪星変異『被検体Vi』として、髪がルビーのように凝固し身体はガラスのように透ける異形へと変態する能力を持つ。その際の姿はシスベルがかつて見た怪物と酷似している。また変異の際には立ち登る星炎により着ていた衣服が焼けてしまう。
悪星変異『被検体Vi』として強大な力を誇り、星炎を自在に操る能力と、星霊の力である『重力』を使用しブラックホールまでも作り出すことが出来る。しかし戦闘経験が浅く、その戦法はあくまでも人間である上に慢心も手伝い、その間隙を突かれる形でイスカに敗れ、そのまま燐やアリスに拘束されルゥ家に捕縛されるもタリスマンはイリーティアの進言もあり知らぬ存ぜぬを通している。
帝国による皇庁襲撃に乗じて脱走、イリーティアと打合せを行うとそのまま悪星変異『被検体Vi』としての姿に変異し、シスベルを捕えた。その後ヒュドラ家の研究所の警備をしていたところ、サリンジャーの襲撃に合い、全力で戦うも力が及ばず、実質的に敗退した。
オルネイク
ヒュドラが独自に雇った諜報部隊の隊長。護衛としての実力は一級品で、刺客としては超一級である恐ろしく優雅で俊敏な振る舞いのスーツ姿の男性。
タリスマンの密命でシスベルの監視をすべくルゥ家の別荘に潜伏するも同じく密かに訪れていたサリンジャーによって撃退される。
グリューゲル
『白夜の魔女』の二つ名を持つ修道服を思わせる赤い服を纏った痩躯の魔女。同時に別の戦場に現れるまでアリスと同一視されていた『雪』の星霊使い。ヒュドラ家の派閥に属するシスベルへの刺客。
かつて、ただの一人で帝国の機構Ⅴ師一個中隊を丸々壊滅せしめ戦車と装甲車あわせて二十台をスクラップしたほどの圧倒的な力を持つ。
シスベルを連れた907部隊の行く手に立ちはだかる。

その他

クロスウェル・ネス・リビュゲート
通称『黒鋼の剣奴』の二つ名を持つかつての使徒聖筆頭にして帝国最強の剣士。イスカとジンの師匠で星剣の前任者。普段は無口で無感情で気だるげな視線の男。後継者に選んだイスカのことを今までの後継者候補の中で「一番見込みがなかったと」と評しながらも「自分に一番似ていたから」とも評していた。
「星剣こそが世界を"再星"する唯一の希望だ」など意味深な言葉を残して消息を絶った。
また帝国の最高意思決定機関である八大使徒を皇庁や星霊使いよりも毛嫌いしイスカとジンにも連中には心を許すなと忠言するほど。
何故か百年前の人物である大魔女ネビュリスと面識を持っていたなど謎が多い人物。
始祖ネビュリス
『時空星霊』とも呼ばれる最古にして最強の星霊を宿した少女でネビュリス皇庁の創始者(正確には彼女の双子の妹が創始した)。百年前、帝都を唯の一人で火の海に変えた『大魔女』と恐れられた伝説の魔女。赤銅色に日焼けした肌と真珠色の髪が印象的な少女で十二、十三の少女。サリンジャーがいうところの『人と星霊の統合』に自力で至った存在。
当然表向きは既に故人とされているが、実際はその強大な星霊の力で時間の流れさえ遮断し上記の少女の姿のままネビュリス王宮の地下で眠り続けていたが、アリスの星霊とイスカの星剣に共鳴する形で覚醒する。
しかし、その思考と意思はゾア家すら生温く思えるほどの破滅的な憎悪に支配されており帝国を滅するという恩讐に固執し、そのためなら同胞の星霊使いすら傷つけることも厭わない。その圧倒的な暴威で暴れ回るもアリスの氷花とイスカの星剣によって再び眠りにつき王宮の地下へと戻っていった。
その星霊の力は強大で、星紋が翼として具現化するほど。本来星霊が干渉できる事象は一つ切りのはずのところを炎、氷、土、風などを自在に操り空間破壊すら可能など全てが桁違い。
何故か星剣ばかりかその担い手の前任者であった百年後の人間であるはずのクロスウェルを知っている。
サリンジャー[Salinger]
美麗な白髪の青年。『超越』の二つ名を持つ、かつて皇庁に反旗を翻し先代ネビュリス7世の星霊を奪おうとした最悪最強の魔人。他人の星霊を二つに分裂させ、その半分を強奪する「水鏡」の星霊を宿す。これによって純血種など強力な星霊を多く奪ってきた大罪人であり監獄都市として名高い皇庁十三州のアルカトルズでも星霊使いの罪人を収監するオーレルガン監獄塔に三十年収監されていた。にも拘らず未だ力強き青年の姿を保っている。
性格は傲岸不遜で己の強さに微塵も疑いはなく「気高きは血筋にあらず。理念に宿る」という理の持ち主で星霊を奪うことを『星霊使いの王が国民に求める徴収」と称した上、星霊を極めることに余念がなく「全ての星霊の力を以て、王を『超越』する」と豪語する。
その傲岸さは口ばかりではなく、奪った星霊の殆どが純血種などの強力な星霊ばかりであり半分の力しかないにも拘わらず、その半分の力で燐を圧倒するばかりか、上記の星霊の力によって奪った二つの異なる星霊を統合させる「星階唄(サンクトウス)」の絶技を持ち並みの星霊術を凌駕する力を振るうが、これすら彼にとっては副産物に過ぎず、彼が目指すのはその先のステージである第三次統合「人と星霊の統合」である豪語するなど並々ならぬ上昇志向を持ち、それ故に純血種などの王家を生まれながらの星霊の強さに胡坐を掻いて力を高める意識もないと酷評している。
その一方で油断や慢心もまた微塵もなく上記の傲岸さとは裏腹に幾重にも慎重な策を講じる冷静な面もある。
上記のように三十年収監されていたが、璃洒の手引きと提案で脱獄。立ちはだかった燐を圧倒するが、イスカに横槍を入れられ最初こそ歯牙にも掛けなかったが、星霊術をことごとく斬り伏せる彼に星階唄の星霊術を繰り出すも、その力すら利用して迫る執念に怯み惜しくも敗北を喫する。しかし分身体を作ることでその場から逃れた上、未だに三つの星階唄を出し惜しんでいた。
現女王のミラベアを今も昔も歯牙にもかけたことなどないと公言していたが、実際は愛称の「ミラ」で呼び、かつてはその星霊を奪わんと挑戦しては撃退されていたなどイスカやアリスのような好敵手同士だった。同時に図らずも戦場ではなく日常の場で彼女と会う機会を得て素の彼女を知り、無自覚ながら異性として惹かれるようになる。
しかし、ヒュドラ家の策謀を知ってミラベアを助けるため、王宮に向かったところ女王を襲った後のヒュドラの刺客「被検体F」と交戦し、その末に刺客が去った後、間が悪く駆け付けたミラベアに女王襲撃の犯人と誤解されてしまう。弁明するのは自身の気位がそれを許さず、結果として上記の大罪人に仕立てられ、ミラベアとの関係は呆気ない幕切れを迎えた。ただ未だにその日々を自分が生涯唯一の「挑戦者」であった時代と評した上、現女王たる彼女のファーストネームを呼び捨てていいのは自分だけでありそれは自分に対する不敬と言い放つなど、かなりの思い入れを抱いている。
それ故に、皇庁襲撃によりミラベアが傷つけられたことで我慢の限界を超え、ヒュドラの研究所『雪と太陽(スノウ・ザ・サン)』を襲撃し暴威を振るいヴィソワーズすら退けて。ミゼルヒビィと交戦した。
その際にヒュドラが長年研究してきた人工的に「人と星霊の統合」を成就させる研究記録を記した「グレゴリオ秘文」の原典を要求した。
天帝ユンメルンゲンとも面識があり彼から帝国の機密文書を渡され、そこに記された皇庁への間者"純血種『E被検体』"の詳細を知らされ心当たりが二人ほどいたが、歯牙に掛けることなく燃やした。

用語

中立都市
帝国、皇庁のどちらにも属さず、中立を宣言している都市の総称。中立都市内では一切の争いが禁止されており、違反した場合全ての中立都市が敵に回る。
星霊
星の地下深くに眠っていた未解析エネルギー。かつて帝国が地質調査を行っていたときに噴出し、発見された。人間に憑依する性質を持っており、星霊を宿した者には「星紋」と呼ばれる痣が生まれ、同時に魔法のような力が宿る。星霊を宿した女性は「魔女」、男性は「魔人」と呼ばれ迫害されていたが、始祖の魔女ネビュリスを中心に反旗を翻し、ネビュリス皇庁を建国した。星霊を宿す者や一部の者は魔女・魔人という呼称を使わず、「星霊使い」と呼んでいる。

既刊一覧

小説

漫画

ヤングアニマル』(白泉社)にて、2018年No.10より連載。作画はokama。

テレビアニメ

2019年10月20日にファンタジア文庫大感謝祭2019にて製作が発表された[6]。放送日は未定。

スタッフ

脚注

外部リンク