アンダーグラウンド (文化)

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アンダーグラウンド(underground)は、地下の意。転じて地下運動反権威主義などを通じて波及した1960年代後半に起こった商業性を否定した文化芸術運動のことを指す。より広義には社会の主流に対抗した文化のことを指す。アングラと略される。

*なおWikipedia英語版 (Underground culture) では、アンダーグラウンドインターネットを関連づけてはいない。

文化としてのアンダーグラウンド[編集]

元々はアンダーグラウンドとは地下運動を通じて、旧来の社会体制に対しての反発、批判精神による反体制活動を指す。例えば、アメリカの奴隷制に抵抗した地下鉄道 (秘密結社)、戦前の全体主義に対抗したレジスタンス運動や、戦後のパリ実存主義運動、1950年代のビートニクスなどが挙げられる。アンダーグラウンドの定義は、こうした一般に認知される可能性の低い、水面下に密かに行われていた活動を指している。

その後、1960年代のアメリカやヨーロッパを起点として、西側社会(主に資本主義システムとキリスト教規律)に対する政治的・文化的な対抗、権威主義保守主義、エスタブリッシュメント、政治家、資本家・大企業への反発・抵抗は、ヒッピーなどの若者を中心にしたカウンターカルチャーとして発展した[1]。彼らが唱えた価値観は、文化多元主義、東西の宗教を融合したニューエイジ宗教、社会主義的平等、自由恋愛(と性行為)、マイノリティの尊重、フェミニズムLGBT性的マイノリティ)の受容、ドラッグの合法化、自然との調和・エコロジーなどである。

カウンターカルチャー・ムーブメントの副産物として、いくつものアンダーグラウンドな文化の開拓が後押しされた。カウンターカルチャーとアンダーグラウンド・カルチャーの違いは、どちらも主流(メインストリーム)の文化や体制に対抗するが、カウンターカルチャーは実際に対抗勢力や新たな体制になりうる価値を持ち社会全体を巻き込むレベルとなるのに対し、アンダーグラウンドは常にメインストリームにはなり得ず一部のコアな層に支持されるサブカルチャーのレベルに止まることである[2]。メインストリームになった時点で新たな体制の一部となり、もはやアンダーグラウンドではなくなるのである。例えば、人種差別や女性差別、性的マイノリティの差別は、60年代のカウンターカルチャームーブメントによって社会のメインストリームの座を譲った。また、旧来のキリスト教(特にカトリック)による婚前交渉や離婚の禁止など厳格な性の規範は跡形もなく消え去り、自由恋愛が社会のメインストリームとなった。しかし、ドラッグの推奨などは中毒などの危険性もあり、メインストリームにはなり得ず、今でも反社会的と見なされている。言論の自由も今ではメインストリームだが、ヘイトスピーチや猥褻なスピーチ(タブー)などは今でも公言が憚られるアンダーグラウンドなところがある。アンダーグラウンドは、社会の大半が価値を見出せなかったり不快に感じたりさせる性質がある。

アメリカでは、カウンターカルチャーの担い手で、反体制的な曲が多いフランク・ザッパや性のタブーの曲が多いヴェルヴェット・アンダーグラウンドなどはアンダーグラウンドな要素を持っていた。なおドアーズもポップなヒット曲が多かったが、グループの持つ体質からはアンダーグラウンド的な雰囲気が濃厚にただよっていた。ティモシー・リアリーはドラッグの使用を追求した。オフ・ブロードウェイはメインストリーム受けを狙わない劇団が多く[3]en:The Living Theatre反芸術スタイルの前衛パフォーマンスのパイオニアであった。

ヨーロッパでは、既存の演劇に反発するアンチテアトルが起こった。シチュアシオニスト・インターナショナルの反体制的政治思想は、アンダーグラウンドなアートや音楽に対して大きな影響を与えた(en:UK undergroundパンクなど)。

日本では1960年代ごろから、前衛芸術である前衛美術、前衛映画、前衛演劇や暗黒舞踏(既存の価値観からはグロテスクと思えるような動きを多数追求した)などが登場した。その担い手としては、アングラ演劇では寺山修司らの天井桟敷などが代表としてあげられる。現代美術は「具体美術協会」が創設され、極めて革新的な美術表現が展開された。日本映画界は新たな映像美を求め、大島渚らの映画監督が松竹ヌーヴェルヴァーグのムーブメントを興した。 また若松孝二や寺山修司、吉田喜重らの映画が、ATGの協力を得て制作された。暗黒舞踏では大野一雄、土方巽らが活躍した。

元々は、社会の主流や権力による抑圧や不正義に抵抗する運動という意味合いだったものが、商業主義に対抗する前衛的(意味不明)芸術またはタブーに挑戦する悪趣味的芸術という意味にもなり、さらには国家権力に反抗するという意味で単なる犯罪行為(不正義そのもの)も意味するようになった。

カウンターカルチャーと関連する運動・芸術[編集]

社会運動
反抗音楽

これらは現在ではメインストリームの一部となったものも多い。

アングラアート[編集]

大衆向けでない前衛芸術のこと。

アングラフォーク[編集]

アングラ演劇[編集]

アングラ雑誌[編集]

地下出版[編集]

言論の自由が公権力によって制限されていた時代には、国家権力の検閲の目から逃れて出版されたもの(地下出版を参照)。

反体制出版
エログロ

関東大震災と世界的不況を背景にした昭和初期の日本では、国の倦怠感や封建的政府の硬直性から、いわゆる「エログロナンセンス」が社会の一部で流行した[4]エロは比較的多数の人が興味を持つ分野であるため、商業主義として成り立ちやすい。しかし、他ジャンルと比較して政治権力や民間人による規制が強く、それに対する反抗が求められるという意味でアングラである。その時代の許容度を超えると発禁にされることが多い。また、内輪向けに作品が発表されるアンダーグラウンドな芸術分野において、頻繁に表現が試みられている分野でもある。

犯罪

インターネット[編集]

インターネット上において表沙汰にはできないこと、違法行為の指南を扱ったサイトのことを指す。「アングラサイト」とも呼ばれた。インターネット関連規制の法律が不備だった時代はアングラ文化の一部とも見なされたが、現在では単なるインターネット犯罪である。

ただし、これらが上述のアンダーグラウンド文化と異なるのは、弱者搾取的な犯罪行為が多く含まれるということである。アンダーグラウンド文化は、宗教や国家権威による抑圧や大企業による資本搾取などから人間性(や自然の尊厳)を回復するという大義名分を持っており、単なる自分の利益のための犯罪や弱いものいじめは文化ではない。

アングラ犯罪ネットの違法行為、反社会的行為の一部:

ハイテク犯罪についてはサイバー犯罪に移転。またダークウェブも参照。

インターネットがアンダーグラウンド扱いされる一つの原因として、IT企業経営者のモラルの低さや、モラルそのものがないことがあげられる。ネットの巨大掲示板の元運営者西村博之は、裁判で敗訴した分の巨額賠償金や税金の未払いについて、質問をした報道陣に対し「支払わなくてもどうということはないので支払わない」「踏み倒そうとしたら支払わなくても済む。そんな国の変なルールに基づいて支払うのは、ばかばかしい」と、支払いの意思がないことを明らかにした[5]

2010年1月、書籍『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』(ISBN 978-4104715213)の印税新潮社から掲示板運営者に支払われていることに着目し、印税を差し押さえることで初めて損害賠償金が回収される[6]。掲示板管理人への捜査に関する国家賠償請求訴訟について 「2ちゃんねる」(2ch.net)で覚醒剤の購入を持ちかける違法な書き込みが放置された事件で、2012年3月に麻薬特例法違反(あおり・唆し)のほう助容疑で、警視庁は巨大掲示板管理人の自宅等を捜索・差押えした。だが、なぜか管理人が逮捕をされることはなかった。

関連人物[編集]

出典[編集]

  1. ^ Theodore Roszak, The Making of a Counter Culture: Reflections on the Technocratic Society and Its Youthful Opposition, 1968/1969, Doubleday, New York,978-0-385-07329-5.
  2. ^ Contre-cultures : théorie & scènes Introduction
  3. ^ The 10 Most Controversial Shows On and Off-Broadway
  4. ^ 昭和エロ・グロ・ナンセンスと震災後の世相(WEBRONZA)
  5. ^ 2ちゃんねる賠償金「死刑なら払う」…管理人・西村氏(2007.3 読売新聞社 ウェブアーカイブ)
  6. ^ 2ちゃんねるから「賠償金」 回収成功は極めて珍しいケース - 2010.2J-CASTニュース2020年3月23日閲覧