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ハト科
カンムリバト
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: ハト目 Columbiformes
: ハト科 Columbidae
亜科
  • 多数

(はと)は、ハト目ハト科に属する鳥類の総称である。 体に比べて頭が小さく、胸骨、胸筋が発達してずんぐりとした体型が特徴である。 日本に生息する鳩には、アオバトカラスバトキジバトシラコバトドバトなどが知られている。 このうちドバトカワラバトの飼養品種が再野生化したものとされ、野鳥とはみなされないこともある。

生物として

鳩という名前はパタパタと飛び立つときの音の様子に由来すると考えられる。「鳩」(九+鳥)の字にある(九)は鳴き声(クルッククゥー)からきた、とする説がある。「鳩」の中国語の発音であるキュウ(漢音)やク(呉音)は、英語のハトの鳴き声<coo>(クウ)、日本語のハトの鳴き声「クウクウ」に近い。 「ハト」の名は、軽やかに羽ばたく音「ハタハタ」から、ともいう。また、漢和字典では「球」(中心に引き絞られた形)と同源としている。現代中国では「鴿子」(正体字)「鸽子」(簡体字)という。拼音は「gēzi」。

食性は雑食性である(木の実やミミズを食べる)。鳩のヒナは孵化(ふか)後一定期間、鳩ミルク(ピジョンミルク)と呼ばれる親鳥の半消化物を主食として成育する。ひなは親鳥の喉にくちばしを差し入れて胃の内容物を摂取する。巣から落ちた鳩のひなを人工飼育するには、植物性の練り餌(釣具屋で売っているフナや鯉釣り用の練り餌が安価で簡便である)をぬるま湯でかゆ状に溶き、手のひらに握りこんで指のすき間から与えるのが簡単な飼育法である。

人との関係

ドバト

カワラバトを改良したドバトは、戦前・戦中の軍事用、戦後の一時期には報道用に伝書鳩として大いに活用された。地磁気などにより方角を知る能力に優れているとされ、帰巣本能があるため、遠隔地まで連れて行ったハトに手紙などを持たせて放つことによって、情報をいち早く伝えようとしたのである。しかしその後、電話などの通信技術の進歩によりその価値を失い、現在ではレース鳩として飼われることがほとんどである。

このほか銀鳩と呼ばれる白い小型のハトが存在し、観賞用に飼われたりマジックの小道具として使用されるが、これはドバトとは別種のハトである。

文化

ハトは、その群れを成す性質から、オリーブと共に平和の象徴とされている。

ノアとハトのモザイク画

これは旧約聖書ノアの箱舟の伝説にも由来している。ノアは47日目にカラスを放ったが、まだ水が乾く前であったからすぐに戻ってきた。ハトを放ったところ、オリーブの葉をくわえて戻ってきた。これによりノアは水が引き始めたことを知ったという。

また、ギリシア神話においてハトは、女神アプロディーテーの聖鳥とされていた他、イアーソーンを始めとする英雄たち(アルゴナウタイ)が乗るアルゴー船が、互いに離れたりぶつかり合ったりを繰り返す二つの巨岩シュムプレーガデスの間を通り抜ける際、試しにハトを通り抜けさせて安全を確認するエピソードや、狩人オーリーオーンプレイアデス(巨神アトラースの七人娘たち)を追い回した際、それを不憫(ふびん)に思った主神ゼウスが彼女たちをハトに変え、さらに星へと変えたエピソード等が存在する。

日本

日本がヴェルサイユ条約締結を記念して発行した3銭切手(大正8年 (1919年))

日本では、神使として(八幡さまのハトといわれるように)いにしえより親しまれてきたが、八幡神は戦の神様で、かならずしも平和とは直接結びつかなかった。戦後西洋的価値観が入ってきて、タバコピースのデザインのようにハト=平和のシンボルと言うイメージが定着した。

日本の童謡の代表的なものの一つとして『』が挙げられる。また、滝廉太郎は『鳩ぽっぽ』という童謡を作曲している。

あっけにとられた様子を指して日本では、「ハトが豆鉄砲を食ったよう」という言葉を用いることがある。

ハトの名前は特急列車の名称などに用いられ親しまれたことがある他、日本テレビジャンクション鳩の休日』にも長年(開局〜)ハトが登場している。また、神奈川県の銘菓のひとつに、「鳩サブレー」というハトの形を模した菓子も存在している。

平和堂フレンドマート彩都店

企業名やシンボルマークでハトにちなんだものとしては、例えばはとバスや、イトーヨーカ堂のロゴマーク(真上にと真下にの中間にシロバトの位置)が存在し、また滋賀県を中心に展開するスーパーチェーンの平和堂のロゴマーク(赤い背景に前にシロバトと後にアオバトの位置)として親しまれていたこともある。後述の外国語名から取られた企業名として、ベビー用品メーカーのピジョン、ガス機器メーカーのパロマなども挙げられる。

日本では1980年代あたりから都市部を中心にハトによる食害や糞害が多発し、問題化している。もともと都市部に生息する野鳥はヒトに肺炎を起こすオウム病クラミジア原虫)やクリプトコッカスカビの一種)を含んだ糞を排出しやすく、特に大群をなすハトはそれを排出しやすい。

イングランド

イングランドでは、胸の筋肉を異常に発達させたポーターという愛玩具用の品種の鳩やw:Fancy pigeonという観賞用のハトの品種群が存在する(w:pouterを参照)。

中国

中国では鳥を放つと幸運が訪れるという民間信仰があり、祭事・祝い事の際にはハトを放つ習慣があったが、現在では都市部でハトが繁殖してしまっているため、放鳥が禁止されている地域もある。

食用

食文化としてドバトは中国では普通に食用にされる。また、フランスでもハトは食材として一般的である。イギリスでも18世紀頃までは自然繁殖した物を捕らえて調理したものが一般的に食卓に上っていたといわれ、現在でも食文化中にそのなごりがみられる。中近東では古くより、乾燥した風土でも放し飼いでよく増える性質があるため、ハトのための養殖場(のような建造物)もあり、貴重な動物性蛋白源として、一般的に利用されている。

日本では一般的には鳩を食用とすることはまれであるが、食用に肥育したハトの胸肉は、高級食材として出回っている。また、キジバト(山鳩)は狩猟鳥であり、食用にされる。

ハトの卵はハトの肉と同様日本では食材として一般的ではなく、ほとんど食べられることはないが、中国では食用とされる。ハトはニワトリほど頻繁に卵を産まないため、ハトの卵の価格はニワトリの卵と比べると高価であり、高級食材として扱われている。

首振り歩行

ハトは歩行時に首を前後に振りながら歩くことで知られている。この動作はハト科以外の多くの鳥でも見られるが、ハト(特にドバト)は、警戒心が非常に弱く、歩いている状態で身近に見かける機会が多いため、多くの人々から「首を振る鳥」として認知されている。

この首振り歩行は、暗闇や、ベルトコンベア上を逆向きに歩かせたときは行われず、胴体が前進しているときでも頭部だけはなるべく長時間にわたって空間内で静止するよう首を前後させているため、視覚情報(あるいは聴覚平衡感覚なども)を安定して得られるように行われているものと考えられている。また、首振りのタイミングは、体重を片脚で支えている間も重心が安定する位置に来るようになっている。それゆえに「安定して歩行するため」という説もあるが、ハトも高速での歩行時では首振りを行わないため、やや疑わしい。

各国語での呼び名など

ファイル:RumplerTaubeInFlight.jpg
第一次世界大戦偵察機として多く使われた軽飛行機の「エトリッヒ・タウベ」(またはルンプラー・タウベ)の名は、翼の形がハトに似ていることからつけられた。
pigeon (ピジョン) / dove (ダヴ)
英語において、ノルマン人からの借用語である pigeon は主に飼いバトを、ゲルマン語由来の dove は野生バト、とりわけコキジバト(turtle dove)を指すが、現在はアメリカなどでは pigeon で一括してしまうことも多い。また詩語としては dove が好んで使われる。
paloma (パロマ)
スペイン語でハトの意味。パロマを参照。
Taube (タウベ)
ドイツ語。英語 dove と共通の祖語(再構形: *dubon)をもつ単語。
鴿子/鸽子(コーツ、gēzi
現代中国語では「鳩()」という字は用いない。なお、「鳩()」「鴿)」ともに、鳩の鳴き声に由来する音字であるとされる。

関連項目

鳥の一般名の記事

カタカナ名の記事が自然科学的な内容を中心とするのに対し、一般名の記事では文化的な側面や人との関わりなどについて解説する。

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