朝鮮人民軍空軍
朝鮮人民軍空軍 조선인민군 항공 및 반항공군 | |
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現在の空軍旗 | |
創設 | 1947年8月20日[1] |
所属政体 | 朝鮮民主主義人民共和国 |
所属組織 | 朝鮮人民軍 |
人員 | 約11万人[2] |
所在地 | 平壌 |
主な戦歴 | 朝鮮戦争 |
朝鮮人民軍空軍(ちょうせんじんみんぐんくうぐん、朝鮮語: 조선인민군 공군)、または朝鮮人民軍航空及び反航空軍(朝鮮語: 조선인민군 항공 및 반항공군)は、朝鮮民主主義人民共和国の軍事組織である朝鮮人民軍が保有する空軍である。1947年に創設された。
概要
朝鮮人民軍は大量の兵力を有しており、陸軍及び海軍、空軍を保有している。朝鮮人民軍においては、陸軍が主力であり、空軍と海軍はそれを補佐する体制にある[3][4]。
MiG-29といった比較的新しい作戦機も少数保有しているが、軍用機の近代化が経済制裁により進展しておらず、いずれも冷戦にかけて開発・運用された旧ソビエト連邦製・アメリカ合衆国製・中華人民共和国製の作戦機しか保有していない状況にある[3][4]。
防空が主任務であるが、その他に輸送・偵察・対地攻撃、さらには特殊部隊の潜入支援も任務としている[3][4]。
歴史
1945年9月、日本航空学校、中国飛行学校、満州国軍出身の30名が民間組織として新義州航空隊を発足させた[5]。
1945年10月、ソ連航空学校出身の王連と名古屋航空学校出身の李闊(리활、リ・ファル)[6]らを中心に日本航空学校出身20名、中国飛行学校出身約10名、満州国軍出身と各航空隊で勤務した20名、合計約50人が集まって新義州航空隊を発足させた[1][5][7]。この組織は空軍の母体となり、使用機は日本の九五式練習機であった。
1945年10月25日、各地域の熱誠分子の中で学力優秀者を選抜して操縦教育隊(30名)、整備教育隊(30名)、通信教育隊(20名)に入隊させ、本格的に教育が開始された[8]。これらは新義州航空隊第1期生として翌年1月に教育を終えた[8]。1946年2月23日、第2期生160名が入隊した[8]。またこの時、日本、中国、満州、ソ連から帰国した航空関係者が約400名に達したので、第2期生は訓練および経費の関係上、5月から平壌学院に移動し、6月に卒業した[8]。第3期生からは航空隊が平壌学院に吸収されたため、第3期生は平壌学院航空第1期生として同年10月に卒業した[8]。第2期生は500名となり空軍建設が軌道に乗り始めた[8]。第1期生から第3期生までの中で成績優秀者300名を選抜してソ連に留学させた[8]。
1947年8月20日に朝鮮人民軍の組織として最初の航空隊を編成し、空軍が創設された[1]。1948年末まで約900人の航空関係者をモスクワに留学させて再教育を施した[7]。そして1948年末にソ連軍が朝鮮半島から撤退するとYak-9やLa-7、Il-10などの第二次世界大戦末期に開発された機体を引き継ぎ、本格的な拡張を開始した。1949年3月に金日成が訪ソすると各種航空機が導入され1949年12月に追撃機、襲撃機、教導の各連隊及び工兵大隊で編成した航空師団が創設された[7]。師団長は王蓮、副師団長は李闊、各連隊長は陸軍少年飛行兵15期出身者であった[7]。
1950年に始まった朝鮮戦争(祖国解放戦争)では韓国空軍と対峙した。開戦時は、Yak-9やLa-9戦闘機などを用いていた[9]。アメリカ軍を中心とした国連軍がF-80やF-84などのジェット戦闘機が投入すると形勢逆転となり、朝鮮半島全域の制空権を掌握されてしまった。中華人民共和国の中国人民志願軍(抗美援朝義勇軍)が参戦すると、中国人民解放軍空軍所属のMiG-15が飛来するようになり、またソ連からもMiG-15が供与されて形勢を建て直し、アメリカ空軍が投入したF-86戦闘機と後退翼のジェット戦闘機同士の空中戦の主役となった[10]。それでも、パイロットの練度不足もあり、国連軍が航空優勢を確保し続けた[10]。なお、1951年に空軍司令部が設置されている[1]。
その後、冷戦時代にはソ連と中国からの多大な支援と供与もあって、MiG-19/J-6やMiG-21/J-7、Il-28などをソ連や中国から輸入した。一時は錬度も高く、ベトナム戦争中の1960年代には、北ベトナムの防空任務に航空隊が派遣され[11]、1969年には日本海上空でアメリカ海軍の電子偵察機を撃墜する(アメリカ海軍EC-121機撃墜事件)など、強力な戦闘力を有した。
しかし、1980年代以降の経済停滞による軍事力の低下と物資不足に加え、ソ連崩壊と中国の改革開放によって中ソからの支援は急激に減少。1980年代末に導入したMiG-29を最後に、新鋭機の購入はおろか訓練のための燃料にも事欠く状態になり、さらに慢性的な食糧不足で士気や整備も不足して戦闘能力は著しく低下した。
2000年代も、機材の老朽化や燃料不足といった課題は続くが、2003年には米軍の偵察機をMiG-29が追尾し、2009年には衛星打ち上げを守るためにMiG-23MLが出撃したり、2010年の延坪島砲撃事件の際もMiG-23が出撃し韓国軍機を狙うなどの動きを見せる。近年は、朝鮮中央テレビにおいてMiG-29やSu-25が編隊を組んで機動飛行をする様子を頻繁に公開している。
組織・部隊編成
北朝鮮は戦闘機を中心とした4個飛行師団と輸送機で形成される2個戦術輸送旅団から成る。この他、特殊部隊として2個空軍狙撃旅団を形成している。
保有機数は1,300機以上[4]。作戦機の戦力面には2013年時点で、MiG-29(推測保有機数18機)、Mig-23(56機)、Su-25(34機)[3]が主力となるが、機数的にはMiG-17、MiG-19、MiG-21等の旧式機が多数である[4]。また、特殊部隊潜入用のAn-2を大規模に保有している[4]。機体の老朽化もあり、防空任務には地対空ミサイルや高射火器が重用されるようになってきている[4]。
所有機
戦闘機
- MiG-29 «9.13»:北朝鮮では最も新しい戦闘機。2012年には、金日成生誕100周年を祝う軍事パレードに5機編隊で登場し、金日成広場上空を旋回する祝賀飛行を実施した。
- MiG-23ML:可変翼機。北朝鮮では2番目に新しい戦闘機。2009年の衛星打ち上げの際に1機が日本海に墜落している。
- MiG-21PF/PFM/bis / J-7 (F-7):北朝鮮では主力として運用されている機体。2010年に中国において1機が原因不明の事故で墜落した。
- MiG-19 / J-6 (F-6):2014年に墜落事故が頻発して飛行が差し止められたとの情報あり[12]。
- MiG-17 / J-5 (F-5)
攻撃機
- Su-25K:北朝鮮で最も能力の高い攻撃機。
- Su-7BMK
- Q-5IA (A-5IA)
爆撃機
輸送機
An-2については、2015年10月1日の朝鮮労働党創立70周年記念軍事パレードで編隊を組んで飛行している姿が公開された。
ヘリコプター
- Mi-2
- Mi-4 / Z-5
- Mi-6
- Mi-8:2001年に購入した輸送ヘリ。
- Mi-14:主に対潜に使用されるヘリ。
- Mi-17:主に掃討作戦や輸送任務に使用される。
- Mi-24:戦闘ヘリ。
- Mi-26
- ヒューズ 300
- OH-6:1988年、第三者であるダミー商社を用いて西ドイツから密輸入したもの。
練習機
- Su-7UMK
- MiG-15UTI
- JJ-5 (FT-5)
- JJ-6 (FT-6)
- MiG-21U/US/UM / JJ-7 (FT-7)
- MiG-23UB
- MiG-29UB
- Su-25UBK
- HJ-5 (FB-5)
- L-39C
- Yak-18 / CJ-5 (BT-5)
- CJ-6 (BT-6)
空軍基地
他
出典
- ^ a b c d 宮本悟「朝鮮人民空軍創設者の死去」 日本国際問題研究所、2007年11月6日
- ^ (ミリタリーバランス2014推定値)北朝鮮基礎データ,外務省
- ^ a b c d 2013年版防衛白書 第I部わが国を取り巻く安全保障環境
- ^ a b c d e f g Military and Security Developments Involving the Democratic People’s Republic of Korea 2013 (アメリカ国防総省議会報告書 朝鮮民主主義人民共和国の軍事及び安全保障 2013年)
- ^ a b 赤木完爾編『朝鮮戦争 休戦50周年の検証・半島の内と外から』、11頁。
- ^ 北朝鮮空軍創建の主役リ・ファルは、日本の操縦士出身 デイリーNKジャパン、2007年07月12日
- ^ a b c d 佐々木春隆『朝鮮戦争/韓国編 上巻』(再版)、220頁。
- ^ a b c d e f g 赤木完爾編『朝鮮戦争 休戦50周年の検証・半島の内と外から』、12頁。
- ^ Air Combat: A History of Fighter Pilots,Robert F. Dorr,Penguin,2007
- ^ a b 朝鮮戦争―38度線・破壊と激闘の1000日,学研マーケティング,2007年,ISBN 978-4056047844
- ^ http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2011/12/05/0200000000AJP20111205000200882.HTML 北朝鮮空軍のベトナム戦争参戦 公式文書で初確認,聯合ニュース,2011年12月5日
- ^ “北朝鮮でミグ19戦闘機の墜落相次ぐ 開発は半世紀以上前、老朽化”. 産経新聞社. (2014年7月30日) 2014年8月1日閲覧。
参考文献
- 金元奉 『北朝鮮人民軍の全貌 知られざる「赤い軍事力」の実像に迫る!』 アリアドネ企画、1996年、ISBN 978-4384023336
- 李ジュンヨン 『北朝鮮軍のA to Z―亡命将校が明かす朝鮮人民軍のすべて』 宮田敦司訳、光人社、2009年、ISBN 978-4769814436
- 金元奉 『最新朝鮮半島軍事情報の全貌―北朝鮮軍・韓国軍・在韓米軍のパワーバランス』 講談社、2000年、ISBN 978-4062102797
- 佐々木春隆 『朝鮮戦争/韓国篇 上巻 建軍と戦争の勃発前まで』 原書房、1976年、220頁