抱水クロラール

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抱水クロラール
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識別情報
CAS登録番号 302-17-0
PubChem 2707
ChemSpider 2606
KEGG D00265
特性
化学式 C2H3Cl3O2
モル質量 165.403 g/mol
外観 無色の固体
密度 1.91 g/cm3
融点

57 °C, 330 K, 135 °F

沸点

98 °C, 371 K, 208 °F

薬理学
生物学的利用能 吸収されやすい
代謝 肝臓と腎臓でトリクロロエタノールに変換される。
消失半減期 血漿中で8 – 10時間
排泄 胆汁, 糞便, 尿
胎児危険度分類 C(US)
危険性
安全データシート(外部リンク) External MSDS
EU分類 有害 (Xn)
Rフレーズ R22 R36 R37 R38
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

抱水クロラール(ほうすいクロラール、Chloral hydrate)は示性式CCl3CH(OH)2で表される化合物。CCl3CHO・H2Oと表記されることもある。IUPAC名は2,2,2-トリクロロ-1,1-エタンジオール(2,2,2-trichloro-1,1-ethanediol)。CAS登録番号は302-17-0。融点57℃、沸点96.3度の無色か白色の結晶または結晶性粉末で、強い吸湿性がある。鼻を突く刺激臭があり、に非常によく溶け、エタノール、ジエチルエーテルに溶けやすい。強酸化剤と激しく反応する。塩基と反応してクロロホルムおよびギ酸を生成する。

一般的な脂肪鎖を有するアルデヒドの場合、ハイドレート(-CH(OH)2)よりアルデヒド(-CHO)のほうが安定でありアルデヒドとして存在するが、抱水クロラールはα位にある塩素原子電子求引性効果によってアルデヒドよりもハイドレート体のほうが安定に存在している。

合成

エタノール塩素化することで得られる。

4 Cl2 + C2H5OH + H2O → Cl3CCH(OH)2 + 5 HCl

薬効

抱水クロラールには沈静、催眠、抗けいれん作用があるため、バルビツール酸系とともに睡眠薬として用いられたが、安全域が狭く依存性も強かったため、より安全なベンゾジアゼピン系睡眠薬の開発によりそれらに取って代わられ、現在では睡眠薬としてはほとんど用いられない。また、麻酔作用も有しており、1853年に最初の静脈麻酔薬として用いられたが、その後はその安全域の狭さと作用の遅さのためにあまり使用されなかった。現在、動物用を除き麻酔に用いられることは無い。

非合法な使用法としては、体の自由を奪うため飲み物へ混入する事例が多い。

生物学分野では抱水クロラールとアラビアガムグリセリンなどを混合して作るガム・クロラール系封入剤が、ダニや微小昆虫の形態観察のための半永久プレパラート作成に、盛んに用いられている。

農薬のDDTは抱水クロラールを出発物質として合成され、その反応の中間体として無水のクロラールが生成している。

外部リンク