J・エドガー

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J・エドガー
J. Edgar
監督 クリント・イーストウッド
脚本 ダスティン・ランス・ブラック
製作 クリント・イーストウッド
ブライアン・グレイザー
ロバート・ロレンツ
製作総指揮 ティム・ムーア
エリカ・ハギンズ
出演者 レオナルド・ディカプリオ
ナオミ・ワッツ
アーミー・ハマー
ジョシュ・ルーカス
ジュディ・デンチ
音楽 クリント・イーストウッド
撮影 トム・スターン
編集 ジョエル・コックス
ゲイリー・ローチ
製作会社 イマジン・エンターテインメント
マルパソ・プロダクションズ
配給 ワーナー・ブラザーズ
公開 アメリカ合衆国の旗 2011年11月9日
日本の旗 2012年1月28日
上映時間 137分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $35,000,000[1]
興行収入 アメリカ合衆国の旗カナダの旗 $37,279,775[1]
世界の旗 $66,079,775[1]
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J・エドガー』(J. Edgar)は、2011年伝記映画クリント・イーストウッド監督、ダスティン・ランス・ブラック脚本で、レオナルド・ディカプリオジョン・エドガー・フーヴァーを演じた。

FBI長官のエドガー・フーヴァーの生涯に基づき、彼のキャリアに焦点を合わせ、さらにクローゼット・ホモセクシュアルであったと言われる彼の私生活にも触れられている[2]

ストーリー[編集]

1960年代。黒人公民権運動の盛り上がりを苦々しく思っていたFBI長官のジョン・エドガー・フーヴァーは、キング牧師宅の盗聴を命じると共に、自身の伝記をスミス捜査官に口述タイプさせる。

1919年。アメリカでは、ソビエト連邦の建国を受け、共産主義者や労働運動家の過激派によるテロが活発化しており、ついにはパーマー司法長官自宅が爆破される事態となった。これを受けて司法省は、過激派を逮捕し、国外追放する特別捜査チームを編成、24歳のフーヴァーがその責任者となる。無力な父親と支配的な母親のもとに育ち、吃音の内気な青年であるフーヴァーは、司法省の新人秘書ヘレン・ギャンディを国会図書館のデートに誘い、プロポーズするが断られてしまう。しかし、彼女を個人的な秘書にすることには成功した。

国会図書館の蔵書をインデックス化し、検索時間を飛躍的に向上させた経験から、フーヴァーは全国民の指紋などの個人データを集約し、犯罪捜査に利用する構想を持っていた。ただし、彼にとっては、彼の考える国家の道徳秩序を破壊し、破壊しようとする者もまた犯罪者であった。 わずか数人のフーヴァーのチームは、過激派のアジトを急襲、大勢の過激派を逮捕することに成功する。しかし、大量の過激派を逮捕し、共産主義勢力が後退したことで、彼の提唱する捜査チームの必要性は逆に支持を得られなくなっていった。失意のフーヴァーは新任捜査官のクライド・トルソンを副長官に任命し、友情以上の交際を深めるようになっていく。

1932年、リンドバーグ愛児誘拐事件が発生すると、フーヴァーは誘拐を連邦犯罪と認めさせ、FBIの権限を大幅に強化させる法律を議会に認めさせた。独自の基準で捜査官を厳選して綱紀を粛正し、科学捜査を導入してFBIを作り変えると共に、政治家のスキャンダルも極秘ファイルとして収集し、権限を縮小しようとする歴代大統領を黙らせる隠然たる力を得ていった。

しかし、キング牧師に不倫の証拠テープを送りつけ、ノーベル平和賞を辞退させようとして果たせず、操縦できない新しいタイプの大統領ニクソンが登場するに及んで、フーヴァーも自らの力の陰りを自覚せざるを得なくなっていた。

キャスト[編集]

役名 俳優 日本語吹替
ジョン・エドガー・フーヴァー レオナルド・ディカプリオ[3] 小森創介
クライド・トルソン アーミー・ハマー[4] 川中子雅人
ヘレン・ギャンディ ナオミ・ワッツ[5] 園崎未恵
チャールズ・リンドバーグ ジョシュ・ルーカス[6] 檀臣幸
アンナ・マリー ジュディ・デンチ[7] 谷育子
エージェント・スミス エド・ウェストウィック[8] 中田隼人
ブルーノ・ハウプトマン デイモン・ヘリマン[9]
ロバート・F・ケネディ ジェフリー・ドノヴァン[10]
ハーラン・F・ストーン ケン・ハワード[11]
アーサー・コーラー スティーヴン・ルート[12]
A・ミッチェル・パーマー ジェフ・ピアソン[13]
リーラ・ロジャース リー・トンプソン
エージェント・ギャリソン マイルズ・フィッシャー

製作[編集]

2010年3月、クリント・イーストウッドがジョン・エドガー・フーヴァーの伝記映画を企画中であり、ダスティン・ランス・ブラックが脚本を執筆することが報じられた[14]

当初、イーストウッドがクライド・トルソン役にはホアキン・フェニックスを希望していると報じられた[15]が、後に本人によって否定された[16]。また2010年10月、レオナルド・ディカプリオがフーヴァー役を熱望し、実現する可能性が高いことをイーストウッドが明かした。イーストウッドは「彼にとって素晴らしい役だと思う」と前向きな姿勢を見せた[16]。さらにヘレン・ギャンディ役として、シャーリーズ・セロンが噂されていたが後に否定され[8]、ナオミ・ワッツが同役に決まった[5]

フーヴァーのセクシュアリティ[編集]

本作はフーヴァーとトルソンの間にあったとされる同性愛関係が描かれるのかという点において注目を呼んだ。『ウォールストリート・ジャーナル』のインタビューで「フーヴァーが異性装者で、そしておそらくクローゼット・ホモセクシュアルであったとする元FBI職員の報告を取り上げるのか」を訊かれたイーストウッドは、脚本は「そういう方向ではなかった」と否定めいた回答をした[2]。これに対し、脚本を執筆したブラックはLGBT関連サイトAfterElton.comで脚本が「ゲイ色を排除した」とする見解を全面的に否定した。「J・エドガーのような人物を映画に描くとき、その人物の衷心にあるものを読み取ろうとしないなどということは、私の脚本にはありえない」。またブラックは、イーストウッドが異性装に関してのみ映画で描くことを否定したのを、インタビュアーが同性愛についても同様であると勘違いした可能性を示唆した[17]

2011年7月に公開された『Libertas Film Magazine』の脚本の論評によると、2人の関係は簡素に描かれているという[18]

事実、劇中の二人の関係は痴話喧嘩のような口論、キスシーン、フーヴァーの詩のほかは、非常に親密な上司と部下のように描かれており、全体に示唆されるにとどまっている。なお、異性装のシーンも1シーンある。一方で、フーヴァーがのちに個人秘書になる女性に性急なプロポーズをするシーンや、交際のあった女優との結婚を考えていたことも描写されている。

公開[編集]

本作は2011年11月3日、ロサンゼルスで開かれたAFI Fest 2011で初上映された。一般公開は11月9日からの7館での限定公開を経て11月11日に拡大公開され、週末3日間に$11,217,324を売り上げた[1]

評価[編集]

本作に対する批評家の評価は割れている。ディカプリオの演技は概ね好感をもって伝えられているものの、批評の多くは作品の一貫性の欠如を指摘する。映画のレビューを集積するウェブサイトRotten Tomatoesは11月24日時点で152件のレビューを基に40%の支持率と5.8/10という評価の平均、そして「レオナルド・ディカプリオは予想通り強力な演技を見せるが、『J・エドガー』は陳腐なメイクアップ、みすぼらしい照明、混乱した語り、そして単調な進行につまづいている」という批評家の総意を示している[19]。有力媒体の批評から100点満点の加重平均値を導くMetacriticは41件のレビューを基に59という値を示している[20]

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d J. Edgar” (英語). Box Office Mojo. Amazon.com. 2012年2月1日閲覧。
  2. ^ a b A Hollywood Icon Lays Down the Law. WSJ.com. Retrieved 2011-02-18.
  3. ^ Rosenberg, Adam (2010-06-18). "Leonardo DiCaprio To Star In J. Edgar Hoover Biopic". MTV.com. Retrieved 2010-12-26.
  4. ^ Stiernberg, Bonnie (2010-12-13). "Armie Hammer Joins Clint Eastwood's J. Edgar Hoover Movie". PasteMagazine.com. Retrieved 2010-12-26.
  5. ^ a b Fleming, Mike (2011-01-25). "Naomi Watts Joins 'J. Edgar' Cast". Deadline.com. Retrieved 2011-01-25.
  6. ^ (2011-01-18). "Josh Lucas to play Charles Lindburgh in Clint Eastwood's 'J. Edgar'". PunchDrunkCritics.com. Retrieved 2011-01-21.
  7. ^ (2011-01-07). "Armie Hammer Offers Details on Clint Eastwood’s J. EDGAR". Collider.com. Retrieved 2011-01-09.
  8. ^ a b Schwartz, Terri (2011-01-11). "Ed Westwick In, Charlize Theron Out Of Clint Eastwood's 'J. Edgar'". MTV.com. Retrieved 2011-01-12.
  9. ^ Rich, Katey (2010-12-23). "Damon Herriman Playing Lindbergh Baby Kidnapper In J. Edgar". Cinema Blend. Retrieved 2010-12-26.
  10. ^ Fleming, Mike (2011-03-08). "Jeffrey Donovan Playing RFK in 'J. Edgar'". Deadline.com. Retrieved 2011-03-08.
  11. ^ Kit, Borys (2011年1月24日). “Actors union boss cast in Eastwood's FBI movie”. Reuters. http://www.reuters.com/article/2011/01/25/us-edgar-idUSTRE70O0KY20110125 2011年3月12日閲覧。 
  12. ^ Rich, Katey (2011年2月24日). “Stephen Root Will Play A Wood Expert In Clint Eastwood's J. Edgar”. Cinema Blend. http://www.cinemablend.com/new/Stephen-Root-Will-Play-A-Wood-Expert-In-Clint-Eastwood-s-J-Edgar-23344.html# 2011年3月12日閲覧。 
  13. ^ “Geoff Pierson”. IMDb. http://www.imdb.com/name/nm0682762 2011年3月27日閲覧。 
  14. ^ “クリント・イーストウッド、FBI長官フーヴァーの伝記映画を企画”. シネマトゥデイ. (2010年3月12日). http://www.cinematoday.jp/page/N0023070 2011年5月6日閲覧。 
  15. ^ “クリント・イーストウッド、FBI長官フーヴァーの同性愛パートナー役にホアキン・フェニックスを希望”. シネマトゥデイ. (2010年9月23日). http://www.cinematoday.jp/page/N0027082 2011年5月6日閲覧。 
  16. ^ a b “クリント・イーストウッド監督×主演レオナルド・ディカプリオが新作映画で実現!?”. シネマトゥデイ. (2010年10月14日). http://www.cinematoday.jp/page/N0027581 2011年5月6日閲覧。 
  17. ^ Jensen, Michael (2011年2月2日). “Exclusive: Dustin Lance Black Says No De-Gaying of J.Edgar Hoover Movie”. AfterElton.com. 2011年3月15日閲覧。
  18. ^ Apuzzo, Jason (2011年7月8日). “EXCLUSIVE: Libertas Reviews the Clint Eastwood-Leonardo DiCaprio J. Edgar Hoover Screenplay”. Libertas Film Magazine. The Liberty Film Festival. 2011年11月25日閲覧。
  19. ^ J. Edgar (2011)”. Rotten Tomatoes. Flixster. 2011年11月25日閲覧。
  20. ^ J. Edgar”. Metacritic. CBS Interactive. 2011年11月25日閲覧。

外部リンク[編集]