天王星の衛星と環

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天王星の衛星と環(てんのうせいのえいせいとわ)では、天王星衛星について述べる。

天王星の衛星 ポーシャ、クレシダ、オフィーリアが写っている(ボイジャー2号撮影)

21世紀初頭現在、天王星には27個の衛星と13本の環が発見されており、衛星はすべて命名されている。

衛星[編集]

天王星の衛星は1787年、惑星本体の発見者でもあるウィリアム・ハーシェルによって最初の2個が発見された。この時ハーシェルは「6個」の衛星を観測したが、そのうち4個は恒星を誤認していた事が後に明らかとなった。後にこの二個の衛星は、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』に登場する妖精から、チタニアとオベロンと命名された。

更に、1851年ウィリアム・ラッセルが2個の衛星を発見し、アリエルとウンブリエルと名付けた。1948年にはジェラルド・カイパーがミランダを発見している。

その後の天王星の衛星にはシェイクスピアかアレキサンダー・ポープの作品中の登場人物名がつけられている。

1985年から1986年にかけてボイジャー2号が天王星に到達し、新たに10個の衛星が発見された。このうちコーディリアオフィーリアはε環(当時発見されていた中では一番外側の環)を挟むように公転する、いわゆる羊飼い衛星である。

ペルディータ (S/1986 U10) は、ボイジャー2号により1986年に撮影された写真の中から1999年にエリック・カルコシュカが発見したが、その後観測されておらず一度衛星から取り消されていた。しかし、ハッブル宇宙望遠鏡による観測によって2003年9月3日に再発見され、衛星であると確認された。

1997年以降に多数発見された天王星の赤道面と無関係の軌道を持つ外周の衛星に関しては、順行軌道の衛星は1例だが『空騒ぎ』、他の逆行軌道の衛星は『テンペスト』より命名されている。

1997年9月6日、ブレット・J・グラッドマン、フィリップ・D・ニコルソン、ジョセフ・A・バーンズ、ジョン・J・カヴェラーズらがハッブル宇宙望遠鏡で2個の衛星を発見した。

1999年7月18日、グラッドマン、カヴェラーズ、マシュウ・J・ホールマン、ジャン=マーク・ペティット、ハンス・ショールらが3個の衛星を発見した。この時点で発見された衛星数は20個(前述のペルディータが発見されてからは21個)に達し、翌年以降に木星・土星に多数の衛星が相次いで発見されるまでのわずかな期間ではあるが、天王星が太陽系で最多の衛星を持つ惑星とされていた。

2001年8月13日、ホールマン、カヴェラーズ、グラッドマン、ダン・ミリサルェヴィクらが2個の衛星を発見した。また同じ日に撮影された写真から、2003年に新たな衛星が1個発見された。

2003年8月25日にマーク・R・ショワルターとジャック・J・リサウアーが2個、同8月29日にスコット・S・シェパードとデビッド・C・ジューイットが1個の衛星を発見した。

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天王星の衛星と環の関係

天王星の環は直径10m以下の暗い物質で構成されている。

1977年にジェイムズ・L・エリオット、エドワード・W・ダンハム、ダグラス・J・ミンクらによって、カイパー空中天文台からの観測で9本の環が発見された。恒星の前を天王星が横切ったときに恒星の光が何度か掩蔽され点滅した事による発見であった。その後、ボイジャー2号により2本、2000年代に入ってからハッブル宇宙望遠鏡により2本の環が発見され、現在は13本の環が知られている。

1797年12月、ウィリアム・ハーシェルは天王星に環を発見したと発表した。当時はこの説は認められず、1977年に正式に発見されたときも、ハーシェルの望遠鏡では視認不可能だったと考えられた。しかし、発見後に判明した天王星の環のデータとハーシェルの記録とがほぼ一致することが判明したことから、ハーシェルが環を実際に見た可能性が高くなってきた。ハーシェルの記録が正しいと仮定した場合、現在では天王星の環が視認できない要因として、カッシーニによって観測された土星の環同様に、天王星の環が200年の間に拡散した可能性が考えられている[1]

天王星の環は土星の環と同様衛星の破壊によって形成されたものと推測されているが、それ以外の点では土星の環とは大きく異なる。天王星の環は惑星本体よりも若い(同時期に形成されたのではない)。

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天王星の衛星と環
名前 直径/幅 (km) 質量 (kg) 軌道傾斜角(度) 離心率 軌道半長径 (km) 公転周期(日)* 発見年 由来**
(ζ環) 2,500 38,000 ~ 40,500 1986
(6環) ~ 10 41,840 1977
(5環) ~ 10 42,230 1977
(4環) ~ 10 42,580 1977
(α環) ~ 10 44,720 1977
(β環) ~ 10 45,670 1977
(η環) ~ 10 47,190 1977
(γ環) ~ 10 47,630 1977
(δ環) ~ 10 48,290 1977
VI コーディリア 40 ± 6 4.5×1016 0.085 ~ 0 49,770 0.335034 1986 [注 1]
(λ環) ~ 10 50,023 1986
(ε環) ~ 100 51,149 1977
VII オフィーリア 43 ± 8 5.4×1016 0.104 0.010 53,790 0.376400 1986 [注 2]
VIII ビアンカ 51 ± 4 9.3×1016 0.193 0.001 59,170 0.434579 1986 [注 3]
IX クレシダ 80 ± 4 3.43×1017 0.006 ~ 0 61,780 0.463570 1986 [注 4]
X デズデモーナ 64 ± 8 1.78×1017 0.113 ~ 0 62,680 0.473650 1986 [注 5]
XI ジュリエット 94 ± 8 5.57×1017 0.065 0.001 64,350 0.493065 1986 [注 6]
XII ポーシャ 135 ± 8 1.68×1018 0.059 ~ 0 66,090 0.513196 1986 [注 7]
(ν環) 3,800 66,100~69,900  ?
XIII ロザリンド 72 ± 12 2.54×1017 0.279 ~ 0 69,940 0.558460 1986 [注 8]
XXVII キューピッド ~ 17.8 3.8×1015 ~ 0 ~ 0 74,800 0.618 2003 [注 9]
XIV ベリンダ 81 ± 16 3.57×1017 0.031 ~ 0 75,260 0.623527 1986 [注 10]
XXV ペルディータ ~ 26.6 1.3×1016 ~ 0 ~ 0 76,420 0.638 1999
1986
[注 11]
XV パック 162 ± 4 2.89×1018 0.319 ~ 0 86,010 0.761833 1985 [注 12]
(μ環) 17,000 86,000~103,000  ?
XXVI マブ ~ 24.8 1.0×1016 ~ 0 ~ 0 97,734 0.923 2003 [注 13]
V ミランダ 471.6 ± 1.4 (6.6 ± 0.7) ×1019 4.338 0.001 129,390 1.413479 1948 [注 14]
I アリエル 1157.8 ± 1.2 (1.35 ± 0.12) ×1021 0.041 0.001 191,020 2.520379 1851 [注 15]
II ウンブリエル 1169.4 ± 5.6 (1.17 ± 0.13) ×1021 0.128 0.004 266,300 4.144177 1851 [注 16]
III チタニア 1577.8 ± 3.6 (3.53 ± 0.09) ×1021 0.079 0.001 435,910 8.705872 1787 [注 17]
IV オベロン 1522.8 ± 5.2 (3.01 ± 0.07) ×1021 0.068 0.001 583,520 13.463239 1787 [注 18]
XXII フランシスコ ~ 12 1.3×1015 145.2 0.146 4,276,000 -266.6 2001 [注 19]
XVI キャリバン ~ 98 7.3×1017 140.9 0.159 7,231,000 -579.7 1997 [注 20]
XX ステファノー ~ 20 6×1015 144.1 0.229 8,004,000 -677.4 1999 [注 21]
XXI トリンキュロー ~ 10 7.5×1014 167.1 0.220 8,504,000 -759.0 2001 [注 22]
XVII シコラクス ~ 190 5.4×1018 159.4 0.522 12,179,000 -1288.3 1997 [注 23]
XXIII マーガレット ~ 11 1.3×1015 56.6 0.661 14,345,000 1694.8 2003 [注 24]
XVIII プロスペロー ~ 30 2.1×1016 152.0 0.445 16,256,000 -1977.3 1999 [注 25]
XIX セティボス ~ 30 2.1×1016 158.2 0.591 17,418,000 -2234.8 1999 [注 26]
XXIV ファーディナンド ~ 12 1.3×1015 169.8 0.368 20,901,000 -2823.4 2001 [注 27]

*軌道周期が - になっているものは天王星の自転に対して逆行している。

**作者名が記されていないものは全てシェイクスピアによる作品。

架空の衛星[編集]

  • エリヌス
    谷甲州の『航空宇宙軍史』シリーズの『エリヌス-戒厳令』『終わりなき索敵』に登場。1986年に発見された天王星6番目の衛星という設定(『戒厳令』が書かれたのはヴォイジャー2号の接近前)で、軌道要素は実在する衛星のパック (S/1985 U 1) に似ているがエリヌスの方が大きい。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ リア王』リア王の三女。[2]
  2. ^ ハムレット』ハムレットの恋人。[2]
  3. ^ じゃじゃ馬ならし』じゃじゃ馬カタリーナの妹。[2]
  4. ^ トロイラスとクレシダ』ヒロイン。[2]
  5. ^ オセロ』オセロの妻。[2]
  6. ^ ロミオとジュリエット』ヒロイン。[2]
  7. ^ ジュリアス・シーザー』ブルータスの妻。[2]
  8. ^ お気に召すまま』公爵の娘。[2]
  9. ^ アテネのタイモン』妖精。[2]
  10. ^ ポープの『髪盗人』ヒロイン。[2]
  11. ^ 冬物語』シチリア王女。[2]
  12. ^ 夏の夜の夢』いたずら好きの妖精。[2]
  13. ^ ロミオとジュリエット』妖精の女王。[2]
  14. ^ テンペスト』ミラノ大公プロスペローの娘。[2]
  15. ^ ポープの『髪盗人』空気の精霊。[2]
  16. ^ ポープの『髪盗人』土の精霊。[2]
  17. ^ 夏の夜の夢』妖精の女王。オベロンの妃。[2]
  18. ^ 『夏の夜の夢』妖精の王。[2]
  19. ^ 『テンペスト』君主。[2]
  20. ^ 『テンペスト』野蛮な男。[2]
  21. ^ 『テンペスト』飲んだくれの執事。[2]
  22. ^ 『テンペスト』道化師。[2]
  23. ^ 『テンペスト』魔女。[2]
  24. ^ 空騒ぎ』主人公の使用人。[2]
  25. ^ 『テンペスト』ミラノ大公。[2]
  26. ^ 『テンペスト』キャリバンの崇拝する神。[2]
  27. ^ 『テンペスト』ナポリ王子。ミランダの恋人。[2]


出典[編集]

  1. ^ ハーシェルは天王星のリングを見たか”. AstroArts (2007年4月27日). 2013年12月12日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa Planetary Names:Planet and Satellite Names and Discoverers”. 国際天文学連合. 2013年12月12日閲覧。


参考文献[編集]

  • 「太陽系はここまでわかった」リチャード・コーフィールド著、水谷淳訳、文芸春秋、2008年