ラウンドアバウト

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ラウンドアバウト
高速道路の流出入路に設けられたラウンドアバウト(チェコ)

ラウンドアバウト: roundabout[† 1])とは円形交差点の一種である。通常3本以上の道路を円形のスペースを介して接続したもので、この円形のスペースの真ん中には中央島と呼ばれる、円形の通行できない区域がある。車両はこの中央島の周りの環状の道路(環道)を一方向に(右側通行なら反時計回り、左側通行なら時計回り)通行する。

日本における円形交差点としてはロータリー交差点のみが定義されていたが、2013年6月14日法律第43号改正の道路交通法により「環状交差点」として現代的ラウンドアバウトが定義され、2014年9月1日より全国19箇所で運用が始まった(後述の#日本のラウンドアバウト (環状交差点)参照)

円形交差点をあらわす単語にロータリーもあるが、本項では特に断らない限り、ラウンドアバウトとは環状の道路に信号や一時停止がないなどの特徴をもったロータリーの一種、つまり現代的ラウンドアバウト (modern roundabout) を指し、そのような特徴を持たないロータリー(現代的ラウンドアバウトではないロータリー)とは区別して扱う。

なお、スコットランドダンディーではラウンドアバウトを"circle"と呼ぶ。

歴史[編集]

現代のシャルル・ド・ゴール広場
円形交差点の環道で車が動けなくなる状況の例
太線は車両の列を表す。進入車両が優先であるとこのような事が起こる。こうなると、誰か(警官)が交通整理しない限り車両は動けない。

円形交差点は19世紀後半からヨーロッパで作られはじめた。しかし、この時期の円形交差点は都市の中心部などに景観上の工夫として考案されたものである。例えばシャルル・ド・ゴール広場 (エトワール広場)は、建設当初はこのような目的の交差点であった。もともと、5本の道路が集まる広場であり、中心に凱旋門が建造されて、環状の道路をもつ交差点になったのである。

交通システムの一環として設計された円形交差点は、ウィリアム・フェルプス・エノの提案によって1905年にニューヨークに作られたコロンバスサークルが最初のものである[1]。同時期に、フランスではウジェーヌ・エナールの提案でパリのシャルル・ド・ゴール広場の周りが円形交差点として1907年に整備された[2]。交差点内での車両の通行を、反時計回り(右側通行の場合)の一方通行にしたことが最大の特徴である。イギリスでは1909年、世界初の田園都市として建設されたレッチワースに作られたとされている[3]。イギリスでは円形交差点をギラトリー・システム (gyratory system) とも呼ぶが、1926年からはギラトリー・システムに代わってラウンドアバウトが円形交差点を指す公式な名称になっている[4]。日本では1936年に作られた旭川常盤ロータリーなどが良く知られている。

円形交差点では対向車もないし、対向車線を横切って曲がる必要もないので適切な交通量においては十字の交差点よりスムーズな流れが期待できる。初期の円形交差点は、環道の車両の流れに素早く合流したり、環道内で車線変更することを意図して設計されており、また、合流の際には円形交差点に入る車両が優先されていた[1]。進入する車両が優先というのは、右側通行の場合、通常の十字路では向かって右側の車両が優先で、円形交差点への進入に際してもそれに倣ったのである。しかし、進入する車両は減速せずに交差点に入ることができるので、衝突したときの被害も大きかった。また、交通量が多くなった時に車両が環道内で動けなくなる状況が発生し、このことによっても円形交差点に対する評価は下がった。そのため1950年代にはいると、アメリカでは円形交差点がほとんど顧みられなくなった。

一方イギリスでは、1960年代に入り、英国交通研究所がそのような円形交差点のもつ問題を調査し、解決策を探ることに着手した。この時に考案されたもののうち、最も特徴的なものは、環道内の車両が優先して通行するというルールである。その結果をうけて、1966年、イギリスでは環道内の車両が優先する規則をすべての円形交差点に適用した[1]。これが現代的なラウンドアバウトの始まりである。1971年にはイギリス交通省によりラウンドアバウトの設計ガイドラインが作成された[5]。この現代的ラウンドアバウトは、一般的な交差点を通過する際の遅れ(赤信号の待ち時間など)を最小限におさえつつ、旧来の円形交差点の主要な課題であった安全性の問題と環道内で動けなくなる問題を解決し、盛んに導入されるようになった。

その後、1970年代から1980年代にかけてヨーロッパやイギリス連邦を中心にラウンドアバウトがイギリス国外にも広く普及し、例えば、フランスには1990年代後半の時点で約15,000箇所のラウンドアバウトが設置されるまでになった[5]。アメリカでも、諸外国での成功例からラウンドアバウトが見直されるようになり、1990年にネバダ州でアメリカで初めての現代的ラウンドアバウトが建設された[6]。2013年には日本でも従来あった信号機を撤去したラウンドアバウトが初めて導入されている(長野県飯田市東和町交差点)。

現代的ラウンドアバウト[編集]

現代のコロンバスサークル
環道内に駐停車スペースや横断歩道があるなど、現代的ラウンドアバウトの特徴を備えていない別の種類の円形交差点の例
世界の「譲れ」標識の例
ドイツ、フランス、カナダなど
スウェーデン、フィンランド、アイスランドなど
アメリカ
イギリス、ニュージーランド、シンガポールなど

1960年代から1970年代にかけてにイギリスでラウンドアバウトの設計基準が確立され、それに基づいて設計されたラウンドアバウトを、特に現代的ラウンドアバウト (modern roundabout) と呼ぶ。これは、主にアメリカで用いられる言い方で、アメリカでは一度円形交差点の建設がすたれてから後、1990年代になってヨーロッパなどでの事例を参考にしてラウンドアバウトが再度評価されたことから、従来の円形交差点とは明確に区別しているのである。現代的ラウンドアバウトと区別する場合、従来型の円形交差点[† 2]はトラフィック・サークル (trafic circle) と呼ぶことが多い。

従来からある円形交差点に対して、現代的ラウンドアバウトは以下のような特徴を備えている[7][8]

進入車両に対する「譲れ」
進入する際は道路標識「譲れ」[† 3]で進入車両を制御し、ラウンドアバウト内には規制がない。従来型の円形交差点には進入に規制がなかったり、一時停止や信号で進入を規制しているものがある。
ラウンドアバウトの環道内の車両優先
環道内の車両が優先して通行する。従来型の円形交差点には進入する車両が優先するものがあり、さらにそのために一時停止ラインや信号が設けられているものもある。
横断歩道
横断歩道がある場合には、「譲れ」のラインから外側に設けられている。従来型の円形交差点には、中央の島に横断歩道が延びているものがある。
ラウンドアバウト内駐車禁止
従来型の円形交差点には、環道内に駐車を許しているものがある。
回転方向
右側通行の場合は反時計回り、左側通行の場合(日本など)は時計回りに一方向の通行のみ許されている。従来型の円形交差点には、左側通行の道路における右折というような場合に、流れに逆らう通行が許されているものがある。
周回走行
直進方向の出口に抜ける場合、従来型の円形交差点ではほぼ直進したまま抜けることができるものがあった。これに対しランドアバウトは、直進できないように中央の島の大きさを決めてある。これは環道を高速で走らせない工夫である。
分離島
ラウンドアバウトの場合は、道路がラウンドアバウトに接続するところで、右車線と左車線が島で分けてある。従来型の円形交差点には全てに見られるわけではない。


構造[編集]

ラウンドアバウトを構成する要素
1. 中央島、2. 分離島、3. 環道、4. エプロン、5. 停止線、6. 横断歩道、7. 植え込み
エプロン
環道を曲がることのできない大型車はエプロンに乗り上げて走行する。
横断歩道と停止線
停止線の手前で、歩行者に気を取られる必要なく、環道に入るタイミングにだけ注意を払えばよい。
フレア
左車線の環道への入り口で車線を2車線に分けてある。

ラウンドアバウトを構成する主な施設は以下の通りである[9][10]

中央島
ラウンドアバウトの中央に道路から高さをつけて設けたエリアである。車両はこの中央島の周りを一方向に走行する。
分離島
ラウンドアバウトに接続する道路に、進入路と退出路を分離するために設けられるエリアで、道路から高さをつけて設ける場合もあるし、路面に描いてある場合もある。 横断歩道が設置されている場合は、歩行者が立ち止まるスペースにもなる。ここに立ち止まるスペースがあれば、歩行者は左右を同時に確認する必要はないし、車両が横断歩道上の歩行者を待つ時間も短くなる。
環道
中央島の周りの道路で、ここを車両が走行する。左側通行なら時計回り、右側通行なら反時計回りの一方通行である。
エプロン
ラウンドアバウトの外径が小さい場合、乗用車は環道を通過することはできても、大型車が通過できない場合がある。そのため、中央島の外周に大型車が乗り入れることのできる部分を作る。この部分をエプロンと呼ぶ。乗用車が走りにくいように、環道に対して少し高くして、中央島に向かってさらに高くなるようにゆるい傾斜をつけたり、石畳にしたりすることが多い。
停止線
環道を走る車両のために環道に進入できないときは、環道を走行する車両が優先であるのでこの線の手前で空きを待つ。必ずしもここで一時停止する義務はなく、もし環道が空いていれば、そのまま環道に進入してよい。この線はすべての進入路に設けられ、環道の外周をつなぐように円弧で描かれるのが一般的である。
横断歩道
停止線の手前に設置される。分離島を経由するが、歩道も分離島も車いすなどが通行しやすいように縁がえぐってある。車両や歩行者の量、設置場所の性格などにより、必ずしもなければいけないものではない。
植え込み
歩行者を横断歩道に誘導するために、環道の外周に設置することがある。歩行者がまたぐことのできない高さで設置する。この目的だけのためには必ずしも植え込みでなくてもよいことになるが、美観を考慮し、また車両が衝突した場合の被害の低減を考慮し、設置するとすれば生垣などを設置することが多い。

横断歩道が設置される場合は、ラウンドアバウトの外周から乗用車一台分ほど離して[† 4]設置される。これはここがラウンドアバウト外周で横断するより、歩行者の横断距離が短くなるからである。進入する車両にとっては、横断歩道の後に環道までの間のスペースがあるので、ドライバーは歩行者と環道内の車両を同時に注意する必要がなくなる。また、退出する車両にとっても、環道から出た後に歩行者に注意すればよいことになる。横断歩道は歩行者を横断に適した場所へ誘導する目的に加え、ドライバーに歩行者の存在を予想させることが主な目的となる物である[11]ので、点滅灯を道路鋲として埋め込んだり、また押しボタン式信号機を設置したりすることも考慮される[12]

ラウンドアバウトの設計における重要なポイントの一つが走行する車両の速度と台数[要出典]の抑制である[13] 。ラウンドアバウトではこれをそれぞれの構成要素の幾何学的な配置と幾何学的な形状で実現する。中でも進入路の形状は進入速度を決める重要な役割をもつ。ラウンドアバウトに入る車両が安全な速度にまで速度をおとすように、進入路にはカーブがつけてある。また、進入路の分離島や外周部に植栽を施すのは、進入路や環道で窮屈な感じを演出し、ドライバーが速度を落とすように促す効果も期待しているからである[14]

ラウンドアバウトの環道への進入口の広さは、ラウンドアバウトの進入車両の数に大きく影響する[15]。これは、例えば、停進入口が広い場合はそれこから入ってくる車両の量を取り込む環道も広いはずで、そのような環道では並走する二台が同時に環道から出て行くこともあり、その分だけ進入のチャンスが増える。また、進入のタイミングは限られているため、複数の車両がまとまって環道に入ることができれば、進入量を増やすことができる。このために、進入路の入り口から車線を増やしたり、環道への入り口のところで幅を増やして複数台の車両が並ぶことができるようにすることがある。

安全性[編集]

ラウンドアバウトが他の形式の交差点より優れている最大の点は、安全性の高さである。下表に1998年に発表されたアメリカでの調査結果を示す。これは11のラウンドアバウトについてラウンドアバウト建設前後での年間平均事故数の比較したものである。

ラウンドアバウト設置前後での年間平均事故発生数の比較[16]
ラウンドアバウトのタイプ 対象の数 ラウンドアバウト設置前 ラウンドアバウト設置後 前後比
小計 負傷者有 負傷者無 小計 負傷者有 負傷者無 小計 負傷者有 負傷者無
単車線 8 4.8 2.0 2.4 2.4 0.5 1.6 -51% -73% -32%
複数車線 3 21.5 5.8 15.7 15.3 4.0 11.3 -29% -31% -10%
合計 11 9.3 3.0 6.0 5.9 1.5 4.2 -37% -51% -29%
交錯点の比較
十字路 (1) に32箇所の交錯点があるのに対し、ラウンドアバウト (2) には8箇所しかない。
交錯点の比較
右折の際、通過する交錯点の数は同じだか、交錯点同士の距離は、ラウンドアバウトの方が長い。

ラウンドアバウトは事故の防止に効果があると言うことができ、この傾向はラウンドアバウトを導入したヨーロッパ各国でもみられる[17]。単に事故全体の数が減るだけでなく、負傷者の出る重大事故が特に減っていることに注目することができる。他の形式の交差点と比較した別の研究結果によれば、ラウンドアバウトの事故の発生頻度は、十字の形式の交差点の中で最も事故発生頻度の低い、全ての道路が一時停止とされている交差点と同じくらいである[18]。どのような事故が実際に起こっているのかを調べると、車両同士の接触事故の減少が目立ち、このため、単独事故、歩行者や自転車との事故の割合が相対的に増える傾向がある[19]

ラウンドアバウトの安全性の理由として、交錯点の違いを上げることができる。交錯点とは、車両の動線が分岐・合流・交差する点である。車両同士が衝突するとなれば交錯点で衝突するはずで、ドライバーが他の車両に注意しなければならない点となる。片側一車線ずつの道路同士の交差点の場合、普通の十字の交差点では交錯点が32点ある。一方ラウンドアバウトは8点しかない。つまり、ラウンドアバウト内では、車両同士の衝突の起こりえる箇所がずっと少ない。しかも、最も重大な事故につながる交差の交錯点が全くない。加えて、十字の交差点では交錯点同士の距離も短い。例えば、左側通行で右折することを考えるとき、通過する交錯点はどちらも6点であるが、ラウンドアバウトは交錯点同士が離れているので、ドライバーは交錯点それぞれで他の車両に注意を向けることができる。十字の交差点の場合、交錯点同士がとても近く、事実上左右を同時に注意しなければならない箇所がある[† 5]

スピードを抑制していることも、安全性に大きく寄与している。まず、第一にスピードが遅ければ、何かが起きたときでもそれに対処し、実際に被害が生じることを避けようとする時間を多くとることができる。人や自転車に対しては、万が一事故を起こした場合でも、スピードが低ければその被害を小さくできる。車両同士の衝突でも同じであるが、さらに、環道内の車両はどれも同じ方向に、同じスピードで走っているので、車両同士の相対速度が低く、このことも事故の被害を小さくするのに役立っている。また、環道内のスピードが比較的遅いことで、進入のタイミングがつかみやすくなるし、スピードもあわせやすくなる。

遅れを最小限にできることも、ドライバーのフラストレーションの高まりを抑制し、また乱暴な運転をする気分になることを抑え、安全運転をうながしている[20]。反面、導入例が稀な地域では慣れないドライバーが合流や脱出の頃合を掴めず、トラブルに繋がりかねない[要出典]

交通容量[編集]

一般の十字交差点などに対して、ラウンドアバウトの交通容量(単位時間に通過できる車両の数)は少ないと考えられている[21]。ただし、信号のない十字の交差点と比べる場合は、交差点を突き抜けるときに、左右からの交通がどちらも途切れているときのみ通過できることを考えると、ラウンドアバウトの方が有利であるともいえる[22]。アメリカのTRB (Transportation Research Board) の発行したTransportation Research Circular-Issue 212 (1980) によれば信号のある十字路の容量は最大1500台/時である[23]。それに対しラウンドアバウトの容量は1800台/時[24]ともいわれるが(単車線の場合)、このモデルで最大容量が実現した場合というのは、環道をとぎれなく車両が周回しているという場合であり、この時には当然他の車両は環道に進入できない[25]。つまり最大値を比べても意味は無い。結局のところ、その交差点のある場所の交通量(それぞれの道路に対する進入・退出量)とその方向によって、実際に通過できる車両の量は変わってくる。Jian-an Tanがラウンドアバウトと信号付十字路を比較検討したところでは、小型の交差点の場合(外径16m、環道幅6mのラウンドアバウトと道幅7mの道路の交差点との比較)にはラウンドアバウトの方が容量が大きくなるが、交差点の大きさが大きくなるにつれ、信号付十字路の方が容量が大きくなることが多くなる[26]

各進入路のそれぞれの流入量が極端に偏っている場合、ある進入路からは環道への進入のチャンスがほとんどなくなってしまう場合がある。このような場合は、特定の進入路からの進入を制限することになる。信号をつけることも一つの方法である[27]。ただし、すべての進入路に信号を付けた場合、この交差点はラウンドアバウトとは設計思想が全く違うものとなるので、以後はラウンドアバウトの考え方は適用できない。他の方法としては、隣接する別の信号付交差点での信号のタイミングを調整し、対象のラウンドアバウトへの進入量を調整することも考えられるし、歩行者が多い場所なら、ラウンドアバウトから少しはなれたところ[† 6]に横断歩道と信号を設置し、それで進入量を調整することも考えられる[27]

コスト[編集]

植栽の施された中央島
明るく照らされたラウンドアバウト

コストについても他の形式の交差点との比較は簡単ではない。

例えば、典型的なラウンドアバウトには信号がないので、信号の設置費用、メンテナンス費用を考えれば、その分だけラウンドアバウトが有利である。ただ、ラウンドアバウトの場合、十字の交差点には見られない中央島を設置する必要がある。そして、これに植栽を施すことはよく行われるが、植栽を行えばその定期的なメンテナンスが必要となる。また、信号が必要でないとしても、ラウンドアバウトのために照明を増やすことにすれば、照明のエネルギー費は増える。

また、建設コストに大きく影響する要素の一つとして、必要な用地の大きさを挙げることができる。交差点の道路が交わった箇所だけを考えれば、中央島や分離島、進入路・退出路のカーブがある分ラウンドアバウトの方が広い用地を必要とするとはいえる。しかし、通常の十字の交差点で、左折や右折の専用車線を設置する場合は、交差点からかなり手前のところから車線を増やす必要があり、トータルで考えると十字の交差点の方がより多くの用地が必要となるかもしれない。

いずれにしても、個々のケースでいろいろに変わってくるので、単純にどの形式の交差点が必ずコストの面で有利であるとはいえない。

その他の特徴[編集]

ラウンドアバウトの利点として遅れの改善を挙げることができる[28]。遅れとは、交差点のない道路を直進するために必要な時間に対して余計にかかる時間のことで、例えば信号の待ち時間、一時停止時間、徐行、減速、加速、などに必要な時間のことである。ラウンドアバウトの場合、道路が空なのに信号が赤だというだけで止まっている、というようなケースがないし、完全に一時停止せずに環道に入るチャンスが多いので、遅れが少なくなるのである。ただ、十字の交差点の主要道路の方の交通が支配的で、交差点の存在をほとんど気にする必要がないような場合、ラウンドアバウトを設置したために減速・加速を強いられ遅れが増えることもある[† 7]

遅れを改善することができれば、このことは交差点周辺の環境の改善に寄与する[29]。遅れが少ないというとは、不要な停止が減り、また加減速の頻度や程度が少なくなっているというとで、排気ガスの排出量や燃料消費量、騒音の程度が減少することを意味する。

ラウンドアバウトは、交通静穏化の手法の一つとしても利用される[30]。もともと、ラウンドアバウトはそこに進入する車両の速度を抑制するように設計されているので、適切に配置することによって、その道路を通行する車両の速度をおさえ、交通の静穏化を確実に実現することができる。ドライバーはラウンドアバウトの存在を無視して、直進することができないからである。

アメリカのTRBはラウンドアバウトに適する場所として次のような場所を挙げている[31]。まず、4本以上の道路が集まる交差点や、Y字や鋭角に道路が集まる変則的な交差点、Uターンの多い交差点はラウンドアバウトに向く交差点である。隣接する2つの交差点をまとめる場合や、信号による長い車両の列を作りたくない場合(トンネルが近くにあるときなど)にもラウンドアバウトが適する。中央島などを印象的にあしらって、街の入り口や中心部を魅力的にプレゼンテーションすることも可能である[32]

交通規則[編集]

ラウンドアバウトでの車の流れ(右側通行)
退出時に出口の前で退出方向にウィンカーを出す。環道を走行中ウィンカーを付け放しにしているのはアメリカの方式。進入口に複数の車線があると複数の車両がほぼ同時に環道に進入できることにも注意。

十字の交差点と同様に曲がる際にはウィンカーを使用する。アメリカとヨーロッパでは多少出し方が異なるが、共通しているのは、環道からの退出時に、退出する方向(左側通行なら左)へウィンカーを出すことである。進入した道路の隣の道路に曲がっていくとき(左側通行なら左折)には、進入時からその方向にウィンカーを出すことになる。アメリカ方式では、一番遠い道路に曲がっていくとき(左側通行なら右折)には進入時から曲がっていく方向にウィンカーを出し続け、退出時に退出方向にウィンカーを切り替える[33]。アメリカの方式の方が環道内の車両の動きが予測しやすい。自分が進入口で待っているとした場合、環道内の車両が自分の見えている方の向こう側のウィンカーを出しているかどうかは、よく見えないからである。

道路標識のデザインは国によって様々であるが、ヨーロッパ諸国を中心に1968年のウィーンで行われた国連会議のもと制定された「道路標識及び信号に関する条約」に即している場合が多い。まず「前方ラウンドアバウト」の標識があり(ない場合もある)、その先に「ロータリーあり」(円形交差点あり)[† 8]の標識がある。ラウンドアバウトを特徴付ける「譲れ」は進入路の入り口につけられる。「譲れ」の手前に「優先道路終わり」や「譲れあり」の標識がつけられる。中央島には走行の方向を示す標識があることも多い(「指定方向外通行禁止」や「カーブ」)。分離島には「通過指示」の標識を設置し、分離島のどちらを通行するのか示す。案内標識も円形交差点であることがわかるようになっている。

ラウンドアバウト周辺の道路標識(ドイツ)
ベトナムホーチミン市に複数ある現代的ラウンドアバウトのうちの1つの入り口 (2014年)
前方ラウンドアバウト標識
(スペイン)


ラウンドアバウトの設計[編集]

ラウンドアバウトの設計においては安全性と交通容量の兼ね合いを考える要素が含まれる[34] 。例えば、安全性を高めるには進入速度や周回中の速度を下げるようにラウンドアバウトの形状を設計すると良いが、これは同時にラウンドアバウトの交通容量も下げることになる。また、ラウンドアバウトの形状はそこを通過する最大サイズの車両によっても決まる。ラウンドアバウトを設置する場所の状況に合わせて、最適な形状を設計することになる。

設計の前提となる要素で最も重要なものはラウンドアバウトを通過する速度を設定することである。ラウンドアバウトを通過する車両の経路を想定し、設定した速度で車両が走るような幾何学的な形状を決める。

また、ラウンドアバウトの形状を決定するには、そのラウンドアバウトを通過する車両の設計上の最大サイズをきめなければならない。例えば、アメリカの連邦道路管理局の発行する資料(Robinson et. al.)では、AASHTO Policy on Geometric Design of Highways and Streets ("Green Book") が定めるWB-15(WB-50)のトレーラー[† 9] が、一般的に幹線道路などを通過する最大サイズの車両であるとしている[35]

環状道路の幅は、単車線の場合は設計上の最大サイズの車両(例えばWB-15)が余裕をもって転回できる幅となる。ラウンドアバウトの外径が十分に取れない場合には、中央島の周りを通行可能なエブロンとすることで大型車の転回に必要なスペースを確保することができる。複車線の場合は、想定している交通状況によって決めることになる。例えば、乗用車やトラックが支配的で、トレーラーの通過がごく少ない場合には、乗用車が並んで走行、転回できる幅や、乗用車とトラックが並んで走行、転回できる幅とする[36]

日本のラウンドアバウト (環状交差点)[編集]

吾妻町ロータリー(飯田市・地図国土交通省 国土画像情報(カラー空中写真)を基に作成)飯田大火の復興の際に設置された。
環状の交差点における右回り通行(327の10)


日本の法律では、ラウンドアバウトは、道路交通法(2013年6月14日法律第43号による改正後)第4条第3項の中で、「環状交差点」として次のように定義されている。「車両の通行の用に供する部分が環状の交差点であつて、道路標識等により車両が当該部分を右回りに通行すべきことが指定されているものをいう」[37]

(社)交通工学研究会のガイドラインは、「環道交通流に優先権があり、かつ環道交通流は信号機一時停止などにより中断されない、円形の平面交差部の一方通行制御方式」[38]という定義を示している。

日本では、現代的ラウンドアバウトという意味でのラウンドアバウトの導入事例は極めて少ない[† 10]。もともと日本では交差点の形式としてラウンドアバウトを想定していなかったため、従来の日本の道路交通法では、ラウンドアバウト全体を一つの交差点としては解釈できなかった[39][† 11]。このため、2013年6月14日に道路交通法が改正され、ラウンドアバウトが「環状交差点」として位置づけられた(後述)。

日本でもその利点に注目しラウンドアバウトの導入が提案されており、その基礎データを収集するための実証実験も行われている[40]。特に、震災などの災害時に停電が発生しても信号機が使えないことによる交通網の混乱の心配をする必要がないことなどから、東日本大震災の被災地や、近い将来に発生することが予測されている東海地震の被害想定地域で関心が高い。長野県飯田市東和町交差点(地図)は、2013年2月5日より日本初の試みとして、従来設置されていた信号機を撤去したうえでラウンドアバウトとしての運用を開始した。ただし、進入地点に「一時停止」を義務付け、本来のラウンドアバウトの利便性を損なう、変則的な方法をとっている。

ラウンドアバウトの計画や設計のためのマニュアルとして(社)交通工学研究会が2009年に設計のガイドライン(案)をまとめている[41]

2014年9月1日より道路交通法の改正を受けて全国19箇所で運用が始まった。その中で多摩市桜ヶ丘のもの(地図)は東京都で唯一の指定となったため、都心からのアクセスの良さからマスコミが殺到した。同年度中には新たに15箇所が運用開始される予定である[42][43]。道路標識は青地に白い矢印が時計回りになっているものが採用された。今後、導入する自治体も増えている[44]

道路交通法の改正[編集]

  • 2013年6月14日に改正された道路交通法で[45]、ラウンドアバウトが「環状交差点」の名称で位置づけられ、その定義、左折・右折・直進・転回の方法、他の車両等との関係、の3点が明確にされた。(施行は2014年9月1日)
  • 「環状交差点」が「車両の通行の用に供する部分が環状の交差点であつて、道路標識等により車両が当該部分を右回りに通行すべきことが指定されているものをいう。」と定義された(改正後の道路交通法第4条第3項中)。
  • 環状交差点における通行方法はつぎのように定められた。:
    • 第35条の2 車両は、環状交差点において左折し、又は右折するときは、第34条第1項から第5項までの規定にかかわらず、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り環状交差点の側端に沿つて(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない。
    • 2 車両は、環状交差点において直進し、又は転回するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り環状交差点の側端に沿つて(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない。
  • 環状交差点における他の車両等との関係等は次のように定められた。:
    • 第37条の2 車両等は、環状交差点においては、第36条第1項及び第2項並びに前条の規定にかかわらず、当該環状交差点内を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
    • 2 車両等は、環状交差点に入ろうとするときは、第36条第3項の規定にかかわらず、徐行しなければならない。
    • 3 車両等は、環状交差点に入ろうとし、及び環状交差点内を通行するときは、第36条第4項の規定にかかわらず、当該環状交差点の状況に応じ、当該環状交差点に入ろうとする車両等、当該環状交差点内を通行する車両等及び当該環状交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。
  • 環状交差点における合図については、方向指示器#さまざまな用法を参照。
  • 通常の交差点と同様に、環状交差点内と、環状交差点の側端又は道路のまがりかどから五メートル以内の部分は駐停車禁止である。また、環状交差点の安全進行義務(第37条の2第3項)も適用される。

様々なタイプのラウンドアバウト[編集]

ラウンドアバウトを設計する際は、設置場所の性格、単/複車線などに注目して分類するが、ここでは外観上特徴のあるラウンドアバウトを挙げる。

ミニ・ラウンドアバウト[編集]

安全のためや、遅れの改善のためにラウンドアバウトを設置しようとしても、住宅地内などの交差点で、ラウンドアバウトの設置スペースが限られている場合、大型車の旋回に必要な半径が確保できない。そのため、中央島や分離島の上が通行可能なようにしてある。例えば、道路面から盛り上げ、石畳にして乗用車は通行しにくいようになっていたり、道路に中央島や分離島を描いたりして設置される。

ミニ・ラウンドアバウト(イギリス)
中央島は道路に描かれた白い円。矢印が進行方向を表している
ミニ・ラウンドアバウト(ドイツ)
中央島は環道の路面から少し高くしてある。
ミニ・ラウンドアバウトの走行
中央島は石畳の円。バスは中央島に乗り上げて走行し、乗用車は島の周りを走行している。


ターボ・ラウンドアバウト[編集]

ラウンドアバウトの容量を上げるためには環道を2車線にするが、その場合、環道内で車両が車線を変更する際に衝突の危険が発生する。また、内側の車線から環道を退出する場合、外側の車線を横切らなければならず、ここでも衝突の危険が生じる。そこで、そのようなことができないようにしたものがターボ・ラウンドアバウトである。進入時に車線を横切る場合があるが、一回環道に入ってしまったら、他の車線に移ったり、他の車線を横切らなくても目的の出口から退出することができる。

ターボ・ラウンドアバウト
ターボ・ラウンドアバウトでの案内標識
左車線からラウンドアバウトに入ったら右折できない。
ターボ・ラウンドアバウトの模式図


マジック・ラウンドアバウト[編集]

イギリスで見られるラウンドアバウトの形式で、中央島の周りに回転方向の違う2本の環道をもち、進入・退出口の場所に、内側と外側の環道をつなぐミニ・ラウンドアバウトが設置されている。外側の環道に入った後、そのまま時計回りに目的の出口にむかってもよいし、ミニ・ラウンドアバウトでUターンして反時計回りに目的の出口に向かっても良い。環道内ではミニ・ラウンドアバウトが優先である。

サンドラース・ファーム
スウィンドン
スウィンドンのマジック・ランドアバウトの模式図


脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 英語発音: [ˈraʊndəbaʊt] ウンダバウト
  2. ^ 環道内で合流・車線変更がしやすいように大きく作られていた。
  3. ^ 英語であれば、YIELD や GIVE WAY のこと。2012年現在、日本にはこれに該当する道路標識はない。
  4. ^ 例えば、横断歩道の幅が1.6m - 2.5m程度で、中心線がランドアバウトが外周から5 - 6mのところ。(Jacquemart et al., p.27)
  5. ^ 信号は、ある瞬間に他の動線上に車両を走らせないことで、交錯点を減らす手法と言える。
  6. ^ 例えば、停止線から20-50m
  7. ^ Jacquemart et al., p.30。ラウンドアバウトに関するアンケート調査で、8ヶ所中1ヶ所で遅れが増えたと答えたケースがある。
  8. ^ 日本語では「ロータリーあり」と言われるが、ここでいうロータリーはラウンドアバウトを含む円形交差点を指す。
  9. ^ ホイルベース15メートル(50フィート)のトレーラー。
  10. ^ 国際交通安全学会、p.2。同報告書ではラウンドアバウトと言えるかもしれない円形交差点(ラウンドアバウト候補)として133の交差点をあげ、同時に内8箇所はラウンドアバウトではないと結論している。ただし、この調査では進入時の「譲れ」は考慮していない。
  11. ^ 従来は道路交通法第36条第1項の一で規定されているように、標識や信号などで整理の行われていない交差点では左方から進行してくる車両が優先であるので、ロータリーに進入してくる車両が優先となるため、必然的に日本の「ロータリー交差点」はラウンドアバウトを満たさないことになっていた。

出典[編集]

  1. ^ a b c Robinson et al., p.2
  2. ^ Jacquemart et al., p.9
  3. ^ UK's First Roundabout レッチワースのツーリストインフォメーションセンターのサイト。
  4. ^ Modern Roundabouts - History アメリカ、アリゾナ州交通局のウェブサイト
  5. ^ a b Jacquemart et al., p.11
  6. ^ Jacquemart et al., p.12
  7. ^ Robinson et al., p.9
  8. ^ Taekratok, p. ix
  9. ^ Robinson et al., p.6
  10. ^ FHWA-SA-10-005, p.2
  11. ^ Robinson, p.199
  12. ^ Robinson, p.200
  13. ^ Robinson et. al., p24
  14. ^ Robinson et. al., p177
  15. ^ Robinson et. al., p82
  16. ^ Jacquemart et al., p.25
  17. ^ Robinson et al., p.112
  18. ^ Rodegerdts et al., p.33
  19. ^ Robinson et al., p.23
  20. ^ Jacquemart et al., p.29
  21. ^ 国際交通安全学会, p.4
  22. ^ NYSDOT, p.3
  23. ^ MassDOT 2006, Chapter6, p.6-27
  24. ^ Robinson, p.87 および Appendix A (pp.251-253) にこのモデルの説明がある。
  25. ^ MassDOT 2006, Chapter6, p.6-25
  26. ^ Tan, pp.15-16
  27. ^ a b Robinson, p.87, p.214
  28. ^ MassDOT 2010, p.11
  29. ^ Robinson, p.29
  30. ^ EKKON, p.31
  31. ^ Jacquemart et al., p.42
  32. ^ Robinson, p.30
  33. ^ Robinson, pp.44-46
  34. ^ Robinson et. al., p.130.
  35. ^ Robinson et. al., p.142.
  36. ^ Robinson et. al., p.150.</
  37. ^ [1] 道路交通法、法令検索、電子政府の総合窓口イーガブ
  38. ^ ラウンドアバウトの計画・設計ガイド(案)、Ver. 1.1、2009年、p.5、(社)交通工学研究会
  39. ^ 国際交通安全学会、p.8
  40. ^ 例えば、吾妻町ロータリー(ラウンドアバウト)での社会実験(2011年11月7日から67日間)等。
  41. ^ ラウンドアバウトの計画・設計ガイド(案)、Ver. 1.1、2009年、(社)交通工学研究会
  42. ^ 環状交差点、1日から=8都府県34カ所で誕生―「急がば回れ」で徐行を・警察庁
  43. ^ 「ラウンドアバウト」運用開始、事故防止に効果も
  44. ^ 「ラウンドアバウト」効果大 滋賀県守山市、本格導入を決定
  45. ^ [2] 道路交通法、法令検索、電子政府の総合窓口イーガブ

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]