ラウンドアバウト
ラウンドアバウト (roundabout)
- 回り道、遠回り。
- 交差点システムの1つ。本項で詳述。
- メリーゴーラウンド。公園の遊具。en:Roundabout (play)
- ロックバンド「イエス」の楽曲。アルバム『こわれもの』 (Fragile) に収録。
- クリス・カーティス(Chris Curtis) が結成を目指していたバンド。後に「ディープ・パープル」として正式に発足した。
ラウンドアバウト(roundabout)とは円形交差点の一種である。通常3本以上の道路を円形のスペースを介して接続したもので、この円形のスペースの真ん中には中央島と呼ばれる、円形の通行できない区域がある。車両は道路はこの中央島の周りの環状の道路(環道)を一方向に(右側通行なら反時計回り、左側通行なら時計回り)通行する。
円形交差点をあらわす単語にロータリーもあるが、本項では特に断らない限り、ラウンドアバウトとは環状の道路に信号や一時停止がないなどの特徴をもったロータリーの一種、つまり現代的ラウンドアバウト(modern roundabout)を指し、そのような特徴を持たないロータリー(現代的ラウンドアバウトではないロータリー)とは区別して扱う。
主に欧米やイギリス連邦諸国などで普及している。一般にダウンタウンでは街路が格子状になっていて余剰空間がなく、交通量も多い為に、十字形の交差点を採用し、郊外や交通量があまり多くない交差点では経費がほとんど掛からないラウンドアバウトを設置する傾向がある。アメリカ合衆国やスウェーデンなどのモーターウェイなどでは、高速走行が可能な大きな周回路のラウンドアバウトを設けている。
なお、スコットランドのダンディーではラウンドアバウトを"circle"と呼ぶ。
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[編集] 歴史
円形交差点は19世紀後半からヨーロッパで作られはじめた。しかし、この時期の円形交差点は都市の中心部などに景観上の工夫として考案されたものである。例えばシャルル・ド・ゴール広場 (エトワール広場)は、建設当初はこのような目的の交差点であった。もともと、5本の道路が集まる広場であり、中心に凱旋門が建造されて、環状の道路をもつ交差点になったのである。
交通システムの一環として設計された円形交差点は、ウィリアム・フェルプス・エノの提案によって1905年にニューヨークに作られたコロンバスサークルが最初のものである[1]。同時期に、フランスではウジェーヌ・エナールの提案でパリのシャルル・ド・ゴール広場の周りが円形交差点として1907年に整備された[2]。交差点内での車両の通行を、反時計回り(右側通行の場合)の一方通行にしたことが最大の特徴である。イギリスでは1909年、世界初の田園都市として建設されたレッチワースに作られたとされている[3]。イギリスでは円形交差点をギラトリー・システム(gyratory system)とも呼ぶが、1926年からはギラトリー・システムに代わってラウンドアバウトが円形交差点を指す公式な名称になっている[4]。日本では1936年に作られた旭川常盤ロータリーなどが良く知られている。
円形交差点では対向車もないし、対向車線を横切って曲がる必要もないので車両のスムーズな流れが期待できる。初期の円形交差点は、環道の車両の流れに素早く合流したり、環道内で車線変更することを意図して設計されており、また、合流の際には円形交差点に入る車両が優先されていた[1]。進入する車両が優先というのは、右側通行の場合、通常の十字路では向かって右側の車両が優先で、円形交差点への進入に際してもそれに倣ったのである。しかし、進入する車両は減速せずに交差点に入ることができるので、衝突したときの被害も大きかった。また、交通量が多くなった時に車両が環道内で動けなくなる状況が発生し、このことによっても円形交差点に対する評価は下がった。そのため1950年代にはいると、アメリカでは円形交差点がほとんど顧みられなくなった。
一方イギリスでは、1960年代に入り、英国交通研究所がそのような円形交差点のもつ問題を調査し、解決策を探ることに着手した。この時に考案されたもののうち、最も特徴的なものは、環道内の車両が優先して通行するというルールである。その結果をうけて、1966年、イギリスでは環道内の車両が優先する規則をすべての円形交差点に適用した[1]。これが現代的なラウンドアバウトの始まりである。1971年にはイギリス交通省によりラウンドアバウトの設計ガイドラインが作成された[5]。この現代的ラウンドアバウトは、一般的な交差点を通過する際の遅れ(赤信号の待ち時間など)を最小限におさえつつ、旧来の円形交差点の主要な課題であった安全性の問題と環道内で動けなくなる問題を解決し、盛んに導入されるようになった。
その後、1970年代から1980年代にかけてヨーロッパやイギリス連邦を中心にラウンドアバウトがイギリス国外にも広く普及し、例えば、フランスには1990年代後半の時点で約15,000箇所のラウンドアバウトが設置されるまでになった[5]。アメリカでも、諸外国での成功例からラウンドアバウトが見直されるようになり、1990年にネバダ州でアメリカで初めての現代的ラウンドアバウトが建設された[6]。2012年現在、日本でもその導入が提案されている。
[編集] 現代的ラウンドアバウト
| 世界の「譲れ」標識の例 | |
1960年代から1970年代にかけてにイギリスでラウンドアバウトの設計基準が確立され、それに基づいて設計されたラウンドアバウトを、特に現代的ラウンドアバウト(modern roundabout)と呼ぶ。これは、主にアメリカで用いられる言い方で、アメリカでは一度円形交差点の建設がすたれてから後、1990年代になってヨーロッパなどでの事例を参考にしてラウンドアバウトが再度評価されたことから、従来の円形交差点とは明確に区別しているのである。現代的ラウンドアバウトと区別する場合、従来型の円形交差点[7]はトラフィック・サークル(trafic circle)と呼ぶことが多い。
従来からあるの円形交差点に対して、現代的ラウンドアバウトは以下のような特徴を備えている[8][9]。
- 進入車両に対する「譲れ」
- 進入する際は道路標識「譲れ」[10]で進入車両を制御し、ラウンドアバウト内には規制がない。従来型の円形交差点には進入に規制がなかったり、一時停止や信号で進入を規制しているものがある。
- ラウンドアバウトの環道内の車両優先
- 環道内の車両が優先して通行する。従来型の円形交差点には進入する車両が優先するものがあり、さらにその為に一時停止ラインや信号が設けられているものもある。
- 横断歩道
- 横断歩道がある場合には、「譲れ」のラインから外側に設けられている。従来型の円形交差点には、中央の島に横断歩道が延びているものがある。
- ラウンドアバウト内駐車禁止
- 従来型の円形交差点には、環道内に駐車を許しているものがある。
- 回転方向
- 右側通行の場合は反時計回り、左側通行の場合(日本等)は時計回りに一方向の通行のみ許されている。従来型の円形交差点には、左側通行の道路における右折というような場合に、流れに逆らう通行が許されているものがある。
- 周回走行
- 直進方向の出口に抜ける場合、従来型の円形交差点ではほぼ直進したまま抜けることができるものがあった。これに対しランドアバウトは、直進できないように中央の島の大きさを決めてある。これは環道を高速で走らせない工夫である。
- 分離島
- ラウンドアバウトの場合は、道路がラウンドアバウトに接続するところで、右車線と左車線が島で分けてある。従来型の円形交差点には全てに見られるわけではない。
[編集] 構造
ラウンドアバウトを構成する主な施設は以下の通りである[11][12]。
- 中央島
- ラウンドアバウトの中央に道路から高さをつけて設けたエリアである。車両はこの中央島の周りを一方向に走行する。
- 分離島
- ラウンドアバウトに接続する道路に、進入路と退出路を分離するために設けられるエリアで、道路から高さをつけて設ける場合もあるし、路面に描いてある場合もある。 横断歩道が設置されている場合は、歩行者が立ち止まるスペースにもなる。ここに立ち止まるスペースがあれば、歩行者は左右を同時に確認する必要はないし、車両が横断歩道上の歩行者を待つ時間も短くなる。
- 環道
- 中央島の周りの道路で、ここを車両が走行する。左側通行なら時計回り、右側通行なら反時計回りの一方通行である。
- エプロン
- ラウンドアバウトの外形が小さい場合、乗用車は環道を通過することはできても、大型車が通過できない場合がある。その為、中央島の外周に大型車が乗り入れることのできる部分を作る。この部分をエプロンと呼ぶ。乗用車が走りにくいように、環道に対して少し高くして、中央島に向かってさらに高くなるようにゆるい傾斜をつけたり、石畳にしたりすることが多い。
- 停止線
- 環道を走る車両の為に環道に進入できないときは、環道を走行する車両が優先であるのでこの線の手前で空きを待つ。必ずしもここで一時停止する義務はなく、もし環道が空いていれば、そのまま環道に進入してよい。この線はすべての進入路に設けられ、環道の外周をつなぐように円弧で描かれるのが一般的である。
- 横断歩道
- 停止線の手前に設置される。分離島を経由するが、歩道も分離島も車いすなどが通行しやすいように縁がえぐってある。車両や歩行者の量、設置場所の性格などにより、必ずしもなければいけないものではない。
- 植え込み
- 歩行者を横断歩道に誘導するために、環道の外周に設置することがある。歩行者がまたぐことのできない高さで設置する。この目的だけのためには必ずしも植え込みでなくてもよいことになるが、美観を考慮し、また車両が衝突した場合の被害の低減を考慮し、設置するとすれば生垣などを設置することが多い。
横断歩道が設置される場合は、ラウンドアバウトの外周から乗用車一台分ほど離して[13] 設置される。これはここがラウンドアバウト外周で横断するより、歩行者の横断距離が短くなるからである。進入する車両にとっては、横断歩道の後に環道までの間のスペースがあるので、ドライバーは歩行者と環道内の車両を同時に注意する必要がなくなる。また、退出する車両にとっても、環道から出た後に歩行者に注意すればよいことになる。横断歩道は歩行者を横断に適した場所へ誘導する目的に加え、ドライバーに歩行者の存在を予想させることが主な目的となる物である[14]ので、点滅灯を道路鋲として埋め込んだり、また押しボタン式信号機を設置したりすることも考慮される[15]。
ラウンドアバウトの設計における重要なポイントの一つが走行する車両の速度の抑制である。ラウンドアバウトではこれをそれぞれの構成要素の幾何学的な配置と幾何学的な形状で実現する。中でも進入路の形状は進入速度を決める重要な役割をもつ。ラウンドアバウトに入る車両が安全な速度にまで速度をおとすように、進入路にはカーブがつけてある。また、進入路の分離島や外周部に植栽を施すのは、進入路や環道で窮屈な感じを演出し、ドライバーが速度を落とすように促す効果も期待しているからである[16]。
ラウンドアバウトの環道への進入口の広さは、ラウンドアバウトの進入車両の数に大きく影響する[17]。これは、例えば、停進入口が広い場合はそれこから入ってくる車両の量を取り込む環道も広いはずで、そのような環道では並走する二台が同時に環道から出て行くこともあり、その分だけ進入のチャンスが増える。また、進入のタイミングは限られているため、複数の車両がまとまって環道に入ることができれば、進入量を増やすことができる。このために、進入路の入り口から車線を増やしたり、環道への入り口のところで幅を増やして複数台の車両が並ぶことができるようにすることがある。
[編集] 安全性
ラウンドアバウトが他の形式の交差点より優れている最大の点は、安全性の高さである。下表に1998年に発表されたアメリカでの調査結果を示す。これは11のラウンドアバウトについてラウンドアバウト建設前後での年間平均事故数の比較したものである。
| ラウンドアバウトのタイプ | 対象の数 | ラウンドアバウト設置前 | ラウンドアバウト設置後 | 前後比 | ||||||
| 小計 | 負傷者有 | 負傷者無 | 小計 | 負傷者有 | 負傷者無 | 小計 | 負傷者有 | 負傷者無 | ||
| 単車線 | 8 | 4.8 | 2.0 | 2.4 | 2.4 | 0.5 | 1.6 | -51% | -73% | -32% |
| 複数車線 | 3 | 21.5 | 5.8 | 15.7 | 15.3 | 4.0 | 11.3 | -29% | -31% | -10% |
| 合計 | 11 | 9.3 | 3.0 | 6.0 | 5.9 | 1.5 | 4.2 | -37% | -51% | -29% |
ラウンドアバウトは事故の防止に効果があると言うことができ、この傾向はラウンドアバウトを導入したヨーロッパ各国でもみられる[19]。単に事故全体の数が減るだけでなく、負傷者の出る重大事故が特に減っていることに注目することができる。他の形式の交差点と比較した別の研究結果によれば、ラウンドアバウトの事故の発生頻度は、十字の形式の交差点の中で最も事故発生頻度の低い、全ての道路が一時停止とされている交差点と同じくらいである[20]。どのような事故が実際に起こっているのかを調べると、車両同士の接触事故の減少が目立ち、このため、単独事故、歩行者や自転車との事故の割合が相対的に増える傾向がある[21]。
ラウンドアバウトの安全性の理由として、交錯点の違いを上げることができる。交錯点とは、車両の動線が分岐・合流・交差する点である。車両同士が衝突するとこれば交錯点で衝突するはずで、ドライバーが他の車両に注意しなければならない点となる。片側一車線ずつの道路同士の交差点の場合、普通の十字の交差点では交錯点が32点ある。一方ラウンドアバウトは8点しかない。つまり、ラウンドアバウト内では、車両同士の衝突の起こりえる箇所がずっと少ない。しかも、最も重大な事故につながる交差の交錯点が全く無い。加えて、十字の交差点では交錯点同士の距離も短い。例えば、左側通行で右折することを考えるとき、通過する交錯点はどちらも6点であるが、ラウンドアバウトは交錯点同士が離れているので、ドライバーは交錯点それぞれで他の車両に注意を向けることができる。十字の交差点の場合、交錯点同士がとても近く、事実上左右を同時に注意しなければならない箇所がある[22]。
スピードを抑制していることも、安全性に大きく寄与している。まず、第一にスピードが遅ければ、何かが起きたときでもそれに対処し、実際に被害が生じることを避けようとする時間を多くとることができる。人や自転車に対しては、万が一事故を起こした場合でも、スピードが低ければその被害を小さくできる。車両同士の衝突でも同じであるが、さらに、環道内の車両はどれも同じ方向に、同じスピードで走っているので、車両同士の相対速度が低く、このことも事故の被害を小さくするのに役立っている。また、環道内のスピードが比較的遅いことで、進入のタイミングがつかみやすくなるし、スピードもあわせやすくなる。
遅れを最小限にできることも、ドライバーのフラストレーションの高まりを抑制し、また乱暴な運転をする気分になることを抑え、安全運転をうながしている[23]。
[編集] 容量
一般の十字交差点などに対して、ラウンドアバウトの容量(単位時間に通過できる車両の数)は低いと言われている[24]。ただし、信号のない十字の交差点と比べる場合は、交差点を突き抜けるときに、左右からの交通がどちらも途切れているときでないと通過できないことを考えると、ラウンドアバウトの方が有利であるともいえる[25]。アメリカのTRB(Transportation Research Board)の発行したTransportation Research Circular-Issue 212(1980)によれば信号のある十字路の容量は最大1500台/時である[26]。それに対しラウンドアバウトの容量は1800台/時[27]ともいわれるが(単車線の場合)、このモデルで最大容量が実現した場合というのは、環道をとぎれなく車両が周回しているという場合であり、この時には当然他の車両は環道に進入できない[28]。結局のところ、その交差点のある場所の交通量(それぞれの道路に対する進入・退出量)とその方向によって、実際に通過できる車両の量は変わってくる。 Jian-an Tan がラウンドアバウトと信号付十字路を比較検討したところでは、小型の交差点の場合(外径16m、環道幅6mのラウンドアバウトと道幅7mの道路の交差点との比較)にはラウンドアバウトの方が容量が大きくなるが、交差点の大きさが大きくなるにつれ、信号付十字路の方が容量が大きくなることが多くなる[29]。
各進入路のそれぞれの流入量が極端に偏っている場合、ある進入路からは環道への進入のチャンスがほとんどなくなってしまう場合がある。このような場合は、特定の進入路からの進入を制限することになる。信号をつけることも一つの方法である[30]。ただし、すべての進入路に信号を付けた場合、この交差点はラウンドアバウトとは設計思想が全く違うものとなるので、以後はラウンドアバウトの考え方は適用できない。他の方法としては、隣接する別の信号付交差点での信号のタイミングを調整し、対象のラウンドアバウトへの進入量を調整することも考えられるし、歩行者が多い場所なら、ラウンドアバウトから少しはなれたところ[31]に横断歩道と信号を設置し、それで進入量を調整することも考えられる[30]。
[編集] コスト
コストについても他の形式の交差点との比較は簡単ではない。
例えば、典型的なラウンドアバウトには信号がないので、信号の設置費用、メンテナンス費用を考えれば、その分だけラウンドアバウトが有利である。ただ、ラウンドアバウトの場合、十字の交差点には見られない中央島を設置する必要がある。そして、これに植栽を施すことはよく行われるが、植栽を行えばその定期的なメンテナンスが必要となる。また、信号が必要でないとしても、ラウンドアバウトの為に照明を増やすことにすれば、照明のエネルギー費は増える。
また、建設コストに大きく影響する要素の一つとして、必要な用地の大きさを挙げることができる。交差点の道路が交わった箇所だけを考えれば、中央島や分離島、進入路・退出路のカーブがある分ラウンドアバウトの方が広い用地を必要とするとはいえる。しかし、通常の十字の交差点で、左折や右折の専用車線を設置する場合は、交差点からかなり手前のところから車線を増やす必要があり、トータルで考えると十字の交差点の方がより多くの用地が必要となるかもしれない。
いずれにしても、個々のケースでいろいろに変わってくるので、単純にどの形式の交差点が必ずコストの面で有利であるとは言えない。
[編集] その他の特徴
ラウンドアバウトの利点として遅れの改善を挙げることができる[32]。遅れとは、交差点のない道路を直進するために必要な時間に対して余計にかかる時間のことで、例えば信号の待ち時間、一時停止時間、徐行、減速、加速、などに必要な時間のことである。ラウンドアバウトの場合、道路が空なのに信号が赤だというだけで止まっている、というようなケースがないし、完全に一時停止せずに環道に入るチャンスが多いので、遅れが少なくなるのである。ただ、十字の交差点の主要道路の方の交通が支配的で、交差点の存在をほとんど気にする必要がないような場合、ラウンドアバウトを設置した為に減速・加速を強いられ遅れが増えることもある[33]。
遅れを改善することができれば、このことは交差点周辺の環境の改善に寄与する[34]。遅れが少ないというとは、不要な停止が減り、また加減速の頻度や程度が少なくなっているというとで、排気ガスの排出量や燃料消費量、騒音の程度が減少することを意味する。
ラウンドアバウトは、交通静穏化の手法の一つとしても利用される[35]。もともと、ラウンドアバウトはそこに進入する車両の速度を抑制するように設計されているので、適切に配置することによって、その道路を通行する車両の速度をおさえ、交通の静穏化を確実に実現することができる。ドライバーはラウンドアバウトの存在を無視して、直進することができないからである。
アメリカのTRBはラウンドアバウトに適する場所として次のような場所を挙げている[36]。まず、4本以上の道路が集まる交差点や、Y字や鋭角に道路が集まる変則的な交差点、Uターンの多い交差点はラウンドアバウトに向く交差点である。隣接する2つの交差点をまとめる場合や、信号による長い車両の列を作りたくない場合(トンネルが近くにあるときなど)にもラウンドアバウトが適する。中央島などを印象的にあしらって、街の入り口や中心部を魅力的にプレゼンテーションすることも可能である[37]。
[編集] 交通規則
十字の交差点と同様に曲がる際にはウィンカーを使用する。アメリカとヨーロッパでは多少出し方が異なるが、共通しているのは、環道からの退出時に、退出する方向(左側通行なら左)へウィンカーを出すことである。進入した道路の隣の道路に曲がっていくとき(左側通行なら左折)には、進入時からその方向にウィンカーを出すことになる。アメリカ方式では、一番遠い道路に曲がっていくとき(左側通行なら右折)には進入時から曲がっていく方向にウィンカーを出し続け、退出時に退出方向にウィンカーを切り替える[38]。アメリカの方式の方が環道内の車両の動きが予測しやすい。自分が進入口で待っているとした場合、環道内の車両が自分の見えている方の向こう側のウィンカーを出しているかどうかは、よく見えないからである。
道路標識のデザインは国によって様々であるが、考え方はそれぞれ似ている。まず「ロータリーあり」の標識がある。ラウンドアバウトを特徴付ける「譲れ」は進入路の入り口につけられる。「譲れ」の手前に「優先道路終わり」や「譲れあり」の標識がつけられる。中央島には走行の方向を示す標識があることも多い(「指定方向外通行禁止」や「カーブ」)。分離島には「通過指示」の標識を設置し、分離島のどちらを通行するのか示す。案内標識もロータリー交差点であることがわかるようになっている。
- ラウンドアバウト周辺の道路標識(ドイツの例)
[編集] 日本のラウンドアバウト
日本では、2010年現在、現代的ラウンドアバウトという意味でのラウンドアバウトの導入事例は極めて少ない[39]。もともと日本では交差点の形式としてラウンドアバウトを想定しておらず、日本の道路交通法では、2010年現在、ラウンドアバウト全体を一つの交差点としては解釈できない[40]ため、道交法第36条第1項の一で規定されている、標識や信号等で整理の行われていない交差点では左方から進行してくる車両が優先(ただし車両対路面電車の場合方向に関係なく路面電車が優先)という事項を踏まえると、ロータリー内では環道交通流に対して流入が優先となるため、必然的に日本のロータリー交差点はラウンドアバウトを満たさないことになる。交通工学研究会は「環道交通流に優先権があり、かつ環道交通流は信号機や一時停止などにより中断されない、円形の平面交差部の一方通行制御方式」[41]という定義を示している。
日本でもその利点に注目しラウンドアバウトの導入が提案されており、その基礎データを収集するための実証実験も行われている[42]。
[編集] 様々なタイプのラウンドアバウト
ラウンドアバウトを設計する際は、設置場所の性格、単/複車線などに注目して分類するが、ここでは外観上特徴のあるラウンドアバウトを挙げる。
[編集] ミニ・ラウンドアバウト
安全のためや、遅れの改善のためにラウンドアバウトを設置しようとしても、住宅地内などの交差点で、ラウンドアバウトの設置スペースが限られている場合、大型車の旋回に必要な半径が確保できない。その為、中央島や分離島の上が通行可能なようにしてある。例えば、道路面から盛り上げ、石畳にして乗用車は通行しにくいようになっていたり、道路に中央島や分離島を描いたりして設置される。
[編集] ターボ・ラウンドアバウト
ラウンドアバウトの容量を上げるためには環道を2車線にするが、その場合、環道内で車両が車線を変更する際に衝突の危険が発生する。また、内側の車線から環道を退出する場合、外側の車線を横切らなければならず、ここでも衝突の危険が生じる。そこで、そのようなことができないようにしたものがターボ・ラウンドアバウトである。進入時に車線を横切る場合があるが、一回環道に入ってしまったら、他の車線に移ったり、他の車線を横切らなくても目的の出口から退出することができる。
[編集] マジック・ラウンドアバウト
イギリスで見られるラウンドアバウトの形式で、中央島の周りに回転方向の違う2本の環道をもち、進入・退出口の場所に、内側と外側の環道をつなぐミニ・ラウンドアバウトが設置されている。外側の環道に入った後、そのまま時計回りに目的の出口にむかってもよいし、ミニ・ラウンドアバウトでUターンして反時計回りに目的の出口に向かっても良い。環道内ではミニ・ラウンドアバウトが優先である。
[編集] 脚注
- ^ a b c Robinson et al., p.2
- ^ Jacquemart et al., p.9
- ^ UK's First Roundabout-レッチワースのツーリストインフォメーションセンターのサイト。
- ^ Modern Roundabouts - History(アメリカ、アリゾナ州交通局のウェブサイト)
- ^ a b Jacquemart et al., p.11
- ^ Jacquemart et al., p.12
- ^ 環道内で合流・車線変更がしやすいように大きく作られていた。
- ^ Robinson et al., p.9
- ^ Taekratok, p. ix
- ^ 英語であれば、YIELD や GIVE WAY のこと。2012年現在、日本にはこれに該当する道路標識はない。
- ^ Robinson et al., p.6
- ^ FHWA-SA-10-005, p.2
- ^ 例えば、横断歩道の幅が1.6m - 2.5m程度で、中心線がランドアバウトが外周から5-6mのところ。(Jacquemart et al., p.27)
- ^ Robinson, p.199
- ^ Robinson, p.200
- ^ Robinson et. al., p177
- ^ Robinson et. al., p82
- ^ Jacquemart et al., p.25
- ^ Robinson et al. p.112
- ^ Rodegerdts et al. p.33
- ^ Robinson et al., p.23
- ^ 信号は、ある瞬間に他の動線上に車両を走らせないことで、交錯点を減らす手法と言える。
- ^ Jacquemart et al., p.29
- ^ 国際交通安全学会, p.4
- ^ NYSDOT, p.3
- ^ MassDOT 2006, Chapter6, p.6-27
- ^ Robinson, p.87 および Appendix A(pp.251-253)にこのモデルの説明がある。
- ^ MassDOT 2006, Chapter6, p.6-25
- ^ Tan, pp.15-16
- ^ a b Robinson, p.87, p.214
- ^ 例えば、停止線から20-50m
- ^ MassDOT 2010, p.11
- ^ Jacquemart et al., p.30。ラウンドアバウトに関するアンケート調査で、8ヶ所中1ヶ所で遅れが増えたと答えたケースがある。
- ^ Robinson, p.29
- ^ EKKON, p.31
- ^ Jacquemart et al., p.42
- ^ Robinson, p.30
- ^ Robinson, pp.44-46
- ^ 国際交通安全学会、p.2。同報告書ではラウンドアバウトと言えるかもしれない円形交差点(ラウンドアバウト候補)として133の交差点をあげ、同時に内8箇所はラウンドアバウトではないと結論している。ただし、この調査では進入時の「譲れ」は考慮していない。
- ^ 国際交通安全学会、p.8
- ^ 中村秀樹、大口敬、馬渕太樹、吉岡慶祐『日本におけるラウンドアバウトの計画・設計ガイドの検討』「交通工学」 Vol.44、No.3、2009
- ^ 例えば、吾妻町ロータリー(ラウンドアバウト)での社会実験(2011年11月7日から67日間)等。
[編集] 参考文献
- BBC NEWS 'Roundabout magic' (2012年1月12日閲覧)
- CCP Home Page, Modern Roundabouts - History (2012年1月11日閲覧)
- Biuro Ekspertyz i Projektów Budownictwa Komunikacyjnego „EKKOM” Sp. z o.o.,'ZASADY USPOKAJANIA RUCHU NA DROGACH ZA POMOCĄ FIZYCZNYCH ŚRODKÓW TECHNICZNYCH' (ポーランド社会基盤省の依頼によって2008に作成されたレポート), Janusz Bohatkiewicz (red.), 2008
- Georges Jacquemart et al., Synthesis of Highway Practice 264: Modern Roundabout Practice in the United States, National Cooperative Highway Research Program, Transportation Research Board National Research Council, Washington, D.C. 1998
- U.S. Department of Transportation Federal Highway Administration (FHWA-SA-10-007), Mini-Roundabouts - Technical Summary (2012年1月19日閲覧)
- U.S. Department of Transportation Federal Highway Administration, Roundabouts: A Proven Safety Solution that Reduces the Number and Severity of Intersection Crashes, Intersection Safety Issue Briefs(third edition) (FHWA-SA-10-005), 2009
- 国際交通安全学会 「安全でエコなラウンドアバウトの実用展開に関する研究: 報告書」、2010
- Massachusetts Department of Transportation(MassDOT 2006),Project Development & Design Guide , 2006
- Massachusetts Department of Transportation(MassDOT 2010),Introduction to Roundabout, 2010
- New York State Department of Transportation(NYSDOT),ROUNDABOUTS: INTERIM REQUIREMENTS AND GUIDANCE , 2000
- Bruce W. Robinson, Lee Rodegerdts, Wade Scartborough, Wayne Kittelson, et al., ROUNDABOUTS: An informational guide, Federal Highway Administration, 2000
- Lee Rodegerdts et al.,NCHRP REPORT 572 - Roundabouts in the United States, TRANSPORTATION RESEARCH BOARD, WASHINGTON, D.C. 2007
- 滝川遼、大口敬、小根山裕之、鹿田成則 「ラウンドアバウト実道社会実験における走行実験の事前事後比較 」『土木計画学研究・講演集(つくば大)』No.43、土木学会、2011
- Jian-an TAN,Comparison of capacity between roundabout design and signalised junction design , Proceeding of 1st Swiss Transport Research Conference, 2001
- Thaweesak Taekratok, MODERN ROUNDABOUTS FOR OREGON #98-SRS-522, Oregon Department of Transportation, 1998
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 北米のラウンドアバウト
- Roundabouts: An Informational Guide by the U.S. Federal Highway Administration, FHWA-RD-00-67, June 2000
- Secion 3B.24 from the U.S. Manual on Uniform Traffic Control Devices
- The Magic Roundabout of Swindon
- Multilane Roundabouts an Information Sheet
- The Hanger Lane Gyratory System, London, England
- The Kinsale Road Roundabout, Cork, Ireland, on Google Maps
- イギリスラウンドアバウトの利用法、ヴィデオ・チュートリアル
- Mini-roundabouts - Getting them Right
- Roundabout Information and related CBC Article and Video