ファイト・クラブ (映画)
| ファイト・クラブ | |
|---|---|
| Fight Club | |
| 監督 | デヴィッド・フィンチャー |
| 脚本 | ジム・ウールス |
| 原作 | チャック・パラニューク |
| 製作 | アート・リンソン セアン・チャフィン ロス・グレイソン・ベル |
| 製作総指揮 | アーノン・ミルチャン |
| ナレーター | エドワード・ノートン |
| 出演者 | エドワード・ノートン ブラッド・ピット ヘレナ・ボナム=カーター |
| 音楽 | ザ・ダスト・ブラザーズ |
| 主題歌 | ピクシーズ 「Where is My Mind?」 |
| 撮影 | ジェフ・クローネンウェス |
| 編集 | ジェームズ・ヘイグッド |
| 製作会社 | リージェンシー・エンタープライズ |
| 配給 | 20世紀フォックス |
| 公開 | |
| 上映時間 | 139分 |
| 製作国 | |
| 言語 | 英語 |
| 製作費 | $63,000,000[1] |
| 興行収入 | $37,030,102[1] $100,853,753[1] |
『ファイト・クラブ』(Fight Club)は、1999年製作のアメリカ映画。日本では1999年12月11日に20世紀フォックス配給により、日比谷映画他、全国東宝洋画系にて公開された。チャック・パラニュークの同名小説の映画化。
注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。
目次 |
あらすじ [編集]
物語は、「僕(I)」の視点で進行する。「僕」(エドワード・ノートン)は自動車会社に勤務し、全米を飛び回りリコール調査の仕事をしている平凡な会社員。高級コンドミニアムに、有名デザイナーによるイケアのブランド家具、職人手作りの食器、カルバン・クラインやアルマーニの高級ブランド衣類などを強迫観念に駆られるように買い揃え、雑誌に出てくるような完璧な生活空間を実現させ、物質的には何不自由ない生活を送っていた。一方で、僕の精神の方は一向に落ち着かず、不眠症という大きな悩みがあった。
僕は精神科の医者に苦しみを訴えるが、医者に「世の中にはもっと大きな苦しみを持ったものがいる」と言われ睾丸ガン患者の集いを紹介される。その会で睾丸を失った男たちの悲痛な告白を聞いた僕は、自然と感極まり、これを契機に不眠症は改善した。
これが癖になった僕は末期ガン患者や結核患者などの自助グループにニセの患者として通うようになるが、僕と同様に偽患者として様々な互助グループに現れる女・マーラ(ヘレナ・ボナム=カーター)と出会う。どう見ても不治の病を患っているように見えない彼女が会に参加することで泣くことができなくなり、再び不眠症が悪化してしまう。
そんなある日、僕が出張中に自宅のコンドミニアムで爆発事故が起こり、買い揃えた家具もブランド衣服も全てを失ってしまう。家の無くなった僕は出張途中の機内で知り合った石鹸の行商人・タイラー=ダーデン(ブラッド・ピット)に救いの手を求めた。バーで待ちあわせたタイラーという男は、僕とは正反対の性格で、ユーモアあふれる危険な男だった。タイラーはバーを出た後、駐車場で僕にある頼みをする。「力いっぱい俺を殴ってくれ」。そして僕と彼は、ふざけ合いながらも本気の殴り合いを始める。
殴り合いでぼろぼろになった二人は、痛みの中で生きている実感を取り戻した気になった。以後、僕らは時々同様の殴り合いをするようになり、それを見ていた酔っ払いが殴りあいに参加し始め、やがて駐車場での殴り合いは毎晩のように行われるようになる。そのうちに場所を地下室に移し、大勢の男達が集まる1対1の「ファイト(喧嘩)」を行う集まりへと変わっていった。タイラーはこれをファイト・クラブと呼び、全員が公平に殴り合いに参加するためのルールを作っていった。「ファイト・クラブ ルールその1、ファイト・クラブのことを決して口外するな」。
社会での地位と「ファイト・クラブ」での強さは関係なかった。会社では”できない”男であっても「ファイト・クラブ」では自分よりマッチョな男を殴り倒した。本来の「男」としての強さを持ったものでも、現代社会での立場は非常に弱いものだったのだ。
僕は痣だらけの顔で会社に通っていたがもはや不眠は感じなかった。僕はタイラーの住む廃屋で二人暮らしをし、知識豊富なタイラーから偽善に満ちた世の中の仕組みや誰でもできる簡単なテロの方法の話などを聞いて楽しみ、高級痩身クリニックから捨てられた人間の脂肪を盗み、石鹸を作って売る副業を行った。
ある日ふとしたきっかけでマーラがタイラーに会い、不安定な三人暮らしが始まる。僕はタイラーとマーラの猛烈なセックスの音と、タイラーが自分を置き去りにして「ファイト・クラブ」のメンバーたちとなにかを行っていることに苛立ちを感じ始める。
タイラーは「ファイト・クラブ」の男たちに、昼間の平凡人としての時間に、何か社会に対する嫌がらせをしてケンカをし、わざと負けろという「宿題」を出す。メンバー達は町中で、店の客や通行人とケンカを始める。僕も「宿題」に取り組む。上司に会社のリコール隠しをばらしてやると口論をふきかけ、彼の前で自分で自分を殴ってぼろぼろになり、物音を聞いて駆けつけた他の社員の前で上司に暴行されたと吹聴し、訴訟を恐れた会社から在宅勤務の権利を認められ自由の身になった。
タイラーの「ファイトクラブ」メンバーに対する試練、自己滅却への扇動はさらに続いていたが、僕は蚊帳の外になっていた。メンバーの中から黒い服を着た「スペース・モンキーズ」と称する集団が現れ、主人公達の住む廃屋の地下で作業を開始した。モンキーズはみな自分の名前を捨てており、僕にすらも自分たちに与えられた目的を明かさなかった。疎外された僕にはタイラーの居場所もわからなくなっていた。
やがて「ファイト・クラブ」は、現代の社会構造や物質至上主義に疑問を持つ男たちの集まりへと徐々に姿を変えてゆき、タイラーの発案した「騒乱計画(プロジェクト・メイヘム)」、社会的権威に対する破壊工作をを実行するためのテロリスト集団に変貌していった。
大資本によるファストフード・チェーン店や都心に鎮座するパブリック・アートなどに対するいたずらじみた行為ではあったが、破壊活動中に「スペース・モンキーズ」の中から死者も出ることになる。これに対し警察は、社会秩序を不安に陥れる破壊行為と戦う対策を発表しようとするが、直前に会見場に乗り込んだタイラーとモンキーズは警察首脳を拉致・脅迫して対策発表を辞めさせた。僕はタイラーに再会するが彼は狂信者たちに囲まれており、タイラーの持つ死とすれすれの危険な自己破壊衝動は確実に強まっていた。
「騒乱計画 ルールその1、騒乱計画について質問するな」。僕はこのルールにより騒乱計画がどのようなものか知ることができなかったが、この計画がアメリカ全土の主要都市を壊滅させるテロ計画であると知り、首謀者のタイラーを止めに走る。
僕はタイラーの去った部屋から全米を飛び回った跡のある使用済み航空券を見つけ、彼の足取りをたどる。タイラーは全米のどの大都市にも「ファイト・クラブ」を作っており、どこでも「プロジェクト・メイヘム」の犠牲者は聖者としてたたえられていた。そんなとき、クラブのメンバーのいた店で見知らぬ店主に話しかけられた僕が自分は誰なのかと問うと、店主は「あなたはダーデンさんです」と答えた。
慌ててマーラに電話で自分の正体を確認したとき、再びタイラーが目の前に現れた。タイラーは自らの正体を「主人公にとっての理想の姿、もう一つの人格(オルター・エゴ)」だと明かした。主人公が夜中に不眠症になっていたのは別人格のタイラーとして映画館やレストランで働いていたからであり、爆破事故の真相は、雑誌や流行に踊らされて買った品物ばかりの虚飾に満ちた部屋をタイラーとしての自分が破壊したのであり、タイラーとの殴りあいも自分で自分にパンチを浴びせていただけであり、マーラとのセックスも「プロジェクト・メイヘム」の指令もすべてタイラーとしての自分が行っていたことだった。
さらに「スペース・モンキーズ」は地下室から忽然と消え、主人公は彼らの残したメモから市内各所にある銀行・クレジットカードなど、資本主義システムをつかさどり全米の個人のローンや資産を管理する大企業各社のビルに対する同時爆破テロが計画されていることを知る。
強い衝撃と後悔に見舞われた僕は、爆破を止めるため深夜のビル街へと向かう。爆破の寸前、ついに主人公は高層ビルでタイラーと対峙し、別人格タイラーと「殴りあい」をして床に倒れ、椅子に縛られタイラーに銃を突きつけられる。さらに主人公は窓からマーラがスペース・モンキーズに捕まり、連れて来られるのを目撃する。主人公にもはや勝ち目はないと思われたが、彼は「タイラーが銃を持っているということは、自分が銃を持っていることだ」と気づく。気づくと銃は主人公の手に握られており、彼は自分でのどを撃ち抜いた。
別人格タイラーを倒した主人公はマーラと抱き合うが、既にテロまでの時間はなかった。二人は手をつなぎ、金融会社の高層ビルが次々と崩壊する様をただ見ていた。
キャスト [編集]
| 役名 | 俳優 | 日本語吹き替え | |
|---|---|---|---|
| DVD・BD版 | フジテレビ版 | ||
| ナレーター | エドワード・ノートン | 平田広明 | 森川智之 |
| タイラー・ダーデン | ブラッド・ピット | 山寺宏一 | 堀内賢雄 |
| マーラ・シンガー | ヘレナ・ボナム=カーター | 高乃麗 | 勝生真沙子 |
| ボブ(ロバート)・ポールスン | ミート・ローフ | 玄田哲章 | 塩屋浩三 |
| エンジェル・フェイス | ジャレッド・レト | 川島得愛 | 堀川仁 |
| アーヴィン | ポール・ディロン | 伊藤栄次 | 牛山茂 |
| メカニック | ホルト・マッカラニー | 遊佐浩二 | 石塚運昇 |
| リチャード・チェスラー | ザック・グルニエ | 神谷和夫 | |
| リッキー | アイオン・ベイリー | 室園丈裕 | |
| スターン | 宝亀克寿 | ||
| 空港の警備員 | ボブ・スティーブンソン | ||
| トーマス | デイヴィド・アンドリュース | ||
| ファイトクラブの一員 | リッチモンド・アークウェッド | ||
作品解説 [編集]
主人公について [編集]
本作は、小説、映画とも主人公の一人称視点で進行するが、主人公の名前は終盤まで明らかにされない。作品の映画版のクレジットでは「ナレーター(Narrator)」と表記されている。便宜上、映画版で主人公が朗読する古本に書かれている人物の名を取って「ジャック」と呼ぶ場合がある[2]。
サブリミナル [編集]
映画ではサブリミナルでタイラーのイメージが挿入されている部分がある。これらは主人公がタイラーに出会う前、オフィスや空港での日常シーンで不意に数コマタイラーの姿が挿入されたり、よく見ると主人公とすれ違う人物の中にタイラーがいる、ホテルのCM中に勢ぞろいした従業員の中にタイラーがいる、といった具合である。また、この映画の根底に流れる男性性にダメ押しをするかのように、ラストシーンにほんの数コマペニスが写っている。Blu-ray版では、公開当時やDVD版で規制の問題でカットされていたサブリミナルカットが復活しており、ラストシーンのペニスのコマが無修正で収録されている。
舞台 [編集]
この映画の舞台は、アメリカのどこにでもありそうな大都市のひとつであるが、具体的にウィルミントンではないかと指摘する声もある。ウィルミントンは多くの大資本、とりわけクレジットカード会社などが本拠を置く金融都市である。映画中に登場する郵便番号はウィルミントンのものであり、劇中で言及されるニューキャッスル、デラウェアシティ、ペンズグローブといった街はウィルミントンの近くにある。主人公の住むコンドミニアムに書いてあるモットー「A Place To Be Somebody(誰かになるための場所)」はウィルミントン市のモットーと同じである。またラスト近くに出てくる街路の名もウィルミントンに実在する(金融エリアを実際に通っているわけではない)。
映画製作にあたり、ウィルミントンでのロケが意図されていたが、市当局は模倣犯が出るのを恐れ撮影を拒絶した。このためほとんどのシーンはロサンゼルスで撮られている。
小説版との違い [編集]
小説版との違いは多い。小説の膨大なセリフ(特に主人公の独白)は、映画版では発言の主がタイラーほか数人の登場人物に変更されている。また小説版では主人公とタイラーとの出会いの場がヌードビーチである点、小説版では主人公は騒乱計画に積極的に関わっており、疎外されている描写はないなどの違いがある。
またボバート・ポールセン(ボブ)がメイヘム計画の途中殺された経緯も変更されている。小説版ではATMにドリルで穴を開けて中身をどろどろしたもので満たそうとしていたところ、巡回中の警官に見つかりドリルを銃だと誤認されるというものである。
騒乱計画の目的について、映画版では主人公が推測するだけであるが、究極的な目的は小説版では描かれている。これは新しい暗黒時代をつくりだすことで人類の技術の進歩を遅らせることにある[3]。また歴史の消去も計画の目的の一つである。ビルを爆破する目的は、小説版ではビルを横倒しにして隣にある国立美術館を押し潰すことにある。
評価 [編集]
2001年の9・11アメリカ同時多発テロを、欧米先進国の資本主義社会・グローバリズムにあえぐ市民の立場から、予見した作品[4]。 実際、同時多発テロ直後の、実行犯が特定されていない段階においてのマスコミの論調でも、反グローバリズム活動家とイスラム過激派、双方の犯行の可能性が語られていた。
この映画を観たスタンリー・キューブリックはチラシのコメントで「現代の『時計じかけのオレンジ』だ」と絶賛した。フィンチャー監督自身は『時計じかけのオレンジ』のオマージュだと語っている。
アメリカでは反響を呼び、余り注目されていなかった小説版とその作家に脚光があたるきっかけになった。評論家からは(映画内で死んでいるのは一人にもかかわらず)あまりにも暴力的だと非難された上、公開当初は製作費を回収できずフォックス重役が何人も解雇される事態となった。ロジャー・イーバートはこの映画をいみじくも「マッチョ・ポルノ」と評している。2012年現在ではIMDbで『時計じかけのオレンジ』、『タクシー・ドライバー』などの名作を抑えて、ベスト20位台をキープしている。
2008年に英国最大の映画雑誌『エンパイア』が、読者1万人、ハリウッドの映画関係者150人、映画評論家50人を対象に「過去最高の映画」に関するアンケート調査を行い「歴代最高の映画ランキング500(The 500 Greatest Movies of All Time)」を発表した。その結果、『ファイト・クラブ』が10位にランクインした。また、同年に同誌が「最高の映画キャラクター100人(The 100 Greatest Movie Characters)」の調査を行ったところ、栄えある1位に輝いたのは、『ファイト・クラブ』でブラット・ピットが演じたタイラー・ダーデンだった。
受賞またはノミネート [編集]
| 映画賞 | 部門 | 候補 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 1999年度 | |||
| アカデミー賞 | 音響効果編集 | Ren Klyce Richard Hymns |
ノミネート |
| MTVムービー・アワード | 格闘シーン賞 | エドワード・ノートン | ノミネート |
| エンパイア賞 | 英国女優賞 | ヘレナ・ボナム=カーター | 受賞 |
| ラスベガス映画批評家協会賞 | DVD賞 | ノミネート | |
| 編集賞 | ジェームズ・ヘイグッド | ノミネート | |
| オンライン映画批評家協会賞 | 作品賞 | ノミネート | |
| 監督賞 | デヴィッド・フィンチャー | ノミネート | |
| 主演男優賞 | エドワード・ノートン | ノミネート | |
| 編集賞 | ジェームズ・ヘイグッド | ノミネート | |
| 脚色賞 | ジム・ウールス | ノミネート | |
| 2000年度 | |||
| オンライン映画批評家協会賞 | DVD賞 | 受賞 | |
| DVDコメンタリー賞 | 受賞 | ||
| DVD特別編賞 | 受賞 | ||
そのほか [編集]
- 映画ではブラッド・ピット演じるタイラーが「消費者への消費に対する強迫観念」について語っていたが、ピットが本作の前に出演した『12モンキーズ』でも似たようなことを語っているセリフがある。本作と『12モンキーズ』でピットが演じたキャラクターには繋がりはない。
- タイラーとマーラのセックスシーンは、役者が拒否したためCGで製作されている[5]。
脚注 [編集]
- ^ a b c “Fight Club (1999)” (英語). Box Office Mojo. Amazon.com. 2010年10月7日閲覧。
- ^ 20世紀フォックスの公式サイトでも「ジャック」と書かれている。
- ^ 映画では、ラスト近くのシーンでこうしたアイデアは語られている。
- ^ 『映画秘宝EX 映画の必修科目01 仰天カルト・ムービー100(洋泉社MOOK 映画秘宝 EX|映画の必修科目 1) 』 洋泉社〈洋泉社ムック〉、2011年、217頁。
- ^ 「映像+」05号(グラフィック社)
関連項目 [編集]
外部リンク [編集]
- 公式ウェブサイト
- ファイト・クラブ - allcinema
- ファイト・クラブ - KINENOTE
- Fight Club - AllMovie(英語)
- Fight Club - インターネット・ムービー・データベース(英語)
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