「凍雨」の版間の差分
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{{出典の明記| date = 2020年4月}} |
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[[File:Sleet (ice pellets).jpg|thumb|250px|凍雨、および比較のための[[1セント硬貨 (アメリカ合衆国)|アメリカ1セント硬貨]](約19 mm)]] |
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'''凍雨'''(とうう、{{lang-en-short|ice pellets}})は、主に[[球体|球]]形の[[透明]]な[[氷]]の粒が降る[[気象]]現象。[[雨]]粒や解けかけの[[雪]]が落下の途中で再び凍ったもの<ref name="最新気象">『最新気象の事典』p.376 菊池勝弘「凍雨」</ref><ref name="手引1">『気象観測の手引き』、pp.59-60.「表12-1 天気種類表」「表12-2 大気現象」より、「あられ」「凍雨」</ref><ref name="手引2">『気象観測の手引き』、p.61-64「表12-3 大気現象の種類と定義・解説 (1)大気水象」より、「凍雨」「雪あられ」「氷あられ」「ひょう」</ref><ref name="ICA">{{Cite web|url=https://cloudatlas.wmo.int/en/ice-pellets.html|title=Ice Pellets|work=International Cloud Atlas|publisher=WMO|date=2017|accessdate=2023-03-03}}</ref><ref name="AMSg">{{Cite web|url=https://glossary.ametsoc.org/wiki/Ice_pellets|title=ice pellets|accessdate=2023-03-02|date=2016-07-11|work=Glossary of Meteorology |publisher=American Meteorological Society([[アメリカ気象学会]]) |language=en}}</ref><ref name="npn">{{Cite kotobank|word=凍雨|author=篠原武次, 小学館『[[日本大百科全書]](ニッポニカ)』|accessdate=2023-03-03}}</ref>。 |
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'''凍雨'''(とうう、{{lang-en-short|ice pellets}})は、透明あるいは半透明の[[氷]]が[[雨]]のように降る[[気象]]現象。 |
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小さな[[ガラス]]玉にも形容される、透明または半透明の氷の粒{{R|手引1|ICA|AMSg|npn}}。直径5[[ミリメートル]](mm)未満のものをいい(5 mm以上は{{Ruby|[[雹]]|ひょう}})、多くは約1 - 4 mm{{R|手引2|ICA|AMSg}}<ref name="wen">{{Cite kotobank|word=凍雨|author=若浜五郎, 平凡社『[[世界大百科事典]] 第2版』|accessdate=2023-03-03}}</ref>。形は主に球形だが、突起の付いた不定形のものもみられ、稀に[[円錐]]形のものもある{{R|手引1|手引2|ICA|AMSg}}。突起は、凍結の過程で内部の液体水が飛び出して形成されると考えられている{{R|最新気象}}。[[雪片]]が元となる場合、完全に解ければ透明で、解け切っていなければ残った雪片が不透明な部分になる{{R|ICA}}。なお、極地では雪の結晶が付着した形のものも観測されている{{R|最新気象}}。完全に凍結しておらず、内部に液体水が残ったものもある{{R|手引2|ICA|wen}}。 |
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凍雨の[[密度]]は高くて、ふつう氷の比重約0.92に近く、液体が残る場合はそれよりも大きい値をとる{{R|手引2|ICA}}。凍雨は踏んでも簡単には潰れない。堅い地面に落ちると音をたてて弾む{{R|手引2|ICA}}。 |
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雨が上空で凍ったものと考えると分かりやすいが、厳密には[[雪]]が解けて再び凍ったものである。雪が雨に変わる際に見られる。 |
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また凍雨は非しゅう雨性の降水である<ref group="注">しゅう雨性の降水="対流性の雲から降る降水強度が急に変化する降水"ではないことを意味する。</ref>{{R|手引2}}。ふつう[[高層雲]]または[[乱層雲]]から降る{{R|手引2|ICA}}。 |
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地表付近の[[気温]]が0℃以下で、上空の気温が0℃以上の場合に発生する降水現象で、[[雪]]や[[霰|あられ]]が[[雲]]より落下する間に上空の0℃以上の空気の層を通過したために一旦[[融解]]して水滴となり、その後地表付近の0℃以下の空気の層を通過する間に再び[[凍結]]したものである。 |
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類似する固形降水として、[[霰|雪{{Ruby|霰|あられ}}]]は大きさが同じだが脆く白色不透明で密度が低く(比重0.8未満)、[[霰|氷霰]]は大きさや色味が同じで密度も同程度だが、雪霰や氷霰は積雲や積乱雲から降るしゅう雨性の降水であることから区別できる{{R|手引2}}。さらに{{Ruby|[[雹]]|ひょう}}は5 mmを超えるほど大きくしゅう雨性の降水であることから区別できる{{R|手引2}}。 |
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あられや雪が不透明あるいは半透明なのに対し、凍雨はほぼ透明で、場合によっては中心部が気泡により半透明になっているので区別できる。 |
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== メカニズム == |
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上空の0℃以上の空気の層に比べて、地表付近の0℃以下の空気の層が厚く、雨粒が再凍結するのに十分な冷気層があるときに起こる。同じような発生条件であっても、上空の0℃以上の空気の層が厚く、地表付近の0℃以下の空気の層が薄いと、雨粒は0℃以下であっても凍結しない[[過冷却]]状態となって[[着氷性の雨]]として降り、地面などに落ちた瞬間に凍結して[[雨氷]]となる。凍雨もあまりよく見られる気象現象ではないが、雨氷はほとんど見られない珍しい現象で、見られる地域も限られる。雨氷、凍雨ともに、温暖前線の前面で見られる。 |
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[[雲]]から落下する雨粒が、0 ℃以下の層を通り[[凍結]]して形成される。また、[[雪片]]がいったん0 [[セルシウス度|℃]]以上の層を通り[[融解]]、0 ℃以下の層を通り再び凍結してできるものもあるが、頻度は低い{{R|最新気象|ICA|AMSg|npn|wen}}<ref name="松下・西尾">松下・西尾、2004年</ref>。 |
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このようなプロセスは上空に気温の[[逆転層]]が存在することで起こる。凍雨は、上空の0 ℃以上の空気の層(暖気層、融解層)に比べて、地表付近の0 ℃以下の空気の層(冷気層、再凍結層)が厚いときに生じる傾向がある。なお、厚い0 ℃以上の暖気層に比して地表付近の冷気層が薄く、地表気温が0 ℃付近かそれを下回るとき、雨粒が[[過冷却]]状態の[[着氷性の雨]]として降り、地面などに落ちてまもなく凍結し[[雨氷]]となる場合がある{{R|松下・西尾}}。 |
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英語の"Freezing rain"は「[[着氷性の雨]]」のことを指しており、「凍雨」(ice pellets)の意味ではないので注意しなければならない。"sleet"はアメリカやカナダでは凍雨を指し、英国ではみぞれを指す。 |
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気象状況としては、発生例が多い[[アメリカ合衆国|アメリカ]]や[[カナダ]]では主に[[温暖前線]]付近に生じ、[[地形]]などの影響を受けて前線の降水域に重ねて暖気の移流と寒気塊が形成される領域で、気温などの条件に該当するとき発生の可能性がある。また、乾燥空気の流入は蒸発による冷却を促す要素になる{{R|松下・西尾}}<ref name="南雲">{{Cite journal|url=http://hdl.handle.net/2237/00030798 |
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また、気象学的に凍雨 (ice pellets) は、みぞれ (Sleet) とあられ (Graupel) の両方に含まれる。あられは雪あられ (snow pellets) と氷あられ (small hail) に分けられるが、凍雨と氷あられは外見上類似しているので同一視されることがある。氷あられは常に[[驟雨]]性である一方、凍雨は[[高層雲]]や[[乱層雲]]から降る驟雨性ではない降水である。 |
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|title=凍雨の形成機構と微物理過程に関する研究|author=南雲信宏|publisher=名古屋大学|date=2019-09}}</ref>。 |
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アメリカやカナダでは頻繁ではないもののしばしば発生する。雨から変わり、一時的に着氷性の雨を挟んで、凍雨に変わる経過をとる{{R|wen|ICA}}。 |
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日本では発生は稀{{R|wen}}。地域性があり、中部地方より北の山岳地帯と関東地方より北の太平洋側の平野部に偏って分布する{{R|松下・西尾}}。近年では、2005年4月10日に北海道札幌市付近、2016年1月29日に関東平野の北部で発生例がある{{R|南雲}}。 |
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{{国際式天気記号|79=H|83=H|84=H|87=H|88=H|93=H|94=H|96=H|99=H}} |
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[[国際式天気図]]の天気記号では、 |
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*79.凍雨 |
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*83.弱いしゅう雨性のみぞれ |
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*84.並または強いしゅう雨性のみぞれ |
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*87.弱い雪あられまたは氷あられ |
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*88.並または強い雪あられまたは氷あられ |
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*93.観測時に弱い雪、みぞれ、雪あられ、氷あられ、ひょう(前1時間に雷電があったが観測時にない) |
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*94.観測時に並または強い雪、みぞれ、雪あられ、氷あられ、ひょう(前1時間に雷電があったが観測時にない) |
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*96.弱または並の雷電で、観測時にひょう、氷あられ、雪あられを伴う |
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*99.強い雷電で、観測時にひょう、氷あられ、雪あられを伴う |
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の9種類が凍雨を表す。79のみが凍雨単独の状態で、外は雪などの現象を伴う状態を表す。 |
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[[日本式天気図]]の天気記号では、前述のとおり[[霙|みぞれ]]が凍雨を表す。ただし、雷を伴う場合は優先順位によりこれと異なることがある。 |
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日本の場合、予報や観測の場面により、凍雨は以下のように取り扱う。 |
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* 天気や大気現象の目視観測を行う拠点では、大気現象として凍雨を記録し、霰や雹などと区別している。自動気象観測装置を導入した拠点では、大気現象の記録を行っていない<ref>「報道発表 [https://www.data.jma.go.jp/osaka/topics/R01/20191216_mokushikansoku.pdf 地方気象台における目視観測通報を自動化します]」、大阪管区気象台、2019年11月16日、2023年1月24日閲覧</ref><ref>「[https://www.jma-net.go.jp/fukuoka/chosa/files/harerun0099.pdf 雪(初雪)の観測は誰がどのように行っているのですか?]」、福岡管区気象台『はれるんマガジン』36号、2022年12月27日、2023年1月24日閲覧</ref><ref>{{Cite web|title=天気の「快晴」がなくなった 「歴史的転換」迎えた観測|url=https://www.asahi.com/articles/ASN427F3CN3RUTIL02L.html|website=[[朝日新聞デジタル]]|accessdate=2020-04-03|language=ja}}</ref>。 |
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* 目視・自動どちらの拠点でも、[[天気]]としては、凍雨が降っても「あられ」(雪あられ、氷あられ又は凍雨が降っている状態)と記録する{{R|手引1}}。 |
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[[気象通報式#国際気象通報式|国際気象通報式]]<ref group="注">[[地上実況気象通報式|SYNOP]]・[[海上実況気象通報式|SHIP]]などに用いる96種天気。[[地上天気図#天気]]参照。</ref>では、凍雨単独を示す区分が1つあり、雪や雨などほかの減少を伴う場合はその区分として、選択して報告する。基本の記号は [[File:Symbol solid precipitation 79.svg|24px]] <ref>「[https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/symbols.html 国際式の天気記号と記入方式]」、気象庁、2023年3月3日閲覧。</ref><ref>過去の気象データ検索 > 「[https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/mdrr/man/tenki_kigou.html 天気欄と記事欄の記号の説明]」、気象庁、2023年3月3日閲覧。</ref>。 |
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[[定時飛行場実況気象通報式]] (METER) の「降水現象」の欄では、PLが凍雨を表す。 |
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ラジオ[[気象通報]]などの[[地上天気図#日本式天気図|日本式天気図]]では、観測時に凍雨が降っている場合に天気を「あられ」とする(天気記号は[[ファイル:Japanese Weather symbol (Snow pellets).svg|18px|あられ]])<ref>理科年表FAQ > 山内豊太郎「[https://official.rikanenpyo.jp/posts/6653 天気の種類はいくつあるのですか。その記号も教えてください。]」、[[理科年表]]オフィシャルサイト(国立天文台、丸善出版)、2008年3月、2022年3月3日閲覧。</ref>。 |
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[[航空気象]]の通報式<ref group="注">[[定時飛行場実況気象通報式|METAR]]や[[運航用飛行場予報気象通報式|TAF]]</ref>では、「降水現象」の欄のPLが凍雨を表す<ref>「[https://www.jma-net.go.jp/naha-airport/metar_taf.html METAR報とTAF報の解説]」、那覇航空測候所、2023年3月3日閲覧。</ref>。 |
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[[氷雨]]と同様に、凍雨を冷たい雨や冬の雨、[[霙]]などを指して用いることもある<ref>{{Cite kotobank|word=凍雨|author=小学館『精選版 [[日本国語大辞典]]』|accessdate=2023-03-03}}</ref>。 |
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[[世界気象機関]]など国際的には、英語では"ice pellets"が凍雨を指す{{R|AMSg}}。 |
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[[アメリカ英語]](アメリカやカナダ)では、"sleet"が凍雨を指す。また"ice pellets"は凍雨または霰を指す{{R|AMSg}}。 |
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[[イギリス英語]]では、"grains of ice"が凍雨を指す。また"sleet"は霙を指す<ref>{{Cite web|url=https://glossary.ametsoc.org/wiki/Grains_of_ice|title=grains of ice|accessdate=2023-03-02|date=2012-01-26|work=Glossary of Meteorology |publisher=American Meteorological Society}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://glossary.ametsoc.org/wiki/Sleet|title=sleet|accessdate=2023-03-02|date=2012-01-26|work=Glossary of Meteorology |publisher=American Meteorological Society}}</ref>。 |
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なお、英語の"freezing rain"は[[着氷性の雨]]を指す<ref>{{Cite web|url=https://glossary.ametsoc.org/wiki/Freezing_rain|title=freezing rain|accessdate=2023-03-02|date=2021-12-30|work=Glossary of Meteorology |publisher=American Meteorological Society}}</ref>。 |
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=== 出典 === |
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* 『最新気象の事典』、東京堂出版、1993年 ISBN 4-490-10328-X |
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* 『[https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kansoku_guide/hpc.html 気象観測の手引き]』、気象庁、1998年(平成10年)9月発行・2007年(平成19年)12月改訂。 |
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* {{Cite journal |和書 |author=松下拓樹、西尾文彦 |url=https://doi.org/10.5331/seppyo.66.541 |title=着氷性降水の気候学的特徴と地域性について |publisher=日本雪氷学会 |journal=雪氷 |volume=66 |issue=5 |pages=541-552 |date=2004 |naid=10013540743 |ref=seppyo2004}} |
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== 関連項目 == |
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2023年3月3日 (金) 16:48時点における版
凍雨(とうう、英: ice pellets)は、主に球形の透明な氷の粒が降る気象現象。雨粒や解けかけの雪が落下の途中で再び凍ったもの[1][2][3][4][5][6]。
性状と特徴
小さなガラス玉にも形容される、透明または半透明の氷の粒[2][4][5][6]。直径5ミリメートル(mm)未満のものをいい(5 mm以上は
凍雨の密度は高くて、ふつう氷の比重約0.92に近く、液体が残る場合はそれよりも大きい値をとる[3][4]。凍雨は踏んでも簡単には潰れない。堅い地面に落ちると音をたてて弾む[3][4]。
また凍雨は非しゅう雨性の降水である[注 1][3]。ふつう高層雲または乱層雲から降る[3][4]。
類似する固形降水として、雪
メカニズム
雲から落下する雨粒が、0 ℃以下の層を通り凍結して形成される。また、雪片がいったん0 ℃以上の層を通り融解、0 ℃以下の層を通り再び凍結してできるものもあるが、頻度は低い[1][4][5][6][7][8]。
このようなプロセスは上空に気温の逆転層が存在することで起こる。凍雨は、上空の0 ℃以上の空気の層(暖気層、融解層)に比べて、地表付近の0 ℃以下の空気の層(冷気層、再凍結層)が厚いときに生じる傾向がある。なお、厚い0 ℃以上の暖気層に比して地表付近の冷気層が薄く、地表気温が0 ℃付近かそれを下回るとき、雨粒が過冷却状態の着氷性の雨として降り、地面などに落ちてまもなく凍結し雨氷となる場合がある[8]。
気象状況としては、発生例が多いアメリカやカナダでは主に温暖前線付近に生じ、地形などの影響を受けて前線の降水域に重ねて暖気の移流と寒気塊が形成される領域で、気温などの条件に該当するとき発生の可能性がある。また、乾燥空気の流入は蒸発による冷却を促す要素になる[8][9]。
アメリカやカナダでは頻繁ではないもののしばしば発生する。雨から変わり、一時的に着氷性の雨を挟んで、凍雨に変わる経過をとる[7][4]。
日本では発生は稀[7]。地域性があり、中部地方より北の山岳地帯と関東地方より北の太平洋側の平野部に偏って分布する[8]。近年では、2005年4月10日に北海道札幌市付近、2016年1月29日に関東平野の北部で発生例がある[9]。
観測・記録
日本の場合、予報や観測の場面により、凍雨は以下のように取り扱う。
- 天気予報の予報文では、雪に含める形で予報される(
霙 と同様)[10]。 - 天気や大気現象の目視観測を行う拠点では、大気現象として凍雨を記録し、霰や雹などと区別している。自動気象観測装置を導入した拠点では、大気現象の記録を行っていない[11][12][13]。
- 目視・自動どちらの拠点でも、天気としては、凍雨が降っても「あられ」(雪あられ、氷あられ又は凍雨が降っている状態)と記録する[2]。
国際気象通報式[注 2]では、凍雨単独を示す区分が1つあり、雪や雨などほかの減少を伴う場合はその区分として、選択して報告する。基本の記号は [14][15]。
ラジオ気象通報などの日本式天気図では、観測時に凍雨が降っている場合に天気を「あられ」とする(天気記号は)[16]。
航空気象の通報式[注 3]では、「降水現象」の欄のPLが凍雨を表す[17]。
言葉
氷雨と同様に、凍雨を冷たい雨や冬の雨、霙などを指して用いることもある[18]。
世界気象機関など国際的には、英語では"ice pellets"が凍雨を指す[5]。
アメリカ英語(アメリカやカナダ)では、"sleet"が凍雨を指す。また"ice pellets"は凍雨または霰を指す[5]。
イギリス英語では、"grains of ice"が凍雨を指す。また"sleet"は霙を指す[19][20]。
なお、英語の"freezing rain"は着氷性の雨を指す[21]。
出典
注釈
出典
- ^ a b c d 『最新気象の事典』p.376 菊池勝弘「凍雨」
- ^ a b c d 『気象観測の手引き』、pp.59-60.「表12-1 天気種類表」「表12-2 大気現象」より、「あられ」「凍雨」
- ^ a b c d e f g h i j 『気象観測の手引き』、p.61-64「表12-3 大気現象の種類と定義・解説 (1)大気水象」より、「凍雨」「雪あられ」「氷あられ」「ひょう」
- ^ a b c d e f g h i j k “Ice Pellets”. International Cloud Atlas. WMO (2017年). 2023年3月3日閲覧。
- ^ a b c d e f g “ice pellets” (英語). Glossary of Meteorology. American Meteorological Society(アメリカ気象学会) (2016年7月11日). 2023年3月2日閲覧。
- ^ a b c 篠原武次, 小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』「凍雨」 。コトバンクより2023年3月3日閲覧。
- ^ a b c d e 若浜五郎, 平凡社『世界大百科事典 第2版』「凍雨」 。コトバンクより2023年3月3日閲覧。
- ^ a b c d 松下・西尾、2004年
- ^ a b 南雲信宏 (2019-09). 凍雨の形成機構と微物理過程に関する研究. 名古屋大学 .
- ^ “予報用語 > 降水”. 気象庁. 2023年3月3日閲覧。 “凍雨”
- ^ 「報道発表 地方気象台における目視観測通報を自動化します」、大阪管区気象台、2019年11月16日、2023年1月24日閲覧
- ^ 「雪(初雪)の観測は誰がどのように行っているのですか?」、福岡管区気象台『はれるんマガジン』36号、2022年12月27日、2023年1月24日閲覧
- ^ “天気の「快晴」がなくなった 「歴史的転換」迎えた観測”. 朝日新聞デジタル. 2020年4月3日閲覧。
- ^ 「国際式の天気記号と記入方式」、気象庁、2023年3月3日閲覧。
- ^ 過去の気象データ検索 > 「天気欄と記事欄の記号の説明」、気象庁、2023年3月3日閲覧。
- ^ 理科年表FAQ > 山内豊太郎「天気の種類はいくつあるのですか。その記号も教えてください。」、理科年表オフィシャルサイト(国立天文台、丸善出版)、2008年3月、2022年3月3日閲覧。
- ^ 「METAR報とTAF報の解説」、那覇航空測候所、2023年3月3日閲覧。
- ^ 小学館『精選版 日本国語大辞典』「凍雨」 。コトバンクより2023年3月3日閲覧。
- ^ “grains of ice”. Glossary of Meteorology. American Meteorological Society (2012年1月26日). 2023年3月2日閲覧。
- ^ “sleet”. Glossary of Meteorology. American Meteorological Society (2012年1月26日). 2023年3月2日閲覧。
- ^ “freezing rain”. Glossary of Meteorology. American Meteorological Society (2021年12月30日). 2023年3月2日閲覧。
参考文献
- 『最新気象の事典』、東京堂出版、1993年 ISBN 4-490-10328-X
- 『気象観測の手引き』、気象庁、1998年(平成10年)9月発行・2007年(平成19年)12月改訂。
- 松下拓樹、西尾文彦「着氷性降水の気候学的特徴と地域性について」『雪氷』第66巻第5号、日本雪氷学会、2004年、541-552頁、NAID 10013540743。