オーロラ

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アラスカのオーロラ
フェアバンクスのオーロラ

オーロラ(aurora)とは極域近辺に見られる大気の発光現象。

目次

[編集] 概要

名称はローマ神話の暁の女神アウロラ(Aurora)に由来する。北極近辺ではnorthern lights、南極近辺ではsouthern lightsとも呼ばれる。明るさはレイリーで表され、通常は数キロ〜数十キロレイリー、明るいもので百キロレイリー以上になる。日本本土で見られる確率が非常に少ない現象であるが、日本語(和語)では古来「赤気(せっき)」と呼ばれてきた。北欧神話においてオーロラは、夜空を駆けるワルキューレたちの甲冑の輝きだとされる。

[編集] 発生の原理

太陽に端を発する「太陽風」と呼ばれるプラズマ粒子の流れが地球磁場と相互作用し、複雑な浸入過程を経て地球磁気圏内の夜側に広がる「プラズマシート」と呼ばれる領域にたまる。プラズマシート中のプラズマ粒子が地球大気電離層)に向かって高速で降下し、大気中の粒子と衝突すると、大気粒子が一旦励起状態になり、それが元の状態に戻るときに発光する。これがオーロラの光である(発光の原理自体は蛍光灯と同じ)。

オーロラは肉眼では白くぼんやりとしか見えないことが多いが、それは発光自身が暗いためでいくつかの色をもっている。本が読めるほどの明るいオーロラだと、はっきりとその色を識別できる。

肉眼で見られるオーロラの色はほとんどが電子の降り込みが原因で、発光が起こっている高度によって違う。上方の高度200 km以上では赤色(630nm)、200kmから100kmの低高度では緑色(557.7nm)、そして稀に100km以下の最下部にピンク色や紫色を見ることができる。赤と緑は酸素原子によるもので、ピンク色(連続光)は窒素分子、紫(427.8nm)は窒素分子イオン(N2+)による。通常見られるのは緑色のオーロラである。これは大気の主組成の高度変化と関連しており、100km以上では窒素分子に比べ酸素原子が卓越していることを示す。また赤と緑の境は酸素原子の密度変化が影響している。降り込む電子のエネルギーが高くなると、平均的なオーロラの発光高度は低くなる。太陽活動現象に伴う磁気嵐により、たまに日本のような低緯度地方でも赤いオーロラが観測されることがある。これは磁気嵐によって磁力線が低緯度側にゆれることや、赤いオーロラが高高度であるために地平線に沈みにくいことと関係がある。

プロトン(陽子)オーロラの場合、励起され発光するのは降下してくるプロトン自身である。

オーロラ領域から観測されるのは可視光だけではなく、紫外線や、「AKR」と呼ばれるkm帯の電波、さらには降り込み電子の制動輻射によるX線など様々な波長の電磁波が存在する。

[編集] オーロラの分類

オーロラはその形態によって、カーテン状にはっきりと光る「ディスクリートオーロラ」、ぼんやりと光る「ディフューズ(拡散)オーロラ」、またオーロラオーバルの内部に太陽地球を結んだ方向へと発達する「極冠域オーロラ」に分けられる。

ディスクリートオーロラはプラズマシート中の電子サブストームのような地球磁気圏内の爆発的な過程から極域に流入し、オーロラ上空に存在する磁気圏夜側の電場構造により加速され、地球高層大気の電離層にまで一気に降り込んで大気中の酸素原子窒素分子と衝突して地球大気を光らせる現象である。ディスクリートオーロラを引き起こすオーロラ電子加速電場の成因には様々な説が提唱されているが、その完全な解明には未だ至ってはいない。

ディフューズオーロラはプラズマシートの電子や陽子が地球磁気圏内の波動によりピッチ角散乱を受け、降り込んでくるものである。ディフューズオーロラは、時に1秒から10秒程度の周期で光度を変えることがあり、脈動 (pulsating) オーロラと呼ばれることもある。

また極冠域オーロラは、太陽風中の惑星間空間磁場の急激な変化によりプラズマシートの形状が変形して現れる。このようにプラズマ粒子の電磁流体力学的な振る舞いにより、極域オーロラの活動や活動域は地球磁気圏内の構造や物理過程と直結している。

[編集] オーロラの見られる場所

宇宙から見た南極付近のオーロラ(背景の地球は合成)
土星のオーロラ。可視光で撮影した土星本体と、紫外線で撮影したオーロラを合成したもの。

オーロラは南極北極においてほぼ対称的に発生する。また完全な極点近傍ではあまり発生せず、緯度が大体65度から80度の、地球の磁極を取り巻くドーナツ状の領域に高頻度で発生する。この領域を「オーロラオーバル(オーロラベルト)」と呼ぶ。オーロラがこの領域でよく発生するのは、オーロラ発光の原因であるプラズマ粒子がほぼ磁力線に沿って動くという性質を持っていることと関係している。プラズマ粒子がその主要な供給源であるプラズマシートから地球電離層まで磁力線に沿って進入すると、このドーナツ上の領域にたどり着くため、そこでオーロラが発光しやすいのである。

カナダのイエローナイフやユーコン準州のドーソンシティ、アラスカのフェアバンクスがオーロラがよく見られる場所として有名で、多くの観光客や写真家が訪れる。南極の昭和基地でもオーロラがよく見られ、観測が行われている。

また、稀ではあるが日本でもオーロラを観測出来ることがある。多くは北海道であるが、1958年2月11日には北陸から関東にかけて、さらに1770年9月17日には長崎でも観測されたという記録が残っている[1]。最古の記述は日本書紀まで遡り、推古天皇統治時代の620年に、天に赤気が現れ長さは一丈(約3.8 m)あまり、雉の尾のようであったと記録が残る。以降藤原定家明月記などにオーロラに推定される記録が十数件残されている。

オーロラは地球に限らず、これまで火星[2]金星木星土星天王星海王星でも観測されていて、大気と固有磁場をもつ惑星の普遍的な現象であると言われている。

[編集] オーロラの音

磁気嵐のときに現れるような強いオーロラがまれに音を発したという話が古くより数多く存在しており[3][4]、その実在をめぐって議論が行われている。 このオーロラの音 (auroral sound) は聞こえるとしても非常にまれであり、強いオーロラが出ても何も聞こえないことも多い。 また同時に多くの人が聞いた例もあれば、隣同士にいて一方にしか聞こえなかった例もある。 多くの体験者はこの音がその眼に見えるオーロラの動きと同調して変化すると主張しており音波の伝播による時間遅れはほとんどみられない。 音は衣ずれにしばしば例えられる「シュー」といったノイズ音や、「パチパチ」といった断続音が代表的である。

すでにローマ時代のタキトゥスの『ゲルマニア』にも、それを表しているともされる記述があるが[5][6]、科学的な議論は19世紀末から活発になった[7]。 この音に対しては、主観的現象であるとするものや外界の物理的実在であるとするもの、またオーロラが何らかの係わりをもつとするものや関係のない音とするものなど、さまざまな説が提出されてきた。 しかし現在でも原因ははっきりしておらず、装置で記録された明確な証拠も得られていない。

例えば、ヒトの耳ではいつでも小さな耳鳴りがしているが、静寂の中でこうした音に気づくだけだとする説が古くからある[8][9]。 また外界の物理的な音ではあるがオーロラとは関係なく、−40℃ のような低温で呼気中の水分が凍って、氷の粒子が衝突することによる音であるとする主張もある[10]。 逆に、音はオーロラに関係するものの主観的なもので、オーロラが網膜の広い範囲を同期して刺激することで視覚情報が聴覚へと漏れだす一種の共感覚的現象ではないかともされる[11]。 ただし例えば、19世紀の探検家オギルヴィー (William Ogilvie) はオーロラの音が聞こえていた探検隊のメンバーを目隠ししても、オーロラが活発になったほぼすべての瞬間に対応して反応したとしており[12]、これらの説は必ずしも証言をうまく説明するものとはなっていない。

オーロラが、ヒトの耳に聞こえないような低い音波(可聴下音infrasound, 20 Hz 以下)を伝えていることは1960年代から知られており、これはオーロラから直接伝わってくる音波である[13]。 耳に聞こえる音もこうしたオーロラからの直接の音波ではないかともされる。 しかし、こうした音はオーロラから届くまでに数分の時間がかかり同調して変化するという証言に合わない上、1 Hz かそれ以下で顕著なものであり、いくらか高い周波数、例えば 40 Hz では地上に届くまでにエネルギーが 1/1000 にまで減衰してしまう[8]

カナダの天文学者クラレンス・チャントは20世紀の初めより学術雑誌上でオーロラの音に関する多くの情報を集め、1923年には音がブラシ放電によるコロナ音の可能性が最も高いと結論した[7][14]。 この考えは1970年代にこのオーロラの音を最も精力的に調査したシルヴァーマン (S. M. Silverman) らによっても支持されている[3]。 晴れた日の開けた地面には 1 m あたり 100 V の静電場があるが、オーロラがあるとこれはときに 10 000 V/m にまで上昇する[15]。 この説ではこのとき観察者のそばの木の梢など、とがって電場が強くなるところからの放電が音を発生させているとする。 こうしたブラシ放電の音は雷雲が接近した山中や、湿気が多い日の高圧送電線でも聞かれることがあるものである。 ただし、オーロラの音においてはセントエルモの火のような放電にともなう光は観察されておらず、またこの説は同じ場所にいた一部の人にだけ聞こえたという事例を説明できないという問題点が指摘されている[15]

対して、オーストラリアの天文学者コリン・ケイ (Colin Keay) は、オーロラの音は電磁波音ではないかとしている[16]。 ケイは、巨大な流星が流れるのと同時にまれに音を立てるといわれる現象に対し、1980年に可聴域周波数 (20 Hz – 20 kHz) の電波が何らかのトランスデューサーとなるものを介して音波になるというではないかとの説を唱えていた[17]。 こうした電磁波から音波への変換による音が電磁波音とよばれる。 ケイの実験ではピーク間 160 V/m の 4 kHz の電場の振動があれば、髪の毛やメガネなどを介して一部の人はこうした音を聞くことができるとする。 こうした極超長波超長波の電波は実際衛星や地上の測定で確認され、録音されている[8][18]。 一方でシルヴァーマンらはケイの議論で必要とされる電波は大き過ぎ、不合理であるとしている[19]

一方、オーロラの音波を直接録音しようとした試みははっきりとした成果をあげていない。 アラスカでは1960年代に録音が試みられたが、太陽の活動が不活発な時期にあたっていたこともあり成功していない[3]。 2000年からはフィンランドで、音声記録と低周波の電波の測定実験が行なわれている[20]。 2001年の1晩のデータだけからの解析では、オーロラの活動が活発なときに音波の変動が大きくなることが示され、また音響記録と地磁気の変動との間で時間遅れのない相関が見出されたとしている。 しかし、電場との相関はなく、記録された音がオーロラの音と同じものなら、局所的な電場あるいはその変動がオーロラの音の原因とは考えにくく[21][22]、これはブラシ放電や電磁波音という説明が成立しないことを示唆している。

[編集] オーロラ写真撮影

撮影上の注意に関しての文献はこれが詳しい。[23]冬季の撮影の場合、極めて寒い場所であり、なおかつ雪上からの撮影となるので、電池の性能が極端に落ちる(カメラに使い捨てカイロ使用が推奨されている)。デジタルカメラでの撮影では、色はホワイトバランスによる。露出に関しては、レンズの明るさや感度設定、さらにオーロラ自体の明るさも考慮に入れる必要がある。普通は5秒から1分の間での調整を行う。明るい広角レンズがお勧めである。三脚は必須であるが、冬季の取り扱いに際して、凍傷への注意が呼びかけられている[24]

[編集] 脚注

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  1. ^ 日本でも赤いオーロラが見られた!(NAOニュース)
  2. ^ [1]
  3. ^ a b c Silverman, S.M.; T.F. Tuan (1973). “Auroral Audibility”. Advance in Geophysics 16: 155–259. 
  4. ^ Vaivads, Andris. “The List of Auroral Sound Observations”. Auroral Sounds. 2011年2月27日閲覧。
  5. ^ Rouse, M.L. (1881). “Letters to Editor — Tacitus on the Aurora”. Nature 23: 459. doi:10.1038/023459b0. 
  6. ^ タキトゥス 『ゲルマニア』、45章。「また音が聞こえるとも、神々の姿と頭から放たれる光線が見えるともいう」
  7. ^ a b Keay, Colin S.L. (1990). “Chant, C.A. and the Mystery of Auroral Sounds”. Journal of the Royal Astronomical Society of Canada 84: 373 382. http://adsabs.harvard.edu/abs/1990JRASC..84..373K. 
  8. ^ a b c Vaivads, Andris (2002年). “Most Popular Theories”. Auroral Sounds. 2011年2月27日閲覧。
  9. ^ Sexton, Samuel (1885). “The Value of the Testimony to the Aurora-Sound”. Nature 32: 625–626. doi:10.1038/032625e0. 
  10. ^ Sverdrup, H.U. (1931). “Audibility of the Aurora Polaris”. Nature 128: 457. doi:10.1038/128457b0. 
  11. ^ Roederer, Juan G. (1981). “The perception of sound in association with auroras”. Journal of Acoustical Society of America 69: S113 (abstract).  The 101st Meeting of the Acoustical Society of America.
  12. ^ King, W.F. (1907). “Audibility of the Aurora”. Journal of the Royal Astronomical Society of Canada 1: 193–194. http://adsabs.harvard.edu/abs/1907JRASC...1..193K. 
  13. ^ Auroral Infrasound”. Infrasound Research Group. Geophysical Institute, University of Alaska Fairbanks. 2010年2月4日閲覧。
  14. ^ Chant, C.A. (1923). “The Audibility of the Aurora”. Journal of the Royal Astronomical Society of Canada 17: 273 284. http://adsabs.harvard.edu/abs/1923JRASC..17..273C. 
  15. ^ a b Keay, Colin. “History of Auroral Sounds”. Geophysical Electrophonics. 2010年2月7日閲覧。
  16. ^ Keay, Colin. “Explanation of Auroral Sounds”. The Aurora, Space Weather. IPS Radio and Space Services, Geoscience Australia. 2010年1月29日閲覧。
  17. ^ Keay, Colin (1997年). “Geophysical Electrophonics”. 2010年2月7日閲覧。
  18. ^ McGreevy, Stephen P.. “Stephen P. McGreevy's Ground-based ELF-VLF Recordings”. Radio and Plasma Wave Group, the University of Iowa. 2010年2月7日閲覧。
  19. ^ A Note on Anomaloug Sounds From Meteor Fireballs and AuroraeJournal of the Royal Astronomical Society of Canada 1984, 78, 145–150.
  20. ^ Auroral Acoustics”. Laboratory of Acoustics and Audio Signal Processing, Helsinki University of Technology. 2010年1月30日閲覧。
  21. ^ Laine, Unto K.; Esa Turunen, Jyrki Manninen, Heikki Nevanlinna (2002). “Measurements and Analysis of Auroral Sounds in Finland 2000–2001” (PDF). XXVIIth General Assembly of the International Union of Radio Science. Maastricht, the Netherlands. http://www.ursi.org/Proceedings/ProcGA02/papers/p1901.pdf 
  22. ^ Hautsalo, Janne (2005) (PDF). Study of Aurora Related Sound and Electric Field Effects. (Master Thesis). Helsinki University of Technology. http://lib.tkk.fi/Dipl/2005/urn007898.pdf. 
  23. ^ http://yoshiokan.5.pro.tok2.com/aurora/au32.html on March 2, 2009
  24. ^ パンフレット失敗しないオーロラの撮影方法

[編集] 参考文献

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[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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