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* [http://www.n-sharyo.co.jp/business/tetsudo/topics/tp181114.html 東京地下鉄 (株) 殿向け丸ノ内線用2000系完成] - 日本車輌製造
* [http://www.n-sharyo.co.jp/business/tetsudo/topics/tp181114.html 東京地下鉄 (株) 殿向け丸ノ内線用2000系完成] - 日本車輌製造
* [http://tetsudo-shimbun.com/article/topic/entry-1522.html 東京メトロ『赤い』丸ノ内線の新型車両「2000系」お披露目] -鉄道新聞
* [http://tetsudo-shimbun.com/article/topic/entry-1522.html 東京メトロ『赤い』丸ノ内線の新型車両「2000系」お披露目] -鉄道新聞
* [https://www.tokyometro.jp/susumetro/newmarunouchitrain/ 東京メトロNEW MARUNOUCHI TRAIN『すすメトロ』] - 東京地下鉄


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2019年5月31日 (金) 09:16時点における版

東京メトロ2000系電車
東京メトロ2000系電車
(後楽園駅 2019年3月2日撮影)
基本情報
運用者 東京地下鉄
製造所 日本車輌製造
製造年 2018年 -
製造数

7編成42両(2019年5月5日現在) 

(53編成318両予定)
運用開始 2019年2月23日
投入先 丸ノ内線
主要諸元
編成 6両編成
軌間 1,435 mm
電気方式 直流600V
第三軌条方式
最高運転速度 65 km/h
設計最高速度 80 km/h
起動加速度 3.3 km/h/s
減速度(常用) 4.0 km/h/s
減速度(非常) 5.0 km/h/s
編成定員 752人
車両定員 先頭車122人(座席36人)
中間車137人(座席44人)
自重 28.8 - 32.9 t
編成重量 189.5 t
全長 18,000 mm
全幅 2,780 mm (基準幅)
全高 3,480 mm
台車 ボルスタ付きモノリンク式片軸操舵台車
SC101形
主電動機 永久磁石同期電動機
駆動方式 WN駆動方式
歯車比 109:14 (7.79)
編成出力 1,200 kW
制御方式 PWM2レベルVVVFインバータ制御
制動装置 ATC連動電気指令式空気ブレーキ回生ブレーキ併用)
保安装置 CS-ATCATO
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東京メトロ2000系電車(とうきょうメトロ2000けいでんしゃ)は東京地下鉄(東京メトロ)丸ノ内線用の通勤形電車

2019年平成31年)2月23日より営業運転を開始した[1]

概要

本系列は1988年昭和63年)から丸ノ内線で運用されている02系が初期車の落成から30年以上が経過し、老朽化が進んでいること[2]や、2020年東京オリンピック パラリンピックに向けて、東京メトロの魅力を発信するため[2]開発された。

車体はアルミニウム合金の中空押出し形材を使用したダブルスキン構造をFSW(摩擦攪拌接合)で接合した車体構造としている[2]。近年の新造車両同様に万が一のオフセット衝突事故に備えて、従来の妻面の車体端角部の構造は、車体端角部が三角に面取りされた形状としていたが、そこに強度の大きい三角形を基本とした、肉薄の三角形の板を重ねた構造の形材を使用して補強されており、フラットな形状としている。また、将来の廃車時におけるリサイクルを考慮して車体に使用されるアルミ合金の材質統一が図られている。[2]

銀座線1000系で培った技術を更に発展させた最新技術を採用するとともに、様々な部門から集まった社員が丸ノ内線の特徴から導き出したキーワード「地上」、「活気」、「先進的」に基づき、世界有数の大都市“TOKYO”に活気を与えるインパクトのある形状や四季に映える色、そして丸ノ内線の開業時に走行していた500形の車体色の再現として鮮やかなグローイング・スカーレット(glowingScarlet)を車体カラーに取り入れた[3]。 当時の車体色を表現するために車体全体をグローイング・スカーレット色のカラーフィルムを貼り付ける「フルラッピング車両」とした。

グローイング・スカーレット色の車体には開業当時から受け継がれてきた「サインウェーブ」を配している[2]前照灯はかつて丸ノ内線で運用されていた500形の形状をモチーフとした鍵形である。

形式称号は、東京メトロ移行後に設計された狭軌架空電車線方式の新型車両に対して10000番台の形式称号を使用しているが、本形式は銀座線1000系と同様に「軌間と電気の供給方式が異なる(標準軌第三軌条集電方式)」ことから、走行できる路線構造が共通しない「他の路線と区別する」ため、4桁の形式称号とした[4][5]

車内設備

車内デザインは丸ノ内線の 路線カラー赤色黒色のコントラストを付けたシックで、メリハリのある室内デザインとした。 内装カラーは淡いピンク色の内板を基調としたものとして、妻面と袖仕切板にはダークな木目調とした[2]。床敷物は濃いめのピンク色とした[2]。車内は千代田線用の16000系東西線用の15000系銀座線用の1000系日比谷線用の13000系に採用された 荷棚底面や袖仕切の一部・車両間貫通扉強化ガラスを使用したものとして車内に開放感を持たせたものとした[2]。つり革は、全身が黒色で丸形と楕円形の2種類がある。

座席表地は一般席は黒色をベースとして、背ずりに座席区分が分かる赤と黒を基準としたグラデーション模様を採用し[2]優先席は赤の部分をオレンジとした。

室内灯にはLED照明を採用することで、従来の蛍光灯よりも約40%の省エネルギー化が実現されている[2]。車両間貫通扉は全面ガラス構成とされており[2]、ガラス扉には衝突防止の表記として丸ノ内線の路線図をモチーフに、同線の沿線名所のアイコンイラストを配置したデザインを採用した[注釈 1][2]

バリアフリーへの配慮として、客用ドア下部には床面との識別をしやすくするために黄色着色を施した「出入口識別表示板」を、客用ドア上部にはドア開閉時または乗降促進放送使用時に赤く点滅する「ドア開閉表示灯」を設置している[2]

フリースペースは編成内のすべての車両の車端部に配置してあり、地下鉄車両としては初のコンセントを設置している。特に優先席部では前述した座席表地の色調変更のほか、付近のつり革および座席端の袖仕切縦握り棒をオレンジ色着色として識別している[2]

旅客案内機器

車内の各ドア上部には17インチ液晶ディスプレイ [注釈 2](LCD・TVIS) を用いた車内案内表示器を設置した[2]。LCD画面は3画面が設置され、左側の画面はTokyo Metro ビジョン広告動画用として、中央、右側の画面は行先案内・乗り換え案内等の旅客案内用として使用する[2]

丸ノ内線初の搭載となる側面行先表示器と前面運行番号表示器は視認性に優れたフルカラーLEDを採用している。行先の左に駅ナンバリングの表示が追加された[2]

乗務員室

運転台T字形ワンハンドルマスコンおよび速度計・圧力計・表示灯等の計器類を液晶モニターに集約したグラスコックピット構造を採用した[2]

この液晶画面は正面パネルに2画面、右側部に1画面が設置されており、通常は正面パネルの左側を計器表示用として、右側を車両制御情報管理装置 (TIS) 用として使用するほか、残るもう1画面は正面パネル画面の故障時のバックアップ用として使用する。

放送装置には自動放送装置を搭載しているほか、車外案内用として車外放送用スピーカーを設置している。このスピーカーは、運転手が混雑時に素早く乗降を促す際に使われる。車上メロディーは02系と同じく、A線が「街並みはるか」B線が「舞フラワー」である。02系と違い、2000系は半音メロディーが高音である。

走行機器

制御方式には千代田線16000系や銀座線1000系、丸ノ内線02系大規模改修車と同じ永久磁石同期電動機PMSM)を用いたVVVFインバータ制御方式を採用した[2]

制御装置はオールSiC-MOSFET素子を使用した東芝製2レベルVVVFインバータ装置(レゾルバレス・ベクトル制御・オール電気ブレーキ対応)を採用した[7][2]。電動機制御はPMSMを採用したことにより、モーターの回転子の回転に同期した制御が必要となるため、インバータ1基で1基の主電動機を制御する1軸個別制御方式の1C1M制御を1群とし、インバータ装置は2群分の制御回路を1台のインバータユニットに集約した「2in1形」インバータ装置を採用することで装置の小形化を実現している。装置は2200形・2500形では4個モーター制御(1C1M4群制御)とし、2200形では自車と隣接する2100形と2300形の各1軸を、2500形では自車と隣接する2000形と2400形の各1軸を制御し、2300形では2個モーター制御(1C1M2群制御)とし、自車と隣接する2400形の各1軸をそれぞれ制御する[2]

主電動機は回転子に永久磁石を使用した永久磁石同期電動機(PMSM・電圧400V・電流198A・定格回転数1,890rpm、1時間定格150kW出力)のMM-S2B形(東京メトロ形式。メーカー形式はSEA-534A形)で、従来の三相誘導電動機よりも効率が高い[2]歯車比は109:14 (7.79) と高めにとっている[2]

補助電源装置はIGBT素子を使用した140kVA容量の三菱電機静止形インバータ (SIV) で、直流600Vを入力し、三相交流200Vを出力する。車両内で使用する全ての電源をまかなうもので、編成で2台を搭載する。

空気圧縮機 (CP) は、近年の新造車で実績のあるスクロール式ユニットコンプレッサを採用している。この装置は小容量のコンプレッサ3台と除湿装置など周辺機器も含め1台の箱に集約したもので、低騒音や保守性に優れている。

保安装置は車内信号ATCのほか、日本の地下鉄で初の無線式列車制御システムCBTC装置を装備。2022年度末に開始予定。

台車

台車は1000系に続いて住友金属工業(現・日本製鉄)が開発した軸箱支持装置がモノリンク式のボルスタ付き自己操舵機能台車SC101形を採用した[2]。これは走行安定性の向上のために採用されたものである。

1つの台車にある2軸のうち、片側の台車枠と軸箱を繋いで輪軸を支える軸箱支持装置は、モノリンク式支持の非操舵軸(固定軸)だが、もう一方の片側は、モノリンク式に操舵リンク機構を取り付けた操舵軸となっている[2]。これは、台車枠と軸箱を繋いで輪軸を支えるモノリンク式のリンクが、リンク機構を介してボルスタ(枕ばり)と台車枠に繋がっているもので、曲線走行時にボルスタと台車の間で発生する相対的なボギー変位がてこの原理を使用したリンク機構を介して輪軸に伝達されるようになっている。これによって輪軸をレールの外軌側(カーブでの外側のレール)に移動させるとともに、曲線内外の軸距を調節して車輪をレール方向に沿わせることができるため、曲線通過時にレールにかかる横圧が約20%低減され、曲線通過がスムーズになるだけでなく、振動・騒音が低減される[2]

主電動機は先頭車前位寄りを除いた車端側の全ての非操舵軸(固定軸)に搭載されており、車体中心側の操舵軸は全て付随軸となっている[2]。これは、曲線での出入部分での軸重が変動しやすい車端側を非操舵軸とすることで、軸重を増して輪軸抜けを防止するためである。この関係で車種としては全車M車で編成としては6Mだが、先頭車は4軸のうち連結面寄りの1軸、中間車は4軸のうち各連結面寄りの1軸(1両2軸)が動力軸となっており[2]、動力軸の数という面で見ると2.5M3.5Tとなる。

また、基礎ブレーキについては非操舵軸(固定軸)は一般的な踏面ブレーキ方式(ユニットブレーキ)だが、操舵軸はディスクブレーキ方式とされ、合わせて踏面清掃装置が設けられている[2]。このほか、車両留置時における手歯止め取り付け作業を軽減させるため、先頭車の前位寄り台車の操舵軸(ディスクブレーキ)には駐車ブレーキを設置している[2]

ブレーキ制御

本系列のブレーキ制御は従来の車両と異なる各軸個別制御システムを採用した[2]。これは、本系列では1台車内に2種類の基礎ブレーキが併存しており、同一の制御ができないためである[2]

また、本系列は18m級の小型車体で艤装スペースが少ないことから、ブレーキ装置は小型のものが採用されたほか、各軸制御が可能な超小形ブレーキ受信装置一体形ブレーキ作用装置を新規開発して各車2台搭載している[2]。ブレーキシステムは回生ブレーキの有効活用を図るため遅れ込め制御を導入しているが、本系列の複雑なM・T軸の配置から16000系で採用した車両制御情報管理装置 (TIS) を用いた編成統括回生ブレンディング制御を採用している[2]

これは、TISにより編成全体で必要なブレーキ力を算出して、編成全体での回生ブレーキでもブレーキ力が不足する場合に空気ブレーキで補足するもので、不足分を補足するように操舵軸(付随軸)のブレーキ作用装置に指令が送られるようになっている[2]

編成

東京メトロ2000系 編成図
 
号車 1 2 3 4 5 6
形式 2100形 2200形 2300形 2400形 2500形 2000形
区分 CM M1 M2 M3 M4 CT
搭載機器 SIV
BT
VVVF

(4MM制御)
CP

IR VVVF

(6MM制御)

SIV CP
BT
車内設備 車椅子スペース 車椅子スペース 車椅子スペース 車椅子スペース 車椅子スペース 車椅子スペース
定員
()内は座席定員
122
(36)
137
(44)
137
(44)
137
(44)
137
(44)
122
(36)

凡例

  • VVVF: VVVFインバータ装置
  • SIV: 補助電源装置(静止形インバータ)
  • CP: 空気圧縮機
  • BT: 蓄電池
  • IR: 誘導無線アンテナ
  • 車椅子スペース: 車椅子/ベビーカースペース

丸ノ内線での運用

2018年度に試作車両として第01編成を日本車輌製造にて製造し、同年8月18日より同社豊川製作所から甲種輸送により横浜本牧駅まで輸送された。同駅からはトレーラートラックによる陸送により、中野車両基地に搬入した。

搬入後の2018年平成30年)9月から各種性能確認試運転および乗務員訓練を実施し、その後2018年10月11日に報道陣に公開された[8]

2019年(平成31年)2月23日より営業運転を開始し、2022年度末までに全53編成を置き換える予定[9]

脚注

注釈

出典

  1. ^ 丸ノ内線新型車両2000系いよいよデビュー! 2019年2月23日(土)より運行開始します!” (PDF). 東京地下鉄株式会社 (2019年2月19日). 2019年2月19日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai 東京地下鉄(株) 鉄道本部 車両部 設計課 橘田祐司「新車ガイド「東京地下鉄2000系」」『鉄道ファン 2019年2月号』、交友社、52-58頁。 
  3. ^ "丸ノ内線新型車2000系を導入します" (Press release). 東京メトロ. 26 March 2018.
  4. ^ 東京メトロ完全データDVD BOOK. メディアックス 
  5. ^ 東京メトロの新型2000系 「数字4桁」に込められた路線の構造とは? - 乗りものニュース (草町義和) 、2018年3月29日
  6. ^ 橋田祐司 (2018). “新車ガイド 東京メトロ2000系”. 鉄道ファン 694: 52~58. 
  7. ^ 交友社「鉄道ファン」2019年2月号の新車ガイドより
  8. ^ 東京メトロ,2000系を報道陣に公開”. 鉄道ファン.jp (2018年10月11日). 2018年10月11日閲覧。
  9. ^ 丸ノ内線に「真っ赤でまあるい」新型車両 約30年ぶり”. 朝日新聞社 (2019年2月23日). 2019年2月23日閲覧。

参考文献

  • 交友社鉄道ファン』2019年1月号新車速報「東京地下鉄2000系」(資料提供・取材協力:東京地下鉄)
  • 交友社「鉄道ファン」2019年2月号新車ガイド「東京地下鉄2000系」(東京地下鉄(株)鉄道本部 車両部 設計課 橘田祐司 著)

外部リンク