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* [[B型肝炎]]ウイルスワクチン([[C型肝炎]]その他は開発中)
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* [[サーバリックス|2価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン]]
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* [[ガーダシル|4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン]]
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2017年12月4日 (月) 17:16時点における版

HPVワクチン

ワクチン: Vakzin: vaccine)は、感染症の予防に用いる医薬品病原体から作られた無毒化あるいは弱毒カ化された抗原を投与することで、体内に病原体に対する抗体産生を促し、感染症に対する免疫を獲得する。

イギリス英語でヴァクスィン(英語発音: [væksín])、アメリカ英語でヴァクスィーン(英語発音: [væksíːn])と発音する。

歴史

ワクチンを発見したのはイギリスの医学者、エドワード・ジェンナー牛痘にかかった人間は天然痘に罹患しなくなる(または罹患しても軽症)事に気付き、これにより天然痘ワクチンを発明した。名前の由来はラテン語の「Vacca」(雌牛の意)から。その後、ルイ・パスツールが病原体の培養を通じてこれを弱毒化すれば、その接種によって免疫が作られると理論的裏付けを行い、応用の道を開いたことによって、さまざまな感染症に対するワクチンが作られるようになった。

種類

ワクチンは大きく生ワクチン不活化ワクチンに分かれる。

BCGワクチン(抗酸染色

生ワクチン

毒性を弱めた微生物ウイルスを使用。液性免疫のみならず細胞免疫も獲得できるため、一般に不活化ワクチンに比べて獲得免疫力が強く免疫持続期間も長い。しかし生きている病原体を使うため、ワクチン株の感染による副反応を発現する可能性もある。

日本未承認(トラベルクリニック等、個人輸入を取り扱っている医療機関で接種)

不活化ワクチン

ジフテリア・破傷風混合ワクチン (DTワクチン)
B型肝炎ワクチン ビームゲン

死菌ワクチンとも呼ばれる。狭義の不活化ワクチンは化学処理などにより死んだウイルス細菌リケッチアを使用。取り扱いや効果において同様である抗原部分のみを培養したものを含めて不活化ワクチンと称されることもあり、以下その定義に含められるものを挙げる。生ワクチンより副反応が少ないが、液性免疫しか獲得できずその分免疫の続く期間が短いことがあり、このため複数回接種が必要なものが多い(代表例は三種混合ワクチンやインフルエンザワクチン)。

2歳未満の乳幼児では、蛋白成分を含まない抗原(ハプテン)部分だけでは免疫を惹起できない。このため、肺炎球菌ワクチンなど蛋白ではない抗原を用いるワクチンでは、乳幼児に接種するに際しては別の蛋白と抗原を結合させるなどの工夫がされている。

また、インフルエンザワクチンInfluenza vaccine)については、1971年以前の全粒子ワクチン使用による副反応(死亡あるいは脳に重篤な障害を残す)危険性が大きかったことや、それとは異なる現行の安全性の高いワクチンでも100%発症を抑えることはできないことから、接種を避けるべきとの意見も依然として存在する。しかしながら、ハイリスク群(高齢者や慢性疾患を持つ人など)の人がインフルエンザに罹患した場合に、肺炎等の重篤な合併症の出現や、入院、死亡などの危険性を軽減する効果が世界的にも広く認められている。これが、国連の世界保健機関(WHO)や世界各国が、特にハイリスク群に対するインフルエンザワクチン接種を積極的に薦めている理由である[1]

日本未承認(日本国内で接種の場合は個人輸入取り扱い医療機関に申し込む)

  • DTaP/Hib=DTP+インフルエンザ桿菌
  • DTaP/IPV/HiB=DTP+不活化ポリオ+インフルエンザ桿菌
  • HepB/Hib=B型肝炎+インフルエンザ桿菌

その他、混合多数。

トキソイド

ある病原体の産生する毒素のみを予め抽出して、ホルマリンなどで処理し、毒性を抑えて抗原性のみを残したものを人体に接種し、その毒素に対する抗体を作らせるもの。病原体そのものを攻撃する抗体を作らせるわけではないので、厳密にはワクチンに含めないという考え方もある。

接種方法

ガーダシルの注射状況

皮下注射筋肉内注射が多いが、経口生ポリオワクチン(OPV)のように直接飲む(経口ワクチン)ものやBCGのようなスタンプ式の製品がある。

接種間隔

生ワクチンの後は4週間以上あけ、不活化ワクチンの後は1週間以上あけること。医師の判断で必要と認められた場合には同日複数接種も可能である。複数のワクチンを混合して接種することはできない。同日接種を行うことによって、安全性・効果(免疫応答)が変化・相乗することは無い。一度に接種できるワクチンの数に制限はない。また、同日接種の際、ワクチン同士は凡そ1インチ(2-3センチ)離れていれば問題ない。

WHOや米国のCDCが定めるスタンダードは、原則として、

  • 生ワクチン同士は同日、または4週間以上あける
  • 生ワクチンと不活化ワクチンは、どちらが先であっても、接種間隔に規制はない。
  • 不活化ワクチン同士もまた、同時でも、いつでも接種可能である。ただし、同一のワクチンには指定された間隔がある。
  • 免疫グロブリンと一部の生ワクチン(グロブリン製剤に含まれる抗体に依存する)には特定の間隔が個別に存在することがある。

ほかに、メーカー指定で、経口生チフスと経口不活化コレラワクチンは8時間の間隔を開けるというルールがある。

接種部位

  • 皮下注射:上腕伸側を中心とする領域。ただし橈骨神経が走行する中央1/3は避け、下側1/3あるいは上側1/3に接種する。
  • 筋肉内注射:満4歳未満は三角筋の発達が未熟なので、大腿四頭筋外側頭中程。それ以上の年齢では、同部位よりも三角筋が選択される。なお、臀部への筋注は吸収率や免疫応答がよくないので、接種してはいけない。
  • 皮内注射:狂犬病ワクチンの変則的投与では、指定箇所がある。その他に関しても、添付文書を参照すること。

1肢1本接種は上記免疫応答理論や接種本数の制限を受けるため、受診者・渡航者の立場からは現実的ではない。

日本以外で使用されているワクチン類は、海外で生活されている邦人も東洋人も通常接種されている。日本人に外国製のワクチン(WHO認定ワクチンに限定して)と接種用法などを敬遠する医学的根拠は現実的には示されていない。

副反応

弱いとはいえ病原体を接種するため、まれに体調が崩れることがある。軽微なものとしては、投与部位の発赤・腫脹・疼痛・感冒様症状などがある。重大なものとしてはギランバレー症候群や、無菌性髄膜炎、血小板減少性紫斑、膵炎などが知られる。(詳細は個別のワクチンを参照)

日本のワクチン事情

日本は1980年代までワクチン先進国とされていたが、副作用による訴訟が相次ぎ、厚労省とメーカーが開発・販売に消極的になり、ワクチン後進国とされるようになった[2]。日本で接種が徹底されないためにカナダに修学旅行に行った学生が現地では根絶されている麻疹を感染させたためにホテルから外出禁止となり修学旅行打ち切りで帰国になることが報道された。小児用のHibワクチンは先進国に大幅に遅れて認可されたが、当時アジアで認可されていないのは北朝鮮と日本だけであった。下記は日本の主な製造メーカーである。

インフルエンザワクチンは、北里研究所・デンカ生研・化学及血清療法研究所・阪大微生物病研究会である。 今後、武田薬品工業・第一三共が開発しようとしている。[3]

ワクチンを巡る問題

ノーベル経済学賞受賞者ダニエル・カーネマンによれば、人々は巷で流行する疾病で死ぬよりもワクチンの副作用で死ぬことを恐れる場合があるのだという。もしワクチン接種後に子供が死んでしまったら、子供にワクチンを受けさせたことがその親にとって多大なトラウマになってしまうというのである。カーネマンの著書で2つの思考プロセスに言及している。1つ目は、何か感情を揺さぶるような出来事が起きた時に働くような自動的で即座の思考プロセスである。2つ目は、おちついた意識的労力をともなう思考プロセスである。ワクチン接種の損得を考える時には一般的に2番目の思考プロセスが使われるが、ワクチンの副作用で子供を危険に晒すといった恐怖が1番目の思考法を促してしまうわけである[4]。統計的データよりも感情を揺さぶるような個々のケースに我々は強く反応しがちなのだとカーネマンは述べる。

ワクチン接種によって、重大な健康被害に見舞われるという根拠のない話が人民の間に広まって接種が手控えられることは近世でも度々起こっている。MMRワクチンによって自閉症になるという話や、A型肝炎・B型肝炎ワクチンによってマクロファージ性筋膜炎になるという話や、HPVワクチンによって記憶障害や痙攣がでるという話があったが、いずれも追加で実施された大規模臨床研究で関連が否定された。

出典

  1. ^ インフルエンザワクチンについて(国立感染症研究所)
  2. ^ 製薬大手、ワクチンに活路:読売新聞
  3. ^ インフル事業強化 製薬会社、海外勢を追撃 産経新聞
  4. ^ Nobel Prize winner tries to explain why dumb parents don't vaccinate their kidsJ. Chung, Gothamist, 8 Feb 2015

関連項目

外部リンク