TENET テネット

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TENET テネット
Tenet
監督 クリストファー・ノーラン
脚本 クリストファー・ノーラン
製作
製作総指揮 トーマス・ヘイスリップ
出演者
音楽 ルドウィグ・ゴランソン
撮影 ホイテ・ヴァン・ホイテマ
製作会社 シンコピー・フィルムズ
配給 ワーナー・ブラザース映画
公開 イギリスの旗 2020年8月26日
アメリカ合衆国の旗 2020年9月3日
日本の旗 2020年9月18日[1]
上映時間 151分
製作国
言語 英語
製作費 $225,000,000
興行収入 世界の旗 $334,000,000[2]
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TENET テネット』(原題:Tenet)は、2020年公開のクリストファー・ノーラン監督・脚本・製作によるSF映画である。

ストーリー[編集]

ウクライナ、キエフのオペラハウスにおいてテロ事件が発生。しかしこれは「プルトニウム241」を奪取したCIAのスパイを暗殺するための偽装だった。彼を救出するため、ロシア人の協力のもと、CIA工作員の主人公(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は特殊部隊に混ざってオペラハウスに突入し、スパイの救出には成功するが、その後ロシア人たちに捕らえられてしまう。

主人公はロシア人から拷問を受け、CIAの自決薬を飲む。しかしそれは実は睡眠薬であり、目を覚ますと見知らぬ船にいた。そこでフェイ(マーティン・ドノヴァン)という男から、先の作戦は主人公の適性をはかるテストだったことを明かされる。洋上の風力発電所に潜伏して体力を回復した主人公は、ある研究室へと案内される。そこで彼は、弾痕から拳銃の中へと「逆行する弾丸」の存在を目の当たりにする。通常兵器が未来を変えるのに対して、未来からもたらされた「逆行する兵器」は過去を変えるのだという。

弾丸の成分からインドの武器商人の関与を疑った主人公はムンバイに赴き、協力者であるニール(ロバート・パティンソン)と共に武器商人サンジェイ・シンを襲って口を割らせようとするが、妻のプリヤこそが黒幕であった。プリヤから、在英ロシア人の武器商人アンドレイ・セイター(ケネス・ブラナー)が弾丸を「逆行」させるなど未来人と関与していることを知らされ、セイターの妻であるキャット(エリザベス・デビッキ)と接触を図る。

キャットは贋作師アレポの描いたゴヤの贋作の件で、セイターから脅されていた。セイターは脅迫のネタとして、贋作と分かっていながらそれを落札していたのだった。その絵はオスロの空港の中にあるフリーポートの貴重品庫に保管されていた。主人公はニールやマヒアとともに、ジャンボジェット機を倉庫に衝突させ、その大騒ぎのすきに警備を突破し、贋作を処分することを計画する。フリーポートの一番奥へと侵入した主人公とニールは、ガラスで隔てられた二つの部屋へとたどり着く。その先には左右二つの部屋をつなぐ回転ドアがあったが、中には誰もいなかった。しかし回転ドアが動きだすと、無人だった筈のところから特殊部隊のスーツを着た敵が2人同時に現れる。主人公と敵は格闘を繰り広げるが、ニール側の敵は一目散に逃げていった。

キャスト[編集]

名もなき男
演 - ジョン・デヴィッド・ワシントン
CIAエージェント。
ニール
演 - ロバート・パティンソン
名もなき男に協力する男。
キャサリン・“キャット”・バートン
演 - エリザベス・デビッキ
絵画の鑑定士をしているセイターの妻。
アンドレイ・セイター
演 - ケネス・ブラナー
ロシア人の武器商人。時を逆行する装置を持つ。
プリヤ
演 - ディンプル・カパディア英語版
サンジェイ・シンの妻。
マヒア
演 - ヒメーシュ・パテル
名もなき男に協力する男。
バーバラ
演 - クレマンス・ポエジー
時を逆行する武器を研究するTENETの科学者。
アイヴス
演 - アーロン・テイラー=ジョンソン
TENETの実働部隊指揮官。
フェイ
演 - マーティン・ドノヴァン
名もなき男をTENETに勧誘し、第三次世界大戦を防ぐ任務を与える。
マイケル・クロズビー卿
演 - マイケル・ケイン
MI6の連絡役で、名もなき男に情報提供を行う。
ボルコフ
演 - ユーリー・コロコリニコフ英語版
セイターの忠実な部下。
ホイーラー
演 - フィオナ・ドゥーリフ
TENETの実働部隊隊員。
サンジェイ・シン
演 - デンジル・スミス英語版
ムンバイの武器商人。時を逆行する弾丸を扱っている。
マックス
演 - ロウリー・シェパード
キャットとセイターの息子。

製作[編集]

製作準備段階[編集]

脚本と監督をこなしたクリストファー・ノーランは、TENETの背後の着想を20年間に渡って温めたが[3]、「私はこの脚本の練り直しに6, 7年は掛けている」と発言している[4]。原題「TENET」は、回文であり、前から読んでも後ろから読んでも同じである[5](邦題「TENET テネット」では、この通りではない)。ノーランは、スパイ映画からの影響を、自らの記憶のみに留めるように意識的に努力した[6]マカロニ・ウエスタン映画『ウエスタン』(または『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』、原題:C'era una volta il West、英題:Once Upon a Time in the West)(1968年)から脚本の着想を得た[3]。特殊効果を担当したスコット・R・フィッシャーは、第二次世界大戦の映画やドキュメンタリーを観て、現実感の参考とした[7]理論物理学者キップ・ソーンは、ノーランと「インターステラー」(2014年)で共に働いたが、時間量子力学の主題について相談を受けた[8]

日本語字幕について、『インターステラー』以来ノーラン監督の大ファンという東京工業大学理学院の山崎詩郎(助教)が監修。日本版オフィシャルサイトにコメントも寄せている。

用語[編集]

  • 回転ドア:時を逆行する装置。複数存在する。
  • アルゴリズム:未来人の科学者が製造した兵器。その威力を恐れた未来人は、9つに分割して、各地の核兵器施設に隠した。
  • 「黄昏に生きる」「宵に友なし」:We live in a twilight world, and there are no friends at dusk.

公開[編集]

公開日延期[編集]

アメリカでは当初2020年7月17日に劇場公開予定だったが、ワーナー・ブラザース新型コロナウイルスの影響により、『ワンダーウーマン1984』と共に公開日を延期することを同年6月に発表[9]。一旦同年7月31日に公開することを発表していたが、一部の州で感染者の拡大が続いており、映画館の閉鎖が継続していることを受けて、再度延期することを発表した[10][11]

その後、2020年7月にワーナーはアメリカでの公開日を同年9月3日に再設定したことを発表。同時にイギリス韓国アラブ首長国連邦などでは同年8月26日と27日に先行で公開することも明らかにした[12]

興行収入[編集]

新型コロナウイルスによる感染が蔓延している中での劇場公開であったが、前述の事情でアメリカよりも先行して公開されたイギリス、フランス、韓国、ドイツなど世界41市場でのオープニング記録の合計は事前予想を上回る5300万ドルとなり、オランダウクライナハンガリーなどではノーラン作品史上最高のオープニング記録を樹立、サウジアラビアでは国内で公開されたハリウッド映画として史上最高の記録となった[12][13]

日本でも週末興行収入ランキングで初登場から4週連続1位(観客動員数は3週目のみ『浅田家!』)を獲得、国内興行収入は20億円を突破した[14]。また、公開4日間の国内IMAXオープニング成績(2020年9月18日から21日)が世界各国での本作公開4日間IMAXオープニング成績の中で売り上げ1位を記録し、監督のクリストファー・ノーランから池袋東京)のグランドシネマサンシャイン宛に直筆の感謝状が届いた[15]

しかし、制作国であるアメリカでは、未だにロサンゼルスニューヨークといった主要市場の映画館再開の見通しが立っていないことが災いし[16]、アメリカ国内の興行収入は公開5週間で4500万ドルと大きく低迷[17][18]。全世界興収は3億ドル強であり、海外興行収入の好調がアメリカ市場の不振によって引きずられる形となった[18]。ワーナー親会社CEOのジョン・スタンキーは、「『TENET テネット』の結果がホームランだったとは言えない」とコメントした[14]

関連項目[編集]

Oppède における SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS
  • SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS ラテン語による回文。三行目(三列目)に TENET が表れる。ケネス・ブラナー演じるアンドレイ・セイターの姓が SATOR。キエフ・オペラの OPERA。ゴヤの贋作者の名前が AREPO。オスロ空港の警備会社が ROTAS[19]
  • 熱力学第二法則

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ “クリストファー・ノーラン新作『TENET テネット』9.18日本公開!”. シネマトゥデイ. (2019年12月20日). https://www.cinematoday.jp/news/N0113100 2019年12月22日閲覧。 
  2. ^ Tenet”. Box Office Mojo. 2020年10月19日閲覧。
  3. ^ a b Matt Maytum (2020年8月24日). “Time to spy: On the set of Tenet with Christopher Nolan”. Total Film (299): pp. 30–35. https://www.gamesradar.com/tenet-christopher-nolan-set-behind-the-scene/ 2020年9月1日閲覧。 
  4. ^ Collis, Clark (2020年6月18日). “Time for Tenet: Behind the scenes of Christopher Nolan's top-secret movie”. Entertainment Weekly. https://ew.com/movies/christopher-nolan-tenet-cover/ 
  5. ^ Tom Shone (2020年5月28日). “Can Christopher Nolan Save the Summer?”. The New Yorker. https://www.newyorker.com/culture/cultural-comment/can-christopher-nolan-save-the-summer 
  6. ^ Matt Maytum, Jack Shepherd (2020年5月27日). “Christopher Nolan on making Tenet: “This is definitely the longest I’ve ever gone without watching a James Bond film””. GamesReader+. オリジナルの2020年5月27日時点におけるアーカイブ。. https://archive.vn/20200527193014/https://www.gamesradar.com/tenet-christopher-nolan-james-bond/ 
  7. ^ Martin, Kevin H. (2020年8月). “Time, Again”. 91. pp. 43–46. オリジナルの2020年8月24日時点におけるアーカイブ。. https://archive.vn/20200824172916/https://issuu.com/icgmagazine/docs/august2020?fr=sODY1ZDMyMjE0 
  8. ^ Garry Maddox (2020年8月22日). “'The biggest film I've done': Christopher Nolan on the secret world of Tenet”. The Sydney Morning Herald. オリジナルの2020年8月23日時点におけるアーカイブ。. https://archive.vn/20200823045301/https://www.smh.com.au/culture/movies/the-biggest-film-i-ve-done-christopher-nolan-on-the-secret-world-of-tenet-20200810-p55kd7.html 
  9. ^ 米ワーナー、「TENET テネット」「ワンダーウーマン1984」を公開延期に”. 映画.com (2020年6月16日). 2020年10月11日閲覧。
  10. ^ “C・ノーラン監督最新作「テネット」の公開、8月12日に再延期”. ロイター通信. (2020年6月26日). https://jp.reuters.com/article/film-tenet-idJPKBN23X0UL 2020年10月11日閲覧。 
  11. ^ Heater, Brian (2020年6月29日). “クリストファー・ノーラン監督のアクション映画「TENET テネット」の公開が8月12日に再延期、米国での新型コロナ感染者再拡大で”. TechCrunch Japan. 2020年10月11日閲覧。
  12. ^ a b ノーラン監督『TENET テネット』米国9月3日公開にリスケ、8月下旬海外先行公開”. シネマズ PLUS (2020年7月28日). 2020年10月11日閲覧。
  13. ^ 『TENET テネット』海外初動5,300万ドル、予想を軽々超える大ヒット ─ IMAXは『ダンケルク』『インターステラー』超え”. THE RIVER (2020年8月31日). 2020年10月10日閲覧。
  14. ^ a b 『テネット』は「ホームランだったとは言えない」とワーナーCEOがコメント”. フロントロウ (2020年10月23日). 2020年10月23日閲覧。
  15. ^ 映画『TENETテネット』東京・池袋の劇場にノーラン監督から直筆の感謝状”. ORICON NEWS (2020年10月16日). 2020年10月16日閲覧。
  16. ^ アメリカでは本作品公開の時点で既に6割近くの映画館が営業を再開している。
  17. ^ 同じくクリストファー・ノーランが制作に携わった『ダンケルク』は初週週末で約5000万ドルだった。
  18. ^ a b 映画「テネット」アメリカでコケた予想外の事情”. 東洋経済新報. pp. 1-2 (2020年10月10日). 2020年10月10日閲覧。
  19. ^ Martina Moliis-Mellberg (2020年8月25日). “Tenet är ett luftslott fyllt av temporala labyrinter där det viktigaste är att det ser invecklat ut”. Hufvudstadsbladet. https://www.hbl.fi/artikel/luftslott-och-temporala-labyrinter/ 

外部リンク[編集]