T-50 (航空機)

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T-50

KAI T-50 Golden Eable by Ryabtsev.jpg

T-50は、ロッキード・マーティンから技術的支援を受けて韓国が製造した練習機。愛称は「ゴールデンイーグル골든이글)」(イヌワシ)。

概要[編集]

アメリカ合衆国ロッキード・マーティンから技術支援を受け、韓国航空機メーカー、韓国航空宇宙産業(KAI)が製造した[1]

韓国にとってKT-1に次ぐ国産航空機であり、機体はF-16に近い形状である。

開発はKTX-2の名称で1992年から開始された。当初は三星航空産業がロッキード・マーティンと提携して開発する計画であったが、1999年に韓国航空宇宙産業(KAI)が設立されたことに伴い、KAIとロッキード・マーティンによる開発となり、T-50の名称が与えられた。T-50は4機の試作機が製作されたが、うち2機は当初A-50と呼ばれていた軽攻撃およびLIFT(戦闘機導入訓練機とも訳される、兵器システムの訓練が可能な高等練習機)を目的とした型であり[1]、試作機4号機(LIFT型)の機体にはA-50の表記が見られる。後にA-50は目的ごとにTA-50とFA-50の2種類の派生型に分けられた。試作機1号機の初飛行は2002年8月20日である。

ロッキード・マーティンとの技術提携もあって、胴体末尾にエンジンノズルを有するブレンデッドウィングボディの機体形状など、F-16の影響が各所に見られ、形状が似ている部分がある[1]垂直尾翼水平尾翼・エアブレーキがノズルにかかるように配置されている点もF-16と同様である。しかし、F-16のエアインテークが機体下部の1ヶ所であるのに対し、同じ単発機であるにもかかわらず本機ではストレーキの下部に左右各1ヶ所ずつ配置されている。これは、同じくF-16の設計をベースにした台湾経国と共通する(ただし経国は双発機であり、なおかつ開発時期に差がある)特徴である。

練習機であるために大型レーダーを有さず、また、機首は小ぶりでタンデムの操縦席も前よりに配置されている。F-16と同様に単発機だが、機体がF-16よりも小型であるため、エンジンは出力のわりには比較的小型なF404-GE-402 ターボファンエンジンの単発装備としている。

調達価格は230億ウォン(約25億円)前後という報道がある一方[2][3]、1機当たり350億ウォン(約38億円)に達すると言う報道もある。いずれにせよ、単発とはいえ超音速飛行を実現するためにF/A-18 ホーネット向けのアフターバーナー付き高出力エンジンを搭載しているため、練習機としては極めて高価格である。

2003年12月19日に、韓国空軍より25機の発注を受け[1]、量産が開始された。韓国空軍向けのT-50は練習用途の50機が2010年5月まで生産され、ほかに10機が韓国空軍の曲技飛行隊ブラックイーグルス用に生産された。

派生型[編集]

T-50B[編集]

KAIのウェブサイトでは、ブラックイーグルス用の10機のT-50に対し、T-50Bの形式名が与えられている。同機はスモークオイルタンクやカメラなどのアクロバット用の装備を持つ。

TA-50[編集]

TA-50

LIFT機仕様はTA-50と呼ばれ、当初は米国製のAN/APG-67 レーダーの搭載も検討されたが、最終的にはイスラエル製のEL/M-2032 レーダー[4]を搭載している。同機はM61A1機関砲AIM-9 サイドワインダー空対空ミサイル、各種爆弾ロケット弾ポッドなどを運用可能とされる。同機は22機が生産された。

FA-50[編集]

離陸中のFA-50

軽攻撃仕様のFA-50は、軽戦闘爆撃機としてEL/M-2032 レーダーやより強化された兵装を搭載している。計画では4機のFA-50試作機2012年までに製作することになっており[5]2011年に初飛行した。同機は韓国空軍F-5E/Fを代替することが期待されている。2013年-2016年までにまず60機が生産される予定である[6]

KFX-E[編集]

計画が停滞している「韓国次世代戦闘機KFX」に変わる新コンセプトとして、KAIが提案したT-50をベースとする戦闘機。小型の単発機で、限定的なステルスを備え、F-16F-35の中間的な性能を目指していた。ベースとなるT-50が小型であることから、既存のKFXプランに対してステルス面で有利で、KF-16のほか、旧式化・老朽化が進むF-4D/EF-5E/Fを置き換えて、北朝鮮の主力とするMiGシリーズを相手にするには十分な性能を発揮できるとされていた。また、T-50の開発経験を活かすことができ、一部部品を共有することでコスト削減にも繋がることから、メーカー側は有力視していた。しかし、小型ゆえに航続距離武装、発展性への懸念があり、日本中国のような大国を相手にするには、不適当ではないかという防衛事業庁や国民からの批判があった。また、KFX共同開発に参加しているインドネシアから、KFXが何の成果も出していないのに別機体の開発へと切り替えることに対して批判が出たこともあり[7]、最終的には元のKFXにおいて双発機プランを採用することが決定して、T-50の派生形としてのKFX-E案は立ち消えとなった。

事故[編集]

墜落事故[編集]

2012年11月15日ブラックイーグルス所属のT-50B 1機が江原道原州北東約9kmの山間部に墜落し、パイロット少佐が死亡した。11月27日には事故機の整備班のK准尉が首を吊って自殺し、これを受けて同整備班のK中士(三曹相当)が事故原因を告白した。同月30日の発表によると「K中士が、操縦系統遮断線を点検した後に必ず抜かなければならない遮断線を抜かず、操縦系統が誤作動して事故に繋がった」とのこと[8]

2013年8月28日光州空軍基地で離陸中のT-50が墜落し、空軍第1戦闘飛行団所属の少領(少佐)と大尉の2人が死亡した[9]

2015年12月20日インドネシア空軍ジョグジャカルタ空軍飛行学校創立70周年を祝う航空ショーで、インドネシア空軍の曲技飛行隊が運用するT-50練習機が墜落し、パイロット2人が死亡した[10]

輸出[編集]

練習機としては高額であるが、KAIは国内向け、各派生型も含め途上国を中心として最大600機の生産を見込めると分析している。また、2030年までに3,300機の潜在的需要があるともしている。T-50の海外輸出が見込める一つの要因としては、T-50とシステムの互換性が高いF-16を採用している国が多くあることが挙げられる。国際マーケッティング活動は、KAIとロッキード・マーティンが協同して行っている。

2014年、T-50を使用するブラックイーグルスは、同年11月に中国で開催される航空ショーに参加する予定であったが、直前になりアメリカ側から「使用するT-50の技術が中国に流出する恐れがある」として参加中止の申し入れを受けている。このことから、アメリカとの間に友好関係にない、将来的に軍事的に対立する可能性のある国には、輸出はおろか移動すら困難になる可能性を示している[11]

エンジンや電子装備など、中心技術は殆どがアメリカ製であるため、輸出にはアメリカの法律の影響を受ける。輸出するためには、アメリカの承認が必要である[12]

採用国[編集]

インドネシアの旗 インドネシア
2011年、初めての海外輸出として、インドネシア空軍への輸出が決まった。ジェット練習機BAe ホーク Mk.53を置き換える予定である。T-50を12機とTA-50を4機、計16機を約4億ドル2013年までに引き渡す予定であった[13]が、実際の導入時には区別されずT-50Iとして16機が導入されている[14]
2010年2月16日には、国家情報院がインドネシア特使団が調査のため宿泊しているホテルに侵入するという不祥事が発覚した[15]。他、契約後の報道ではインドネシア国産輸送機CASA CN-235とのバーター契約が結ばれたという疑惑が報道された[15]
イラクの旗 イラク
T-50に興味を示しているとされていた。2012年10月チェコ、イラク両国が次期練習機をL-159に決定したと発表した[16]が、契約にはいたっておらず[17]、その後2013年12月にT-50のイラクへの輸出を契約したと発表された[18]。軽攻撃機FA-50 24機を機体価格と操縦士の訓練、軍需支援などを合わせ21億ドル(約2,156億円)以上と、韓国の航空輸出としては過去最高額となる[19]イラク空軍への納入は2016年4月に始まり、1年間で全機を納入する予定。
フィリピンの旗 フィリピン
2014年には、フィリピン空軍に12機のKAI FA-50PHが4.2億ドルで輸出されることが決定した。2015年11月28日フィリピンのクラーク空軍基地に初号機と2号機が到着し、11月29日にフィリピン空軍に引き渡された[20][21]。2017年7月に全12機のフィリピン空軍への引き渡しが完了した[22]
タイ王国の旗 タイ
タイ政府は老朽化したL-39アルバトロスの置き換えとしてT-50を選定、2015年9月に契約した。契約数は4機、契約額はおよそ1億1千万ドル。T-50THの納入は30ヶ月以内に行われる予定[23][24]

検討中の国家[編集]

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
老朽化・旧式化が進むT-38練習機の後継としてアメリカ空軍は、ロッキード・マーティンが開発パートナーとなっているT-50か、すでに海軍においてポピュラーな練習機となっているボーイング社製のT-45 ゴスホーク(原型機はイギリスBAe ホーク)を検討するよう、議会から要請されていた。
しかし、財政の悪化により決定は延期となり、2015年には改めて次期練習機の選定が開始され、2017年の後期に決定が行われる。もしT-50が選定されれば、納入は2022年からの予定となっている。当初はT-50が要求に合わない場合、新型機の準備もあるとしていたが[25]、結局T-50を改良したT-50Aが提案されることとなった[26]
次期練習機にはボーイングがスウェーデンサーブとチームを組んで新機体T-Xを提案した[27]。また、ロッキード・マーティンが韓国のKAIと組んでT-50A[28]イタリアレオナルドが単独でT-100を提案する予定[29]
ギリシャの旗 ギリシャ
ヘレニック・エアロスペース(HAI)と協力してギリシャ空軍への売込みを図るとしている。

過去に検討された国家[編集]

アラブ首長国連邦の旗 アラブ首長国連邦
新型練習機導入計画においてイタリアアエルマッキ社のM-346と採用を争っていたが敗北した。
イスラエルの旗 イスラエル
TA-4の後継機として選定候補[1]であったが、M-346が採用された。

スペック[編集]

T-50の模型
  • 乗員:2名
  • 全長:12.98m
  • 全高:4.78m
  • 全幅:9.17m
  • 主翼面積:
  • 重量:6,441kg
  • 最大離陸重量:11,985kg
  • エンジン:GE F404-GE-102 ターボファンエンジンx1基
  • 推力:53.07kN(クリーン)/79.1kN(アフターバーナー
  • 実用上昇限度:14,630m
  • 最大速度:M1.5
  • 航続距離:1,851km
  • 最大制限荷重:+8G/-3G

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e 世界航空機年鑑 2007-2008 酣燈社 P318 ISBN 978-4873572703
  2. ^ 국산 고등훈련기, '싱가포르에어쇼' 첫 참가
  3. ^ "UAE, 고등훈련기 수주전 韓 T-50, 伊 M-346 대결로 압축"<美誌>
  4. ^ PICTURES: KAI rolls out first production T/A-50
  5. ^ Kojii.net今週の軍事関連ニュース (2009/01/09、DefenseNews 2009/1/2)
  6. ^ S. Korea to mass-produce armed version of trainer jet starting in 2013
  7. ^ 『KFX사업 결정, 더이상 늦출 수 없다』(KAI Talk/Special Talk 2013年07月05日)
  8. ^ T-50 추락사고, 어이없는 실수로 드러나、アジアニュース通信 2012年11月30日
  9. ^ 韓国の国産T-50訓練機が墜落、2人が殉職 東亜日報 2013年8月29日
  10. ^ インドネシアで韓国産のT-50訓練機墜落...パイロット2人死亡 NEWSIS/NAVER 2015年12月20日
  11. ^ ““国産”飛行隊の中国エアショー参加、米国が異議”. Xinhua Business Communication. (2014年10月11日). http://www.xinhua.jp/socioeconomy/photonews/398008/ 2014年11月3日閲覧。 
  12. ^ “韓国製T50練習機、米反対でウズベク向け輸出が白紙に”. 朝鮮日報. (2015年10月24日). http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/10/24/2015102400590.html 2015年10月24日閲覧。 
  13. ^ T-50高等訓練機、ついにインドネシアと輸出本契約”. 中央日報日本版 (2011年5月26日). 2012年4月25日閲覧。
  14. ^ T-50i Golden Eagle Siap Kawal NKRI
  15. ^ a b [社説]「アマチュア国家情報院」対北朝鮮能力はさらに心配だ”. 中央日報日本語版 (2010年2月22日). 2013年1月31日閲覧。
  16. ^ Iraq Selects Aero Vodochody L-159 for Training Needs”. AINonline (2012年10月19日). 2015年2月19日閲覧。
  17. ^ Czech/Iraq Aircraft Deal “Fails””. iraq businessnews (2013年2月25日). 2015年2月19日閲覧。
  18. ^ “KAI has signed the contract with Iraq for exportin” (プレスリリース), Korea Aerospace Industries, LTD. (KAI), (2013年12月12日), https://www.koreaaero.com/english/pr_center/cpr_view.asp?pg=1&gubun=v&seq=25666&bbs=10 2015年2月19日閲覧。 
  19. ^ 韓国航空機メーカー、韓国航空宇宙産業(KAI)の河成龍(ハ・ソンヨン)社長は12日、イラクの首都バグダッドでマリキ首相と面会し、軽攻撃機「FA50」24機を同国に輸出することで合意した”. 連合ニュース (2013年12月12日). 2013年12月12日閲覧。
  20. ^ 平成26年版防衛白書
  21. ^ フィリピン空軍、10年ぶりの超音速戦闘機 KAI FA-50PHクラークに到着
  22. ^ KAI、軽攻撃機12機、フィリピンへの引き渡し完了”. 東亜日報 (2017年7月5日). 2017年7月8日閲覧。
  23. ^ KAI has signed the contract with Thailand for exporting 4 T-50TH aircraft, worthy of $110 Million”. KAI (2015年9月17日). 2015年10月16日閲覧。
  24. ^ タイ空軍、KAI T-50TH 4機を採用
  25. ^ Lockheed Has T-X Clean Sheet Backup
  26. ^ Why Skunk Works ditched its clean-sheet T-X for Korean T-50
  27. ^ Boeing first out of blocks with T-X proposal
  28. ^ Lockheed Martin Unveils Advanced Pilot Training Solution
  29. ^ Leonardo to compete for U.S. Air Force Advanced Pilot Training System program through its US company Leonardo DRS

外部リンク[編集]