異体字セレクタ

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異体字セレクタを付けない場合、点のある字体と点のない字体は区別されない。「異体字セレクタ17」を付けると点のない字体、「異体字セレクタ18」を付けると点のある字体を表す。 異体字セレクタを付けない場合、点のある字体と点のない字体は区別されない。「異体字セレクタ17」を付けると点のない字体、「異体字セレクタ18」を付けると点のある字体を表す。
異体字セレクタを付けない場合、点のある字体と点のない字体は区別されない。「異体字セレクタ17」を付けると点のない字体、「異体字セレクタ18」を付けると点のある字体を表す。

異体字セレクタ[1] (: variation selector) は、付加された文字字体をより詳細に指定する、Unicodeにおけるセレクタ(選択子)である。

解説[編集]

Unicodeは文字コード (コンピュータ上で文字を扱うための電子的な表現) の規格であり、WindowsMac OS Xなど、PCオペレーティングシステムで広く使われている[2]。Unicodeでは抽象的な文字を定め、個々の文字の字形の詳細には立ち入らない。このため同じ意味で似た形の文字には同じ電子的な表現が与えられ、字形の区別が必要なときはフォントの指定などによって行うのが原則である[3]

この原則は、たとえばラテン文字の 'a' で、上部の右から左へ伸びる線があるかどうか、という違いは通常は「フォントの違い」であり「別の字」とはしないため問題ない。しかし漢字などでは、運用上しばしば「別の字」とされる字形を、様々な経緯の結果「詳細/デザイン差」として同じ符号位置としてしまっているため、状況によっては、フォントの指定などを含めることができないプレーンテキスト上で字形の区別を保存したいという需要も存在する。

たとえば、

葛飾区の葛
葛城市の葛
  • ほとんどのオペレーティングシステムにおいてファイル名はプレーンテキストであり、プレーンテキストで区別できないものは区別できない。
  • IMEに単語登録可能な文字列は通常プレーンテキストのみである[4]。このためフォントの指定やDTPアプリケーションによる字形の選択が可能であっても、通常の文字入力とは異なる操作を要求される上に正しい組み合わせを覚えていなければならず、ほとんどの一般利用者にとって現実的な手間で入力できない。たとえばWindows Vistaでは葛飾区葛城市を区別して表示できるが[5]、「かつしかく」が葛飾区、「かつらぎし」が葛城市のように区別して変換されるような単語登録はできない。ただしegbridgeなど、Mac OS Xのインプットメソッドのうちグリフアクセスプロトコルに対応したものはプレーンテキストの制約に縛られない[6]
  • 電子メールの送信に使われるSMTPなどの情報交換用プロトコルは、情報交換をプレーンテキストで行うよう設計されている。このため、Mac OS Xのグリフアクセスプロトコルのように内部に閉じたテキスト処理ではプレーンテキストの制約を取り払ったシステムも、メールなどによる外部との情報交換では字形の区別を保存できない[7]

このような字形の区別にかかわる需要は、Unicodeの漢字統合の規則が国内での運用の実情に沿っていない日本では特に顕著であり、JISの各文字集合(JIS X 0208JIS X 0212JIS X 0213)やUnicodeで満たせない需要に対応するため、官庁では戸籍統一文字住民基本台帳ネットワーク統一文字など、民間では今昔文字鏡GTプロジェクトなど独自の大規模文字セットが繰り返し作成され、一部で運用されてきた。しかしそれらは独自であるがゆえに、Unicodeを使用している既存の大多数のPC環境と相互運用性がない。

異体字セレクタは以上のような問題をUnicode上で解決するために考案された特殊な「文字」(符号位置が与えられているもの、という意味では「文字」)である。HTMLCSSなどのWeb標準を管理しているWorld Wide Web Consortiumは、HTMLなどのマークアップ言語においても字形を指定するために異体字セレクタを使うことを想定している[8]。異体字セレクタのうち、特に漢字の異体字セレクタを指して、Ideographic Variation Selector略してIVSと呼ぶ。

異体字セレクタは、付加された文字の字形をより詳細に指定する機能を持つが、それ自身は表示されない。異体字セレクタはモンゴル文字専用のモンゴル自由字形選択子がU+180B〜U+180Dに3文字、特定の適用対象を定められていないものがU+FE00〜U+FE0FおよびU+E0100〜U+E01EFに256文字存在し、選択したい字形に応じて異なる異体字セレクタを付加する。異体字セレクタとそれが付加される文字との組み合わせ、および指定される字形は規格で定められており、それ以外の組み合わせは無視される。利用者が独自に考えた未登録の字形を利用したい場合には、私用領域の文字を私用の異体字セレクタとして[要出典]使う。領域として私用の異体字セレクタ(Private Use Variation Selectors)を追加する提案もあった[9]が、取り入れられていない。

なお、U+303EにIDEOGRAPHIC VARIATION INDICATOR(直訳すると漢字異体字表示子)という似たような名称で、かつ例示字形が点線で囲まれている(通常は不可視である制御文字などを示す)ものが存在するが、これはこれに続く漢字が異体字であることを示す可視の記号 (下駄記号の異体字版) であり、異体字セレクタではない[10]

2014年9月現在Unicodeに登録されている異体字セレクタの組み合わせは、数学記号が23通り、モンゴル文字が64通り、パスパ文字が6通り[11]携帯電話の絵文字が214通り(テキストスタイルと絵文字スタイルが107通りずつ)、そして漢字Adobe-Japan1-6に含まれる約14600通り、および汎用電子コレクション (: Hanyo-Denshi collection) に含まれる約13000通り[12]、文字情報基盤コレクションに含まれる約10000通り、CJK互換漢字に対応するものが1002通りである。ただし汎用電子コレクションには、Adobe-Japan1コレクションと多数の重複がある[13]。汎用電子コレクションと文字情報基盤コレクションは同一の字形は異体字セレクタを共有している。漢字は常用漢字の字形など日本において標準的な字形も登録されており、Adobe-Japan1-6に含まれるものなら、「一」のように単一の字形しか存在しないものでもその単一の字形が登録されている。汎用電子コレクションの方は、Adobe-Japan1-6とは異なり、同一コードポイントで複数の字形を持つもののみ登録されており、単一の字形しか存在しないものは登録されていない。

漢字の字形指定 (IVS) には、基本多言語面の異体字セレクタを使わない[14]。このためIVSに対応し、UTF-16を使用するアプリケーションは、サロゲートペアを正常に扱えなければならない。なお、CJK互換漢字は、IVSではなく非漢字と同じStandardized Variantsとして登録されたため、漢字でありながら基本多言語面の異体字セレクタを使用する。

2012年1月には携帯電話の絵文字としても使われる107文字について、テキストスタイル(普通の文字のように白黒で表示)と絵文字スタイル(カラーで表示したり、アニメーションする)の切替を異体字セレクタで行えるようになった。使用する異体字セレクタは、テキストスタイルがU+FE0E(異体字セレクタ15)、絵文字スタイルがU+FE0F(異体字セレクタ16)となっている。

歴史[編集]

Unicodeは主に米国企業の集まりからなるユニコードコンソーシアムが定める私的な文字コード規格だが、国際符号化文字集合 (ISO/IEC 10646, UCS) との間で、収録文字と符号の割り当てに関して常に同期を取ることで合意がなされている[15]。国際符号化文字集合は国際標準化機構 (ISO) と国際電気標準会議 (IEC) の合同技術委員会 (ISO/IEC JTC 1) 第2小委員会 (SC2) 第2作業部会 (WG2) で制定作業が行われている。以下、WG2での動きを中心に異体字セレクタの収録にかかわる歴史を概観する。

2000年9月15日、ISO/IEC 10646-1が改訂され、中国の提案によりUCSに収録されたモンゴル文字の一部としてモンゴル自由字形選択子 (Mongolian free variation selector) 3文字が規定された[16]

2000年3月14日、アメリカがUCSへの数学記号の追加を提案した。この一部として、異体字セレクタ1文字が含まれていた。これは、意味が同じだが出版社の慣習や著者の好みなどにより異なる字形が使われることのある数学記号の字形を区別するために使うことを意図していた[17]

2001年1月14日、アメリカが追加の異体字セレクタの収録および異体字セレクタの使い方に関する説明の追加を提案した。この説明は漢字に対しての使用が想定されていたが、実際に漢字に対して定められた組み合わせはこの時点で1つも存在しなかったため、漢字に関する言及は除いてWG2に受理された[18]

2001年8月17日、WG2のリエゾン会員であるユニコードコンソーシアムが、活動報告として255文字の異体字セレクタを追加で承認したことを述べた[19]。UCSとUnicodeの同期の原則により、これらはUCSにも収録される必要があった。

2002年3月27日にUnicode 3.2が[20]、7月15日にISO/IEC 10646-1:2000 追補1が制定された[21]。これらは256文字の異体字セレクタのうち基本多言語面に含まれる16文字を収録していた。

2002年4月1日、日本はWG2に、万寿の表現には少なくとも10000種類の異体字セレクタが必要であるから、UCSの第13をまるまる漢字の異体字セレクタに割り当てるべきであるとする文書を提出した[22]。ただしこれは大真面目に書かれてはいるもののジョークRFCに似たエイプリルフール文書で、なぜかWG2の第42回会議の議題にまで上ってしまったが[23]、実際には審議されていない[24]

2002年5月20日、日本は上記アメリカの提案が異体字セレクタを漢字に使うつもりであったことに関して、議論が全く深められておらず導入は時期尚早であると懸念を表明した[25] (モンゴル文字や数学記号の収録に伴う異体字セレクタの導入ではそれまで長い時間を掛けて検討が重ねられていた)。

2003年4月にUnicode 4.0が[26]、12月にISO/IEC 10646:2003が制定され[27]追加面に含まれる異体字セレクタの残り240文字が両規格に収録された。

2003年6月25日、ドイツウムラウトトレマを区別するための異体字セレクタの追加を要望したが[28]、技術的制約により異体字セレクタでは実現不可能であったため却下された[29]

2005年7月16日、アメリカの企業アドビシステムズエリック・ミューラーとアメリカの企業サン・マイクロシステムズ樋浦秀樹 (当時) より、異体字セレクタを実際に漢字で運用するための漢字字形データベース (: Ideographic Variation Database) の規格草案がユニコードコンソーシアムに提案され[30]、2006年1月13日正式版が発行された[31]

2006年7月4日にISO/IEC 10646:2003 追補2が、14日にUnicode 5.0が制定され[32]、両規格へのパスパ文字の収録に合わせてパスパ文字と異体字セレクタの組み合わせが追加された[11]

鎭 鎭ではなく、鎮に異体字セレクタ18を付けて表す
ではなく、に異体字セレクタ18を付けて表す

2007年12月14日、Adobe-Japan1-6が最初の漢字字形コレクションとして正式に承認された[12]。ただし2度の公開レビューにもかかわらず割り当てに疑問が残る組み合わせの存在も指摘されている (右図はその一例)[33]

2008年10月10日、日本は汎用電子情報交換環境整備プログラムの成果として収集・整理された、戸籍住民基本台帳ネットワークの処理に必要とされる異体字を、互換漢字として追加提案した[34]。これに対しUnicode Technical Committee (UTC)と米国は、互換漢字は正規化に際して区別が保存されず、また統合漢字の字形の一意性は保証されないため、IVDによる登録を推奨するとコメントした[35]。またUTCは、SC2からの登録に対して通常IVDへの登録にかかる登録料を免除すると伝えた[36]。これを受け、2009年10月16日、日本は互換漢字の追加提案を取り下げた[37]

2010年3月31日、日本は取り下げた互換漢字の追加提案に代わってIVDへ登録を申請し[38]、2010年11月14日正式に汎用電子コレクションが登録された[39]

2010年12月6日、アドビシステムズ、イースト、ジャストシステム大日本スクリーンマイクロソフトモリサワの6社共同で、IVSの普及推進を目的としてIVS技術促進協議会が設立された[40]

2011年4月2日、UTCから簡体字をIVSで表す登録申請の準備をしていることが告知された[41]。しかしCJK統合漢字の既存の符号化モデルと矛盾する上に、21字中符号化済みの漢字が6字も含まれるというずさんな提案であり、IRG[42]・韓国[43]・イギリス[44]などから懸念が寄せられ、登録申請は中止された。

2012年1月31日、Unicode 6.1が制定。携帯電話の絵文字のテキストスタイルと絵文字スタイル切り替えのための異体字セレクタの組合せが登録された[45]

2012年3月2日、IVDがバージョンアップ。汎用電子コレクションとAdobe-Japan1-6のこれまで登録されていなかった異体字のうち一部が追加登録された[46]

2013年9月30日、Unicode 6.3が制定。CJK互換漢字がStandardized Variantsとして登録された[47]

2014年5月16日、IVDがバージョンアップ。文字情報基盤コレクションが登録された[46]

互換漢字との関係[編集]

CJK互換漢字を使うと<FA30>、異体字セレクタを使うと<4FAE, E0101>, <4FAE, E0103>または<4FAE FE00>のいずれかで符号化される

JIS X 0213CNS 11643などの各国の従来文字コードでは区別されているがUnicodeでは統合されている文字を区別するため、UnicodeではこれまでCJK互換漢字を使ってきた。しかし技術的な制約により、漢字の異体字セレクタはCJK統合漢字 (正確にはUnified_Ideographプロパティを持つ文字) にしか付けることができない。これはUnicode正規化に対する安定性の問題 (CJK互換漢字#問題点を参照) を改善するが[48]、同じ字形を意図していても異体字セレクタに対応した実装と対応していない実装との間で異なる符号化表現が採用され、混乱を招く可能性も指摘されている[49]

また、2006年1月に漢字字形データベースへの登録手続きが制定されて[31]漢字字形コレクションの登録が可能になった後にもARIB外字や汎用電子で収集された漢字の一部を互換漢字として収録することが要望される[50][34]など、足並みは必ずしもそろっていなかった。

2013年9月30日に制定のUnicode 6.3では、CJK互換漢字が正規化でCJK統合漢字に置き換えられ、字形等の情報を失ってしまう問題を解消するために、Standardized Variantsとして、CJK互換漢字と等価なCJK統合漢字と異体字セレクタの組合せがIVSとは別に登録された。IVSとは異なり基本多言語面にあるVS1(U+FE00)~VS3(U+FE02)を使う。IVSにある字形と同じものでも登録されている。例えば、U+FA30の「侮」の康煕別掲の字体「侮」は、U+4FAEとU+FE00(異体字セレクタ1)の組合せで登録された。CJK互換漢字ブロックおよびその補助集合のうち、CJK統合漢字扱いするものを除いた1002字全てが登録された。字体の違いでなく韓国KS X 1001の読みの違いで分離されているものや台湾Big5の誤って重複収録されたものに対応する互換漢字にも異体字セレクタが与えられている。例えば、U+F90Aの「금」(Geum、クム)と読む「金」には、U+91D1(KS X 1001では「김」(Gim、キム)と読む「金」に対応)と字体が全く同じであるが、これにU+FE00を付け加える組合せが与えられた。

問題点[編集]

国によって異なる骨の異体字(・骨)。異体字セレクタでは対応していない例
  • フォントを指定できないプレーンテキストでの使用を想定されているにもかかわらず、確実にフォントを指定できる環境以外では、異体字セレクタを使用しても対象の環境で意図した異体字が表示されるとは限らない。ただし外字と異なり、どのような字形を意図していたかの情報は失われない。
  • 漢字の場合、出典が異なれば同一字形であっても別の異体字セレクタが割り当てられることとなっている。そのため、同一字形に対して複数の異体字セレクタが割り当てられ、検索等において支障が生ずる場合がある。例えば、葛飾区の葛には、Adobe1-6用の異体字セレクタ18の他に汎用電子コレクション用の異体字セレクタ20、葛城市の葛にはAdobe1-6用の異体字セレクタ17の他に汎用電子コレクション用の異体字セレクタ19が与えられてしまった。また、Unicode 6.3ではIVSとは別にCJK互換漢字に異体字セレクタが与えられたため、例えば「侮」にはAdobe1-6の異体字セレクタ18と汎用電子の異体字セレクタ20に加え互換漢字U+FA30に対応する異体字セレクタ1が与えられるなど最大3つ異体字セレクタが与えられることとなった。

さらに2014年9月現在、

  • 異体字セレクタに対応した環境は少なく(#ソフトウェアの節を参照)、また対応した環境であっても、対応範囲はフォントによって必ずしも一様ではない。たとえばWindows 8.1標準の日本語フォントのうちメイリオ/游明朝/游ゴシックはおおむねAdobe-Japan1コレクションをサポートするが、MS 明朝/MS ゴシックはおおむねJIS X 0213:2004で例示字形が変更される以前の字形のみをサポートする。
  • 異体字セレクタに対応したフォントが少ない (#フォントの節を参照)。
  • 現状では漢字は日本向けのコレクションしか登録されていないため、国によって異なる骨の異体字(右記の図参照)のようなケースを異体字セレクタで区別することはできない。

実装[編集]

漢字の異体字セレクタに対応した実装には以下のようなものがある。

フォント仕様[編集]

  • OpenType仕様のバージョン1.5は、漢字の異体字セレクタによる字形切り替えをサポートするためにFormat 14 'cmap' subtableと呼ばれる情報のフォーマットを規定する[51]
  • SVGフォントはIVSに限らず、任意のUnicode符号列に対してグリフを割り当て可能である[52]

フォント[編集]

大別すると、Adobe-Japan1に対応、Hanyo-Denshiに対応、JIS X 0213:2004で例示字形が変更される以前の字形をIVSによりサポートするものとなる

  • IPAexフォント - JIS X 0213:2004で例示字形が変更される以前の字形をIVSによりサポートしている。サポート文字数はVer.001.02の時点で172文字[56]
  • IPAmj明朝(Hanyo-Denshi) - 汎用電子情報交換環境整備プログラムによる字形を約4200文字サポートしている[57]。IPAexフォントに収録されているIVSに対応した字形はサポートしていないものも多い。符号化は完了していない。
  • 和田研フォント - 漢字の異体字セレクタに対応したものは「和田研細丸ゴシックProN」がある。JIS X 0213:2004で例示字形が変更される以前の字形をこれによりサポートしている[58]
  • MS 明朝MS ゴシック - Windows 8に搭載のバージョンから、JIS X 0213:2004で例示字形が変更される以前の字形をIVSによりサポートしている。
  • 游明朝体/游ゴシック体 Pr6N(Adobe-Japan1) 字游工房フォント - 一太郎2014プレミアムにバンドル、OS X Mavericks (10.9)とWindows 8.1にもバンドルするが対応要確認
  • 源ノ角ゴシック - AdobeGoogleの共同開発。Adobe-Japan1の漢字グリフは網羅しているが、AJ1との互換性がとくに考慮されているわけではない。

フォント作成ツール[編集]

Format 14 'cmap' subtableを含んだフォントの作成に対応したツールには、以下のようなものがある。

  • FontForge - 2007年10月2日以降のビルドでFormat 14 'cmap' subtableの生成に対応[59]
  • Adobe Font Development Kit for OpenType (AFDKO) - バージョン2.1以降でFormat 14 'cmap' subtableの作成に対応[54]
  • TTX/FontTools - GlyphWikiでIVS対応フォントの生成に使われている[60]
  • TTEdit - IVS対応 TrueTypeフォントから作成した場合。

ライブラリ[編集]

FreeTypeの2007年10月以降の開発版には、Format 14 'cmap' subtableから異体字セレクタの情報を読み取るためのAPIが追加されている[61]

ソフトウェア[編集]

  • Windows 7では標準のテキスト描画処理が異体字セレクタに対応しており、エクスプローラーでのファイル名表示やメモ帳やサードパーティのテキストエディタでのテキスト表示等で異体字セレクタによる字形切り替えが可能である。但し、使用するフォントが異体字セレクタによる字形切り替えに対応している必要があり、日本語版にプレインストールされた標準的なフォントであるメイリオは非対応であるため、初期設定では異体字セレクタで字形が切り替わらない。[62]
  • Windows 8以降、システム標準の日本語フォントがAdobe-Japan1コレクションに対応した[63]
  • Mac OS X 10.5標準のテキスト描画処理はdefault ignorableプロパティに従い[64]異体字セレクタを描画しないが、字形の切り替えはサポートしない。
  • Mac OS X 10.6標準のテキスト描画処理は字形の切り替えをサポートするが[65]、Windows 7と同様標準フォントのヒラギノは異体字セレクタに未対応である。
  • Mac OS X Lion (10.7)以降、システム標準の日本語フォントがAdobe-Japan1コレクションに対応した[66]
AlphaとY.OzFontによる、UTS #37の例文の描画結果「田さんは芦屋のお嬢様だ」「」の「戸」が新字体旧字体
  • Alpha (テキストエディタ) - 2008年2月のIVS-OTFT試験公開版では異体字セレクタの情報をOpenType機能タグの情報に変換することにより、異体字セレクタによるグリフの切り替えに対応している[67]
  • gdi++
  • Emacs 23[68]
  • EmEditor v11以降[69]
  • FooEditor(テキストエディタ)[70]
  • gPad(テキストエディタ)
  • Mery(テキストエディタ)
  • oedit(テキストエディタ)
  • Adobe Reader 9以降、Flash Player 10のFlash Text Engine、Adobe InDesign CS4などのアドビ社製品[65]
  • Windows 7上でのOpera (Presto)[71]
  • Mozilla Firefoxはバージョン4以降、システムにインストールされたフォントおよびWebフォントによる異体字セレクタの描画をサポートする[72]。またバージョン31以降、CJK互換漢字のStandardized Variantsをフォントがサポートしていない場合に、CJK互換漢字のグリフで代替する機能を持つ[73]
  • WebKitはSVGフォントをサポートしており、SVGフォントによって定義したIVSによる字形切り替えが可能である。Opera (Presto)もSVG文書でのみSVGフォントによる字形切り替えが可能[74]
  • 一太郎2008以降 - 入力機能は2014 徹から。それ以前は貼り付けのみ対応。個人向けATOKも2014より正式対応。法人向けはその前年より。
  • Microsoft Office 2007以降 - 2010まではUnicode IVS Add-in for Microsoft Office[75]が必要
  • LibreOffice 4.1以降/Apache OpenOffice 4.0以降

脚注[編集]

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  1. ^ JIS X 0221:2007の規格票では「字形選択子」という訳語を当てているが、全く意味の異なる"Character shaping selectors"などにも全く同じ訳語を当てているので、混乱を避けるため本項では「異体字セレクタ」という訳語を用いる。
  2. ^ Unicode Enabled Products”. 2008年2月2日閲覧。
  3. ^ Unicode Technical Report #17 - Character Encoding Model” (2004年9月9日). 2008年2月2日閲覧。
  4. ^ 川俣晶 『Windows NT 日本語処理ガイドブック』 Windows NT 漢字処理技術協議会、1998年10月30日、p.5。
  5. ^ アプリケーション開発者向け Windows Vista 対応アプリケーションの互換性”. pp. 68. 2008年2月2日閲覧。 デモ映像
  6. ^ Mac専用日本語入力プログラム“egbridge Universal””. 2008年2月15日閲覧。
  7. ^ アップル - Pro - 技術情報 - Mac OS Xと日本語タイポグラフィ 第5回:ヒラギノProの漢字を巡る座談会 - ページ6”. 2008年2月15日閲覧。
  8. ^ Format Characters Suitable for Use with Markup” (2003年6月13日). 2008年2月2日閲覧。
  9. ^ http://www.unicode.org/L2/L2003/03293-puvs.html
  10. ^ Ad-Hoc Report on Ideographic Variation Indicator” (1998年3月18日). 2008年2月21日閲覧。
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関連項目[編集]

参考資料[編集]

外部リンク[編集]