國語元年
『國語元年』(こくごがんねん)は、
- 1985年の6月8日から7月6日までNHK総合テレビの「ドラマ人間模様」枠で放送されたテレビドラマ。シナリオは中公文庫から『國語元年』として刊行されている。
- 1986年にこまつ座制作で上演された演劇。紀伊國屋ホールにて初演。戯曲は新潮文庫から『國語元年』として刊行されている。
いずれも井上ひさしによる脚本・戯曲で、明治初期にお国の土台、軍隊言葉に混乱がないようにと「全国統一話し言葉」作成を命じられたとある文部省官吏の苦闘を描いた作品[1]であるが、内容には相違がある。
目次
あらすじ(ドラマ)[編集]
大竹ふみの故郷への言葉から始まる。南郷清之輔の邸宅にお手伝いとして入る。そこはお国言葉が行き交っていた。清之輔は文部省の学務局の役人で「全国統一話し言葉」の作成を命じられる。お国言葉の観察から始めるが、大変さが分かってくる。そこへ言語革命は秦始皇帝の漢字革命、フランス革命のフランス語改革しか成功していないといい、成功させるためには自分が必要と国学者という裏辻芝亭が居候として入ってくる。清之輔は軍隊で言葉が混乱すると国家の大事と騒ぐが、容易ではない。そこへ若林が押し込み強盗に入る。お金を渡すが、倍のお金の入った財布を忘れて行く。青森に逃げた会津の残党に仕送るために強盗を重ねていたのだ。取り返しに来てそのまま居残る。文語でどうかも検討するが、若林の意見で会津の言葉を基にしようと田中閣下に上申するが、逆賊の言葉とはと叱られる。若林が抗議に威しに行き、役職から外されるが、秋山が黙っておくことに決める。清之輔はさまざまな言葉を混ぜて統一言葉を作ろうとするが、自分の悪い意味のお国言葉が入るはみなから猛反対。「文明開化語」[2]を考えだす。「す」で終わり、過去形は「すた」、否定は「ぬ」、疑問は「か」、命令は「せ」を動詞につけるというものだが、これで口説けるかといわれ、ふみどんを相手に口説いて実験は成功。強盗ができるか若林が実験するが、ポリスに捕まり、万人の言葉を変えるのは個人の力ではどうにもならないと書いてよこす。清之輔は田中閣下に上申するが、学務局が廃止され、机もなくなっている。
主な登場人物[編集]
- 南郷清之輔
- 南郷重左衛門
- 南郷光
- 南郷重太郎
- 秋山加津
- 築館弥平
- 広澤修一郎
- 江本太吉
- 御田ちよ
- 高橋たね
- 大竹ふみ
- 裏辻芝亭公民
- 若林虎三郎
ドラマ版スタッフ[編集]
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ドラマ版キャスト[編集]
- 南郷清之輔:川谷拓三
- 大竹ふみ:石田えり
- 南郷光:ちあきなおみ
- 南郷重左衛門:浜村純
- 南郷重太郎:岡田二三
- 御田ちよ:島田歌穂
- 高橋たね:賀原夏子
- 広澤修一郎:大橋吾郎
- 江本大吉:松熊信義
- 裏辻芝亭公民:すまけい
- 築館弥平:名古屋章
- 若林虎三郎:佐藤慶
- 秋山加津:山岡久乃
- 現代
- ニュースキャスター:平光淳之助
受賞[編集]
- 第12回放送文化基金賞 奨励賞
- 第18回テレビ大賞 番組賞
舞台[編集]
1986年1月16日に紀伊國屋ホールで初演。地方でも上演され、上演を重ねた。前口上を井上ひさしが『the座』に書いている[4]。
舞台版スタッフ[編集]
舞台版キャスト[編集]
- 南郷清之輔:佐藤B作
- 広沢修二郎:植本潤
- 裏辻芝亭公民:たかお鷹
- 南郷重左衛門:沖恂一郎
- 南郷光:土居裕子
- 御田ちよ:岡寛恵
- 大竹ふみ:野々村のん
- 高橋たね:田根楽子
- 築館弥平:角間進
- 江本太吉:後藤浩明
- 秋山加津:剣幸
- 若林虎三郎:山本龍二
関連商品[編集]
書籍[編集]
- 戯曲
- 國語元年(1986年5月、新潮社、ISBN 978-4103023197)
- 國語元年(1989年10月、新潮文庫、ISBN 978-4101168234)
- シナリオ
- 國語元年(2002年4月、中公文庫、ISBN 978-4122040045)
DVD[編集]
- 國語元年 DVD-BOX(2006年12月22日、NHKエンタープライズ)
脚注[編集]
- ^ 離婚騒動の最中の作品であり、西舘好子は『愛がなければ生きて行けない』(海竜社 1987年)で南郷清之輔のうちに井上ひさしの姿を読み取り、「全ての人生はある一点の才能に集結せよ、といわんばかりの思いが無意識に夫にはないだろうか」「わたしには、今ことばより大切なものがほしい」と書いた(扇田昭彦責任編集『日本の演劇人 井上ひさし』白水社 2011年)。
- ^ 前作の『国語事件殺人辞典』の「簡易日本語」に似たピジン言語。
- ^ 史実では当時の文部大臣森有礼が目論んだことである。
- ^ 扇田昭彦『井上ひさし』p.119f,pp190-192に再録。