上田隆一

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上田 隆一
うえだ りゅういち
人物情報
生誕 (1978-02-16) 1978年2月16日(40歳)[1]
富山県小矢部市[2]
出身校 東京大学
学問
研究分野 ロボット工学情報処理
研究機関 東京大学
有限会社USP研究所
産業技術大学院大学
千葉工業大学
博士課程
指導教員
新井民夫
指導教員 湯浅秀男[注釈 1] 太田順
学位 博士(工学)(東京大学)
特筆すべき概念 シェル芸[1]
主要な作品 訳書『確率ロボティクス』[5][6]
影響を
受けた人物
ディーター・フォックス英語版[4]、小林祐一[4]松下光次郎[7]
学会 日本ロボット学会情報処理学会IEEEUSP友の会
主な受賞歴 日本ロボット学会研究奨励賞、ロボカップ2004(リスボン大会)四足歩行ロボットリーグ・テクニカルチャレンジ第2位、など
公式サイト
上田ブログ
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上田 隆一(うえだ りゅういち、1978年(昭和53年) 2月16日[1][8][注釈 2] - )は日本のロボット研究者。東京大学博士(工学)。日本における確率ロボティクスの代表的人物の一人[5][6]。「シェル芸」の提唱者[1]千葉工業大学先進工学部未来ロボティクス学科准教授[1][12]。学生時代からロボカップ四足歩行ロボットリーグの「TEAM ARAIBO」で活躍し、現在もロボカップ@ホームに出場[13][14]東京大学大学院工学系研究科助教ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所技術研究員、産業技術大学院大学助教を経て現職[1][15]USP友の会会長[16]、ロボカップ日本委員会 正会員[17]、ジャパンオープン実行委員会サッカー標準プラットフォームリーグ英語版委員[13][18]

来歴・人物[編集]

生い立ち[編集]

富山県小矢部市出身[2]。少年時代は筒井康隆安部公房などの文学に親しむ。高校では囲碁を始めて初段、富山県男子県代表も経験した[14]東京大学に進学し、上京。教養課程では麻雀に打ち込み、進振りでは工学部精密機械工学科に配属される[14][注釈 3]

東京大学、TEAM ARAIBO[編集]

2000年、学部4年次の卒業研究で新井・湯浅・太田研究室に配属[3][20]2001年3月に学部を卒業し、東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻へ進学。一貫して横井・湯浅・太田研究室に所属[注釈 4]2003年3月に修士課程修了後は博士課程へ進学するが、2004年4月から新井・横井・太田研究室の助手に就任する[10][11][21]。2007年3月に論文博士で学位を取得し[22][23]、2007年の時点で既婚、1児の父[4]

ロボカップ2005世界大会(大阪開催)における四足ロボットリーグの様子(出場チームは不明)。

この間、ソニーAIBOを用いるロボカップ四足ロボットリーグに出場する「TEAM ARAIBO」[注釈 5]に参加。以後2007年の四足ロボットリーグ終了まで続け[24]、AIBOを題材に自律移動ロボットの自己位置推定や行動決定を研究した[25][26][21]。上田は状態行動地図の作成に動的計画法を導入し、ベクトル量子化を用いて状態行動地図を大幅に圧縮[25]。物体や自己の位置推定にパーティクルフィルタも試みた[26]

ディーター・フォックス英語版パーティクルフィルタ(Sequential Monte Carlo Method)を自己位置推定に応用したMonte Carlo localization英語版を提案。ロボカップにも出場していた[4]

なお学部4年次は湯浅秀男[注釈 1]の指導を受け、論文を半年間で詳しく読み込む勉強会にも参加して難しい数学に対する耐性を付けた[3]。この頃、小林祐一の助言でMonte Carlo localization英語版を実装し、提案者のディーター・フォックス英語版に感銘を受ける[4]。2003年にはフォックスを訪問し、後に2005年にフォックスがセバスチャン・スランらと著した『Probabilistic robotics』を翻訳[4]。訳本が2007年に出版されている[27][注釈 6]

シェル・プログラミングの世界へ[編集]

2009年には有限会社ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所(USP研究所)に技術研究員として転職[15]ユニケージ開発手法によるシステム開発やその普及活動に従事し[15]NEDOの支援を受けた「パイプライン計算機とユニケージによる高速情報処理技術の実用化」のプロジェクトなどにも携わった[28]。この間、2009年5月[29]に「USP友の会」が発足し、上田は会長に就任[16][20]。『Software Design』といった商業誌でも解説記事を執筆するようになり(節「商業誌」参照)、「シェル芸」を提唱するようになる[1]

2013年8月、産業技術大学院大学産業技術研究科情報アーキテクチャ専攻の助教に就任[12][16]データベース利用におけるシェルスクリプトの利用法などを研究するとともに、ロボット研究も再開[13]。ロボットの行動決定にパーティクルフィルタを適用し、「Probabilistic flow control method(PMC法)」を提案した[13][30]。一方USP友の会では引き続き会長を務め[20]、様々な活動に取り組んでいる[31]。USP研究所でも11月からアドバイザリー・フェローを務め[12][13]、2014年には中川友紀子ロボカップ@ホームの普及活動に取り組んだ[32]

千葉工業大学未来ロボティクス学科[編集]

2015年9月、千葉工業大学工学部未来ロボティクス学科准教授に就任(2016年より先進工学部未来ロボティクス学科)[1][12]。「CIT Brains @Home」としてロボカップ@ホームに出場しつつ[20]、自律ロボットの空間認識や行動決定の同時学習について研究を推進[33][34]強化学習なども取り入れ、「Particle Filter on Episode」を提案する[34][35][36]

また、中川友紀子の株式会社アールティが販売するRaspberry Piを用いたマイクロマウス教材について、解説を執筆。ROS(Robot Operating System)環境での開発も交えて、書籍化された[37][38](「主な著作」節も参照)。中川とはディープラーニング(深層学習)を用いた唐揚げの認識やマニピュレーションの研究にも取り組んでいる[35][39][40]

受賞歴[編集]

(学術賞)

ロボカップ四足ロボットリーグ) -「TEAM ARAIBO」[注釈 5]の一員として[42]

  • ロボカップジャパンオープン2000 - 日本ロボット学会賞[42]
  • ロボカップ2003(パドヴァ大会) - テクニカルチャレンジ第3位[42]
  • ロボカップ2004(リスボン大会) - テクニカルチャレンジ第2位[42][43]
  • ロボカップ2005(大阪大会) - テクニカルチャレンジ第3位[42][44]

社会的活動[編集]

(学術団体)

(その他の団体)

主な著作[編集]

学位論文[編集]

著書[編集]

学会誌[編集]

商業誌[編集]

  • 「連載 開眼シェルスクリプト」、『Software Design技術評論社、2012年1月号 - 2013年12月号[48]
  • 「連載 Haskellでやってはいかんのか?」、『USP Magazine』2014年4月号 - 2015年7月号[49]
  • 「連載 Raspberry Piで始めるかんたんロボット製作」、『日経Linux日経BP社、2015年6月号 - 11月号[50]
  • 「連載 Raspberry Piで作ろう お手軽ロボット教室」、『日経Linux』 日経BP社、2016年1月号 - 9月号[51]
  • 「連載 シェル芸人からの挑戦状」、『Software Design』 技術評論社[52]
    ほかにも、『Software Design』で不定期に記事を書いている[53]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ a b 湯浅秀男は日本のロボット研究者。名古屋大学工学博士。名古屋大学講師、東京大学助教授を歴任。自律分散システムの制御に拡散方程式やグラフ理論など高度な数式を導入し、センサーアクチュエータの双対性に着目した。教育にも熱心で、かつ人柄の良さでも知られていた[3]。上田は笑顔に潜む「研究者としての凄味」を感じたと言う[4]
  2. ^ 1979年生まれ[9]は間違いで、1978年生まれ[10][11][2]が正しい。
  3. ^ 精密機械工学科は現在の精密工学科。一時期はシステム創生学科に組み込まれていた[19]
  4. ^ 2002年9月に湯浅が急逝したため、2004年3月までは新井・太田研究室[3][19]
  5. ^ a b “ARAIBO”は“Advanced Robotics with Artificial Intelligence for Ball Operation”が由来。東大新井研のみならず、同研究室出身の中央大学・大隅久の研究室も参画している(Tamio Arai, et.al. (August 2001). The Team Description of ARAIBO. RoboCup 2001: Robot soccer world cup V. 5th robot world cup soccer games and conferences: 730-733. doi:10.1007/3-540-45603-1_124 参照)。
  6. ^ a b セバスチャン・スランウルフラム・バーガード英語版ディーター・フォックス英語版 著(NCID BA83605727NCID BB18623525NCID BB22865583参照)。原著は Thrun, Sebastian., Burgard, Wolfram., Fox, Dieter. (2005) Probabilistic robotics. MIT Press. ISBN 9780262201629[27]
  7. ^ 和文タイトル『自律ロボットの行動決定のための状態行動地図のベクトル量子化圧縮』(NAID 500000427646、「論文内容の要旨」参照、2018年5月26日閲覧。)
  8. ^ 「ITエンジニアに読んでほしい技術書・ビジネス書大賞2015」において、技術書部門ベスト10に入る[47]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j 上田 2016, p. 508.
  2. ^ a b c 上田隆一 プロフィール”. ローチケ×HMV&BOOKS online. 2018年5月23日閲覧。
  3. ^ a b c d 故湯浅先生追悼集について”. 東京大学 工学部 精密工学科/東京大学大学院 工学系研究科 精密工学専攻 サービスロボティクス分野 (2003年2月19日) 2018年5月23日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g 上田隆一「あとがきにかえて」『確率ロボティクス』 毎日コミュニケーションズ〈MYCOM ROBOT books〉、2007年、545-546頁。ISBN 9784839924010
  5. ^ a b 松本吉央、道木加絵「「確率理論のロボティクス応用」特集について」、『日本ロボット学会誌』第29巻第5号、2011年、403頁。
  6. ^ a b 木内裕介「「不確実性に挑むロボティクス」特集号を企画して」、『システム/制御/情報』第60巻第12号、2016年、541頁。
  7. ^ 上田隆一、新井民夫、松下光次郎「アクロボットの振り上げのための状態行動地図の作成と圧縮」、『ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集2006』、2006年、2P1-B39。
  8. ^ 梅田和昇、浅沼和範、菊地敏文、上田隆一、大隅久、新井民夫「カメラ特性を考慮した複数自律移動ロボットのための環境・計測シミュレータの開発」、『日本ロボット学会誌』第23巻第7号、2005年、878-885頁。
  9. ^ 小林祐一、深瀬武、上田隆一、新井民夫、湯浅秀男「実時間性と観測コストを考慮した4脚ロボットのサッカー行動設計」『日本ロボット学会誌』第21巻第7号、2003年、802-810頁。
  10. ^ a b c d 上田隆一、新井民夫、浅沼和範、梅田和昇、大隅久「パーティクルフィルタを利用した自己位置推定に生じる致命的な推定誤りからの回復法」、『日本ロボット学会誌』第23巻第4号、2005年、466-473。
  11. ^ a b c 上田隆一、新井民夫「パーティクルフィルタとQ-MDP法による状態推定の不確かさを考慮した自律ロボットの実時間行動決定」、『日本ロボット学会誌』第25巻第1号、2007年、103-112頁。
  12. ^ a b c d 上田 隆一 プロフィール”. 教員紹介. CIT未来ロボティクス学科. 2018年5月23日閲覧。
  13. ^ a b c d e f PFC 法の開発と確率ロボティクス”. 003情報通信. 産業技術大学院大学 産業技術研究科 情報アーキテクチャ専攻. 2018年5月23日閲覧。
  14. ^ a b c 「インタビュー 上田先生に訊く」上田先生と上田研は謎が多いのですがII”. CIT未来ロボティクス学科 (2017年5月20日) 2018年5月23日閲覧。
  15. ^ a b c 上田 2011, p. 407.
  16. ^ a b c d e 上田 2014, p. 1323.
  17. ^ a b 平成28年度事業報告書 平成28年度収支決算書”. 特定非営利活動法人ロボカップ日本委員会. 2018年5月26日閲覧。
  18. ^ a b ロボカップ ジャパンオープン2014 大会概要”. 2018年5月27日閲覧。
  19. ^ a b サービスロボティクス分野の歴史”. 東京大学精密機械工学専攻サービスロボティクス分野 (2018年4月1日) 2018年5月23日閲覧。
  20. ^ a b c d 「インタビュー 上田先生に訊く」上田先生と上田研は謎が多いのですがI”. CIT未来ロボティクス学科 (2017年5月20日) 2018年5月23日閲覧。
  21. ^ a b c d e 実川達明、上田隆一、新井民夫「サンプリング実時間Q-MDP法 ―不完全な観測に基づき実時間行動する自律サッカーロボットへの適用―」、『日本ロボット学会誌』第27巻第1号、2009年、71-78頁。
  22. ^ a b 学位論文要旨 No 216754”. 東京大学学位論文データベース. 2018年5月26日閲覧。
  23. ^ 上田 2007.
  24. ^ 梓みきお (2007年5月24日). “ロボカップ ジャパンオープン2007 大阪開催~ヒューマノイドリーグはTeam OSAKAの4連覇で幕を閉じる”. RobotWatch. Impress Watch. 2018年5月23日閲覧。
  25. ^ a b ベクトル量子化による状態・行動地図の不可逆圧縮(2005–2006年度、若手研究B)”. 科学研究費助成事業データベース. 国立情報学研究所. . 2018年5月26日閲覧。
  26. ^ a b 多数のセンサによる物体位置姿勢計測のためのパーティクルフィルタの実装理論(2007–2008年度 若手研究B)”. 科学研究費助成事業データベース. 国立情報学研究所. 2018年5月26日閲覧。
  27. ^ a b 友納正裕「移動ロボットの環境認識」、『システム/制御/情報』第60巻第12号、2016年、509-514頁。
  28. ^ 有限会社ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所 パイプライン計算機とユニケージによる高速情報処理技術の実用化”. 中小企業ビジネス支援サイト J-Net 21. 2018年5月23日閲覧。
  29. ^ USP友の会について”. USP友の会 (2010年10月25日) 2018年5月30日閲覧。
  30. ^ Ryuichi Ueda (2015). Generation of compensation behavior of autonomous robot for uncertainty of information with probabilistic flow control. Advanced Robotics. 29(11): 721-734.
  31. ^ junkuTV (2015年6月28日). “上田隆一×中島雅弘×富永浩之 AWK & Shellテキスト処理ブーム再来について熱くなる夜。”. Youtube. 2018年5月26日閲覧。
  32. ^ オープンフォーラム Turtlebot2でロボカップ@ホームに挑戦しよう!”. 第23回日本ロボット学会学術講演会. 2018年5月23日閲覧。
  33. ^ 実世界を行動するエージェントの空間認識能力と行動決定則の同時学習(2017–2019年度 基盤研究C)”. 科学研究費助成事業データベース. 国立情報学研究所. 2018年5月26日閲覧。
  34. ^ a b 実世界を行動するエージェントの空間認識能力と行動決定則の同時学習”. 千葉工業大学未来ロボティクス学科知能ロボット研究室. 2018年5月28日閲覧。
  35. ^ a b 出版物リスト”. 千葉工業大学先進工学部未来ロボティクス学科知能ロボット研究室. 2018年5月27日閲覧。
  36. ^ Ryuichi Ueda, Kotaro Mizuta, Hiroshi Yamakawa, Hiroyuki Okada (2017) Particle Filter on Episode for Learning Decision Making Rule. In: W. Chen, K. Hosoda, E. Menegatti, M. Shimizu, H. Wang (eds) Intelligent Autonomous Systems 14. IAS 2016. Advances in Intelligent Systems and Computing, vol 531. Springer. ISBN 978-3-319-48035-0, ISBN 978-3-319-48036-7
  37. ^ 2017/03/30に「Raspberry Piで学ぶ ROSロボット入門」発売決定!”. Raspberry Pi Mouse. 株式会社アールティ. 2018年5月23日閲覧。
  38. ^ Raspberry Pi Mouse V2 フルキット”. RT Robot Shop. 株式会社アールティ. 2018年5月23日閲覧。
  39. ^ ロボスタ編集部 (2016年9月6日). “ロボットは「Computer Aided」から「AI Aided」に移行、そしてシンギュラリティへ – HTML5カンファレンスでRTの中川友紀子氏が講演”. ロボスタ. 2018年5月28日閲覧。
  40. ^ TensorFlow勉強会 (2016年7月5日). “TensorFlow勉強会 (4) TensorFlow唐揚サーバーロボット”. YouTube. 2018年5月30日閲覧。
  41. ^ 研究奨励賞”. 表彰. 日本ロボット学会. 2018年5月23日閲覧。
  42. ^ a b c d e 上田 2007, p. 257.
  43. ^ LEGGED LEAGUE RESULTS 2004”. RoboCup Standard Platform League. 2018年5月28日閲覧。(英語)
  44. ^ LEGGED LEAGUE RESULTS 2005”. RoboCup Standard Platform League. 2018年5月28日閲覧。(英語)
  45. ^ 平成21年度事業報告書 平成21年度収支決算書”. 特定非営利活動法人ロボカップ日本委員会. 2018年5月26日閲覧。
  46. ^ ロボカップ ジャパンオープン大阪2007 運営マニュアル(参加者用)”. 2018年5月27日閲覧。
  47. ^ ITエンジニア本大賞事務局 (2015). “IEエンジニアに読んでほしい技術書・ビジネス書大賞2015”. 翔泳社. 2018年5月23日閲覧。
  48. ^ 開眼シェルスクリプト”. 2018年5月26日閲覧。
  49. ^ Haskellでやってはいかんのか?”. 2018年5月26日閲覧。
  50. ^ Raspberry Piで始めるかんたんロボット製作”. 2018年5月26日閲覧。
  51. ^ Raspberry Piで作ろう お手軽ロボット教室”. 2018年5月26日閲覧。
  52. ^ Software Design 2018年4月号”. 技術評論社. 2018年5月26日閲覧。
  53. ^ Software Design 2015年5月号”. 技術評論社. 2018年5月26日閲覧。

外部リンク[編集]

(千葉工業大学)