ザワークラウト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
ポーランドのザワークラウト(キショナ・カプースタ)

ザワークラウト (Sauerkraut) とは、ドイツにおけるキャベツ漬物。また、それを使った料理も指す[1]。原義は「すっぱいキャベツ」。この酸味は乳酸発酵によるもので、に漬け込むのではない[2][3]ザウアークラウトザオアークラオトとも表記されることがある。

広まった国[編集]

英語ではサワークラウト仏語ではシュークルートオランダ語ではズールコールポーランド語ではキショナ・カプスタロシア語ではカプースタ

フランスアルザス地域ポーランドをはじめ北欧東欧ロシアでも食されているほか、ドイツ移民の多いアメリカ合衆国カナダなどでもよく食べられている。1世紀には古代ローマで食べられていた記録があるが、現代のものは16世紀から18世紀にかけてヨーロッパに広く定着した。

製法[編集]

ザワークラウトの酸味は空気中の乳酸菌などによる発酵で生じるもので、酢などの酸味料は加えない。産地や各家庭において作り方はさまざまであるが、基本的にはキャベツや赤キャベツを繊切りにし、瓶や漬物樽に入れ、適量(キャベツの重量の2%程度)の香辛料を入れてよく混ぜたのち、漬物石など重しをのせて押しをかけ、常温で保管する。夏季なら3日、冬場でも一週間程度で酸味が出て食べごろになる。香辛料はジュニパーディルシード、キャラウェイシードなどがよく使われる。また塩とともに白ワインを加えて漬け込まれることもある。

似た料理にキャベツを丸ごと漬け込み乳酸発酵させた酢キャベツがある。後述のサルマ・サルマーレに使われるのはこちらである。

食べ方[編集]

シュラハトプラッテ
シュークルート・ガルニ

ソーセージなどの肉料理をはじめとした色々な料理の付合せとしてよく用いられドイツ国内でも地方によって調理法や食べ方が異なる。

代表的な料理に、ドイツ語でシュラハトプラッテ (Schlachtplatte)、フランス語でシュークルート・ガルニ (Choucroute garnie)、アルザス風シュークルート (Choucroute d'Alsace) がある。これは数種類のソーセージおよび数種類の部位の豚肉、特に腿肉(ドイツ語でアイスバイン、フランス語でジャレ・ドゥ・ポール (Jarret de porc))をザワークラウトの上に乗せて蒸し焼きにしたものである。

また魚を載せた料理もある。これは海魚に限らず、ドイツライン川ドナウ川フランスロワール川沿いなどでは、などの川魚も良く用いられる。場合によってはカツレツ状に衣を着けて揚げてあり、クリームソースをかけて食べることが多い。

フランスではシュークルートと呼ばれ、アルザス地域圏の料理とされており、果実味の強い白が特徴のアルザスワインを合わせて飲むことが多い。またアルザスに限らずロワールなど他の地方でもシュークルートは良く用いられる。地中海沿岸ではシュークルート・ドゥ・ラ・メール (Choucroute de la mer) といって、海の魚介類を乗せた料理も見られる。

その他、油で炒めたり、スープやロシアのシチーなどの煮込み料理の材料としても用いられる。また、サンドイッチに挟むのもポピュラーな食べ方である。塩漬けした牛肉と共にパンにはさんだものはルーベンサンドといわれ、ニューヨークの名物料理の一つである。ホットドッグの付け合せとしても一般的である。ドイツからフランスなどへ移住したユダヤ人の料理としても用いられるが、ユダヤ教では豚肉を食べることが禁じられているため、乗せる具は子牛の肉や魚が用いられる。東欧ではロールキャベツ(サルマ、サルマーレ)にも使われる。

ベトナムにはザワークラウトと同じようなキャベツの漬け物がある。漬物甕にキャベツを入れ、水と塩と砂糖を加え、フタをしてそのまま2 - 3日おくと酸っぱい漬け物ができあがる。

ザワークラウト(缶詰)
100 gあたりの栄養価
エネルギー 78 kJ (19 kcal)
4.28 g
糖分 1.78 g
食物繊維 2.9 g
0.14 g
飽和脂肪酸 0.034 g
一価不飽和脂肪酸 0.013 g
多価不飽和脂肪酸 0.067 g
0.91 g
トリプトファン 0.008 g
トレオニン 0.025 g
イソロイシン 0.021 g
ロイシン 0.029 g
リシン 0.031 g
メチオニン 0.009 g
シスチン 0.008 g
フェニルアラニン 0.023 g
チロシン 0.014 g
バリン 0.03 g
アルギニン 0.053 g
ヒスチジン 0.016 g
アラニン 0.03 g
アスパラギン酸 0.087 g
グルタミン酸 0.209 g
グリシン 0.021 g
プロリン 0.034 g
セリン 0.037 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
1 μg
(0%)
8 μg
295 μg
チアミン (B1)
(2%)
0.021 mg
リボフラビン (B2)
(2%)
0.022 mg
ナイアシン (B3)
(1%)
0.143 mg
(2%)
0.093 mg
ビタミンB6
(10%)
0.13 mg
葉酸 (B9)
(6%)
24 μg
ビタミンB12
(0%)
0 μg
コリン
(2%)
10.4 mg
ビタミンC
(18%)
14.7 mg
ビタミンD
(0%)
0 IU
ビタミンE
(1%)
0.14 mg
ビタミンK
(12%)
13 μg
ミネラル
ナトリウム
(44%)
661 mg
カリウム
(4%)
170 mg
カルシウム
(3%)
30 mg
マグネシウム
(4%)
13 mg
リン
(3%)
20 mg
鉄分
(11%)
1.47 mg
亜鉛
(2%)
0.19 mg
マンガン
(7%)
0.151 mg
セレン
(1%)
0.6 μg
他の成分
水分 92.52 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

ドイツのイメージとザワークラウト[編集]

ザワークラウトは代表的ドイツ料理として、ドイツやドイツ人との連想性が高かった(ドイツ・フランス・ロシア文学にはしばしば登場する)。そのため、ドイツおよびプロイセン人に対するイメージが悪化した時期には、ザワークラウトはドイツ人への蔑称として使われる場合があった。

第一次第二次世界大戦では、ドイツを指すのに「クラウト」(「キャベツ野郎」程度の意)という蔑称を使った。また第二次大戦中の米国ではザワークラウトの生産業者は交戦国ドイツの敵性的なイメージをぼかすため「フリーダムキャベツ」という名前で販売を行った。米軍のイラク戦争介入に反対したフランスへの悪感情が高まった21世紀初頭のアメリカで、一時期フレンチフライが「フリーダムフライ」と呼ばれたことに似た現象といえる。[4]

戦後においても1960年代後期に台頭したロックバンドたちの特異な音楽性をさして「クラウトロック」という呼称が用いられることもあった。こちらは必ずしも蔑称ではない。

健康への効果[編集]

ビタミンCを含む保存食として、レモンなどの果実果汁と並び、長い航海壊血病予防食としても利用された。キャベツ自体に豊富なビタミンCが含まれており、加熱しないことでビタミンCが壊れず、乳酸発酵によってさらにビタミンCが生成される。果物が豊富に収穫できない寒冷地では、デンプンで保護されて加熱してもビタミンCが壊れにくいジャガイモと並んで貴重なビタミンC摂取源となっている。ザワークラウトは生のままならば豊富にビタミンCを含むが、缶詰にして加熱殺菌すれば豊富なビタミンCも熱でかなりの量が壊れてしまう。前述のシュラハトプラッテ等のザワークラウトを煮込んだりする料理も同じである。

脚注[編集]

  1. ^ 日仏料理協会編 『フランス 食の事典(普及版)』 株式会社白水社2007年、299頁。ISBN 978-4-560-09202-6 
  2. ^ Joseph Mercola, Brian Vaszily, Kendra Pearsall, Nancy Lee Bentley. Dr. Mercola's Total Health Cookbook & Program. p. 227.
  3. ^ Farnworth, Edward R. (2003). Handbook of Fermented Functional Foods. CRC. ISBN 0-8493-1372-4.
  4. ^ “Sauerkraut may be 'Liberty Cabbage'”. The New York Times. (1918年4月25日). http://query.nytimes.com/mem/archive-free/pdf?res=F2081FFA3B55157A93C7AB178FD85F4C8185F9 2011年1月16日閲覧。 

参考文献[編集]

  • Aubert, Claude (1999). Keeping Food Fresh: Old World Techniques & Recipes. Chelsea Green Publishing Company. ISBN 1-890132-10-1.
  • Fallon, Sally, with Enig, Mary G., Ph.D. (2001). Nourishing Traditions...[westonaprice.org; newtrendspublishing.com]. New Trends Publishing. ISBN 0-9670897-3-5.
  • Katz, Sandor Ellix (2003). Wild Fermentation: The Flavor, Nutrition, and Craft of Live-Culture Foods. Chelsea Green Publishing Company. ISBN 1-931498-23-7. Retrieved 2006-04-23.
  • Kaufmann, Klaus (2001). Making Sauerkraut and Pickled Vegetables at Home. Book Publishing Company. ISBN 978-1-55312-037-7.
  • Tran Ky et François Drouard, Le chou et la choucroute : histoire, botanique, biologie, gastronomie, médecine douce, C. Corlet, 182 p. (ISBN 2-85480-687-5).
  • Jeanne Loesch, De choux et de choucroute : histoire, tradition, recettes, Rhin, Mulhouse, 1994, 207 p. (ISBN 2-86339-093-7).
  • Ingrid Wendling, La choucroute : un légume à redécouvrir, applications diététiques et thérapeutiques, Université Louis Pasteur, Strasbourg, 1994, 109 p. (thèse de médecine).

外部リンク[編集]