アルプスの少女ハイジ
アルプスの少女ハイジ | ||
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著者 | ヨハンナ・シュピリ | |
発行日 | 1880年 | |
ジャンル | 児童文学 | |
国 | スイス | |
言語 | スイスドイツ語 | |
形態 | ハードカバー、ペーパーバック | |
次作 | Heidi Grows Up(1938) 『それからのハイジ』 | |
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『アルプスの少女ハイジ』(アルプスのしょうじょハイジ、Heidi)は、スイスの作家ヨハンナ・シュピリ(又はスピリ)の児童文学作品である。1880年から1881年に執筆された。原題は『Heidis Lehr- und Wanderjahre』(ハイジの修行時代と遍歴時代)及び『Heidi kann brauchen, was es gelernt hat』(ハイジは習ったことを使うことができる)という。
ドイツの文豪ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』及び続編の『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代』からその着想を採られたもので、教養小説(成長小説)としての色彩を持ったものである。キリスト教信仰に基づく描写が多く見られる。作者も属するドイツ語圏スイスのデルフリ村(マイエンフェルト付近の架空の村。イェニンス村がモデル)が舞台となっており、中盤にはゲーテの生地でもあるフランクフルトに舞台が移る。
目次
日本語訳[編集]
日本語訳の版本は過去様々なタイトルで100種類以上出版された。以下はその一部(抄訳も含む)。
- 『ハイヂ』 (野上彌生子 訳) 家庭読物刊行会 1920年
- 『楓物語』(山本憲美 訳) 福音書館 1925年
- これは明治・大正期に他の作品でも見られた、人名を日本風にした作品である。当時の少年少女は現代人よりも外国人名に慣れていなかったため、物語の内容は変えずに登場人物名だけをすべて日本風に変えて、年少の読者の負担を少しでも減らしたものである。そのためハイジが「楓」、ペーターが「弁太」、クララが「久良子」となっている。
- 『アルプスの山の娘(ハイヂ) 』 (野上彌生子 訳) 岩波文庫 1934年、復刊1991年ほか
- 『アルプスの山の少女』 (水島あやめ 訳、高井貞二 画) 文化書院 1947年
- 『ハイジ』 上・下(竹山道雄 訳) 岩波少年文庫 1952年(旧版)、改版1986年
- 『アルプスの少女』 (中村一雄 訳、石垣好晴 画) 日本書房 1954年
- 『ハイジ』 (矢川澄子 訳、パウル・ハイ 画) 福音館書店〈福音館古典童話シリーズ〉 1974年
- 『ハイジ』 第1部・第2部(国松孝二、鈴木武樹 訳、小谷智子 画) 偕成社文庫 1977年
- 『アルプスの少女』 (関楠生 訳、ナタリー・フォーシル 画) 童心社〈フォア文庫〉 1988年
- 『アルプスの少女』 (大野芳枝 訳、渡辺藤一 画) 集英社〈子どものための世界文学の森〉 1994年
- 『アルプスの少女』 (足沢良子 訳、こさかしげる 画) ぎょうせい 1995年
- 『アルプスの少女 』 (石中象治 訳、岡村夫二 画) 旺文社〈ジュニア図書館〉 1969年、1996年
- 『アルプスの少女ハイジ』 (ささきたづこ 訳、矢島真澄 画) 小学館 1998年
- 『ハイジ』 上・下(矢川澄子 訳、パウル・ハイ 画) 福音館文庫 2003年
- 『ハイジ』 上・下(上田真而子 訳) 岩波少年文庫 2003年
- 『アルプスの少女ハイジ』 (池田香代子 訳、いわさきちひろ 画) 講談社〈青い鳥文庫〉 2005年
- 『アルプスの少女ハイジ』 (関泰祐、阿部賀隆 訳) KADOKAWA〈角川文庫〉 2006年改版
- 『アルプスの少女ハイジ』 (万里アンナ 訳、うっけ 画) KADOKAWA〈角川つばさ文庫〉 2012年
- 『アルプスの少女ハイジ』 (松永美穂 訳、横山洋子 監修) 学研〈10歳までに読みたい世界名作〉 2015年
映像化作品[編集]
アニメ[編集]
テレビシリーズとしては、ズイヨー映像の作品が有名だが、アニメ作品はほかにもいくつか存在する。以下はその一部である。
- 1967年:『アルプスの少女ハイジ』(TCJ)、テレビシリーズ企画とパイロット版のみ[1]
- 1974年:『アルプスの少女ハイジ』(ズイヨー映像)、テレビシリーズ作品
- 1987年:『Heidi's Song』(アメリカ、ハンナ・バーベラ・プロダクション)、劇場用作品
- 1988年:『ビデオ絵本 アルプスの少女ハイジ』(ウォーカーズカンパニー)、ビデオ作品、虫プロダクション制作[2]
- 1989年:『ポンキッキめいさくわーるど アルプスの少女ハイジ』(スタジオジュニオ)、『ひらけ!ポンキッキ』のコーナー内テレビアニメ作品、1989年4月3日放送
- 1993年:『サンリオ世界名作映画館 ハローキティのアルプスの少女ハイジ』(サンリオ)、ビデオ作品、1994年に『ハローキティのアルプスの少女ハイジ クララとの出会い』が発売[3]
- 1995年:『ハイジ』(日本ビデオ販売)、ビデオ作品
- 2017年:「HUNGRY DAYS『アルプスの少女ハイジ』篇」(タツノコプロ)、 日清食品「カップヌードル」のCMとして制作された短編作品で、本作を翻案しハイジ・クララ・ペーターが現代日本の高校生として生活している様子を描いている。キャラクターデザインは窪之内英策が担当、ハイジを石井杏奈、クララを雨宮天、ペーターを神谷浩史がそれぞれ演じている[4]。
実写[編集]
- 1937年:『ハイデイ』 アメリカ映画(88分)
- 出演:シャーリー・テンプル(ハイジ)、ジーン・ハーショルト
- 1952年:スイス映画(100分)
- 出演:エルスベート・ジグムント 、ハインリヒ・グレトラー、トマス・クラメス、テオ・リンゲン
- 音楽:ロバート・ブルム
- 監督:ルイジ・コメンチーニ
- ハイジはスイスの高山(アルム)で祖父(アルムおんじ)と一緒に生活している。ハイジは友人ペーター(山羊の家畜番)と一緒に、山での生活を送る。その後ハイジは、ゼーゼマン(Sesemanns)家の一人娘で、病気のため立つことができないクララ(Klara)のために都市へ送られた。ホームシックと友情の物語。
- 1955年:Heidi und Peter(1952年の続編)
- 出演:エルスベート・ジグムント 、ハインリヒ・グレトラー、トマス・クラメス
- 音楽:ロバート・ブルム
- 監督:フランツ・シュニーダー
- ハイジはスイス・アルプスにいる祖父の元に帰る。病気だったクララ・ゼーゼマンは清潔な高山の空気において健康になるために、スイスのハイジの元へ送られた。
- 1965年:ドイツ/オーストリア映画(110分)
- 出演:エバ・マリア・ジングハンマー(ハイジ)、グスタフ・クヌート(アルムおんじ)、Michaela May(クララ)、ヤン・ケストラー(ペーター)、エルンスト・シュレーダー
- 1968年:アメリカ・テレビドラマ(105分)
- 出演:ジェニファー・エドワード(ハイジ)、マイケル・レッドグレイヴ(アルムおんじ)、マクシミリアン・シェル(クララの父・ゼーゼマン氏)、ジーン・シモンズ(ロッテンマイヤー)、ペーター・ファン・アイク
- 1974年:イギリス・BBC制作テレビドラマ(30分、6話)[5]
- 1978年:『アルプスの少女ハイジ 新しい冒険 The New Adventures of Heidi』スイス・ドイツ・オーストラリア制作テレビドラマ (全26話)
- 出演:カティア・ポレティン
- 1993年:アメリカ・ハーモニーゴールド社制作テレビドラマ(193分)[7]
- 出演:ノーリー・ソーントン(ハイジ)、ジェイソン・ロバーズ(アルムおんじ)、ジェーン・シーモア(ロッテンマイヤー)、パトリシア・ニール(ペーターのおばあさん)、レキシー・ランドール(クララ)
- 監督:マイケル・レイ・ロードス
- ゴールデングローブ賞ノミネート。
- 日本では1996年1月1日から3日にかけてNHK教育テレビで3回に分けて放送。
- 2001年:スイス映画
- 出演:コルネリア・グレッシェル(ハイジ)、ナディーネ・ファノ(クララ)
- 舞台を現代に変更した作品。
- 2005年:『ハイジ』 イギリス映画(104分)
- 出演:エマ・ボルジャー(ハイジ)、マックス・フォン・シドー(アルムおんじ)、ジェラルディン・チャップリン(ロッテンマイヤー)、ダイアナ・リグ(クララのおばあさま)
- 2015年:『ハイジ アルプスの物語』 スイス・ドイツ共同制作映画(111分)
- 出演:アヌーク・シュテフェン(ハイジ)、ブルーノ・ガンツ(アルムおんじ)、クイリン・アグリッピ(ペーター)、イザベル・オットマン(クララ)、カタリーナ・シュトラー(ロッテンマイヤー)ほか
- 監督:アラン・グスボ-ナー
- 日本では2017年8月26日より各地で公開。
舞台化作品[編集]
宝塚少女歌劇団[編集]
他の作者による「ハイジ」の続編[編集]
ヨハンナ・シュピリ自身は、「アルプスの少女ハイジ」の続編などは執筆していないが、他の作者による続編が公開されている。いずれも公式な作品というわけではなく、作者が異なれば、続編間の関連性も無い。
- シャルル・トリッテン『それからのハイジ』(各務三郎 訳 ブッキング 2003年8月)
- ハイジは、クララの勧めによってローザンヌの寄宿学校へ入学する。卒業したハイジはアルプスに戻り学校の先生となる。
- シャルル・トリッテン『ハイジのこどもたち』(各務三郎 訳 ブッキング 2003年8月)
- 『それからのハイジ』の続編。ハイジとペーターは結婚してアルムの村で暮らしていた。ローザンヌの寄宿学校時代の親友の妹マルタは、祖母を亡くしたおりに心を閉ざしていた。ハイジはマルタを引き取って育てる。やがて、マルタも次第に心を開いていく。
- フレッド・ブローガー&マーク・ブローガー『ハイジの青春 アルプスを越えて』(堀内静子 訳 早川書房 1990年8月)
- ("Courage Mountain"として映画化(邦題『チャーリー・シーンのアルプスを越えて』))
- 14歳になったハイジは、アルプスを離れ、イタリアの寄宿学校へ行く。しかし、戦争が始まり寄宿学校は軍に接収され、ハイジたちは工場で酷使される。ハイジたちは脱走し、アルプスへと向かう。
- 石川淳「アルプスの少女」(『おとしばなし集』所収 集英社 1952年11月)
- 『戦後短篇小説再発見〈10〉表現の冒険』(講談社文芸文庫 2002年3月)に再録
- 戦争が起こり、ペーターは兵士となる。平和が戻ったとき、ペーターとクララは再会しアルムに向かう。
類似が指摘される作品[編集]
2010年、ドイツの文学研究者ペーター・ビュトナー(Peter Büttner)により、この作品が1830年にドイツの作家、ヘルマン・アーダム・フォン・カンプが発表した作品「アルプス山地の少女アデライーデ(Adelaide - das Mädchen vom Alpengebirge)」に類似していることが指摘され、本作の下敷きとなった可能性が高いとした。この指摘にはスイスの新聞が「ハイジは盗作だった」と報じるなど波紋を広げた。ビュトナー自身は「私は盗作とは言わない。シェークスピアやゲーテも同じことをやっている」と話している[8][9][10]。
脚注[編集]
- ^ 「初公開!パイロット・フィルム いま見せる作品に賭けた熱き胸」『アニメージュ』1981年12月号、徳間書店
- ^ リスト制作委員会『アニメージュ アニメポケットデータ2000』徳間書店、2000年、p.122
- ^ 『アニメポケットデータ2000』p.102
- ^ 「もし、ハイジとクララが現代の高校生だったら...」大人気CMシリーズ第二弾,ORICON NEWS,2017年9月14日
- ^ "Heidi" (1974) TV mini-series Internet Movie Database
- ^ 増山久明編著 『NHK少年ドラマシリーズのすべて』アスキー、2001年、p.104
- ^ Heidi (TV 1993) Internet Movie Database
- ^ “「アルプスの少女ハイジ」に盗作?疑惑”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2010年4月13日) 2010年4月13日閲覧。
- ^ “ハイジ:盗作だった? 愛称や筋書き、出版50年前の作品酷似 独の研究者指摘”. 毎日.jp (共同通信社). (2010年4月13日) 2010年4月14日閲覧。
- ^ “Ur-Heidi aus dem Ruhrpott Ist Johanna Spyris Alpengeschichte geklaut?”. 3sat.online (3sat). (2010年4月7日) 2010年4月13日閲覧。
関連項目[編集]
- アルプスの少女ハイジ (アニメ) - 日本のテレビアニメ
- ハイジ (小惑星)
- マイエンフェルト
外部リンク[編集]
- Heidis Lehr- und Wanderjahre Project Gutenberg ドイツ語テキスト
- アルプスの少女ハイジという物語 ヨハンナ・シュピーリ作品研究