β1,3-グルカン

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β1,3-グルカン(β-glucan、べーた-)とは、グルコースがβ1-3型の結合で連なった多糖である。植物菌類細菌など自然界に広く分布するが、アガリクスメシマコブ霊芝などのβグルカンは強い免疫賦活作用、制癌作用を持つとして特に注目が集まっている。β1,4-グルカンが由来に関係なく全てセルロースという名前を持つのに対し、β1,3-グルカンは由来によって様々な名前が与えられている。また、単にβグルカンと言った時には通常β1,3-グルカンのことを指す。

酵母中のベータ1,3Dグルカン[編集]

酵母中の細胞壁にあるβ-グルカンには1,3-グルカンに加え、1,6-グルカンも含まれる[1]

1990年代からの人体への臨床試験によってPGG-グルカン英語版がリスクの高い外科手術に起因する病気に感染した患者に与える影響が評価されている。これらの研究においては、PGG-グルカンが合併症を大きく減少させたことが明らかになっている[2][3][4][5]

酵母βグルカンはIL-4IL-5などのサイトカインを減少させアレルギー性鼻炎の症状の発現の原因となるが、IL-12を増加させることが口頭で発表された[6]

酵母β1,3Dグルカンは西暦2008年6月現在世界で約9,000例の動物実験やヒトによる治験報告例が記録されている(その時点での米国医学図書館文献検索サイト[MedLine]による)。

β1,3Dグルカンが生体内に入ると免疫細胞に働きかけて悪性新生物(ガン細胞)を攻撃させたり、抗酸化酵素(スーパーオキシドディスムターゼ、SODに代表される)に働きかけて遊離基(生体に悪影響を及ぼすいわゆる活性酸素、フリーラジカル)消去効果を高めたりするという前医療統計学的実験論文も公表されている(上記細胞レベルでの抗腫瘍実験・治験報告および、活性酸素除去様作用については2006年にA. Pietrzycka博士等の研究陣がActa Pol Pharm誌63号で発表した実験論文等[要出典]が該当するであろう)。一方、2007年にJournal of Agricultural Food Chemistry誌 55(12):4710-6でS.C. Jaehrig博士、S. Rohn博士らによって発表された酵母細胞壁画分の実験では、抗酸化作用はベータグルカンそのものよりも酵母細胞壁蛋白によるものが大きいと結論付けている。酵母ベータ1,3Dグルカンの持つ抗酸化作用・機序については前述の通り2008年6月末現在では未解明な部分が多い。

酵母ベータ1,3Dグルカンの抗酸化作用[編集]

1980年代後半から2000年代にかけて一部研究者の手によって酵母サッカロマイセス・セレビシアエから抽出したベータ1,3Dグルカンの持つ抗酸化作用の有無に関する実験検証が行われていることは上述されている。実験検証の多くは酵母細胞壁から抽出したベータ1,3Dグルカン画片(高分子炭水化物連鎖体)が示顕する抗酸化作用(生体においては活性酸素消去様作用)の現象をとらえたものではなかろうか。もし酵母細胞壁から抽出したベータ1,3Dグルカン自体に抗酸化作用があるとすれば、この多糖物質にはそれまでに実証が試みられていた免疫調整機能とは別の(あるいは源を一にする)「抗酸化環境維持能」のような機能があるのではないかということも否定できない。例えば、1987年血液病理学誌「Journal of Leukocyte Biology 42」では酵母細胞壁から抽出したベータグルカンが放射線被爆したマウスで造血機能を回復するという実験論文「Glucan: Mechanisms Involved in Its "Radioprotective" Effect」が発表されているが、著者はこの中で副次的実験結果としてベータグルカンの持つ遊離基除去機能(Free Radical Scavenger)について記している。酵母細胞壁から抽出したベータ1,3Dグルカンを含む高分子多糖成分が抗酸化作用にかかわっているのかということについては、より精細かつ具体的な検証が期待される(2008年11月1日現在)。

酵母ベータ1,3Dグルカンの特許関連[編集]

1980年代から2000年代にかけては酵母細胞壁抽出物である高分子多糖物質、特にベータ1,3Dグルカンの免疫調整作用が喧伝され始めた時期である。その時期と合わせるようにして米国を中心としてこの物質の製法や用法に関する特許が多く申請されるようになった。(用法についての特許が多いのは米国ならではであろう)。それにつれて米国内で特許係争も見かけるようになったと言われる。

酵母ベータ1,3Dグルカンと中枢神経組織[編集]

酵母ベータグルカンが免疫細胞を刺激する、という前提に基づいて1994年以来この物質が中枢神経組織の免疫細胞にも影響を及ぼすのか、という実験が進められているようである(1994年 Res. Immunol, 154(4): 267-75, 2008年 J. Immunol, 180(5): 2777-85)。中枢神経組織には【マイクログリア、Microglia】という貪食免疫細胞が在住して神経細胞を守っていると言われる。実験は酵母ベータグルカンがこの免疫細胞にも影響を及ぼすのかどうかという検証のようだ。2009年現在これらの実験は動物(マウス等)が対象である。非常に大くくりな言い方をすれば、これら実験報告はマイクログリアは酵母ベータグルカンによって刺激され活性されるが、周囲の神経細胞に害を及ぼすような過剰な免疫反応は起こさない、といった検証を試みているものであろう。

β1,3Dグルカンと放射線被曝[編集]

1970年代以降2011年まで酵母saccharomyces cerevisiaeを精製して得られるβ1,3Dグルカンには免疫細胞を刺激し、骨髄の増殖作用を促す作用を示す研究が、主として米国のジャーナルで発表されてきたようである。その作用に関連して、放射線(コバルト60)を被曝させたマウスにβ1,3グルカンを処置し、被曝によって減少した白血球、血小板、ヘマトクリットなどの回復を計測した実験が米国研究陣によって1986年に免疫医療誌"J Biol Response Mod"に発表されている。同実験を発表した研究グループの一員は6年後の1992年にもβグルカンがマウスの免疫細胞の活性と抗酸化物質の生成に寄与したという別の実験論文を発表しているようである(1992年2月Int. J. Immunopharmacol誌)。共に論文は英語であるが後者の論文タイトルは日本語で「放射線被曝マウスに及ぼす水溶性グルカンと粒状グルカンの比較効果」となる。こうした実験は放射線を被曝した動物に酵母を精製したベータグルカンを与えて生体機能の変化を観察したものであろう。2011年3月の時点ではβグルカンが被曝前に放射線を防護したという言わばシェルター機能の研究はないと思われる。[独自研究?]

酵母→ザイモサン→βグルカン[編集]

βグルカンという物質を、各方面の発表資料でたどってみると酵母など真菌類の構成物である糖質に行き当たる。酵母の歴史は古く、世界最古の医学書といわれる「エーベルス・パピルス」(エジプトのピラミッドから発掘され、紀元前15世紀頃の古代エジプト時代に書かれた文献という定説がある)に既に強壮剤として酵母の記述があるといわれる[要出典]。一説ではそれ以前にシュメール人(古代メソポタミア文明を築いたと言われるがシュメール人については不明な部分が多い)が酵母をビールの発酵に使っていたという[要出典]。いずれにしても酵母はパンや酒類の発酵剤として長い間我々人類の生活に密着してきたと言える。19世紀、ノーベル賞を受賞したドイツの発酵学者ブフナー(Eduard Buchner、1860-1902)がすり潰した酵母の発酵能力に注目したのは歴史に新しいところといえる。1940年代には酵母を加工した粗製物の免疫特性を研究していた免疫化学者も居た(Dr. Louis Pillemer, 1908-1957)。この粗製物質は1943年には「ZYMOSAN (ザイモサン)」という名称が付され、この年に百科事典にも登録されることになる(ウェブスター辞典、http://www.merriam-webster.com/dictionary/zymosan?show=0&t=1301320328)。 βグルカン(ベータグルカン、Beta Glucan)という名称が登場するのはそれから20年ほど後の1960年代初頭と言われている[要出典]。このころにザイモサン(ZYMOSAN)の持つ特異性に注目し、更に研究を進めた研究陣がいる。Tulane School of Medicine, Department of PhysiologyのChairmanでもあったNicolas DiLuzio(1926-1986)がその中心人物とされる[要出典]。この研究陣はザイモサンの持つ特異性が酵母の構成物である高分子糖質であることを特定し、この物質をβ1,3グルカン(Beta-1,3-D Glucan)と名付けたと言われている[要出典]。Nicholas DiLuzioは生前ベータグルカンに関する様々な実験を発表している(例:共著者によって彼の死後1987年Arch Dermatol誌で発表された”Glucan-induced Keratoderma in acquired immunodeficiency syndrome”など)。以後酵母を母体とするβグルカンの研究は世界各地の研究者たちに引き継がれていき、今日に至ったということが十分考えられる[独自研究?]。様々な文献をみるとベータグルカンとはいかにも健康に資する薬理的物質と勘違いされがちである[要出典]。酵母から抽出したベータグルカンについては確かに前医療段階とみられる様々な検証が主として欧米を中心に試みられているようだ[要出典]しかしながら2011年3月末現在、世界中どこを見ても酵母から抽出されるβグルカンを医薬品として採用している国は無いように見受けられる。つまりこの時点ではどこでも酵母から抽出されたβグルカンを食品(いわゆる健康食品)扱いとしているのではなかろうか。我が国でも同様である。酵母について歴史的に伝えられてきたその特性は否定できないが、上述の時点で酵母βグルカンは「食品」とみなされているようである。[独自研究?]

研究の歴史[編集]

  • 1941年 アメリカの化学者、ルイス・ピレマーが出芽酵母Saccharomyces cerevisiae細胞壁から抽出した物質に「ザイモサン」と名づけた。
  • 1960年 アメリカ・チューレーン大学の創始者、ニコラス・ディルジオ(1926-1986)が同じく出芽酵母の細胞壁から抽と出し、構造を明らかにしてβ1,3-グルカンと名づけた。
  • 1963年 βグルカンが、がん細胞の縮小に効果を持つことが初めて発表された。
  • 1984年 米マサチューセッツ工科大学(MIT)とAlpha Beta Technology社(ABT)の産学共同研究で酵母βグルカンの微粒子精製に成功。
  • 1985年 日本で、シイタケ由来のレンチナンが天然由来の抗がん剤として認可を受けた。2007年現在ではこの他に、カワラタケ由来のクレスチンスエヒロタケ由来のソニフィランも認可を受けている。
  • 1986年 米国の研究陣が致死量の放射線(コバルト60)被曝後のマウスで減少した白血球、血小板、ヘマトクリットがベータグルカン処置で回復したという実験を医療誌で発表(1986年2月J Biol Response Mod誌)。同研究陣は別の医療誌(1986年3月Methods of Find Exp Clin Pharmacol誌)でも同様実験を公開している。なお両実験論文とも2011年3月27日現在の米国電子図書サービスINFOTRIEVE ONLINE中のアメリカ国立医学図書館オンライン医学文献検索サービスMEDLINEでも検索可能である(両サービスとも検索は無料。両サイトは米国検索ポータルサイトから検索可能)。両実験論文とも英語であるが、日本語での前者論文タイトルは「放射線被曝マウスに及ぼす水溶性グルカンと粒状グルカンの比較効果」、後者は「グルカンによる造血作用と免疫活性:準致死性と致死性被曝マウスの治療効果」となる(なお1987年にも血液生物学誌Journal of Leukocyte Biology 42で10ページにわたる同著者の論文が発表されているが、その内容から上記と同様な放射線防護実験結果を記したものと思われる)。
  • 1990年 MITとABTが共同で酵母βグルカン粒子から医療向け水溶性βグルカン(注射液)の開発に成功。
  • 1990年 水溶性βグルカン(実験用注射液と思われるリン酸グルカン)の開発特許認可(米パテント番号4,975,421)
  • 1994年 米ルイビル大学で酵母βグルカンが癌に及ぼす影響の研究を開始。
  • 1996年 米外科医療誌[Journal of Surgical Research]62(2):179-183でW.K. Washbum博士、R. Gttschalk博士、I. Otsu博士等の研究陣が臓器移植ラットを使って実施した水溶性ベータグルカンの実験では、臓器移植後のGVHDや移植拒絶反応を有意に増加させなかったという結果が発表された。
  • 1999年 米ルイビル大学微生物学研究室と同大学ジェームズ・グラハム・ブラウン癌センターが共同で酵母βグルカンと最新分子標的抗癌剤(モノクロナール抗体抗癌剤)の併用効果について前医療実験開始。
  • 2001年 酵母細胞壁β1,3Dグルカンは免疫細胞だけでなく、ヒトの皮膚線維芽細胞上の受容体に結合して皮膚組織修復を促進する、という実験結果が米免疫・感染症医療誌「Infection and Immunity」69(6)で発表された。
  • 2002年 日本の研究機関とアメリカルイビル大学病理学研究室が2001年に共同で行った酵母由来ベータ1,3Dグルカンの経口投与による抗腫瘍作用マウステスト実験結果が米健康医療誌[JANA(The Journal of American Neutraceutical)]2002年Vol5.No.1号で5ページにわたり紹介された。
  • 2004年 米免疫医療誌[The Journal of Immunology]2004 173で経口投与による酵母β1,3Dグルカンと分子標的抗癌剤(リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブ等)併用による抗腫瘍相乗効果の前医療動物実験結果が発表された。
  • 2005年 米外科医療誌[Neurosurgical Review]2005年28(4)号では、H.カヤリ博士、M.F.オズダグ博士等の研究陣が酸化ストレス状況に置かれたラットを使って実施したベータグルカンの抗酸化作用の実証実験が発表された。
  • 2007年 米食品化学誌[Journal of Agricultural Food Chemistry]55(12):4710-6でS.C.Jaehrig博士、S.Rohn博士等によって酵母細胞壁抽出複合体は、(1-->3)(1-->6)ベータDグルカン画分の抗酸化作用よりも細胞壁蛋白画分の抗酸化作用が大きいという実験結果が発表された。
  • 2009年12月 宮崎忠昭教授の研究チーム(北海道大人獣共通感染症リサーチセンター)の実験結果から、インフルエンザウイルスに感染したマウスへβグルカンとEF乳酸菌の組み合わせを投与すると、インフルエンザウイルスに対する免疫力が高まり重症化を防ぐ効果があるという結果が発表された。

β1,3-グルカンを主とする多糖[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ Manners, David J. (1973年2月2日). “The Structure of a β-(1->3)-D-Glucan from Yeast Cell Walls”. Biochemistry. 
  2. ^ Babineau, TJ; Marcello P; Swails W; Kenler A; Bistrian B; Forse RA (November 1994). “Randomized phase I/II trial of a macrophage-specific immunomodulator (PGG-glucan) in high-risk surgical patients”. Annals of Surgery英語版 (アメリカ合衆国: リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス) 220 (5): 601–609. doi:10.1097/00000658-199411000-00002. PMC 1234447. PMID 7979607. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=1234447. 
  3. ^ Babineau, TJ; Hackford A; Kenler A; Bistrian B; Forse RA; Fairchild PG; Heard S; Keroack M et al. (November 1994). “A phase II multicenter, double-blind, randomized, placebo-controlled study of three dosages of an immunomodulator (PGG-glucan) in high-risk surgical patients”. Archives of surgery (Chicago, Ill. : 1960) (アメリカ) 129 (11): 1204–1210. doi:10.1001/archsurg.1994.01420350102014. ISSN 0004-0010. PMID 7979954. 
  4. ^ Dellinger, EP; Babineau TJ, Bleicher P, Kaiser AB, Seibert GB, Postier RG, Vogel SB, Norman J, Kaufman D, Galandiuk S, Condon RE (September 1999). “Effect of PGG-glucan on the rate of serious postoperative infection or death observed after high-risk gastrointestinal operations. Betafectin Gastrointestinal Study Group”. Archives of surgery英語版 (シカゴ, Ill. : 1960) (アメリカ: アメリカ医学会) 134 (9): 977–983. doi:10.1001/archsurg.134.9.977. PMID 10487593. 
  5. ^ Browder, W; Williams D; Pretus H; Olivero G; Enrichens F; Mao P; Franchello A (May 1990). “Beneficial effect of enhanced macrophage function in the trauma patient”. Annals of Surgery (アメリカ合衆国: リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス) 211 (5): 605–612; discussion 612–613. ISSN 0003-4932. PMC 1358234. PMID 2111126. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=1358234. 
  6. ^ Kirmaz, C; Bayrak P; Yilmaz O; Yuksel H. (June 2005). “Effects of glucan treatment on the Th1/Th2 balance in patients with allergic rhinitis: a double-blind placebo-controlled study”. European cytokine network (フランス: John Libbey Eurotext) 16 (2): 128–134. ISSN 1148-5493. PMID 15941684.