レクチン

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レクチン: lectin)は、狭義には「糖鎖と結合する能力を有する酵素や抗体以外のタンパク質」の総称と定義されているが、この定義が定められて以降に酵素活性を持つものなどの例外が数多く見つかったため、現在では「糖鎖に結合活性を示すタンパク質の総称」といった広義の概念が広がりつつある(しかし、糖鎖に結合する抗体は現在でも「レクチン」ではなく、一般に「糖鎖抗体」と呼称されている)。

多くのレクチンは多量体を形成するため、分子内サブドメイン内に糖認識サイトを1つしか持っていない場合でも多量体を形成することで、糖鎖分子を介した架橋を形成する能力(凝集能)を有するものが多い。

生のマメ科植物が血液を凝集する毒性を持つのも、マメ科のレクチンによる作用である。

語源と歴史[編集]

歴史的には、アメリカの免疫学者 William Clouser Boyd によって、1945年に「レクチン」は命名された。

マメ科植物などが血液を凝集する成分を持つことは既に当時から知られていたが(1888年にHermann Stilmarkがトウゴマによる血液の凝集を発見していた)、しかしBoyd以前は血液型に依存しないと思われていた。Boydの研究により、血液型に依存する事が分かったので、ラテン語の「選び出す」 legere にちなみ、レクチンと名づけられた。Boydはスーパーでリママメを買ってきて実験したという。そして、Boydの実験のリママメのレクチンが、A型赤血球を凝集したという[1]

その後の研究などで、糖によってレクチンの凝集が阻止される事が分かった[2]。また、血液の糖鎖などの構造の解明のヒントになった。

なお、1888年にHermann Stilmarkの発見したトウゴマの毒性レクチンはリシン(ricin)である。アミノ酸のリシン(lysine)と別物。

これらレクチン研究の当初は、植物のレクチンが当時の研究者の関心事だった。しかし現代では動物にもレクチンは存在する事が分かっている。

機構など[編集]

レクチンの代表的なサブファミリーとしては、細菌を含むすべての生物界で見出されるリシンB鎖関連の「R型レクチン」、真核生物全般に存在して糖タンパク質のフォールディングに関与する「カルネキシンカルレティキュリン」、多細胞動物に広く存在して「セレクチン」や「コレクチン」など代表的なレクチンを多く含むカルシウム要求性の「C型レクチン」、動物界に広く分布してガラクトースに特異性を示す「ガレクチン」、植物豆科で大きな家系を形成する「豆科レクチン」、およびこれと構造類似性をもち動物細胞内輸送に関わる「L型レクチン」、リソソーム酵素の細胞内輸送に関わるマンノース-6-リン酸結合性の「P型レクチン」、グリコサミノグリカンをはじめとする酸性糖鎖に結合する「アネキシン」、免疫グロブリンスーパーファミリーに属して「シグレック」を含む「I型レクチン」などが挙げられる。

動物レクチンは海綿から、線虫昆虫魚類爬虫類鳥類哺乳類ヒト)までと進化系統樹の下から上までの実に幅広い領域において発見され、レクチン研究者の研究対象とされている。また、動物以外にも植物菌類由来の多くのレクチンが知られ、現在もその知見は年々増加している。

ウナギの血中に含まれるレクチンはヒトのO型赤血球を凝集する。1935年に日本のウナギがヒトのO型赤血球を凝集する事が報告されていたが、当時は科学界の関心にならず見過ごされてしまった。

出来事・事件[編集]

2006年、レクチンの一種であるファセオリンTBSの番組内で「ダイエット効果がある」と紹介され、加熱不十分の白いんげん豆を摂取した視聴者の間で下痢嘔吐などの症状が多発したが、これは同じくレクチンの一種で類に含まれるフィトヘマグルチニン (phytohaemagglutinin, PHA) の作用である可能性が高いとされている。

脚注[編集]

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  1. ^ 小山次郎・大沢利昭 著『免疫学の基礎 第4版』、東京化学同人、2013年8月1日 第5刷、110ページ
  2. ^ 小山次郎・大沢利昭 著『免疫学の基礎 第4版』、東京化学同人、2013年8月1日 第5刷、110ページ

関連項目[編集]

外部リンク[編集]