球速

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球速(きゅうそく)はの速さを意味する。野球ソフトボールテニスボウリング等の投球に対して使う用語である。

野球

プロ(男子)の投手が投げるボールの初速は、直球で130 km/hから165 km/h程度である。変化球スライダーシュートが120 km/hから140 km/h程度、カーブチェンジアップは90 km/hから120 km/h程度と遅い。ツーシームワンシームといった直球をわずかに動かすタイプの変化球は直球と同程度の球速が出ることも多いが、山本由伸カットボール藤浪晋太郎スプリットなどのようにある程度の変化量を持ちながら150 km/hを越える高速の変化球を投げられる投手もいる。

女子の場合は直球で105 km/hから120km/h後半で、日本最速記録は山田優理の持つ129km/hである[1]

球速は速いほどボールを目で追うことが難しくなり、打者までボールが到達する時間が短くもなるので、正確にバットで捉えることが難しくなる。特に速い球は快速球剛速球と呼ばれるが、厳密な定義は無く、140 km/h後半や150 km/h台の速球がそう呼ばれたりする[2][3]。これらを投げる投手は球の速さを武器とする場合が多い。逆に130 km/h程度の速球は遅いとされ[4]、速い球を投げられない投手はコントロールや変化球を武器に投球することが多い。今浪隆博は「なんでプロに入ると球速が落ちるピッチャーが多いんですか?」という質問に対して「変化球や制球を磨く過程で速球を投げる感覚を忘れる」という趣旨の回答をしている[5]

記録

日本プロ野球

  • 160km/h以上を記録したケースを記載。
  • 複数回160km/h以上を記録している場合は、最高球速のみを記載。最高球速を複数回記録している場合は、初めて記録した日を記載。
  • 一軍公式戦およびポストシーズンにおける記録のみ記載。
選手名 所属 表示数値 記録日 球場 利き腕 起用 出典
チアゴ・ビエイラ 巨人 166 km/h 2021年8月13日 東京ドーム 救援 [6]
大谷翔平 日本ハム 165 km/h 2016年10月16日 札幌ドーム 救援 [7][注 1]
ロベルト・コルニエル 広島 2021年6月20日 東京ドーム 救援 [10]
佐々木朗希 ロッテ 164 km/h 2022年3月27日 楽天生命パーク宮城 先発 [11]
千賀滉大 ソフトバンク 2022年5月13日 札幌ドーム 先発 [12]
ロベルト・スアレス 阪神 163 km/h 2021年6月8日 札幌ドーム 救援 [13]
エドウィン・エスコバー DeNA 2021年6月13日 札幌ドーム 救援 [14][注 2]
タイロン・ゲレーロ ロッテ 2022年7月9日 ほっともっとフィールド神戸 救援 [15]
マーク・クルーン 巨人 162 km/h 2008年6月1日 福岡 Yahoo! JAPANドーム 救援 [16]
アルキメデス・カミネロ 巨人 2018年6月14日 福岡 ヤフオク!ドーム 救援 [17]
リード・ギャレット 西武 2020年8月8日 札幌ドーム 救援 [18]
藤浪晋太郎 阪神 2020年10月19日 阪神甲子園球場 救援 [19][注 3]
由規 ヤクルト 161 km/h 2010年8月26日 明治神宮野球場 先発 [16]
ラファエル・ドリス 阪神 2017年8月29日 阪神甲子園球場 救援 [21]
国吉佑樹 DeNA 2019年4月6日 横浜スタジアム 救援 [22]
ルビー・デラロサ 巨人 2019年9月10日 横浜スタジアム 救援 [23]
ライデル・マルティネス 中日 2020年10月2日 横浜スタジアム 救援 [24]
林昌勇 ヤクルト 160 km/h 2009年5月15日 明治神宮野球場 救援 [16]
スコット・マシソン 巨人 2012年7月5日 横浜スタジアム 救援 [16]
平良海馬 西武 2020年7月19日 楽天生命パーク宮城 救援 [25]
杉山一樹 ソフトバンク 2021年5月11日 福岡PayPayドーム 救援 [26]
ドリュー・バーヘイゲン 日本ハム 2021年6月13日 札幌ドーム 先発 [27]
アルバート・スアレス ヤクルト 2021年9月3日 東京ドーム 先発 [28]
ジャリエル・ロドリゲス 中日 2022年6月5日 バンテリンドーム ナゴヤ 救援 [29]
甲斐野央 ソフトバンク 2022年6月17日 福岡PayPayドーム 救援 [30]
山﨑颯一郎 オリックス 2022年10月15日 京セラドーム大阪 救援 [31][注 4]

メジャーリーグ

アメリカでは古くは第一次世界大戦以前の1912年から散発的に軍事研究所や銃火器メーカーのクロノグラフを用いた砲口初速測定装置や、ハイスピードカメラ等を用いた球速の測定が行われており、1975年以降はレーダーを用いたスピードガンによる計測が一般化した[32]

その様な背景の中、アメリカでは「時速100マイル(160.934km/h)」に達することが、特に球速が速い投手を示す指標となっており、公式計測で時速100マイルを記録した投手はしばしば「100マイル・クラブ」に仲間入りしたと報じられる[33]

2021年現在、メジャーリーグの公式戦で最も速い球を投げた投手はアロルディス・チャップマンであり、2010年9月24日に時速105.1マイル(169.1km/h)を記録している[34]。 チャップマンは2011年4月18日に106mph(約170.6km/h)を記録したが、球場のみの表示でテレビ中継などではもっと遅い球速が表示されており公式記録としては認められていない。

レーダーが初めてメジャーリーグの球速測定に用いられたのは1974年8月20日のことであり、ロックウェル・インターナショナルが開発した大掛かりなレーザードップラー・レーダー装置(ドップラー・ライダー)によってノーラン・ライアンの直球が時速100.9マイル(162.383km/h)と記録され、史上初めて時速100マイルを超える球速が公式に認定された。以来、2010年にチャップマンがギネス世界記録を樹立した時点で、51人が「100マイル・クラブ」入りを果たしている[33]

なお、1975年以前の様々な速度試験による記録は、現在のスピードガンやPITCHf/xを用いた測定とは計測基準が異なっていることから、より公平な指標として「50フィート平均値(fifty foot equivalent、FFE)」と呼ばれる数値に置き換えられて1975年以降の記録との比較が行われる。FFE換算値ではボブ・フェラー(1946年、蛍光管クロノグラフ)、ボブ・ターリー(1954年、オシログラフ)、スティーヴ・ダルコウスキー(1958年、光電管クロノグラフ)、ジョー・ブラック(1953年、オシログラフ)、テリー・フォースター英語版(1974年、ドップラー・ライダー)、スティーブ・バーバー英語版(1960年、ハイスピードカメラ)らが、計測時点で現在の測定法での時速100マイルを超えていたと推定されており、この基準においては2014年現在、前述のライアンの1974年8月20日の記録が史上最速(FFE換算で時速108.1マイル=173.97km/h)とされており、他にチャップマンの2010年の公式記録を上回るのは、1946年のフェラーの記録(FFE換算で時速107.6マイル=173.17km/h)であるとされている[35]

2015年よりスタットキャストが導入されたことにより外野手送球速度も計測されており、カルロス・ゴメスケビン・キアマイアーラモン・ラウレアーノコディ・ベリンジャーらの球速は100mph(約160.9km/h)を超え、右翼手中堅手では160km/hに迫る強肩の選手は多い[36][37]

ソフトボール

男子で120 km/h、女子で100 km/h前後が一流選手の一般的な球速である。ボールの大きさや投法の影響で野球ほどの球速は出ない。野球とはマウンドからホームベースまでの距離が異なるため(野球は18.44m、ソフトボールは13.11m)、到達時間で考えると、ソフトボールの114 km/hで野球の160 km/hに相当する。オリンピックに出場した日本の上野由岐子が119 km/hのボールを投げ、野球で言うと167 km/h相当の球だとして話題になった[38]。また、男子では130 km/h以上のボールを投げる選手もいる[39]

テニス

テニスの大きな大会では、サーブの速度が会場の電光掲示板に表示される[40]

グレグ・ルーゼドスキーが1999年に239.7km/h[40]を記録しているほか、松岡修造が216km/h[41]を記録している。

2022年全豪オープンでは220km/h以上が6人で、210km/h以上の選手は多数いた[42]

その他

ボウリングで55km/h、ハンドボールで100km/h以上、サッカーで132km/h、ゴルフで328km/h、バドミントンで493km/hという調査がある[43]

脚注

注釈

  1. ^ 日本人最速記録。クライマックスシリーズにおける記録。一軍公式戦、および先発としての最高球速は2016年9月13日に札幌ドームで記録した164km/h(先発投手最速タイ記録)[8][9]
  2. ^ 左投手最速記録[14]
  3. ^ 先発としても2016年9月14日に阪神甲子園球場で160km/hを記録している[20]
  4. ^ クライマックスシリーズにおける記録。

出典

  1. ^ 女子野球は“130キロ”時代目前… あと2キロに迫る森若菜が球速にこだわる訳”. Full-Count (2021年3月28日). 2021年10月5日閲覧。
  2. ^ 岐阜新聞社. “岐阜大会ベスト4までの軌跡”. 2008年7月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年2月23日閲覧。
  3. ^ 「松坂大輔スタジアム」公開、剛速球体感”. 日刊スポーツ (2008年2月7日). 2010年2月23日閲覧。
  4. ^ 菊地、福留を幻惑 MAX133キロ遅球で2打数無安打”. 中日スポーツ (2007年2月13日). 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年2月23日閲覧。
  5. ^ なんでプロに入ると球速が落ちるピッチャーが多いんですか? 今浪隆博のスポーツメンタルTV 2022/11/07 (2022年11月11日閲覧)
  6. ^ 【巨人】ビエイラがNPB史上最速の166キロ 大谷翔平、コルニエルを超える”. スポーツ報知 (2021年8月13日). 2021年8月13日閲覧。
  7. ^ “日本ハム大谷165キロ!日本新突破 リリーフ志願”. 日刊スポーツ. (2016年10月17日). https://www.nikkansports.com/baseball/news/1725378.html 2022年3月5日閲覧。 
  8. ^ “日ハム大谷が165キロ プロ野球最速を更新”. 日本経済新聞. (2016年10月16日). https://www.nikkei.com/article/DGXLASDH16H3M_W6A011C1000000/ 2022年3月5日閲覧。 
  9. ^ 大谷翔平5回2失点 日本最速164キロを記録&毎回の9奪三振も勝敗就かず”. Full-Count (2016年9月13日). 2022年3月5日閲覧。
  10. ^ 出た!165キロ 広島コルニエルが日本球界最速タイ 大谷に並ぶ”. デイリースポーツ online (2021年6月20日). 2021年6月20日閲覧。
  11. ^ “【ロッテ】佐々木朗希が自己最速更新の164キロをマーク 3年前の大船渡高時代に163キロ”. 日刊スポーツ online. (2022年3月27日). https://www.nikkansports.com/m/baseball/news/202203270000524_m.html 2022年3月27日閲覧。 
  12. ^ “鷹・千賀滉大が自己最速の164キロ! 清宮への5球目、これまでの161キロを3キロ更新”. Full-Count (Creative2). (2022年5月13日). https://full-count.jp/2022/05/13/post1220815/ 2022年5月13日閲覧。 
  13. ^ 阪神・スアレス「みんながいい仕事をした」自己最速163キロで18セーブ”. デイリースポーツ online (2021年6月8日). 2021年6月9日閲覧。
  14. ^ a b DeNAエスコバー163キロ「光栄です」左腕最速、NPB2位タイ”. 日刊スポーツ (2021年6月13日). 2021年6月13日閲覧。
  15. ^ “【ロッテ】ゲレーロが危険球退場で両軍一触即発…来日後最速163キロが紅林のヘルメットに直撃”. 日刊スポーツ. (2022年7月9日). https://www.nikkansports.com/baseball/news/202207090001306.html 2022年7月9日閲覧。 
  16. ^ a b c d 日本球界最速はクルーン162キロ、日本人最速は由規”. スポーツニッポン (2014年6月4日). 2015年3月14日閲覧。
  17. ^ 巨人カミネロが160キロ超え連発 大台超え3球、最速は162キロ”. Full-Count (2018年6月14日). 2018年6月14日閲覧。
  18. ^ 西武ギャレットが来日最速162キロ、場内どよめき”. 日刊スポーツ (2020年8月8日). 2020年8月9日閲覧。
  19. ^ “藤浪が阪神最速162キロ ドリス&スアレス超えた”. 日刊スポーツ. (2020年10月19日). https://www.nikkansports.com/baseball/news/202010190000855.html 2020年10月19日閲覧。 
  20. ^ “阪神藤浪も160キロ、自己最速2キロ更新”. 日刊スポーツ. (2016年9月14日). https://www.nikkansports.com/baseball/news/1709853.html 2022年3月5日閲覧。 
  21. ^ 阪神ドリスが球団最速161キロ 甲子園どよめく”. 日刊スポーツ (2017年8月29日). 2017年9月24日閲覧。
  22. ^ “DeNA国吉161キロ 外角低め直球にざわめく”. 日刊スポーツ. (2019年4月6日). https://www.nikkansports.com/baseball/news/201904060000541.html 2019年4月6日閲覧。 
  23. ^ “巨人デラロサ161キロ「持ち味」自己最速を更新”. 日刊スポーツ. (2019年9月10日). https://www.nikkansports.com/baseball/news/201909100001123.html 2019年9月10日閲覧。 
  24. ^ “中日のR.マルティネスが球団記録の161キロを計測 自身の記録を1キロ更新”. サンケイスポーツ. (2020年10月2日). https://www.sanspo.com/article/20201002-JO3YWTGH4BMJ7C62WKZMWLM6JM/ 2021年5月16日閲覧。 
  25. ^ 西武平良最速160キロも…ノーノー途絶え満塁被弾”. 日刊スポーツ (2020年7月19日). 2020年7月19日閲覧。
  26. ^ ソフトバンク杉山160キロ記録も笑顔なし「スピードよりも四球を反省」”. 日刊スポーツ (2021年5月11日). 2021年5月11日閲覧。
  27. ^ 【日本ハム】バーヘイゲン5回9安打4失点で降板「結果が伴わず悔しいです」最速160キロ計測も4戦未勝利”. スポーツ報知 (2021年6月13日). 2021年6月13日閲覧。
  28. ^ 初の“160キロ兄弟”ヤクルト・スアレスが160キロ 弟は阪神スアレス”. 日刊スポーツ (2021年9月3日). 2021年9月3日閲覧。
  29. ^ 【中日】ジャリエル・ロドリゲスが自己最速160キロ! “大台到達”でバンテリンドームもどよめき”. スポーツ報知 (2022年6月5日). 2022年6月5日閲覧。
  30. ^ 鷹・甲斐野央、今季初1軍登板で160キロ! 自己最速を更新、球場も騒然”. Full-Count (2022年6月17日). 2022年6月17日閲覧。
  31. ^ 【オリックス】山崎颯一郎160キロ!自身の記録1キロ更新も同点被弾「打たれて悔しかった」”. 日刊スポーツ (2022年10月15日). 2022年10月15日閲覧。
  32. ^ The History of the Radar Gun”. efastball.com. 2021年5月16日閲覧。
  33. ^ a b Fastest Pitcher in Baseball”. Baseball Almanac. 2021年5月16日閲覧。
  34. ^ “Yank throws 105.1 mph, is on Cubs' radar”. MLB.com. (2016年7月19日). https://www.mlb.com/news/aroldis-chapman-throws-a-pitch-1051-mph/c-190404910 2019年5月26日閲覧。 
  35. ^ Fastest Pitchers Ever Recorded in the Major Leagues - 2014 post-season UPDATES thru 10/27”. efastball.com. 2021年5月16日閲覧。
  36. ^ Nailed at the plate: Here are the 10 fastest outfield throws to catch a runner at home this season” (英語). MLB.com (2015年11月28日). 2022年4月3日閲覧。
  37. ^ MLB players with the best arms” (英語). MLB.com (2020年5月1日). 2022年4月3日閲覧。
  38. ^ 【明解要解】ソフトボール「金」へ カギ握る上野”. 産経ニュース (2008年7月29日). 2010年2月23日閲覧。
  39. ^ 日刊スポーツ (2003年7月30日). “日本女子ソフト 史上初めて男子との練習マッチ実現”. 2003年12月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年2月23日閲覧。
  40. ^ a b 神和 2006, p. 178.
  41. ^ 神和 2006, p. 180.
  42. ^ キリオスら 全豪サーブキングに - テニス365”. テニス365 (2022年1月31日). 2022年4月3日閲覧。
  43. ^ 野球は時速159キロ、最速は意外なあの競技! いろんなスポーツの「球速」を調べてみた”. マイナビ (2014年10月12日). 2016年11月13日閲覧。

参考文献

  • 神和住純「テニスにおけるストリングテンションとサービス速度の考察」『法政大学小金井論集』第3巻、法政大学小金井論集編集委員会、2006年3月、171-185頁、doi:10.15002/00004339NAID 120001400018