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富山地方鉄道本線

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富山地方鉄道本線
電鉄富山駅ホーム
電鉄富山駅ホーム
電鉄富山駅ホーム
路線総延長53.3 km
軌間1,067 mm
電圧1,500 V(直流
最高速度95 km/h

本線(ほんせん)は、富山県富山市電鉄富山駅と富山県黒部市宇奈月温泉駅とを結ぶ富山地方鉄道鉄道路線である。

路線データ

  • 路線距離(営業キロ):53.3km
  • 軌間:1067mm
  • 駅数:38駅(起終点駅含む)
  • 複線区間:電鉄富山駅 - 稲荷町駅間
  • 電化区間:全線(直流1500V)
  • 閉塞方式:自動閉塞式
  • 最高速度:95km/h

運行形態

電鉄富山 - 宇奈月温泉間の列車が30 - 60分間隔で運行。朝の上りのみ快速急行も運行される。他にも電鉄富山 - 上市・滑川・電鉄黒部間の区間運行があり、さらに平日の朝ラッシュ時に早月加積発電鉄富山行きが1本、夕方ラッシュ時に電鉄富山 - 越中舟橋間の区間運行が1往復設定されている。越中舟橋行きは方向幕が入っていないため、この列車のみ方向幕を白幕にし、フロントガラスに「越中舟橋」と書かれたボードを付けて運行する(折り返し列車は「電鉄富山」の幕を普通に使用する)。

朝の通勤通学ラッシュ時は3 - 4両編成で車掌乗務となり、それ以外の時間帯は2両編成のワンマン運転となる。立山線の列車も電鉄富山 - 寺田間に乗り入れる関係で、同区間はほぼ終日にわたって10 - 20分間隔で運行されており、かなり利便性は高い。

2007年3月26日には、約3年ぶりにダイヤ改正が行われ、平日の電鉄富山 - 上市間の運行本数が10本増発、改正前まで滑川止だった列車など20本が電鉄黒部まで延長運転されることになったほか、終電時間も一部改正された。

特別急行列車

電鉄富山 - 宇奈月温泉間に特急「うなづき」も運行されている。寺田 - 宇奈月温泉間には、冬期を除き立山線から「アルペン特急」が乗り入れる。両者とも乗車に際して特別急行券を必要とする。

以前は日本国有鉄道(国鉄)・西日本旅客鉄道(JR西日本)や名古屋鉄道(名鉄)から富山より特急・急行列車が乗り入れていた時期があった。例えば1990年代ではJR西日本から特急が立山発着のものは「スーパー雷鳥立山」、「サンダーバード立山」、「シュプール立山」、「リゾート立山」、宇奈月温泉発着のものは「スーパー雷鳥宇奈月」、「サンダーバード宇奈月」と称して乗り入れていた。また、1970年 - 1983年には名鉄 - 国鉄 - 富山地方鉄道と3社直通運行で特急「北アルプス」が立山まで乗り入れていた。

特急「うなづき」

電鉄富山駅 - 宇奈月温泉駅間を運行する特別急行列車列車愛称として、「うなづき」の名称が与えられている。

運行本数
平日冬季2.5往復、その他の季節1.5往復
休日冬季6往復、その他の季節4往復
使用車両
16010形電車などが使用される。
停車駅
駅一覧を参照のこと。

「アルプスエキスプレス」

水戸岡鋭治デザインによる16010形リニューアル車を使用。2011年12月23日より各線で運行開始。本線では立山線・不二越・上滝線直通の普通列車のほか、電鉄富山 - 宇奈月温泉間の特急にも運用される。平日は通常の列車として先頭車のみの2両編成、土日祝日は観光列車として座席指定(料金210円)の中間車を連結した3両編成で運行。

車両

歴史

立山鉄道

現在の本線の路線で最初に開業したのは、西滑川駅 - 新宮川駅(開業当初の駅名は江上駅)であった。立山軽便鉄道が1911年(明治44年)に滑川駅 - 五百石駅間の免許を受け、1913年(大正2年)に開業した。中越鉄道(現在のJR城端線など)に次ぐ県内2番目の民間鉄道であった。1917年(大正6年)に立山鉄道に改称した。立山鉄道の路線は、軌間762mmで蒸気を動力とする軽便鉄道であった。

  • 1911年(明治44年)7月18日 立山軽便鉄道が滑川駅 - 上市駅(現在の上市駅の北約400mにあった) - 五百石駅間の免許を受ける。
  • 1913年(大正2年)6月25日 立山軽便鉄道が滑川駅 - 上市駅 - 五百石駅間を開業。
  • 1914年(大正3年)2月18日 中滑川駅開業。
  • 1917年(大正6年)6月25日 立山軽便鉄道が立山鉄道に改称。
  • 1921年(大正10年)2月20日 江上駅を宮川駅(現在の新宮川駅)に、堀江駅を中加積駅に、梅沢駅を西加積駅に、西滑川駅を水橋口駅(現在の西滑川駅)に、中滑川駅を晒屋駅(現在の中滑川駅)に改称。
  • 1924年(大正13年)5月20日 宮川駅を新宮川駅に改称。

黒部鉄道

電鉄黒部駅(当初は西三日市駅) - 宇奈月温泉駅(当初は桃原駅)間は黒部鉄道の路線であった。1922年(大正11年)に三日市駅(現在のJR黒部駅。地鉄の駅は現在廃止) - 下立駅間、1923年(大正12年)に下立駅 - 桃原駅(現在の宇奈月温泉駅)間、1930年(昭和5年)に三日市駅 - 石田港駅間が開業した。この路線は開業当初から1067mm軌間の電化路線(直流600V)であった。

  • 1922年(大正11年)11月5日 三日市駅(現在のJR黒部駅) - 下立駅間が開業。
  • 1923年(大正12年)11月21日 下立駅 - 桃原駅(現在の宇奈月温泉駅)間が開業。
  • 1924年(大正13年) 桃原駅を宇奈月駅に改称。
  • 1930年(昭和5年)4月10日 三日市駅 - 石田港駅間が開業。
  • 1934年(昭和9年)10月10日 深谷口駅開業。

富山電気鉄道

上記2社が敷設した路線以外は富山電気鉄道が開業した。

大岩鉄道が持っていた富山市東田地方(ひがしでんぢがた) - 五百石 - 大岩の敷設免許を、経由地を上市に変更して受け継いだ。本来、大岩不動への参詣鉄道というローカルな需要のみを目的とした計画が、高速電車による都市間連絡鉄道という、より将来性のある方向へ転換されたものである。これは地元富山県出身の重役である佐伯宗義(1895-1981 後に富山地方鉄道会長)による着想であった。佐伯は当時30代前半の若手経営者であったが、それ以前に福島県内の赤字軽便鉄道であった信達軌道(のちの福島交通)を電化・改軌して経営立て直しに成功した実績があり、特に招聘されて経営に参画していたものであった。

第一期事業として電鉄富山駅 - 上市駅・寺田駅 - 五百石駅の工事に着手した。富山-滑川間において上市駅前後でのルートがやや迂回気味になっているのは、旧立山鉄道の既存路線を部分的に利用した影響による。

  • 1931年(昭和6年)3月20日 富山電気鉄道が立山鉄道を合併。
  • 1931年(昭和6年)8月15日 富山田地方駅(とやまでんぢかたえき、電鉄富山 - 稲荷町間にあったが後に廃止) - 上市口駅(現在の上市駅)間が開業。軌間1067mm、1500V電化。
  • 1931年(昭和6年)10月3日 電鉄富山駅 - 富山田地方駅間が開業し、富山駅前に乗り入れる。
  • 1931年(昭和6年)11月6日 上市口駅 - 滑川駅間が開業。旧立山鉄道の上市駅 - 新宮川駅間を廃止して上市口駅 - 新宮川駅間を新設、新宮川駅 - 西滑川駅間は1067mmに改軌、1500V電化、西滑川駅 - 滑川駅間は北陸本線沿いにルート変更した。西滑川駅 - 滑川駅間にあった晒屋駅は駅名を本滑川駅に改称して新ルート上に開業(現在の中滑川駅の北西約200mにあった)。
  • 1931年(昭和6年)11月7日 上市口駅 - 上市駅(現在の上市駅の東約600mにあった)が開業。島村駅(現在の越中荏原)駅開業。
  • 1932年(昭和7年)3月22日 本滑川駅を中滑川駅に改称。
  • 1932年(昭和7年)12月22日 旧立山鉄道の上市駅 - 五百石駅間が廃止。本線・立山線から外れてからはこの区間のみを往復する列車が運行されていた。

富山電気鉄道は第二期事業として滑川駅 - 三日市駅間を延伸し、黒部鉄道との連絡をとろうとした。佐伯宗義は、高速電車路線網構築による「富山県の一市街化」を目指しており、富山県東部の主要都邑への路線延伸に重要性を見出していたからである。

しかし、この区間は国鉄北陸本線と完全に並行することから、監督官庁である鉄道省は難色を示した。これに対し、佐伯ら富山電鉄側は「国鉄線は広域輸送を行い、私鉄線は局地的輸送を行うもので、その目的が異なり、競合するものではない」と主張、「並行すれども競争せず」という論理で最終的に鉄道省を押し切って免許を獲得した逸話がある[1]

  • 1935年(昭和10年)12月14日 滑川駅 - 早月駅(現在の越中中村駅)間が開業。
  • 1936年(昭和11年)6月5日 早月駅 - 電鉄魚津駅間が開業。
  • 1936年(昭和11年)8月21日 電鉄魚津駅 - 魚津駅(現在の新魚津駅)間が開業。
  • 1936年(昭和11年)10月1日 魚津駅 - 西三日市駅(電鉄桜井駅を経て現在は電鉄黒部駅)間が開業、黒部鉄道と連絡した。
  • 1940年(昭和15年)3月27日 富山電鉄線と並行する三日市駅 - 石田港駅間の黒部鉄道線を譲り受ける。
  • 1940年(昭和15年)6月1日 三日市駅 - 石田港駅間が廃止(8月7日公告)。石田信号所を駅に格上げし電鉄石田駅開業。

富山地方鉄道本線

1943年(昭和18年)1月1日の交通大統合により、富山県内の全鉄道会社が富山電気鉄道を中心とする富山地方鉄道(地鉄)に統合され、富山電気鉄道線および黒部鉄道線は同社の路線となった。旧黒部鉄道の路線は600Vから1500Vに昇圧され、電鉄富山駅からの直通運転が開始された。

  • 1943年(昭和18年)1月1日 富山地方鉄道発足。電鉄富山駅 - 西三日市駅間を本線、三日市駅 - 宇奈月駅間を黒部線とする。
  • 1943年(昭和18年)8月1日 上市口駅 - 上市駅間が廃止。上市口駅は上市駅に改称。
  • 1943年(昭和18年)11月11日 黒部線架線電圧を1500Vに昇圧。電鉄富山 - 宇奈月間直通運転開始。
  • 1944年(昭和19年)5月18日 下立駅休止[2]
  • 1945年(昭和20年)5月17日 越中三郷駅付近で電車正面衝突。43人死亡。
  • 1945年(昭和20年)9月21日 島村駅を越中荏原駅に改称。
  • 1950年(昭和25年)3月23日 早月加積駅開業。早月駅を越中中村駅に改称。
  • 1951年(昭和26年)6月25日 西三日市駅を電鉄桜井駅に改称。
  • 1953年(昭和28年)8月30日 下立駅営業再開[2]
  • 1956年(昭和31年)4月10日 三日市駅を黒部駅に改称。
  • 1958年(昭和33年)10月2日 水橋口駅を西滑川駅に改称。
  • 1966年(昭和41年)4月1日 電鉄桜井駅 - 宇奈月駅間CTC化。
  • 1967年(昭和42年)12月30日 電鉄富山駅 - 電鉄桜井駅間CTC化。
  • 1969年(昭和44年)4月1日 電鉄富山駅 - 宇奈月駅間を本線に改称。
  • 1969年(昭和44年)4月15日 電鉄富山駅 - 稲荷町駅間の富山田地方駅廃止。
  • 1969年(昭和44年)8月17日 電鉄桜井駅 - 黒部駅間が廃止。
  • 1971年(昭和46年)8月1日 宇奈月駅を宇奈月温泉駅に改称。
  • 1983年(昭和58年)6月1日貨物営業廃止
  • 1986年(昭和61年)11月1日 電鉄富山駅移設。0.1km短縮。
  • 1989年(平成元年)4月1日 電鉄桜井駅を電鉄黒部駅に改称。
  • 1995年(平成7年)4月1日 魚津駅を新魚津駅に改称。
  • 1997年(平成9年)4月1日 電鉄富山駅 - 上市駅間でワンマン運転開始。
  • 1998年(平成10年)6月10日 電鉄黒部駅 - 宇奈月駅間でワンマン運転開始。
  • 1998年(平成10年)12月1日 上市駅 - 電鉄黒部駅間でワンマン運転開始。
  • 2008年(平成20年)9月30日 中加積駅構内で下り急行が脱線。負傷者なし。
  • 2011年(平成23年)12月23日アルプスエキスプレス」運行開始。25日から通常運行予定。

駅一覧

駅名 駅間キロ 営業キロ 急行 快速急行 特急 接続路線 所在地
電鉄富山駅 - 0.0 西日本旅客鉄道:北陸本線高山本線(富山駅)
富山地方鉄道:富山市内軌道線(富山駅前駅)
富山ライトレール:富山港線(富山駅北駅)
富山市
稲荷町駅 1.6 1.6 富山地方鉄道:不二越線
東新庄駅 2.0 3.6  
越中荏原駅 1.1 4.7  
越中三郷駅 2.3 7.0  
越中舟橋駅 1.5 8.5   中新川郡
舟橋村
寺田駅 1.3 9.8 富山地方鉄道:立山線 中新川郡
立山町
越中泉駅 0.7 10.5  
相ノ木駅 0.8 11.3   中新川郡
上市町
上市駅 2.0 13.3  
新宮川駅 1.8 15.1  
中加積駅 2.0 17.1   滑川市
西加積駅 1.6 18.7  
西滑川駅 1.1 19.8  
中滑川駅 0.8 20.6  
滑川駅 1.2 21.8 西日本旅客鉄道:北陸本線
浜加積駅 1.4 23.2  
早月加積駅 1.2 24.4  
越中中村駅 1.2 25.6  
西魚津駅 2.0 27.6   魚津市
電鉄魚津駅 1.3 28.9  
新魚津駅 1.3 30.2 西日本旅客鉄道:北陸本線(魚津駅)
経田駅 2.7 32.9  
電鉄石田駅 2.0 34.9   黒部市
電鉄黒部駅 2.3 37.2  
東三日市駅 0.6 37.8  
荻生駅 0.8 38.6  
長屋駅 1.0 39.6  
新黒部駅(仮称)※     西日本旅客鉄道:北陸新幹線(建設中)
舌山駅 1.4 41.0  
若栗駅 0.7 41.7  
栃屋駅 1.1 42.8  
浦山駅 1.5 44.3  
下立口駅 1.3 45.6  
下立駅 0.7 46.3  
愛本駅 1.3 47.6  
内山駅 1.1 48.7  
音沢駅 0.8 49.5  
宇奈月温泉駅 3.8 53.3 黒部峡谷鉄道:本線宇奈月駅

●はすべて停車、▲は一部停車、|↑は通過、↑は片方向のみ運転。普通列車は各駅に停車。

※新黒部駅(仮称)は2014年度開業予定。

脚注

  1. ^ 『喜安健次郎を語る』1959年、80 - 94頁 - 佐伯宗義のインタビュー
  2. ^ a b 『日本鉄道旅行地図帳 6号 北信越』p.37

参考文献

  • 『写真でつづる富山地方鉄道50年の歩み』(1979年、富山地方鉄道)
  • 『上市町誌』(1970年2月、上市町)
  • 『新上市町誌』(2005年9月、上市町)
  • 『富山廃線紀行』(2008年7月、桂書房)
  • 『日本鉄道旅行地図帳 6号 北信越』(2008年10月、新潮社)

関連項目