原子力艦再利用プログラム
原子力艦再利用プログラム (Ship/Submarine Recycling Program, SRP) は、原子力船を処分するためにアメリカ海軍が使用するプロセスである。同プログラムはワシントン州ブレマートンのピュージェット・サウンド海軍造船所でのみ実施される。しかし、同プログラムの準備は他の場所で行われる場合がある。
プログラム
SRPプログラムの開始前に艦は核燃料を取り出す必要がある。燃料棒の抜き取りは通常退役と同時に行われる。退役前は「合衆国の船」(United States Ship) を意味する「USS」が艦名に付いているが、退役後は「USS」が外され「ex-Name」(元xxxx)と呼ばれる。潜水艦の燃料棒抜き取りは西海岸の5つの施設で行われ、燃料抜き取り後の船体はピュージェット・サウンド海軍造船所へ曳航される。再使用可能な設備は燃料と同時に取り外される。
使用済み核燃料はアイダホ州アイダホ・フォールズ67km北西に位置するアイダホ国立研究所 (Idaho National Engineering and Environmental Laboratory, INEEL) 内の海軍原子炉施設 (Naval Reactor Facility, NRF) に鉄道輸送され格納される。核燃料の再処理は行われない。
SRPプログラムの専門となったピュージェット・サウンド海軍造船所でプログラムは始められる。潜水艦は船体を前部、原子炉コンパートメント、もしあればミサイルコンパートメント、そして後部の3つか4つの部分に切断される。ミサイルコンパートメントはSTART Iに従って分解される。原子炉コンパートメントは両端を密閉され、はしけ船および重量貨物車によってワシントン州にあるエネルギー省のハンフォード・サイトへ運ばれ埋め立て処理される。埋め立てられる溝は、原子炉区画でも最重要部分からの最初のピンホールが通じるまでに少なくとも600年間は安全であると評価されていて、数千年間は漏洩が起きないとされている。
1991年まで、潜水艦の前部と後部のセクションは再接合され浮体保管所に係留された。それらの処分は標的として海没させることを含めて様々な提案が考慮された。しかしながらどの提案も経済的に問題があった。ポリ塩化ビフェニル (PCB) を初めとする様々な環境汚染物質の船体からの除去が環境保護局 (EPA) と沿岸警備隊 (US Coast Guard) から要請された。処分コストの削減のため、残りのセクションは再利用され、再使用できる部材は再生産に回される。潜水艦再利用の過程で危険であり有毒な廃棄物はすべて特定されて取り外される。再使用可能な設備は撤去され在庫に入れられる。金属スクラップおよび他の材料は民間会社に売却されるかあるいは再使用される。全ての過程で利益をあげられる訳ではないものの、ある程度のコストが削減できる。このSRPプログラムによる潜水艦の処理は1隻当たり2,500万から5,000万USドルを要する。
2005年の終わりまでに195隻の原子力潜水艦が建造あるいは発注された(NR-1深海潜行艇およびバージニアを含む)。最後のスタージョン級原子力潜水艦、L・メンデル・リヴァーズ (USS L. Mendel Rivers, SSN-686) は2001年に退役し、スタージョン級の高度改修型であるパーチェ (USS Parche, SSN-683) は2004年に退役した。最後の「自由のための41隻」であるカメハメハ (USS Kamehameha, SSBN-642) は2002年に退役した。ロサンゼルス級原子力潜水艦の退役は1995年に始まり、大きく損傷したバトンルージュ (USS Baton Rouge, SSN-689) が最初に退役する艦となった。さらに、数隻が建造された原子力巡洋艦もプログラムに加えられた。それらの処理は進行中である。
アメリカ海軍は原子力空母も保有する。2012年12月1日付で世界最初の原子力空母「CVN-65 エンタープライズ」が退役した。
原子力巡洋艦
攻撃型原子力潜水艦
※ジョージ・ワシントン級原子力潜水艦のいくつかは弾道ミサイル原子力潜水艦であったが、退役前に攻撃型原子力潜水艦に艦種変更されたため以下にリストする。
- †:船体が記念艦として保存されている。詳細は個々の記事を参照
- ‡:パーチェの日付は2004年度会計予算で公式に示された物。実際は10月19日まで作業は開始されなかった。
弾道ミサイル原子力潜水艦
※ラファイエット級原子力潜水艦のいくつかは弾道ミサイル原子力潜水艦であったが、攻撃型原子力潜水艦に艦種変更、訓練用に係留され再利用プログラムの予定にない。
プログラムは進行中であり、このリストは不完全である。
サム・レイバーン (USS Sam Rayburn, SSBN-635) は訓練艦に改修され、係留訓練艦 (Moored Training Ship) に艦種変更 (Sam Rayburn, MTS-635) された。サム・レイバーンの改修は1986年2月1日に始まり、1989年7月29日に訓練艦として最初の臨界を達成した。改修は推進主軸によって生成された力を吸収するメカニズムを含む特別な係留装置が取り付けられた。ダニエル・ウェブスターは1993年に2隻目の係留訓練艦 (MTS-2/MTS-626) に変更された。係留訓練艦はサウスカロライナ州グースクリークのチャールストン海軍兵器施設に係留される。サム・レイバーンは2014年まで係留訓練艦として4年間隔で信頼性試験を受けながら活動予定である。