マツ
マツ属 | ||||||||||||||||||
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アカマツ Pinus densiflora
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分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Pinus L. | ||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||
マツ属 | ||||||||||||||||||
種 | ||||||||||||||||||
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マツ属(マツぞく、学名:Pinus)は、マツ科の属で、マツ科のタイプ属である。常緑の高木で、針葉樹ではもっとも種が多く、分布域も広い。
概要
日本語でマツといった場合、マツ属の中でもクロマツ、アカマツを指すことが多い。また日本語でマツを名前に含む樹種にはカラマツ等マツ属でないものもある。庭木や盆栽によく用いられる。松脂(まつやに)は様々な分野に利用される。
葉は針状であり、幹には堅い殻が形成される。また、松ぼっくりもしくは松笠(まつかさ)という球状の球果[1]ができる。この中には種子が作られ、マツは繁殖することができる。
日本では長寿を表す縁起のよい木とされ、松、竹、梅の3つを松竹梅(しょうちくばい)と呼んで重宝している。
分類
分類上は単維管束亜属(ゴヨウマツ、五葉松類)と複維管束亜属(ニヨウマツ、二葉松類)に分けられる。マツ属には約115種の種がある[2]。
日本に自生する単維管束亜属として以下の4種及び1変種がある。
- ヒメコマツ(別名ゴヨウマツ) Pinus parviflora
- キタゴヨウ(ヒメコマツの変種) P. parviflora var. pentaphylla
- ヤクタネゴヨウ P. armandi var. amamiana
- チョウセンゴヨウ P. koraiensis
- ハイマツ P. pumila
日本に分布する複維管束亜属としては以下の3種類がある。
世界のマツ属植物
単維管束亜属(ストローブマツ亜属)
- ストローブ節
- P. amamiana ヤクタネゴヨウ - 日本産、屋久島と種子島に分布。ただし下記のタカネゴヨウ(カザンマツ)の変種とも扱われる。
- P. armandii タカネゴヨウ(カザンマツ) - タカネゴヨウは台湾の高山、カザンマツは山西省から雲南省に分布
- P. ayacahuite メキシコシロマツ - メキシコ南部から中米西部の海抜2200-3500mに分布
- P. bhutanica ブータンシロマツ - ブータン・インド北東部・中国南西部に分布
- P. chiapensis チアパスシロマツ - メキシコ・チアパス産?
- P. dabeshanensis
- P. dalatensis ベトナムシロマツ - ベトナムの海抜1400-2300mに分布
- P. fenzeliana ハイナンシロマツ - 中国・海南島
- P. flexilis リンバーマツ(フレキシマツ) - 北米西部山岳地帯の亜高山帯
- P. reflexa ナンセイシロマツ - 北米アリゾナ・ニューメキシコに分布。上記リンバーマツと同種または変種ともみなされる場合もある。
- P. lambertiana サトウマツ[3] (ナガミマツ[3]) - 北米カリフォルニアとオレゴン・メキシコ北西部に分布
- P. morrisonicola タイワンシロマツ
- P. monticola モンチコラマツ[3] - 北米西部山岳地帯に分布
- P. parviflora ゴヨウマツ - 日本に分布
- P. peuce マケドニアマツ - マケドニア・アルバニア・セビリア・ブルガリア・ギリシャの海抜1000-2200mに分布
- P. pumila ハイマツ - シベリア・中国東北・朝鮮半島北部・日本に分布
- P. strobiformis チワワシロマツ - メキシコ・西シェラ・マドレ山脈
- P. strobus ストローブマツ - 米国北東部とカナダ東部に分布
- P. wallichiana ヒマラヤアオマツ - ヒマラヤ・カラコルムの海抜1800-4300mに分布
- P. wangii - 中国に分布
- ケンブレア節
- P. albicaulis
- P. cembra スイスマツ(ヨーロッパハイマツ)
- P. koraiensis チョウセンゴヨウ - ウスリー・中国東北・朝鮮・日本に分布
- P. sibirica シベリアマツ
ピニョン亜属(単維管束亜属の一部とも分類される)
- P. nelsonii
- P. krempfii
- P. bungeana シロマツ(ハクショウ)
- P. gerardiana
- P. squamata
- P. maximartinezii
- P. pinceana
- P. rzedowskii
- P. cembroides メキシコマツ
- P. culminicola
- P. discolor
- P. edulis
- P. johannis
- P. monophylla
- P. orizabensis
- P. quadrifolia
- P. remota or Papershell Pinyon
- P. aristata イガゴヨウ
- P. balfouriana
- P. longaeva ブリスルコーンマツ
複維管束亜属 二葉松類
- ピヌス節
- P. densata
- P. densiflora アカマツ - 日本・朝鮮・中国東北に分布
- P. heldreichii ボスニアマツ
- P. hwangshanensis
- P. kesiya ケシアマツ
- P. luchuensis リュウキュウマツ - 沖縄に分布
- P. massoniana タイワンアカマツ
- P. mugo モンタナマツ
- P. nigra ヨーロッパクロマツ
- P. resinosa レジノーサマツ[3] (レジノサマツ)
- P. sylvestris ヨーロッパアカマツ(シベリアアカマツ}
- P. tabuliformis
- P. taiwanensis
- P. thunbergii クロマツ - 日本と韓国に分布
- P. tropicalis
- P. yunnanensis ウンナンマツ
- ピネア節
- トリフォリア節
- P. leiophylla チワワマツ
- P. lumholtzii
- P. caribaea カリピアマツ
- P. clausa スナチマツ[3] (クラウスマツ、クラウサマツ)
- P. cubensis
- P. echinata エキナタマツ(エキナータマツ)
- P. elliottii スラッシュマツ
- P. glabra モミハダマツ
- P. hondurensis
- P. occidentalis
- P. palustris ダイオウマツ (ダイオウショウ)
- P. pungens
- P. rigida リギダマツ
- P. serotina ヌママツ[3]
- P. taeda テーダマツ
- P. virginiana バージニアマツ
- P. banksiana バンクスマツ
- P. contorta コントルタマツ[3](ヨレハマツ)
- P. attenuata
- P. greggii
- P. herrerae
- P. jaliscana
- P. lawsonii
- P. muricata ビショップマツ
- P. oocarpa オオカルパマツ
- P. patula パツーラマツ
- P. praetermissa
- P. pringlei
- P. radiata ラジアータパイン(モントレーマツ、ラジアタマツ)
- P. tecunumanii
- P. teocote
- P. apulcensis
- P. arizonica
- P. cooperi
- P. coulteri オオミマツ
- P. devoniana
- P. durangensis
- P. engelmanii
- P. estevezii
- P. gordoniana
- P. hartwegii
- P. jeffreyi ジェフリーマツ
- P. maximinoi
- P. montezumae モンテスママツ
- P. ponderosa ポンデローサマツ
- P. pseudostrobus
- P. sabiniana
- P. torreyana
分布
分布域は、主に日当たりの良い地味の乏しい土地を好み、気温的には亜熱帯(リュウキュウマツ)から高山帯(ハイマツ)までの、きわめて多様な気象条件に対応している。世界的にはユーラシア大陸から北米までの北半球全域で北は北極圏近くから南はベトナム(アジア)・コスタリカ(北米)にまで分布。
松の部位
文化
松は常緑樹として冬も緑の葉を茂らせることから、若さ・不老長寿の象徴とされ、竹、梅と合わせて「松竹梅」としておめでたい樹とされる。能舞台には背景として必ず描かれており(松羽目)、 歌舞伎でも能、狂言から取材した演目の多くでこれを使い、それらを「松羽目物」というなど、日本の文化を象徴する樹木ともなっている。松に係わる伝説も多く、羽衣伝説など様々ある。また日本の城にも植えられているが、非常時に実や皮が食料になるため重宝されてきた。「白砂青松」は日本の美しい海辺の風景を表す言葉だが、近年松くい虫により松枯れの被害が相次いでいる。害虫対策として幹に藁を巻く「こも巻き」は冬の風物詩でもある。
和歌
松は和歌にも古来より取り上げられている。特に古くは子の日の小松引きという行事にあわせて和歌を詠むことがあり、それらの和歌が残る。また高砂の松、尾上の松などが歌枕として詠まれ、特に高砂の松はのちに謡曲『高砂』の題材とされ名高い。
- たれをかも しるひとにせん たかさごの まつもむかしの ともならなくに(同上巻第十七・雑上 藤原興風)
松の位
秦の始皇帝が雨宿りに使った松に「大夫」の爵位を授けたことから松の異名を大夫という。また逆に大夫を「松の位」とも言う。一般的には遊女の最高位である大夫すなわち太夫(たゆう)を指すことで知られる。遊女を太夫と称するのは、古くに猿楽(能楽)を遊女が演じた時、座を率いる主だった者が本来五位の通称であった大夫(太夫)を男の能楽師に倣って称したことが始まりだという。邦楽の曲中ではしばしば「松」が松の位の遊女を連想・暗示させるような表現をとっているものがある。
音曲
- 『高砂』(謡曲)
- 『老松』(同上)
- 『末の松』(箏曲)
- 『松づくし』(上方唄、端唄)(地歌箏曲)作曲者不詳
- 『松尽し』(地歌、箏曲)藤永検校作曲
- 『松風』(地歌、箏曲)岸野次郎三作曲
- 『新松尽し』(地歌、箏曲)松浦検校作曲
- 『松の寿』(地歌、箏曲)在原勾当作曲
- 『松竹梅』(地歌、箏曲)三ツ橋勾当作曲
- 『根曵の松』(地歌、箏曲)三ツ橋勾当作曲
- 『老松』(地歌、箏曲)松浦検校作曲
- 『尾上の松』(地歌、箏曲)作曲者不詳、宮城道雄箏手付
- 『松の栄』(地歌、箏曲)菊塚検校作曲
- 『松風』(山田流箏曲)山田検校作曲
- 『松の栄』(山田流箏曲)二世山登検校作曲
- 『老松』(長唄)杵屋六三郎作曲
- 『松の緑』(長唄)四世杵屋六三郎作曲
- 『松襲』(一中節)初代菅野序遊作曲
- 『松の羽衣』(一中節)
- 『老松』(常磐津)初世常磐津文字太夫作曲
- 『老松』(清元)富本豊前掾作曲
- 『老松』(地歌、箏曲)菊岡検校作曲
- 『松』(箏曲)宮城道雄作曲
- 『ローマの松』(交響詩)レスピーギ作曲
利用
観賞
庭木、盆栽などに利用されている。コンパクトなスタイルのもの、葉に斑や模様が入るもの、樹皮が荒れて独特の風格を持つものなど、改良種が多い。
また、松島、天橋立、桂浜、虹ノ松原など、観光地の景観植物としても重要な役割を果たしている。
木材
木造建築用の梁・桁などに利用される。近年、マツクイムシなどの被害が多く純林が減少。手に入りにくくなっている。また、鉄道の枕木としても使われていた。
なお木材としてのマツの呼称として近年ではパイン材という呼び名が使われることがある。 これはヨーロッパからの輸入住宅のフローリングなどに使われている場合は、欧州赤松を指していることが多い。また北米からの輸入の場合は、2×4建築の構造材やホームセンターに部材として販売されているカナダ産の白っぽい木肌のSPF材を指す場合や、ボウリング場のレーンなどはアメリカ産の黄色っぽい木肌のSouthan Yellow Pine(サザンイエローパイン)を指す場合もある。また、北米産のものは「米松(べいまつ)」、国産のものは「地松(ぢまつ)」と総称することもある。
燃料
他の木材と比べ可燃性の樹脂を多く含み、マッチ1本で着火できるため以前は焚き付けに用いられた。分離した樹脂である松脂もよく燃える燃料として使用された。また、第二次世界大戦中の日本では、掘り出した根から松根油を採取し、航空機の燃料に用いようとしたことがある。
他の木材と比較し単位重量当りの燃焼熱量が高いことから、特にアカマツは陶器を焼き上げる登り窯など、窯の燃料として珍重される。
食用
朝鮮五葉松などから採取された松の実は、食用にも供される。60%を超える脂質のほか微量元素も含まれ、独特の香りを持つことから健康食品、菓子等にも使用される。
また、フランス海岸松の樹皮から抽出されるピクノジェノールを多く含むエキスは、サプリメントに利用されている。
アカマツなどの若葉を洗浄して、砂糖水に漬け、葉に付着している細菌の作用で炭酸ガスを発生させて水中に溶け込ませて作る松葉サイダーという飲み物がある。松葉は食用にしないが、成分が溶け込んで、独特の味わいがでる。韓国では、マツの芽の風味を付けた缶入りの炭酸飲料が販売されている。また、松葉風味の飴も売られているほか、松葉を敷いて風味を付けた「松餅(송편、ソンピョン)」と呼ばれる蒸し餅が作られている。
紅茶のラプサンスーチョンは、タイワンアカマツなどの木材や樹皮でいぶして、独特の香りを付けて作られる。
樹脂である松脂も香料として使うこともあり、フランスなどではマツの香りのする飴が作られており、ギリシャではレッチーナ(Retsina)と呼ばれる着香ワインが作られている。
松脂の採取
松脂(まつやに)は松の枝、芽などを折ったり、幹に傷を付けたりした際に出る樹脂の事である。樹脂は樹脂道という特殊な組織で、主に昆虫の幼虫の寄生を妨げる目的で合成され、テルペン等の揮発成分を大量に含み、水には溶けない。生成当初は透明から淡黄色で流動性に富むが、揮発成分が減少するにつれ粘り気が増え固化する。揮発成分は特有の芳香がある。酸化により黄色や茶色に着色する。そのまま地中に埋もれても腐らないため、酸化固化を経て琥珀になる。虫がこの樹脂の中に捕捉され、長期間保存されることもある。松脂と同じような樹脂はスギ、ヒノキ、トウヒ、モミ等針葉樹の全てで作られるが、松は特に材の中にも樹脂道を多く持っているため、表面に現れやすく、もっとも有名で、また、幹に傷をつけて採取する場合にも大量の樹脂の収集が可能である。また、マツはもっとも人に近いところに生育あるいは、植栽されてきたため、松脂は世界中で様々な物に活用されてきた。現在は、中国などのアジアを中心に、幹にV字型の切り込みを入れる方法で、染み出す松脂の採取が行われている。
松脂を蒸留するとロジン、テレピン油、ピッチなどの成分が得られ、燃料、粘着剤、生薬、香料、滑り止め、紙の添加剤などに用いられる。ロジンは、マツの根などからも得ることができる。詳細はロジン、テレピン油を参照。
樹皮
樹皮が園芸用品としてインテリアバーク、バークチップなどの通称で流通している。アカマツ、クロマツの樹皮が用いられることが多いがマツ以外のものも存在するので一概にバークチップ=マツとは言えない。波紋のような縞模様が浮き出たバークは見た目の美しさから観葉植物の鉢植えやグラウンドカバーなどとして利用される。室内向けの鉢植えで多く見かける理由は美しさだけではなく、虫が湧きにくく、保湿効果が得られることも挙げられる。屋外では主に装飾、飛び石や花壇の隙間などのアクセントとして、グラウンドカバーに使用される。踏むと崩れてしまうので装飾用途の場合直接歩くような通路には向かない。付随効果としては厚めに敷き詰めることで遮光により雑草を生え難くしたり、降雨による土壌流出や泥跳ねを抑え、植物原料のため環境汚染の心配がないことが挙げられる。
手入れ
松の管理
庭木や盆栽の松の手入れとして他の植物と際だったものとして、「みどりつみ」と「もみあげ」がある。
- みどりつみ
- 松の新芽を「みどり」という。若木や栄養豊富な木ではこの「みどり」が勢いよく伸びて、結果として間延びした樹形となってしまうので、5 - 6月頃に、本数は2、3本くらいに、長さは好ましい枝の長さに指で「みどり」を折ってやる。
- もみあげ
- 古葉取りのことである。葉をむしり取る様子がもみあげという言葉を生んだのだろうか。作業は秋以降に原則として前年葉を全てむしり取るということである。目的とするのは次の通り。
- 能力の弱まった古い葉を捨てる。
- そのことによって日当たり、風通しをよくする。
- 全体としてすっきりとした樹形にする。
- 木全体のことを考えれば、前年葉でも少しは残すこともあるだろうし、本年葉でも少しむしるということもありうる。
- 植生の遷移に注目すると、マツとは砂地や岩場などの荒地に比較的早く侵入し、その後広葉樹などと入れ替わるように枯れる。つまり広葉樹林の様に地面に腐葉土などが溜まると衰弱する。したがって地面に腐葉土や枯葉などの有機物を溜めない為に掃除する必要がある。
松の実生
庭木または盆栽として植えられている松は、ごく一部の園芸品種が黒松や赤松の台木に接ぎ木される他は、ほとんどが実生から作られる。盆栽用のマツ類のタネは、大きな種苗店でないと売っておらず、それも入るか入らないかわからないので、イギリスなどの通販業者から買ったほうが確実である。クリスマス頃までにカタログが出たり、販売サイトが更新されたりするので、1月中にタネを入手したい。マツは本来取り播きがよく、寒さに当てないとよく発芽しない。タネは種によって多少違うが、ダイズから米粒くらいの大きさで、翼がある。浅鉢に新しい培養土を入れ、翼のついたまま播いて、タネの大きさの2倍くらいの覆土をし、屋外におき、乾かさないようにしておくと、4月から5月に生えてくる。